命改変プログラム

ファーストなサイコロ

944

「は? え?」

 視界に会長を取られたアギトのやつがそんな風な声をだしてる。まあそれはそうだろうな。アギト的にはここにいる日鞠も消えて、そして意識も戻らない物とおもってたんだろう。だって前がそうだったんだからそう思うのは普通だ。

 まえのLROで囚われた人達は確かにそうだったんだ。こちら側にも存在せず、リアルでも意識が戻る事がなかった。だから精神だけが行方不明みたいな状態だった。いや、魂が……とか? さすがにちょっと抽象的だろうか? でも魂と精神って無関係じゃない気がする。

 そもそもが魂と精神の違いとはなんなのか? まあ、いまそんな事を考えてもいみはない。そもそもきっと答えなんて出ないんだ。

「あはは、アギト面白い顔してるよ?」
「おま!? だって……」

 口をパクパクさえてそれだけ言うのが精いっぱいのようだ。周りのテア・レス・テレスの面々は何やら戸惑ってる。彼らはきっと知らない立場の奴らなんだろう。テア・レス・テレスの中でも会長に起こった事を正確に伝えてるのは生徒会の面々と上級幹部クラスの奴らだけらしい。

 生徒会の面々はどうあっても隠しておけないし仕方ない。テア・レス・テレスはこのLROで一番大きいチームだ。人数もいっぱいだし、だから上の方には伝えておくと会長が言った。そういうふうに日鞠が決めたのならその方がいいんだろう。

「別にそこまでおかしくないよ。スオウだってこうだったって聞いたよ?」
「……確かに」

 そういって二人の視線が僕へと移る。確かに考えてみると、前のLROでの終盤近くの僕の状況と同じ感じではある。僕のあの時、ログアウトの方法がなくなった。けど、僕はここにLROに存在してた。何か過程が違えばそうるのか……どうかは正直わからない。

 僕の二人の視線から逃れる様に周囲に視線を巡らせる。

「なんかもういつも通りだな」
「それはそうです! なにせ会長が精力的に動いてらっしゃいますから!」

 テア・レス・テレスのメンバーの一人が鼻息荒くそんな事を言ってくる。まあ確かにそれなら一日も経たずにレスティアがいつもの日常を取り戻してるのにも納得できる。だっていつもは放課後の短い時間だけしかこれなかったのに今は一日中いるんだ。
 それはそれは違いが出るだろを。だって一番僕が会長の優秀さをしってる。けど言いたいこともある。僕は会長の目を見てこう意思でつたえる。

(お前、自重しろよ)
(今日だけだよ。それに実はいつも通りじゃないし)

 僕達は何もスキルで意思を伝えあってる訳じゃない。長年の付き合いで考えがわかるのだ。日鞠の奴がリアルに戻れなくなったというのは非常に不味い。安全宣言をしてまで、再びリーフィアは出荷を開始されたのだ。再びこんなのが知られたら、VRゲームという芽は完全に摘まれてしまうだろう。

 知られる前に日鞠を連れ戻さないといけない。廃人ですむ範囲だって限界があるしな。だからこそ一週間だ。この期間で必ず日鞠をリアルに戻す!

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品