命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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 まっすぐに突っ込んでいく。赤いサラマンダーへ向かって両の剣を振り下ろす。再びいつの間にか宝石の輝きは戻ってた。だから風と雷、両の輝きが赤いサラマンダーへと向かう。完全に捉えた。
 激しい音が響き、風の乱れを感じる。赤いサラマンダーが体をうねらせて落ちていく。


「やった?」


 そう発言して「あっ」と思った。それはフラグじゃないかと。すると案の定、赤いサラマンダーがその目を強く光らせてこちらを見た気がした。バリ−−そう奴の周囲が放電する音が聞こえた。
 そして一瞬でその巨体を見失う。


「え?」


 この目でも見失うとは思ってなかった。どこ行った? そう思ってると何かが近くでぶつかった音と衝撃がした。そして赤いサラマンダーが再び落ちていく。


「え? 何が起こった?」


 ちょっとよくわからない。どうやら赤いサラマンダーが迫ってたようだけど……


(あんたの周りに障壁を貼っておいたのよ。結構危なかったわよ今)
「なるほど、サンキューローレ」


 まさかこいつに助けられるとは……ってこいつには結構助けられてる気はする。前の戦いの時もそうだしな。文句言いながらもちゃんと守ってくれる。すると今度は赤いサラマンダーが海に向かって雷撃を放った。
 流石にローレが厄介だと気付いたのかもしれない。黒い海の一部が光る。魚が浮いてきた。ローレは無事なのか? でもあいつなら大丈夫だろう。けどこのまま攻撃させてるわけにはいかない。
 するとサラマンダーが突っ込む。二体の力がぶつかり合って拮抗する。雷が互いを球体状に包み海をえぐってく。やっばりサラマンダーとは同じ力のようだ。拮抗はしても突破はできないような。
 だからこそ自分たちが大切。


(もう一撃決めてやりなさい)
「おう!!」


 頭に響くローレの言葉に力強く答えて、空を蹴る。


「来い人間、力を更に込めてやる!」
「よし!」


 そのサラマンダーの声に従ってサラマンダーの後方に回る。そして奴をすり抜けるその時にサラマンダーの力が宝石に込められる。するとなんだか右の剣が重くなった気がした。両方を振ろうと思ってたけど、これはなんだかバランスが悪い。
 そんな気がした。だから今度は右側だけを赤いサラマンダーへと振るった。視界を完全に塞ぐような光の奔流。そして遅れてやってくる大きな音が耳までおかしくさせる。


「奴は?」


 当たったとは思う。けどどうなったのかはわからない。すると次の瞬間、何かが体を貫いた。


「づっ!?」


 体力が一気にもってかれた感がある。戻ってきた視界に写った赤かったサラマンダーはその全てを黒い稲妻と化してる。あれが本気状態? そんなことよりもこのままじゃ……そう思ってると淡い光が自分を包む。
 回復魔法……そういえば神官さんいたな。完全に忘れてたよ。でもおかげで助かった。風を集めてなんとか耐える。吠える赤かったサラマンダー。来る……そう思った時、サラマンダーの体に穴が空いた。
 しかもいくつも。全身雷となってるから効いてるのかはわからないが、それはなかなかの衝撃なのか、赤いサラマンダーはよろめいた。


「消えてもらうぞ!!」


 サラマンダーも自身の体を雷へと変えて突っ込む。凄い、見えない。ローレとサラマンダーの攻撃が赤いサラマンダーを滅多打ちにしてく。あいつらなかなか理不尽だ。自分にもまだ何か……そう思うが右側の宝石は見たことないほどに黒ずんでる。
 さっき剣自体が重かったしそれと関係が? わからないけど、使えそうにはない。だからもう一方を……でもあの戦いには自分はまだ混ざれない。
 あの速さは無理だ。どうすれば、そう思って頭に浮かぶはセラの姿。あいつの聖典を真似できないか? そう思って風で剣を浮かせてみる。剣自体なら無理な方向転換とかも耐えられるのではないだろうか? 
 それに僕よりも確実に軽いし、やれないことはきっとない。なんだって今は試してみる時期。僕は自分の可能性を広げる試みをやってみる。

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