命改変プログラム
太陽の掌握
「門は開いてないみたいだね」
「やっぱりデザイアの奴を壇上から蹴り落としておくべきだったかもしれないです。自分のミスです」
自分はそう言って頭を下げる。やっぱりあの壇上とその他を隔てる力はデザイアの特別な物だったのかもしれない。そのせいで皆はまだデザイアに手を出せてないとか……奴を蹴り落とす位数秒で出来たはず……ミスったよ。
「まあそれは行ってから考えましょう。さあ綴君」
そう言って差し出される手。昨日もあったけど、その度にやっぱりドキドキしてしまう物だ。会長だからね。コレがルミルミさんとかなら別にそうでもないんだろうけど、会長はやっぱり憧れが強いから……出した手が宙を彷徨ってると、会長に掴まれた。
「てぃや! さあ行くよ」
なんでもない様にこの人は……自分がどれだけ眩しいか気付いてないのだろうか? まあだけど、そんな強引さもまた会長だ。会長は紙を出してそこに自分のペンで何かをしたためる。そして門にその紙と共に手を置くと一瞬で城の敷地内に入った。
「へぇ〜なかなかいい感じだね」
「よくそんなこと言えますね。敵地ですよここ」
「まあそうだけど、なんだってホント思い通りにできるんだな〜って思うじゃん。どうやって造ったんだろ?」
「確かに……」
会長がそんな事を気にするから、少しは興味が湧いてきたじゃないか。簡素な建物は出現させるだけで良かったりするけど、個性を出すとなると職人の協力が必要だからね。エリア発展の為に職人のNPCは用意されてたりするけど、今はエリアバトルも活性化してるせいで、その需要は多い。
各国の職人は軒並み貸出状態……これだけの物を作るとなると、数百人規模でその人達を雇ったとしか……でもそうなると費用も半端ない事に……まあリアルとは違って何年も工事に掛かるとかないけど、普通よりは掛かるのは確か。
期間は長ければ長いほどに費用が割増に成るのはこちらも同じ。お金を貯める……それって実はスキル上げよりも結構難しい。確かにモンスターを倒せばある程度のお金は手に入る。でも今はまだそこまで高額のモンスターを狩れる人達は多分一部だろう。
高級素材を狙うにしても、そうポンポンととれないから高級なんだし……金策とはホント大変だ。自分の身包みを背伸びしなければそこまで気にすることもないけど、これだけの物を作るとなると普段通りにやってるだけじゃきっと駄目だろう。一体どうやって……
「そういえば家の会計事情はどうなってるんですか? 今まで気にしたことなかったですけど」
生徒会の得た金品はほぼ全て会長の元で管理される様に成ってるけど、他のチームの事はよくわからない。それに散々エリアバトルやってきたけど、それほどアイテムに困った記憶はない。消耗品である回復薬とかそれなりの出費だろうにね。それほど安いって訳でもない。高需要だからねアレは。
しかもエリアバトルが活性化してる今は特に。やっぱり他のチームの財成とかも管理してるのかな? でもそれって結構な反発がありそうな。自分達は会長を信じれるからいいけど、吸収した人達は直ぐにそうとは行かないしね。
まあ無理矢理にでも従わせる事は出来る。けど会長がそんなことをするとは思えない。圧政は亀裂を生むしね。まあしなくても亀裂は出来てたから世話ないけど……やっぱり甘いのだろうか?
「まああんまり余裕はないよね。人がいる割に、これといった稼ぎがあるわけじゃないし。まあ私は色々と請け負ってるけどね」
「何をですか?」
「クエストの依頼って何もモンスター絡みばっかりじゃないんだよ。私のスキルを役立てる物もあったりするんだから」
「へぇ〜そうなんですか」
初耳だな。いや、自分も時折そういうのチェックしに行くよ。普通に街の人達から成り行きで受けるクエストとかもあるけど、そう言う依頼を一手にまとめて開示してる場所はちゃんとあるんだ。
けど大体高額なのって要人の護衛とか警護とか、それかやっぱり討伐関係なんだよね。しかもその動きというか……流れが早い。普通の……今までのRPGとかなら自分がやるまでとか、その期間はずっとその依頼は受注出来たりする。
けどLROはそうじゃない。誰かが受けた依頼は直ぐに消えていく。多分、LROでは同じように冒険を進めるなんて事はきっと出来ないんだ。自分だけの道を歩かなきゃいけない……それってもう人生みたいな物だよね。
「てか、会長他にも色々と仕事してるんですか? 自分達をもっと使ってください。流石にデザイアの奴の様にしてくれとは言わないですけど、会長はもっと自分を大切にするべきです」
