命改変プログラム
792
(おかしい……)
流石にそう感じる。雲の中に突入してからそれなりに真っ直ぐ進んだと思う。この雲はとてもデカイ。けど、僕のスピードで真っ直ぐ進んでるだけなら、もう反対側にでてもおかしくないと思う。でもその気配はない。これは……誘われたか? 勢いがなくなっていく。けど再びとぼうとは思わなかった。何故かそれで大丈夫だと思ったんだ。
案の定、雲の中に何故か立てた。ちゃんと足がつく。後ろを振り向くと、既に何も見えない。結構奥まできたのかそれとも……とりあえず声を出して呼びかける。
「ローレ! おーーい! いたら返事しろー!」
気楽な声をだしてみる。緊張感の欠片もないけど、仕方ない。そんな声なんだ。するとどこからか「スオウーー」と呼ぶ声が聴こえる。それは明らかにローレの声だ。でもなんだろう……あいつも気の抜けるような声出してるというか……棒っぽいと言うか? なにかおかしい気がしないでもない。僕がいまここに居ることも含めて……そもそも完璧でもないフラングランの一撃であそこまで精霊が吹き飛ぶとはどうしても今更ながらに思えない。
しかも相手はサラマンダー、雷を司る精霊だぞ。いやフラングランが凄い――それだけでも全然いいんだけど、なにかしこりがあるというか。とりあえず声のする方に進んで見る。もしもだ……もしも何かあるのだとしたら、ローレのやつの方が詳しそうだからな。
「つっ!!」
いきなりそれはきた。青い閃光が肩をかすめる。でも気楽な声は出してても警戒はしてた。だから寸前で避けることが出来た。今のはここに突入する時にかいくぐってきた攻撃と同じ……中でも撃てるんだな。実際ここは何なのだろうか? 精霊の中だと考えるのが普通だけど……体内と考えるのはちょっと違う気がする。雲だったしな。
そもそもだ。そもそもあの雲事態が本当に精霊そのものだったのか……あれは実は皮だったとか? そんな事を考えつつ、僕は攻撃を避ける。だけど次第に逃げ場がなくなってくな。移動はどこまででも出来るっぽいから行き止まって追い詰められることはない。けど、この攻撃さっきと明らかに違う事がある。それは追いかけてきてるんじゃないかってことだ。
僕が避けた攻撃は雲に消える。でも次のをかわしてると突如、雲の中から別の攻撃が飛び出す。最初は位置を変えて撃ってるんだろうと思った。でもおかしいんだ。増え続けてる。これはつまり、避けたのも雲の中を回って再び僕という存在を追尾してるんじゃないか? ってことだ。そしてそれはもう避けきれる数ではなくなってた。
四方八方縦横無尽とはこの事。どこにも逃げ場がない。迎え撃つしか無い。僕はフラングランを構えて襲い来る光の閃光を斬りつける。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
一体いつまで続くんだってくらいの時間が経った。いやそれは体感時間で実際は数分も立ってないのかもしれない。けど、僕にはとてつもなく長く感じる時間だった。全ての攻撃をしのいだ時、腕はもう上がらなかった。目も霞んでる。HPは赤かった。もう途中から気にしてなかったからまだあるだけ運がいい。そんな自分の前に大きな獣が居た。
あまりにも自然に居たから一瞬わからなかった。それは大きな鹿みたいな見た目してた。でも鹿よりも全然雄々しくて神秘的。身体は黒く二本の角は宝石の様に青い。怒ってる? と聞いてたけど、そんな雰囲気は感じないような?
(人よ、まだやれ)
前足でその場を蹴ると僕の身体は大きく上に跳ねた。そして僕の視界には月が見えた。空……雲を晴らしたようだ。てか怒ってないとか、僕の気のせいだったみたい。だっていきなりこれだよ。鞭打ってくるじゃねーか。下を見るとサラマンダーがその黒い身体から青い電流を見せ、なにかデカイのを撃ってこようとしてるのがわかる。
どうする? もう限界来てる。フラングランだって……
(あれ?)
