命改変プログラム

ファーストなサイコロ

新たな力

 軽い振動と埃っぽい空間。暗くねっとりとした湿気が立ち込めて所々で甲高い音が等間隔で聞こえる。


「いつ来てもここは居心地悪いな」


 そんな事を呟いて口を手で押さえる。この振動も微妙に気持ち悪くなりそうだし、さっさと目的を果たして退散しよう。ちなみにここは別にダンジョンではない。もの凄くそれッボイけどここはスレイプルの本拠地の移動要塞だ。移動してるから常に揺れてるわけだ。
 で、なんでこんなところに居るのかというと、それは受け取りたいものがあるからだ。流石にそろそろ今の武器じゃ辛くなってきたからな。今使ってるのはなんの変哲も無いただの剣だからな。でも今日でこいつともお別れだ。加冶屋の奴が僕専用の武器を作ってくれたのだ。
 てな訳でこんな埃っぽく暗いところに来てるんだ。


「えーと、どこに行けばいいんだっけ?」


 実際ここにはあんまり来たこと無いからよくわかんないんだよね。取り敢えず階段を上って上に上にと行ってみるか。ここの構造的に上にお偉いさんがいそうだしな。下層は駆け出し職人の場で中層がそこそこな人達。上層になるとブランド物って感じになってるからな。
 僕みたいな奴は上の方で買ったことなんかないから縁なんてないって思ってたんだけど、まさかそのさらに上にお呼ばれしちゃうとはなー。まあ別に僕が偉くなったわけでもなんでもないんだけどね。つまりはほら加冶屋が偉くなったのである。あいつスレイプルの代表になったからな
 でもそれはリセットする前の世界での話だから今の世界では関係ないと思ってた。実際今アイリはアルテミナスの代表じゃないしな。それは前に代表してた全員に共通してることなんだと勝手に思ってたわけだけど……どうやら違ったようだ。けど完全にリセットされたのならアイリのようになるのが正解のはずだよな?
 ハッキリ言ってどこまでリセットされたのか僕達はまだそれさえわかってない。けどまあ加冶屋の奴が代表のおかげでこうして良い装備を貰えるんだから良かったけどね。


 てな事を考えてると大きな門が目の前に現れた。いや前から知ってたけどこの向こうには行ったことないんだよね。もの凄く古そうで、凝った装飾がしてあるとてつもなくでかい扉。数十メートルはありそうなほどだ。でもこれだけ厳重そうな扉の前には警備は誰もいない。
 ここから向こうはハッキリと重要ですよって言ってるようなものなのにね。それだけこの扉の防御性は凄いってことなんだろう。きっと物理的な仕掛けだけじゃなく魔法的な仕掛けもしてあるんだろうな。


「うーん、でもこれってどうすれば?」


 押し開ける……なんてできるわけないよね? もしかして某漫画で出てきた扉みたいに力に応じた小さい扉が開く仕組みとか? そんなことを思ってちょっとやってみたけどそんな気配はなかった。


「ハアハア……」


 結構力いっぱいやったせいで疲れた。でも誰もいなくてよかった。流石に見られたらちょっと恥ずかしいし。


「プッなぁーにやってるんですかそこの人? ちょーウケるんですけど,クスクス」
「だっ誰だ!?」


 どこからともなく聞こえてくる声。見られてた。超はずかしい。あれ? でも周りには誰もいないけど……どこにいるんだ?


「あはははーキョロキョロしちゃって何やってんのー? もしかして探してる? 探してる〜?」


 滅茶苦茶からかうように言ってくる誰か。ようし見つけたら取り敢えず一発殴ろう。声的に女だろうけど今の僕にはそんなの関係ない。


「ホラホーラそのミジンコみたいな脳みそ使って見つけてみなさいよー。それだけの知能があればだけどねー。プープップー」


 こうなったら絶対に見つけて泣かしてやろう。そう僕は決意を固くした。どこだ? どこだ? この目から隠れ通せると思うなよ。でもスキルとかで隠れてるとしたら見えないかも。でも人な感じはしないような。


