命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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 声がそろった僕とアギトは会長が持ってるペンに視線を注ぐ。よくよく考えたら、あのペンの事を僕達はあんまり知らない。『ヨハネのペン』とか言ってたような気がしないでもないが……僕が知ってる限り、会長の奴は最初からあのペンを持ってた。
 それってちゃんと考えたらおかしい。だって初期装備にペンなんてない。いや、あっても選ぶ奴いないだろう。だってLROは剣と魔法が存在する世界だ。モンスターがいて、基本プレイヤーはモンスターとかを倒す冒険者という位置だ。

 もちろん、自由度は無限大だから、戦うだけがLROでの生き方ではない。けど最初からそんな選択肢がある程甘い訳でもない。先立つものだって必要だしな。一番簡単にお金を得るには弱いモンスターを狩ることが一番だろう。

 だからこそまずは武器……が与えられるんだと思うんだ。最初の定番ミッションは自分にあった武器を得る事だった。それで僕の武器は双剣になったのだ。勿論他の武器も使うことは出来る。LROは何も強制なんてしないからな。

「なあ、会長のそれって武器のカテゴリーに入るわけ?」
「え? 何言ってるのスオウ? これはペンだよ?」

 そういってクスクスと笑う会長。おいおい、ならお前の武器は何だよって言いたい。

「けどお前、戦闘中も持ってるのそれじゃん」
「そうだね」
「なら、それがお前の武器じゃないのか?」
「うーん、武器なのかな? 私はこれ以外持てないってだけだよ?」
「「え?」」

 会長の言葉に僕もアギトも驚いた。確認すると、どうやら会長はあのペン以外に武器のような装備は持てないらしい。それがあのペンの制約らしい。武器だけじゃなく、盾みたいな装備も無理らしい。

「でもそれだけの制約があるなら、やっぱかなりの性能だよな? 前々から思ってたが、それって何を書いてるんだ?」

 アギトが最もな疑問を口にした。会長が走り書きしたものって日本語ではないんだよね。だからって英語の様な物でもない。でも見覚えはある。それはコードだ。会長はコードを書いてるんじゃないかと、僕は思ってる。そしてそれなら、色々とあのペンで干渉できることも説明できる。

「コードだよ。このペンは世界のコードに干渉できる」

 なんでもない――そんな調子で会長は言い切った。

「あ、あと新しいコードも生み出せるね」
「それって世界に新しいルールを作れるとか……そんな規模の話か?」
「流石にそれ程じゃないけど……まあこれがあれば、どんな力もスキルも使えるよ」
「「とんでもないチートだな!!」」

 やっぱり僕達の声は揃った。

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