命改変プログラム

ファーストなサイコロ

860

「うおおおおおおおおおお!!」

 アギトが剣を突き出したらしい。らしいというのは僕にはコードしか見えてないからだ。コードは見えてるが、誰が誰なのかわかるわけじゃない。一応形はわかるが、特徴が出てる訳でもないんだ。人は人型に見えるが全員同じ形にしか見えてないし。

 けど、立ち位置とかで誰かはわかる。一番後方にいる三人がシルクちゃん達だろう。そしてこっちにむかって来てるのがテッケンさん達だろう。不思議な事にテッケンさんもオウラさんも身長的には変わらなく見える。
 そもそもが種の特徴が消えてる。コードにそこら辺は関係ないらしい。だからすぐ後ろの三人は誰が誰かはよくわからない。

 三人の内、二人はスカルドラゴンの体の方へと向かってる。確かに向こうも体を持ち上げてる。てか皆ちゃんと見えてるのか? 本当に不思議だ。もしかして、今の僕の状況は対象を決めて光を奪うみたいな? そんな感じなのだろうか? いや、そうは思えなかったが。

 それぞれ皆何かしらの術を持ってたのかもしれない。それだけ皆熟練だし……オウラさんはLROの熟練ではないが、彼女はリアル戦士である。多分気配とかで分かるんだろう。そうだったとしても彼女に関しては違和感ない。

 まあ……そのくらい出来るよねって自然と納得出来る。てか今は他の人に意識を向けてる場合じゃないか。アギトの攻撃でコードが散ってる。それはどうやら闇に吸い込まれずに消えてる。コードを吸う事で大きくなってるあの闇にコードを吸わせないというのはきっと効果的の筈だ。

 アギトは一閃を入れて素早く距離をとった……が、なにやら体がおかしい。一閃と共に走り抜けようとしてたみたいだが、その動きが止まってる。多分あの黒い闇の効果範囲内なんだろう。あんまり近づきすぎて攻撃するのは不味い。

 僕は刀身に風を集める。いや刀身だけじゃない。体全体に風を纏う。風の刃を出そうとも考えたが、実態がない回復魔法とかも吸い込まれるんだ。きっと風の刃も例外じゃない。だからこそアギトだって直接斬りに行ったんだ。

 アギトにはスピードが足りなかった。けど僕なら……きっと一瞬であの闇の効果範囲外に出れる! アギトの奴はもう一人に任せよう。誰かはわからないが、皆優秀だ。僕なんかよりもよっぽど。きっとアギトの事もちゃんと助けてくれる。

「らあ!!」

 僕は風と更に加速して、スカルドラゴンの頭にフラングランを叩き込んだ。それはほんの一瞬で、斬った後には数十メートルの距離が開いてる。これなら流石にあの闇の効果は及ばないらしい。僕は更に同じようにしてスカルドラゴンの頭を刻んでく。

 少しでも闇に食われるスカルドラゴンの頭自身を削る事に腐心してたが、違和感を感じた。それは物理攻撃でスカルドラゴンが崩壊してる事だ。頭の部分だけだが、僕が切った部分はコードが壊れてる。これは多分再生してない。今までそんな事はなかった筈だ。

 コードでしか見えてないから、気づくのが遅れた。その時、二人の悲鳴が聞こえた。

「ぬおおおおおおお!」
「うあああああああ!」

 それはきっとオウラさんとテッケンさんだ。視線を向けると、スカルドラゴンがその手足を使って向かってきてた。その巨体の質量を持って二人を薙ぎ飛ばしたのだろう。不味い……なぜかわからないが、あの体もこの闇に吸い込まれに来てると直感で理解した。

 頭は大体壊したが、あのデカさを壊す程の攻撃となると……

(風帝武装ができれば……)

 けど実際ここでは厳しい。あの闇があらゆる事を邪魔してる。こうなったら一か八かフラングランのもう一方の宝石を頼るしかない。雷の方はまだ回復しきってないだろう。だから風の方でいくしかない。大丈夫、風を操るのはずっと練習してきた。

 地面を揺らしてるんじゃないかと思う程の暴力的な音とその姿に僕は向かう。フラングランの宝石が光り、爆発的な風が生まれる。僕はそれを出来るだけコントロールして丸い竜巻の様にしてスカルドラゴンの体へとぶつけた。

「止まれえええええええ!!」

 そんな叫びと共に。

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