「プープーやっぱりサルねサル! プップププー」


 ブチっと何かがちぎれる音がした。僕は扉の前で静かに剣を抜き,スキルを発動させた。赤い光が刀身に宿る。


「えっ? ちょ?」


 僕は無言でその剣を振り下ろした。スキルの影響で爆発を起こす斬撃。慌てる声が聞こえてくる。


「ちょっちょっ行きなり何してくれるのよ!!」


 慌ててるな。どこにいるか知らんけど,取り合えず攻撃を続けよう。僕は気持ち良く連撃を繰り出して行く。


「やめなさいよ。やめてって言ってるでしょー! やめてよー! やめってって……言ってるのにー」


 なんか声に泣き声が混じってきたような? いい気味である。よし、もっともっとしてやろう。


「アァ……アン……このままじゃ……このままじゃ私……やっちゃうからね! 忠告はしたから!!」
「へ?」


 声質が変わった? そう思った瞬間、機械的な声が嫌なことを言ってくる。


『敵対的攻撃を感知しました。これより自動迎撃モードに移行します』


 扉に穴が開いたと思ったらそこに収束する。「敵対対象捕捉,殲滅します」そんな無機質の声とともに赤い閃光が迸った。


「ぬがああああああああ?!」


 とっさに受け止めたけど、剣は逝ってしまった。ただの一撃でこれだ。剣がなかったらきっと僕が跡形もなく消えてただろう。敵対プレイヤーとしてなんか街中でもHP減るようにいつの間にかなってるし、どうすんだこれ? 取り合えず鍛冶屋の奴にメールして助けに−−ってそんな暇がない。
 縦横無尽に繰り出される赤い光線は一撃死必須。それが絶え間なく打たれ続けてる。しかもそこまで広くもない空間で……だ。よく避けれてるよ僕。止まったらやられるのは確実。でもこのまま最高速で移動なんていつまでもできるものじゃない。一体どうしたら?
 壊す? でも武器もうない……詰んでるなこれ。そもそもさっき僕がやってた攻撃なんて一切聞いてないし……扉を見ても傷一つない。


「ん?」


 扉にはすでに大穴がいくつか空いてる。でもさらに無数の小さな穴が開いた。そしてそこから大量のミサイルが発射された。おいおいこんなのどうやって……弾幕が厚すぎて避ける隙間さえ……


「−−ッ!!」


 神経を研ぎ澄ませて攻撃を見据える。ゆっくりと見える全ての攻撃。だけど見えるからこそわかることもある。これはそう逃げ場なんてない……確実に。それがわかっちゃうよ。見えてるんだしあのミサイル群は軌道さえ変えられればなんとかなりそうな気もするんだけど、既に武器は消失してしまった。
 まあ実際ここでやられた所でリスクがあるわけでもないんだけど、やっぱりまだ死ぬことには抵抗あるんだよね。心臓がきゅっと鳴るというか。それに一矢も報いずにやられるってのも癪だしな。死ぬにしてもやれることをやってからだ。いつだってやり直しができるなんて事はきっとないんだから諦める癖はつけちゃいけない。


(試してみるか−−)


 僕は手の平に風を集める。イクシードを思い出して、手の平にあのうねりを思い浮かべる。あれのように伸ばすこともできないし、威力だって全然だろうけど、なんとか形にはなってる気はする。そしてうねりを纏った拳を迫るミサイルの一つへと向ける。風で防御された拳がミサイルに触れた瞬間、僅かに力をかけて軌道を変える。


「出来た−−なら」


 僕は迫ってくるミサイルにふれて軌道を変えていく。これはなんとかなるけど問題はあのビームだ。さすがにビームには触れられないだろうしな。それに根本を解決できないし……あの扉どうやったら止まるんだよ。ここから離れればどうにかなるのかもしれないけど……でも来た方向を見ると何か青い膜のようなものが見えるんだよね。
 これはエリア制限されてる感じか? 逃げ場なんてない。どうする……どうする。風もいつまでも維持できそうもないけど、だからってここを切り開けるだけの力も……


「使えスオウ!!」


 聞こえた声と共に何かが飛んできた。ミサイルの爆発やレーザーの光。それらが舞う中を回りながら飛んでくるそれはこっちに……こっちに来てなくない!? 


