命改変プログラム

ファーストなサイコロ

791

 風を足に集めて幹しか残ってない木を飛び回る。もっと上手くすれば空中だって走れるんだが、まだまだそこまで風を制御できない。いや頑張ればいけるか? フラングランは片方は風、もう片方が雷の属性を持ってる。自分だけでは集めれない風もフラングランをつかえば……でもまだフラングランの風を制御するのは難しい。だからこの空を自由自在にとはいかない。
 けど――
 

「どりゃあああああああ!!」


 ――風の刃を飛ばす。遠くても届かせる攻撃は出来る。でもダメだ。全くと言って効いてる気がしない。そもそも意に返してないし。あの雲はめっちゃデカイ。僕が飛ばす風の刃は当たってると言うか雲だけに突き抜けてってる? 入ってく所は見える。けど、デカすぎて出てくところはみえない。まあどちらにしてもこの攻撃は意味ないってことだ。
 てかあれが雲に準じる存在なのだとしたら、物理攻撃は全てが効かないことになるような? やばい、相性最悪かもしれない。そう思ってると雲の周りに青い光がびちばちと弾けだした。そしてそれが一瞬で木々を吹き飛ばしてく。


「出鱈目過ぎる……」


 狙ってるのかそれとも闇雲に打ってるのか知らないが、その量が半端ない。一発でデカイ木を四・五本焼き払う癖に、途切れる事がない。ここら一帯の森がなくなる勢いだ。しかもだからこそ止まってると余波だけで死にかける。けど動いたら当たるかも……まあだけど動かない訳には行かないんだけど。まだ神官さんも運良く当たって無いようだけど、それも時間の問題だろう。
 止める必要がある。こっちも避けるだけでボロボロだ。下手な攻撃で全ての雷撃を向けられたらきっと肉片一つ残らないだろう。自分の最大攻撃で行くしかない。フラングランの宝石を見る。大丈夫、行ける。雷の精霊に雷が効くのかは正直わからない。効かない可能性の方が高そう……けど、それは考えない。やるしかないんだ。余計なことに思考を使うことはない。どのみち、今の僕の最大攻撃はこれしかないんだから。
 賭けるしかない……それだけ。


 僕はまっすぐに巨大な雲の塊を見据える。そして燃えて崩れかけの木を伝って接近する。でも木の上からでもまだ遠い。どうせなら近距離でかましたい。そのほうが効果がありそうじゃないか。だから木を蹴って空にでる。その衝撃で今の木は崩れ去った。どのみちアレに戻れるかはわからないから気にはしない。ただ見据えるのは前だけ。
 けど一足では流石に届かない。荒々しくても今は構わない。僕はもう一方のフラングランから風を出す。それを利用して、更にもう一段階飛んだ。上手く制御できてないからか勢いが凄い。弾丸になったかの様に飛んでる。ただ真っ直ぐに進む僕の側を精霊の攻撃が通ってく。元々くそ早い攻撃だったけど、こっちも高速で移動してるからか今はその軌跡を捉える事が出来た。
 まるで無数の流星群が流れていってるかのような光景に一瞬呆けてしまう。けどその一瞬で雲は直ぐ側まで来てた。右手に力を込める。頼む、効いてくれ!!


「うおおおおおおおおおおおおおお!!」


 思いを乗せて剣を上から下に振り抜いた。その瞬間、夜を奪ったのかと思うほどの閃光が視界を覆い尽くした。そして遅れて鳴り響く爆音。空気が震えている。真正面から完全に直撃させた。視界が戻ると雲の半分くらいが消え去ってた。目もない。


(やった?)


 けど全部が消えたわけじゃない。それに気配はする。脅威を示す様に肌はピリピリとしてた。体が落下しだす。けど僕はハッとして半分に減った雲を目指して再び風をける。少しでも制御できる様に頑張ってさっきほどの勢いは出ないようにする。


「ローレ!!」


 取り込まれたヤツの名を叫ぶ。てかよくよく考えたらローレの事考えてなかった。まさかこんな半分も吹き飛ぶと思わなかったんだ。やっぱり雷という特性は攻撃特化してるな。


「このままじゃ残った雲に突っ込むな……」


 そう呟くも見える範囲には居ないし、そもそも急に止まれないし、方向転換もまだ出来ない。突っ込むしか選択肢はなかった。


「こうなりゃヤケだ!!」


 絶対に連れ戻してやる――その意気で僕は雲の中に突っ込んだ。

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