命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1072

「どうなってる?」

 俺はアルテミナスのあるカフェに入ってその一角に行く。仲間たちが待ってる場所だ。アルテミナスで集まる時はいつもここで集まる程に常連な店だ。それなりに広くて、そしてテーブルごとにちょっとした個室みたいになってるからいい感じなんだ。

 そこには家のチームの主要メンバーが集まってる。そしてテーブルに置かれた水晶の様なアイテムからは今やってる大規模なエリアバトルが投影されてる。

「遅いぞアギト」
「ほんと、こんな大事な戦いを最初から見ないなんて損ですよ、損」

 席についてる内の二人がそんな事を言ってくる。ここにいるのは皆エルフだ。俺たちはアルテミナスの為にエリアバトルをしてるから、エルフが集まってる。アルテミナスはエルフの国だからだ。前はアイリがここの王様……女王だったんだが、リセット後にそれは変わってしまった。

 アイリ的には重荷が降りたから良かったと言ってたが、俺的には残念で仕方ない。だからアイリを巻き込んでチームを作ってこんな事をしてるわけだ。悪いとは思ってるが、アイリは付き合ってくれてる。そんなアイリをちゃんといる。勿論上座にアイリはいる。

 俺は一番遅れて来たから一番通路側の席に追いやられた。アイリの隣は俺の定位置なのに……まあ今日はしょうがない。

「まだ始まって十分くらいだろ? 大規模なバトルはそんな早く動きないだろ?」
「普通はそうですね。けど今回は違うようですよ」

 そういって俺も映像をのぞき込む。そこには各地の戦いが映し出されてた。目の前の奴に説明されながら俺は状況を理解する。

「今は散発的に連合チームがテア・レス・テレスの陣地を攻めてますね。丁度守りを固め終えたのと、テア・レス・テレスが戦力を一か所に集中させたのが原因です」
「戦力を集中?」

 なんか嫌な予感がするな。日鞠の奴がそんな事を特定の相手にやるとしたら……とりあえずはなしを聞こう。

「ええ、アギトさんのお友達ですよ。一対三十くらいですかね? 激戦を繰り広げてましたよ」
「一対三十って……どっちが勝ったんだ?」
「どっちだと思います?」

 ここでそう返してくるか。周りの奴らを見ると、何やらにやにやしてるな。これはどっちの反応だ? 俺が正解するかどうかこいつらで賭けしてるとか? ううん……普通に考えたら一対三十なんて勝てるわけない。だが勝てる訳ないというか、負けてたらそもそもこんな事を言うか?

 てかLROに入る前にもちょくちょく情報は得てたんた。なにせいま行われてるエリアバトルはとても注目度が高い。ちょっとスマホを見れば通知がちょくちょく届く。そこそこスオウがいい戦いしてたのは知ってる。こいつらは俺が何も知らないと思ってるみたいだが、そんな訳ない。

 まあけど決着までは知らないんだが。けど途中までは知ってる。それがヒントになる筈だ。十五人くらいまではあいつは減らしてた。それだけで驚異的だが、あいつがここ最近で得た力を知ってれば、あいつの一撃離脱戦法は厄介だとわかる。

 ただでさえ速いからな。けどただ負ける配置を日鞠の奴がやってるわけがない。ここで考える事は日鞠がどこまで本気で、スオウの奴がそれを乗り越えられるかって事。まあそういうのはあいつらを知ってないと考えようもないだろうが、生憎と俺はあの二人を互いを除くと一番知ってると自負してる。

 日鞠はスオウに甘いようで、要求は高い。スオウは日鞠の事となると意地になりやすい。やっぱりここはスオウの奴の力量によるな。正直予想がつかない。あいつが祝福を集めて強くなってるのは知ってる。けど、まだあいつの全力を見たわけじゃない。
 ローレのせいか、そっちで色々と検証してるみたいだし、ローレの奴は俺達を自分のエリアには招かない。秘密主義のあいつらしい。
 
 常識で考えると勝てる訳はない。それにはその予想を証明させる色々な要素がある。けどスオウの奴は何度も無理そうな場面を乗り越えてきたのも事実だ。どっちに賭けるか……ふと目が合ったアイリがちょっと頷く。それで俺の心は決まった。

「じゃあスオウの勝利に賭けるぜ」
「流石ですねアギトさん」

 どうやら正解だったようだ。周りの奴らが机に突っ伏したり顔抑えたりしてる。ざまあみろ、俺たちの友情の勝利だな! 俺はそう都合よく息巻いた。

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