(惹かれる感じがする)


 そう感じた時には僕の足はその何かの方向へ向かってた。邪魔なミサイルを風を纏った拳で流し、時にはそれを足場に場を渡る。そしてその何かを僕はつかんだ。だけどその瞬間視界には四面楚歌の攻撃の山。


(……ぇ……使え!!)


 そんな衝撃と共に振り抜いた瞬間、間近でミサイルが爆風へと変わった。吹き飛ばされて地面を転がる。けど止まるまで悠長に転がってる暇はない。なんとか体勢を立て直して前を見据える。大きな光が三つ、あれを喰らう訳には……でも勢いは後方に向かってる。瞬発がどうしても詰まる。
 それじゃあ間に合わない。でもあれを受けてこの両腕の重みは耐えられるのか? 一瞬で消し去った前の武器を思い出す。でもそんな迷いを察したかのような鼓動が伝わって来る。


「うううううらあああああああああああ!!」


 迫った光を横一閃に切り裂く。斬り裂けた。勢いもだいぶ和らいだ。やれ……そう……だ! 後方だった勢いを前に向ける。拳の風はもういらない。その風を今度は足に。一気に跳躍して攻撃の狙いをそらす。どこを攻撃すればこの攻撃が止まるのかはわからない。でも狙うとしたら攻撃が出てるところを狙うのがいいだろう。
 てな訳であの扉の穴。その場所を壊せば攻撃自体は止まるはず。狙うとしたらそこしかない。切れ味も耐久性もきっと持つ。視線に捉えたミサイルを軽く凪ぐだけで切り裂ける。脅威で恐ろしかった攻撃が今はそれほどでもない。寧ろちょっとワクワクしてるかも。


「ちょっ、まさかこれ以上やる気? 止まりなさいよ!! 武器を得たからって壊せるわけないでしょ!?」
「そんなのやってみないとわかんないだろ!!」


 攻撃をかいくぐり近づいた扉に向かって剣をふりおろす。今までの切れ味ならさくっと行けそうだと思ってたけど、甲高い音ともに弾かれた。どうやら防御障壁があるようだ。しかもかなり硬いやつ。それはそうか,この扉の向こうはお偉いさん方がいるんだし守りだって固めてて当然。


『攻撃の有効性が確認できません。出力をさらに上げます』


 そんな音声と共に扉に空いてた穴が無くなった。すると今度は一つだけの巨大な穴が口を開けた。ミサイルが無意味とわかったから出力を上げた一撃で来るきだろう。とりあえず一度距離をとろう。後方に飛んで様子を伺う。


「ちょちょ、逃げたほうがいいわよ。あんた跡形もなくなるから!」
「忠告なんて優しいな。どういう魂胆だ?」
「魂胆なんてないわよ。実際に死んでもらっても困るだけ。だからさっさと逃げなさいよ。こっちの攻撃受けるよりも逃げ道の障壁を壊すほうが簡単だから!!」


 なるほど、それは考えてなかった。確かにこの剣ならその選択肢があるのかもしれない。けど……不思議なんだ。鼓動が伝わる気がする。それは自分のじゃなく,握った剣から伝わってるような。その鼓動は言ってる。−−『やれる』−−と。


 白を基調とした細身の剣は一見どこにでもある普通の剣でしかない。セラ・シルフィングとかは特別な感じがその姿から溢れ出てたんだけど,あれを望むのは贅沢というもの。けどなんかしっくりとはきてる。でも左右でちょっと長さが違うのは少し戸惑う。微妙に左が短い。何の意味があるのかは知らない……あとはそれぞれに違う色の宝石がついてる。黄色と緑。何の役割があるのかは知らない。
 名前もまだ見てない。けど自己紹介はこの攻撃を凌ぐことで済ませよう。大きな穴の中では何かが回転しててどんどんと光が集まって行ってる。狂気のような光。これじゃあ目は意味ないかもしれない。僕は目を閉じて相対するよ。


「死ぬ覚悟はできてるような? 逃げる気はさらさらないっぼいわね。もうどうしようもない、どうしようもないからね!!」


 そんな声が聞こえるけど,返答することはない。もうそんな空気じゃないんだよ。物理的にピリピリする周囲。


(来る)


