命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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「黒いシミですか?」
「そうじゃ、最近、そういうのがあるのじゃ」

 辺境の村でそんな話をここの村長から聞いてる。今僕達はエアリーロに会う為に祭壇へと向かってるのだ。既に判明してる条件はやってきてる。会長が精霊巡りをするにあたり、やはり一番最初はエアリーロだろうということになったからだ。
 僕は一番精霊に詳しいのはローレの奴だからあいつに何か聞いた方がいいかとも思ったが、アギト曰くエアリーロは簡単だから聞く必要ないらしい。精霊との契約で一番大変なのはその精霊に力を見せる事。つまりは精霊を倒す事だが、それはどの精霊も同じで、プレイヤーが感じる難易度はそこに至るまでらしい。

 精霊が強いのは当たり前で、どれだけそこに至るまでの道が簡単か……でエアリーロは一番簡単だから簡単な精霊はエアリーロだとプレイヤーは言うんだそうだ。エアリーロは三つあるアイテムを集めて祭壇に奉納すると現れるお手軽精霊らしい。

 まあその祭壇はなかなかに奥まった場所にあるらしいが、そこまで至る道もそこまで強い敵が出るってわけでもらしいが、一応一番その祭壇に近い村で情報を集めて出発する予定だった。

「アギト」

 僕はアギトをみるが、こういうことがあるかまでは知らないみたいで首を横に振る。しょうがないからもう少し詳しく聞いてみる。

「見たものによると、地面から何やら黒いシミが染み出してそれに魔物が包まれると変化するらしいんじゃ。だから奥に行くのなら気を付けるのじゃ」

 ちなみにいつからかなのか聞くと、本当に昨日今日の事らしい。黒いシミ……か。なんか奴のオリジンを思い出すが、あいつは既に……僕は自身の胸に手を置く。

「ご心配ありがとうございます。ご忠告は胸に刻んでおきますね」

 会長がそういって村長に頭を下げる。二人も村民に同じ様な事を聞いたらしい。何か関係があるのかな? と尋ねると今の段階ではわからないという。まあそれはそうだよな。印象的だったから関連付けてしまうだけで、このLROでは定期的に変な事起こってる。

 それこそ、いつだって騒ぎの中心に自分がいるなんていう思い込みは自己評価が高すぎる。僕は別に世界の中心じゃないんだ。きっと今だって、どこかでは大冒険を体験してるプレイヤーはいるし、世界を救ってるプレイヤーもいるかもしれない。
 僕だけが特別なんて思うのは驕りだ。

「よし、気を付けていこう!」

 そういう会長を伴って、僕とアギトは山に挑む。標高八千メートルを超える山々が連なる『ベーレヒッツ峰』にエアリーロの祭壇はあるらしい。僕達はリアルではエベレストと同格の山にとても心もとない装備で挑む。リアルでなら自殺行為。だがここではこれが普通だ。

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