命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1011

「なんなんだあれ?」
「あれは夏のお姫様がいう伝承では――」

 何気に発した発言なんだが、それから続く会長の言葉はとても長そうだったから、さっさと僕は走り出す。別段背景なんて知らなくても大丈夫でしょ。渦から口を出してる気持ち悪いミミズみたいなのは渦事移動してる。どうやらどこか目的地があるよう。それは直ぐに察しがついた。

 だって僕たちが来た方に向かおうとしてるんだもん。まあこういう化け物が襲うような場所はここには多くない。それこそ四つくらいしかない訳で、だからこの化け物の向かう先はきっと夏の城だ。あそこには一般人がいっぱいだし、行かせる訳にはいかない。

「乗る?」

 セラの奴がそう聞いてきた。相手は上空だ。地上からでは不利だから聖典に乗るかどうかって事だろう。事実、セラは乗ってる。けど……ぼくはそれを断るよ。

「いやいい。お前だって僕のフォローに回る思考を戦闘に使った方がいい筈だろ?」
「まあね。だからって足手まといのままよりはマシなんだけど?」

 このまま地上でちょろちょろしてても戦力とはなりえないとそういう事か。まあそれは正しい。やっぱり空を飛ぶ敵に地上から応戦するのは圧倒的に不利だ。けどそんな事わかってる。僕が何も考え無しにセラの提案を断ってるとでも? 
 なんかちょっと不機嫌になってるみたいなセラに僕はいうよ。

「ちゃんと考えてるよ。セラは一足先に行っててくれ」
「わかったわよ。でも私に負担を押し付ける気なら……後でわかってるわよね?」
「勿論、なんだってしてやるよ」

 そういうとセラは聖典と共に空に上がってく。さて、僕も早くやらないとな。じゃないとセラから後で無茶ぶりされることになる。あいつの要求とか何が来るか予想できないから怖いしね。僕は自分の中で祝福を風に集める。そしてそれらを外に出し、一気に大量の風で周囲の風を巻き込む。僕の周りに黄緑色の風の幕が出来る。魔法少女とかである変身中の謎空間みたいなものだ。

 今までは色々と条件がそろわないと出来なかったが……集めた祝福の力を結集して更にそれらで風を掴めば出来ると思ったんだ。僕は今でにないくらいに多くの風を今、従える事が出来てる。

「いっくぞ!!」

 僕はその幕から突き出る。その僕の体には新たな風の武装が出来上がってる。頭に風を現すような布が揺れ、手と足と胴にも風の鎧が出来上がってる。まあ鎧と言っても固そうなやつではない。基本ヒラヒラした奴だ。戦闘中に邪魔になりそうだが、実は問題ない。何せ風だからな。

 僕の動きは阻害することはなく、だがきちんと防御力はあるという優れモノだ。そうこれこそが完成した風帝武装……風帝武装アウラの真の姿だ!

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品