命改変プログラム

ファーストなサイコロ

956

「げほっがはっ!?」

 息を思いっきり肺に取り込む。周りを見るとここが大きな洞窟なのだとわかる。青色に光る水が下に流れてて、天井までを光る苔があってそれなりに明るい。凄く幻想的な光景だ。

「おい大丈夫か?」

 僕は会長をゆする。テッケンさんはシルクちゃんを起こしてる。二人が起きると、僕達は奥を目指すことにした。多分この水の流れに沿って行けば、奥にいけるんじゃないだろうか?

「来るよ!」

 テッケンさんがそういってガントレットを構える。その直後、天井から三メートルクラスのカニが三匹振ってきた。その甲羅は苔が張り付いて光ってる。さっきから何回も戦闘になってるからここがエアリーロの時よりも大変なのは身をもって実感してる。シルクちゃんがいて本当に良かった。

 僕とテッケンさんがカニへ向かって進む。まずは僕が三匹のタゲを取る。スピードがあるからカニのうすのろな攻撃を僕なら食らうことが殆どない。カニで警戒すべき攻撃は泡だけと学習してる。泡は触れるとバックノックが発生する小ダメージの攻撃だ。その数と範囲が驚異的で、完全に交わすのはほぼ不可能。

 最初はそれこそ結構食らった。だからそれだけに注意しつつ僕はカニを翻弄する。そして重い一撃はテッケンさんに任せる。彼は固い甲殻を叩き壊す程の一撃を与えていく。そうやって追い詰めていく、三匹のカニは背中を合わせて泡を噴き出した。そして淡く光りだす。元から光ってるが、それは苔による光で、今はカニ自体が自分で青く光ってる。

 あれは回復の光だ。あのカニ、厄介な事に自己回復できるのだ。回復すると知って慌てて突っ込むとあの泡に阻まれる。泡で自身を守りつつ、回復に専念するからあのカニはなかなかに厄介な敵だ。

「スオウ行って! 大丈夫だから!」

 そういうのは会長だ。僕は余計な言葉なんて無意味と思って走り出した。テッケンさんやシルクちゃんが驚いてるが、僕達の間に言葉なんていらない。僕は風を蹴って飛び出した。まっすぐにだ。泡が体に当たる――直前でふわりと泡が僕の体をよけた。僕はチラリと会長を見る。

 会長はコクリとうなづいた。何かやったのだろう。会長は基本攻撃するでもなく、支援とか回復する訳でもない。会長の立ち位置は普通のプレイヤーとは違ってとても特殊だ。一応戦ったりできる筈だが、自分から前に来ようとはしない。

 けど、多分何かはやってる。僕は普通に泡の中を進める。僕に当たる前に泡がよけていくんだ。これも絶対に会長が何かしてる。僕はフラングランに雷を纏わせる。宝石に宿る存在とわかり合えたから一瞬だけしか使えなかった雷もそれなりに使えるようになった。風よりも内部から焦げさせれる雷がいいと思った。

 その思惑はあたりだったようだ。テッケンさんの様に甲殻を砕けてはないが、剣が走るたびに香ばしい匂いがする。そして一体、また一体と赤く茹で上がって倒れていく。

「ふう」

 三匹のカニは赤くなって消えていく。けど、どうやらまだ先は長そうだ。

「命改変プログラム」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く