命改変プログラム

ファーストなサイコロ

868

 セラが真っ先に聖典を使って攻撃を当てる。けどやっぱり聖典一つ一つの攻撃ではスカルロードドラゴンはビクともしない。けどセラの狙いは別にスカルロードドラゴンを削る事ではない。攻撃を当ててヘイトを貯めてターゲットをこちらに向ける事が目的だ。
 セラは僕達の中では一番手数が多い。八機の聖典を操ってるんだから当たり前だけどね。僕も手数は多いが、消耗も激しい。全力を出せば、聖典を超える手数で攻められるが、そうそう出せる物でもないしね。それに僕が接近しなくちゃいけないのに対して、聖典は中距離から攻められる。

 それなりの安全を確保した上で攻撃出来るのだ。それはとても安心感がある。やはり接近するとそれだけリスクがあるからな。ほんとセラは良い物持ってる。しかも聖典が良い所は攻撃だけに仕えるって訳じゃない所だ。
 例えばああいう風に誰かを運ぶ事だって聖典は出来る。オウラさんは聖典に運ばれ空中から真下のスカルロードドラゴンへと飛んだ。今度はその手に槍をきちんと持ってる。槍を構え、空中で更に加速をつけるオウラさん。

 槍から同時に水が出てた。それが大きな水の槍のようになってスカルロードドラゴンの脳天へとぶち当たる。その衝撃でスカルロードドラゴンの頭が地面に激しく打ち付けられる。その衝撃はすさまじく、街全体が揺れたほどだ。けどそれでもまだHPは半分も減ってない。

 スカルロードドラゴンはすぐさま顔を持ち上げる。奴の周りに黒い渦が出て来て、そこからオウラさんに向かって黒い槍が無数に飛ぶ。オウラさんは流石で、確実に自分に当たる分だけを自身の槍で撃退してる。それを見たスカルロードドラゴンは更に自身の足元から闇を広げる。

 その闇に足を突っ込むと、膝くらいまでが埋まる。それより埋まる事はないが、戦闘中に膝まで埋まると極端に移動速度が制限される。僕とアギトは互いに近くに居たから協力して脱出できたが、オウラさんは今スカルロードドラゴンの前に一人だ。

 オウラさんは鈍った動きを物ともせずに堪えてる。けど確実に削られてる。流石に一人に集中すると回復した途端に削られてる。このままじゃオウラさんは程なく倒れてしまうだろう。けどそんな事はさせない! 

「セラ!」

 その言葉で自分達の所にも聖典がくる。実際聖典でいくより走った方が早いが今は足元がこんな状態だしな。スカルロードドラゴンにはその狙いはなかったかもしれないが、オウラさんとアギトとの連携はこの沼で潰されてしまった。

 僕はそれなりに聖典が近づいたと同時に跳んだ。僕は跳躍力も風を使えば伸ばせるから、より安全圏に聖典をおいておくことが出来る。そしてフラングランを振ってスカルロードドラゴンにダメージを負わせ、地面につく前に、セラのフォローで再び聖典に乗る。これで機動力を保ったまま攻撃できる。それに僕は聖典を足場にするだけで、直ぐに再び攻撃に移る。

 そうやって縦横無尽に動いてもちゃんと着地点に聖典がやってきてくれる。セラのフォローは完璧だった。セラの戦場を俯瞰して先読みする力は常識から外れてるな。けどそのくらいないと、動き回ってる聖典を寸分たがわずに正確に操るなんて事は出来ないんだろう。

 おかげでこっちも攻撃が向いてきた。僅かに甘くなったオウラさんへの攻撃、それをついて彼女の事も聖典が救ってくれる。このままやってれば削り切れるか? アギトが炎の剣で重い一撃を入れる。それはオウラさんがさっき槍で刺した場所と同じ個所。

 ようはスカルロードドラゴンの脳天だ。そこはスカルの兜があったが、今のアギトの一撃で砕けた。剥き出しの頭が姿を現す。そこに僕は見た。スカルロードドラゴンの頭に人の上半身がくっついてるのを。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品