「大切にしてるけどな〜皆に大切にされてるし。でもそんなに無理はしてないよ。ここでは二束三文の仕事ばかりだからね」
「それならいい……」
あれ? いいかな? 良くないような。てか自分が会長を説得するとか無理だからね。
「心配してくれてありがとうね。でもお金の管理とか自分一人でやってるわけでもないし、大丈夫だよちゃんと皆に役割振り割ってるし」
「そうなんですか。あれ? 自分何も言われてないですよ?」
戦力外通告ですか……そうですか。自分の知らない所で何かが進んでいくってちょっと悲しい気がするよね。
「ち、違うよ。別に綴君が頼りないって訳じゃなくてね……大変かな〜って思って」
必死にフォローを居れてくれる会長。まあいいんですけどね。生徒会の皆は頼られるの好きだからね。特に会長に。きっと我先にと役割を奪い合ったに違いない。その場に自分が居なかったとしたら、こうなるのも仕方ない。
「会長の大変の定義が自分にはよくわかりませんけどね。働き過ぎですよ。LROの事もそうですけど……自分達は結局部分的にしか会長の仕事把握してないです。それでも度が過ぎてるってのは分かるし、倒れられたりしたら困ります」
「う〜ん、私的には問題ないレベルなんだけどな。まあ皆のそう言う気持ちは素直に受け取ってるよ。ありがとう」
向けられた笑顔にドキッとする。結局会長は今までどおりを貫き通す覚悟の様だ。
「あっ、あれは?」
何かに気付いた会長。祖指さされた方向にはプレイヤーが倒れてる。そういえば後から起こしに来ようと思ってたんだった。
「あれはトイ・ボックスに囚われてた人達ですよ。トイ・ボックスが消滅したんで開放されたみたいです」
「なるほど、ちょっと起こしてあげようか」
そう言ってテクテクと近づく会長。そういえばあの中には裏切り者共の一味も混じってるんでは? そう考えてると会長は彼等を揺さぶって既に目を覚まさせてた。
「う……ん、お、お前は……」
「じゃじゃ〜ん、会長だよ〜」
自分で自分の事を会長と呼ぶのもどうかと……まあここではそれが名前なんだけどね。寝ぼけ眼の皆さん。その中で、ドバっと飛び上がる二人が居る。
「お、お前どうして!?」
「え? って事は……」
「良かったね。まだ負けてないよ」
「失敗……したということか」
「まあウルさんも色々と思う所があったんだよ。君達の為にね」
「くっ……それなら!」
そう言って一人が武器を抜く。自分と他に倒れてた数人は一気に警戒を強めるよ。けど、会長は落ち着いてる。自分達が対峙する様に武器を抜くのを制した。
「落ちつていて、ここで私達に武器を向けても何も変わらないと思うけどな」
「それでも、自分達のエリアを取り戻すにはこうするしかない!」 貴様の偽善者全とした侵略をこれ以上許してたまるか!!」
なんだか酷い言われようだ。偽善者って……会長は加わった人達にも充分配慮してるだろうに。別に自由を奪ったり、虐げたりしてるわけでもないし。エリアが勝者に常渡されるのはこの世界の仕様であって会長のせいじゃない。
そもそも勝負を受けて負けたからって文句言うのはお門違いだろう。そっちに有利な条件でエリアバトルだってやってるんだからね。まあ全てルールだから––で済ませられたら、世界に秩序って奴が簡単に訪れるんだろうけどね。
結局約束やルールってのは互いのモラルの問題なんだ。まあ勝者だから文句も言わず黙って従えってのも確かに傲慢だけどさ……会長はちゃんと聞いてくれるんだし、ここまでの事をやるほどにひどい状況だったかな? と思う。
「一応色々と気を使ってたつもりだったけど、駄目だったかな? そもそもエリアの返還なんて出来たかな?」
「俺達が真に恐れたのはお前に懐柔されることだ。エリアは……それは確認を取るとして、お前の側に居ると、俺達は自分達のチームを忘れ去られる」
おい、こいつらエリアがちゃんと戻ってくるか確認しないまま反旗を翻してたぞ。大事な部分じゃないのかよ。まあでも真に恐れてるのは会長の人心掌握術の方のようだけど。エリアは実際、また広げればいいしね。
「本当に嫌なら除名とかも考えるよ。仕方ない部分だしね。やっぱり楽しく過ごしてほしいしね」
「ふん、どうだか……耳障りのいい言葉で懐柔していくのがお前の手口だろう」
う〜ん、なんだか疑心暗鬼にでも成ってるのかな? 一つの考えに凝り固まってしまってるんじゃなかろうか? なんでも裏を読めばいいってわけでもないと思う。会長は案外去るもの追わずだよ。
まあ実際去った奴は見たことないけど。でも懐柔か……それはあるのかもね。自分達はとっくにそうだから違和感なんか無いけど、何か気味悪い物でも感じてるとか?
