命改変プログラム

ファーストなサイコロ

920

 後方で光がいくつも瞬く。その瞬間、風や炎やそして電撃や氷が降り注いだりする。HPバーを見てるとデロンのどれが魔法無効を持ってるのかどうかがわかる。魔法無効してるデロンには物理でしか攻撃が通らない。だからそれを判断する為の最初の一撃だ。

 僕達前衛は優先的に魔法が効いてなかったデロンに攻撃をしてく。けど、だからって後衛の守りをおろそかにしていい訳じゃない。最初に攻撃したのが後衛たちだし、デロンのターゲットは後衛に向いてるからね。効かないとわかってても物理無効のデロンにも攻撃してこっちにターゲットを持ってこないといけない。

「キモイ……」

 デロンが体からその触手を伸ばしてくる。一体ならただエロそうな事をしそうだなー程度の感想しか出なかったが、これだけ多いと悍ましいと感じる。しかもこれだけ多いと……ね。視界外から別のデロンの触手が当たったりするのを避けられない。

 僕は視界が広いし、それに異様にいい眼があるからまだいいが……

「ぐああああああ!」
「一体が防衛線の外に出たぞ!」

 僕たちはなるべくデロンを押し込める様に動いてるが、デロンの体からは数本ではなく、十本以上の触手が出てる。それらは本当に縦横無尽に動くし、物理無効のデロンの触手は武器では切れない。だから対応出来なく。てかこっちは十一人で前衛は七人位だ。

 デロンは一体で十本以上の触手をだしてて……それが数える限り十五はいる。つまりは単純に触手の数は百を超えてる。そしてその中にはこっちの武器ではどうしようもないのがいる訳で……それはかなり不利ってことだ。

 デロンの一体がのそのそと後衛たちの方へと行こうとしてる。近くにいる奴らがターゲットを取ってくれたらいいが、ほかの皆も触手の相手で手一杯……というか意識をそっちに向けた時に触手に更に二人が吹っ飛ばされた。こうなると抑え込むなんて事もうだめだ。

 僕は風を掴んで加速する。後ろから迫ってた触手を置き去りに、天井に足を付き、そして天井を蹴った勢いのまま、最初に包囲を破ったデロンの脳天にフラングランを突き刺した。大きく沈んで弾むデロン。刺さってはいるが、HPは減ってない。

「これならどうだ!!」

 僕は体内から直接雷撃を走らせる。デロンの全身がビクビクと震える。

(減って――つっ!?)

 僕は迫ってきた触手を交わして床を滑る。雷撃は通ってた。物理無効のデロンもスキルで宿した炎や雷とかの属性の攻撃は通るようだ。そう思ってると、目の前のデロンが炎の柱に包まれる。デロンのHPがみるみる減っていく。
 こいつは強力な無効化能力がある代わりにHP自体はそんなに高くはない。それでも何発かは魔法を打ち込まないといけないが……でもシンクロ魔法ならそれがぐっと短縮できる。
 まあシンクロ魔法は二人で詠唱する分リスクが二倍だが……威力は段違いに高くなる。確かシンクロ魔法は呪文に付け加える文言があるから少し伸びたりもするらしいが、普通の魔法なら魔力効率もいいらしい。

 僕たちの作戦としては前衛がひきつけてる間に、最初の一撃で見つけた魔法が効くデロン共にシンクロ魔法を放ってそいつらを倒して数を減らす作戦だった。やっぱり魔法の方が瞬間火力が高いから、そっちが効率良い筈だしね。けど予想よりも早く戦線は崩れた。

 この目の前のデロンはこれで倒せるだろうが、これからは後衛の人達にも動きながら魔法を使ってもらわないといけなくなる。シンクロ魔法は難しいかもしれない。僕は目の前の炎の柱に風を送る。すると一段と火力があがった。というか何やら僕の風の色が乗ったような? 

「あれ?」
「ねえなんかおかしくない?」

 そんな声が後ろから聞こえる。僕のその異変に気付いた。だって炎に包まれてるデロンは既に消滅してる。けど魔法の効果が消えない。こういう対象を絞っての魔法は、対象が死ぬか魔法の効果時間が終われば勝手に消える。けど……この炎の柱は消えてない。いやそれよりも……

「勢いが増してる?」

 そして僕達の視界にピロンと何やら軽い感じで文字が表示された。

『イグニスストーム』

 魔法名と表示されたその文字……僕たちはその炎に飛ばされないように地面にへばりつく。イグニスストームは部屋全体に灼熱の風を吹き荒らす。

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