命改変プログラム

ファーストなサイコロ

921

 イグニスストームの熱気が収まっていく。顔を上げると、デロンの数がかなり減ってた。多分魔法を無効化出来ないデロンが今のイグニスストームでやられたんだろう。

「凄い……」

 誰かがそういった。確かに今の威力は凄かった。顔なんか上げていられなかったし、きっとリアルなら僕達全員死んでておかしくない。僕達にダメージがないのはこちら側の魔法だったからだ。もしもこちらにもダメージが通るような魔法だとヤバかった。
 ほかに何も燃える物とかなかったからよかったんだろう。魔法自体ではダメージを受けなくても、魔法のせいで燃え広がった火とかではダメージを受けるからな。

「でも、今の魔法……イグニスストームって出てた」
「そうだよね?」
「どういうこと?」

 後衛の人達にもどうやら僕と同じような表示がなされたみたいだ。まあそうだよね。僕だけでやったことじゃないし、シンクロ魔法は後衛の人達の魔法だ。それに僕が風を便乗させたに過ぎない。寧ろなんでこっちにまで表示するのか……それって僕が原因って言ってるじゃん。

 僕以外の前衛の人達はなんの事かわかってないみたいだしね。

「とりあえずよくやった! あとはこっちの番だな。行くぞ!」

 アマクサさんが細かい事は後回しにしてくれた。でも確かに今は疑問を挟むよりも体を動かした方がいいのも確かだ。確かに半数のデロンは倒せたが、残りの半数はぴんぴんしてる。そいつら魔法無効化の特性を持ったデロン達。
 なら前衛の僕達の出番だ。まだ触手の数はかなり多いが……それでも半数になったから、単純にさっきまでの半分だ。それに後衛ももうデロンに攻撃を行う必要はないし、ターゲットの管理はしやすい筈。けど、今はさっきのイグニスストームですべてのデロンのターゲットが後衛に向いてるから、まずはそれを前衛の全員で引き受けないといけない。
 僕は再び風を集めてデロン達の間を縫って反対側に出た。勿論交差してる時に斬りつけてる。とりあえず全員斬ってみたが……

「あれ?」

 僕が通った後を辿る様に、その剣線に炎の線が入る。なんぞこれ? まあデロンは物理攻撃でしかダメージを受けないタタイプだから意味なんだが……こんなスキルがあっただろうか? まあそれを言うと風を集めるとか今のフラングランにあるスキルな訳じゃないんだけどね。

 けど風の事はセラ・シルフィングの遺産の様なものだ。セラ・シルフィングのスキルは僕の中に確かにある。けど僕はこれまで風と、ちょっと雷くらいしか使ってない。火なんて、それこそ自分から取得した心当たり無い。

 炎は刀身まで来ることなくその姿を消していく。どうやら今ので上手くターゲットを取れたみたい。そもそもこのデロン達はダメージこそイグニスストームでは食らってないしな。ターゲットの移動は簡単だったのかもしれない。

 僕は狭りくる触手をよけながら、フラングランを確かめる様に振るう。

(やっぱり……)

 フラングランを振るうと、その後に炎が後を追ってくる。

(この空間の風のせい?)

 試しに風を解放してフラングランを振るうと炎は出なかった。どうやらイグニスストームの残滓みたいなのが風に残ってるのかもしれない。

(こいつらに魔法的な攻撃は効かないはずだけど……ダメージが変わってる?)

 炎は意味を為さないが、フラングランが風自体で強化されてるから、ダメージは変わってる。ならこのままの方がいいだろう。僕がデロンのターゲットを引き受ける様に動いて、背後から攻撃しもらう様にした。その方が皆安全だからからね。
 だからって触手は突然牙をむいたりするが、その程度は回復に専念できるようになった後衛陣がいるから問題ない。
 僕は感覚を研ぎ澄ませて触手をかいくぐりデロン達を削り続けた。

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