さっき撃ったはずだが、宝石は輝きを取り戻してる。でもわかる。今までの感じでぶつけても多分駄目だと。なにせあいつは雷系の最上位。同じ系統の攻撃なら存在が上位のアイツの抵抗力の方が上だろう。あれは雲じゃないしな。ただ撃つだけじゃ……
「フラン……グラン」
僕はそう呟いて気づく。フラングランは二対の双剣。別々に考える事自体が間違い。フラングランは二つで一つ。雷も風も、一つ。二つの宝石が答える様に煌めいた気がした。それだけで心強い。サラマンダーがその姿全てを雷へと変えて動き出す。迷ってる暇なんかなく、理解する事も出来ない。だから心のままに、僕はこの手の剣を信じて振るうしかできなかった。
全ては一瞬、刹那に瞬く。きっと誰の目にもうつらない攻防の果てに僕は沈んだ。
流石にそう感じる。雲の中に突入してからそれなりに真っ直ぐ進んだと思う。この雲はとてもデカイ。けど、僕のスピードで真っ直ぐ進んでるだけなら、もう反対側にでてもおかしくないと思う。でもその気配はない。これは……誘われたか? 勢いがなくなっていく。けど再びとぼうとは思わなかった。何故かそれで大丈夫だと思ったんだ。
案の定、雲の中に何故か立てた。ちゃんと足がつく。後ろを振り向くと、既に何も見えない。結構奥まできたのかそれとも……とりあえず声を出して呼びかける。
「ローレ! おーーい! いたら返事しろー!」
気楽な声をだしてみる。緊張感の欠片もないけど、仕方ない。そんな声なんだ。するとどこからか「スオウーー」と呼ぶ声が聴こえる。それは明らかにローレの声だ。でもなんだろう……あいつも気の抜けるような声出してるというか……棒っぽいと言うか? なにかおかしい気がしないでもない。僕がいまここに居ることも含めて……そもそも完璧でもないフラングランの一撃であそこまで精霊が吹き飛ぶとはどうしても今更ながらに思えない。
しかも相手はサラマンダー、雷を司る精霊だぞ。いやフラングランが凄い――それだけでも全然いいんだけど、なにかしこりがあるというか。とりあえず声のする方に進んで見る。もしもだ……もしも何かあるのだとしたら、ローレのやつの方が詳しそうだからな。
「つっ!!」
いきなりそれはきた。青い閃光が肩をかすめる。でも気楽な声は出してても警戒はしてた。だから寸前で避けることが出来た。今のはここに突入する時にかいくぐってきた攻撃と同じ……中でも撃てるんだな。実際ここは何なのだろうか? 精霊の中だと考えるのが普通だけど……体内と考えるのはちょっと違う気がする。雲だったしな。
そもそもだ。そもそもあの雲事態が本当に精霊そのものだったのか……あれは実は皮だったとか? そんな事を考えつつ、僕は攻撃を避ける。だけど次第に逃げ場がなくなってくな。移動はどこまででも出来るっぽいから行き止まって追い詰められることはない。けど、この攻撃さっきと明らかに違う事がある。それは追いかけてきてるんじゃないかってことだ。
僕が避けた攻撃は雲に消える。でも次のをかわしてると突如、雲の中から別の攻撃が飛び出す。最初は位置を変えて撃ってるんだろうと思った。でもおかしいんだ。増え続けてる。これはつまり、避けたのも雲の中を回って再び僕という存在を追尾してるんじゃないか? ってことだ。そしてそれはもう避けきれる数ではなくなってた。
四方八方縦横無尽とはこの事。どこにも逃げ場がない。迎え撃つしか無い。僕はフラングランを構えて襲い来る光の閃光を斬りつける。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
一体いつまで続くんだってくらいの時間が経った。いやそれは体感時間で実際は数分も立ってないのかもしれない。けど、僕にはとてつもなく長く感じる時間だった。全ての攻撃をしのいだ時、腕はもう上がらなかった。目も霞んでる。HPは赤かった。もう途中から気にしてなかったからまだあるだけ運がいい。そんな自分の前に大きな獣が居た。
あまりにも自然に居たから一瞬わからなかった。それは大きな鹿みたいな見た目してた。でも鹿よりも全然雄々しくて神秘的。身体は黒く二本の角は宝石の様に青い。怒ってる? と聞いてたけど、そんな雰囲気は感じないような?
(人よ、まだやれ)
前足でその場を蹴ると僕の身体は大きく上に跳ねた。そして僕の視界には月が見えた。空……雲を晴らしたようだ。てか怒ってないとか、僕の気のせいだったみたい。だっていきなりこれだよ。鞭打ってくるじゃねーか。下を見るとサラマンダーがその黒い身体から青い電流を見せ、なにかデカイのを撃ってこようとしてるのがわかる。
どうする? もう限界来てる。フラングランだって……
(あれ?)
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