 空気が弾ける感じが体全体に伝わる。目を瞑ってても全てが明るい。でも引かない、引けない。両の双剣を信じて僕は前に出る。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 左手の剣を振った瞬間、鋭い切れ味で光のエネルギーを切り裂いた。驚くことにそこに負担は一切なかった。持ってるだけなら適度な重さを感じるのに扱うときにはその重さはどっかに行ってる。振った剣に持って行かれる体。それを無理やり戻そうとは思わない。むしろその勢いをさらに増して今度はもう一方の剣を振るう。
 一瞬だけ切った最初の一撃から続けざまに畳み掛ける一撃を放つ。黄色い宝石が輝いて雷のような轟音が耳をつんざいたと同時に辺りには煙が充満してた。そして静かになった空間。煙が薄くなっていくとこの剣の威力がその姿を現した。


「お……ぉぉ」


 そんな声が思わず漏れる光景。大きな扉には障壁を破ってその斬撃を刻んでた。


「なななこんなことってありえない!! き、機能停止? そんな!?」


 慌てるというかあたふたしてる声が響いてる。そしてもう一つ,この空間に響く足音が近づいてくる。


「どうだ? 新しい剣の使い心地は?」
「鍛冶屋……やっぱこれお前か」


 まあなんとなくわかってたけど。タンクトップに足元にかけて広がる鳶職人みたいなズボン履いてこいつがスレイプルの代表なんてきっと誰も信じないだろうな。


「ま、マスターなぜここに?」
「そいつは敵じゃない。そろそろ姿見せてやれよ」


 そんな鍛冶屋の言葉に周囲の壁が淡く光り始めた。そしてその光が集まっていき妖精みたいなのになった。とんがった耳,緑色の髪、白い肌に描かれた複雑な模様がスレイプルに関係あるんだなってのがわかる。服装はサラシ巻いてお尻寄せ付けるような引きに履いて、妖精って感じはまあある。


「おお、なんだこれ?」
「なんだとは失礼極まりないやつね。私はこの種の守護精霊よ。崇め奉りなさい!」


 何言ってんだこいつ……と思ったけど口には出さない。けどどうやら心の中が鍛冶屋には見えたらしい。


「はは、そういう顔するなよ。本当だぞ。こいつは我等にとってとても重要な存在だ」
「ふーんそうなんだ」
「すごくどうでせ良さそうだな……」


 否定はしない。実際この妖精みたいなのがなんだっていいし。けど散々バカにされたし少し仕返ししてもいいよね?


「ちょっ、なにすんのよ?」


 剣を向ける僕に妖精が抗議の声を向ける。僕は不敵に笑って言ってやるよ。


「え? ちょっとプスっとしようかと」
「なにがちょっとプスっとよ!! 痛いじゃないそれ!」


 痛いで済むんだ……とか思う僕。それならやってもいいよね? その権利が僕にはある。殺されそうになったんですけど。


「キレ味試さないと?」
「十分試したでしょ! どうすんのよこれ!!」
「勝手に治るんじゃないの?」
「治るかぁぁぁ!! 私がコツコツメンテしてんのよ!!」


 ゲームなのにけったいな仕様だな。一瞬で治っていいのに。でも妖精がコツコツ直してると思うとちょっと微笑ましいかもしれない。こいつと思わなければ。まあせっせと直せよ。それが罰でもいいのかも、僕は寛大だからね。


「んじゃ、あとはこいつに任せていこうぜ鍛冶屋」
「行くも何ももう用は済んだだろ? さっさと帰れ」
「よう……」


 確かに用はもう済んでるじゃん!! これ取りに来たんだった。手の中にある二つの剣。それぞれ形が僅かに違う双剣。そういえば−−


「この剣……」
「気に入ったか? 双剣『フラングラン』風と雷の双剣だ」
「フラングラン……」


 呟くと何だかしっくりくる気がする。淡い光を受けて静かに輝く刀身は自分好みだよ。


「だがまだそれは未完成だ」
「……おい刀匠、未完製品押し付けんなよ。それでも職人かお前?」


 プライドはないのかプライドは。てか誰よりもそういうのにこだわってなかったのかこいつ。あれか地位が手に入って心変わりしたのか? 人は変わっちゃうものだね。


「おい何だか失礼なこと思ってるようだが、俺は何も変わってない。それは刀匠としての仕事は終わってるんだよ」
「なら未完成ってどういうことだ? ちゃんと説明しろ」
「二つ宝石がついてるだろ? それ、二つとも輝いてるか?」
「輝いてる……と思うけど、どうだろう? 輝きが違う?」


