命改変プログラム

ファーストなサイコロ

903

「くっ」

 今の一撃でHPき九割が削られてた。多分フラングランでガードしてなかったら、やられてただろう。とりあえず残ってた回復薬をがぶ飲みする。やっぱり回復役の人を一人くらいは連れてくるんだった。けどそんな後悔は今してもどうにもならない。

 そもそも今は負けてもいいんだ。そうそう負けても……ね。けどやっぱり何もせずにやられるってのは僕の小さなプライド的にも無しだから精一杯抵抗はしよう。大丈夫、多分あれはスカルロードドラゴンよりも弱い。確かに攻撃力はバカ高いが、そんなのは当たらなければいいだけの事だ。

とりあえず冷静に……奴の動きをよく見て学ぶことから初めよう。

「大丈夫か?」
「ああ、けどお前はあんまり近寄るな。一撃で沈むぞ」
「俺だってやるぞ!」

 せっかく忠告してやってるのに……このままじゃ一心は直ぐにやられてしまう。まあある意味その方がやりやすいかな? とも思うが、そんな黒い思いはとりあえず振り払う。

「無謀と勇気は違うだろう。お前がやろうとしてることは、ただの無謀だ。チャンスを待てって事だよ。一心はまだ初めて間もないんだから、僕達よりも劣ってて当然だ。足手まといでも当然だ」
「いうなお前……」

 そうつぶやくが、一心は僕の言葉を聞いている。

「けどLROはレベル制じゃない。どんな奴の一撃でも一撃だ。見極めれば、どんな強敵だって倒せるのが、この世界なんだよ。だから見極めろ」
「……ふん、若者の癖に偉そうに」
「そう接して欲しいんだろ?」
「そうだな。なら美味しいところだけを持って行ってやる!」

 僕は一心を置いて走り出す。左側のフラングランから風を発生させスピードを加速させてブシさんと一緒に戦闘に参加する。二本の偃月刀が素早く迫る。それをブシさんは最小限の動きでかわし、時には受け流してる。あんなでかい武器を受け流すとかよくできる。

 それに体が後ずさったりもしてないってことは完璧に衝撃を流してるって事だろう。どういう技術なのか……やっぱりスキルの線が濃厚? とりあえず僕はスピードで強引に攻撃をかいくぐり一撃を叩き込む。HPを確認すると、結構減ってた。
 どうやらそんな堅くはないようだ。立派な鎧は張りぼて? けど油断は出来ない。なんせ一撃で僕たちは屠られるのだから。僕が攪乱して、乱れた攻撃をブシさんが受け流し奴の態勢を崩す。そこに僕がラッシュをかけるという戦術がはまった。

 ブシさんは確実に受け流してくれるから成立してる。彼は一か所にとどまり受け流すのに専念してる。タゲ的には僕に来てるんだが、二刀の奴は攻撃の連続性が強い。二刀だとどうしても手数が増えるから、いかに連続で攻撃を叩き込むかってなるんだよね。
 だから一連の動きってのがあったりする。こいつにもそれがある。今は横に偃月刀を振って大回転してる。それをうまく誘導すれば、ブシさんへと攻撃も行くからそれを受け流して強制的に態勢を崩せばチャンスとなる。

 そんな事を繰り返してHPを半分くらいまで減らした。すると鎧が砕け、更に二本の腕が生えてきた。背中側に生えたその腕には剣ではなく、杖が握られてた。バリバリとした稲妻が走る。

「ぐっ!?」

 ダメージは少ない。けど体の動きが鈍る。しかも今の稲妻はこの部屋の範囲すべてに及んでた。つまりは回避不可能の攻撃だ。ダメージじゃなく、行動を阻害するのが目的の魔法か。そして狙いすましたかのように偃月刀が迫る。
 なんとか飛びのいて一撃目は交わした……が、二刀流は連続性のある攻撃だ。迫る二撃目。さらにダメ押すように稲妻が走る。こうなったらこっちも稲妻で対抗を――そう思ったが、直前で骨の集合体は吹き飛んだ。

「浅かったか」

 そう呟くのはブシさんだ。距離がある……刀身が届くとは思えない。けど、彼は振りぬいた態勢で止まってた。何か技を使ってくれたんだろう。とりあえず僕はブシさんの所へと向かい合流した。何か策があるのなら、聞きたいし、こちらも打てるべき手段は伝えとかないとね。
 まあ詳しく擦り合わせる時間なんてないけど……

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