 どっちも普通に見る分には綺麗なのは間違いない。でも何か……緑色の宝石は奥でキラキラしてるのが見えるけど黄色い方は見えないような? いや,ちょっとわかんない。


「お前は風の祝福は受けてるだろ? でも雷は違う。だからまだその剣は完成してない」
「風の祝福ってのはエアリーロの事だろ? て事は雷の精霊からもその祝福ってやつを受けろって事か?」
「そういう事になるな」
「どこにいるんだ? その精霊ってやつは?」


 居場所なんて知らないぞ。それに実際祝福って言っても具体的にそれが何わかんなくないか? 何か契約をするとか? でも僕は別にエアリーロと契約してるわけじゃない。祝福って言葉自体曖昧すぎじゃないかな?


「俺は仕事はした。後は使用者次第。てなわけで知らん」
「おいおい無責任すぎだろ? いいのかそれで」
「いいも何もそういうものだ。どう使われるか……そこまでは干渉できないからな」
「いや、百パーの武器にして渡すのが職人の仕事だろ?」


 そこ放棄するんじゃねーよ。何カッコつけたこと言って丸投げてんだよ。騙されないぞこっちは。


「俺自身は百パーの仕事はしてる。俺自身が祝福を受けても仕方ないんだからしょうがないだろうが。それに祝福受けなくても使えたろ?」
「確かに」


 あの光線を切り裂き扉に傷を穿つほどには強力だった。あれ? それなら祝福必要なくない? でも祝福受ければえげつない威力になるってことなのかな? かな?


 「そうそう今の威力は出ないぞ。それによく見てみろ。宝石がくすんでるだろ?」
 

  そう言われて見てみると確かに色がくすんでる気がする。これってまた色が戻るまで使用出来ないとかそういうこと?
  
 「そういう事だ。だから強力な一撃を打つのなら,今の状態だと必ずその一撃で仕留める気で打たないといけない」
 「なるほどね。じゃあ祝福を受ければ無制限に今のが……」
 

  少し興奮しちゃうぜ。心の奥から沸き上がる自分の危険な感情を感じてると、鍛冶屋が釘を打ってくる。
  
 「ふっ、まあそこは祝福を受ければわかることだ」
 「勿体つけるな。それだけ自信あるってことだよな? でもなんで風だけじゃなく雷なんだ? 僕は風を主体にしてるってお前知ってるじゃん」
 

  そこが疑問だよね。なぜにわざわざ違う属性をもたせたがるのか。なんか意味があるのか? 
  
 「確かにそうだな。お前は風ってイメージだ。けどお前が風を選んだわけじゃないだろ? ならなんだってなれる」
 「何そのかっこいい台詞、僕はなんだってなれるのか?」
 

  なんか素晴らしい響きだな! 何にだってなれる気がしてきた。
  
 「で、その精霊はどこにいるんだ? 雷のやつ!」
 「知らんな。だが精霊に詳しい奴に心当たりならあるだろ?」
 「精霊に詳しい奴……あぁ」
  
  なんかちょっとテンション下がった。精霊に詳しい奴ね。確かに心当たりある。あるからそいつを思い出してテンションがね……てかまだやってるのか? 精霊というか召喚獣というか、そんなのならあいつが一番詳しいだろう。
  
 「まだやってるのかわかんないけど、とりあえず探してみるしかないか……」
 

  力がないと何かあった時に後悔しかできないからな。言い訳はどうしようもない事象だけ、後悔は過去に対してだけしたいのならやれることはやっておくべき。
  
 「はっ、いくら強化したって今度は傷一つつかない強度にしとくんだから!!」
 「それなら今度は完全にその壁を破壊してこっちから鍛冶屋の所に行ってやるよ」
 

  そう言って僕たちはニヤリと微笑む。何か通じ合った気がした。とりあえず目的は果たした。そして新たな目的もできたし,この剣に慣れる為にも使っていかないとな。そう思いつつ僕はこの場を後にした。

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