「まあ相互間エリアバトルはまだ続いんてるんだし、判断はゆっくりするといいよ。私達の事も向こうの事も、戦闘の時でしか見えない部分もあるだろうしね」
「ちょっ、生かしておく気ですか会長? それならせめて自由を奪うとかしたほうが」
自分は思わずそう言った。だって会長楽観的過ぎるよ。こいつらのせいでピンチに陥ったんですよ。後数秒の差で実際負けてたかもしれない。それなのにまだ自由にさせとくなんて……自分の言葉を聞いて裏切り者二人は臨戦態勢を取ってる。
武器にはスキルの光が……光が……あれ? 宿らない?
「なんだ? どうした!?」
「ちょっ……スキルツリーをみろ!」
二人は急いでウインドウを確認してる。自分達は何が起きてるか把握できてない。すると、構えてた武器が彼らの手から零れ落ちる。
「スキルが……ない!?」
そんな声に自分達は顔を見合わせる。スキルがないって……そのまんまの意味か? けど……なん––は!!
「まさか、トイ・ボックスが……」
「そういえばそんな事言ってたね。トイ・ボックスはスキルを喰うって。皆スキルを確認してみて」
会長の指示に従ってトイ・ボックスに囚われてた人達はウインドウを出してスキルを確認する。そしてその反応は重苦しい……皆、一様に首を横に振るう。つまりは……誰もスキルが残ってないと。
「戻す方法はないのでしょうか? 例えばほら、術者を倒すと戻るとか定番だし。この場合デザイアだと思うんですよ。あいつはさっきの戦闘で皆のスキルを使ってた」
「けど、トイ・ボックス自体は壊したんだよね? 今でも彼自身が皆のスキルを使えるのならその可能性もあるだろうけど、どうなのかな?」
「……トイ・ボックスを壊した時点で飛び出したんでそこまではなんとも……」
「じゃあ取り敢えず彼の居る所まで行きましょう。二人もそれでいいよね? スキルがないのに私達に挑もうなんて思わないだろうし。私達はスキルあるからね」
そう言って自分も数に含められた。まあ確かに、自分はトイ・ボックスにとらわれなかったからスキルはある。会長も……だけど二人共そんな強力な物を持ってるわけじゃないよね。でも会長のスキルとかは結構未知だからか、警戒は強めてるようだ。
それにスキルはここで流した努力の結晶みたいな物。戻るのなら戻したいと思うだろう。取り敢えず自分達は謁見の間を目指すことにした。
「平民共が頭が高いぞ。ベロベロバー!! ははははは!!」
謁見の間に付くとそんな声が響いてた。状況を確認するに、どうやらデザイアはまだ自由の身の様だ。キースさん達は壇上の周りで手をこまねいてた。そんな彼等が扉の開閉で自分達の存在に気づく。
「ほえ〜、綺麗だね。流石王様のいる部屋って感じ」
「会長!」
「会長!!」
皆がこっちに駆け寄ってくる。皆会長の無事を喜んでるようだ。うんうん、あれ? 自分への労いの言葉は? 誰もこっち見向きもしな……
「まあアンタも一応よくやったな」
足元でそう言ったのはルミルミさん。一番予想外な人から労われた。素直に受け取っていいのかな? 金銭とか要求されないか?
「何だその顔は?」
「いや、今は持ち合わせが……」
「どういう……意味だ!」
脛をガツンと勢い良く蹴られた。酷い、日頃の行いのせいだというのに!
「つう〜、結局デザイアはあのまま……なんすね」
「そうだ。お前がサボるからだ」
さっきの労いはどこへやらな言葉ですね。確かに落としとくべきだったと反省するけど、あの時はそんな事を考える事出来なかったんだ。自分はそんな器用じゃないんです。そんなに高い能力もないのに、幾つもの事柄を考えて処理するなんて無理。
一個の事を全力でやるしか出来ないそんな奴なんです。
「まあまあルミルミ。綴君はよくやってくれたよ。後は私にお任せ」
そう言って集まってた皆の輪から会長は踏み出す。そして二つのチームのトップ同士が向き合った。
「こんにちは。随分立派なお城ですね。内装も素晴らしかったです」
「そうだろそうだろ。殆どのリソースを振り分けたからな。分かるだろ? それだけの代物って事は、そう簡単に貴様等に乗っ取られたりはしないということだ。
この城は絶対に落ちたりしない。残念だったな」
そう言って再びこの場に響き渡るような声を響かせるデザイア。絶対自信……確かにそれだけの物がこの城にはあるんだろう。どこもかしこも確かに素晴らしいと思うよ。やっぱりこういう城を直に歩きまわるとか結構感動するものがある。
ハッキリ言えば憧れちゃうよ。一国一城……その言葉のままの立場にこいつは居る。まあ立場までは自分は要らないだけど、男子ならこういう城はやっぱりね。いいものだと思える。和風なのもいいけどね。
「それにもうすぐ部下たちも戻ってくる。そうなるとどの道貴様等は終わりだ。俺達の領地で勝てると思うなよ」
玉座に腰掛けたデザイアの瞳が鋭くなる。確かにこのままじゃ不味い。この城を落とせないのなら撤退して態勢を整えるのも良いと思うけど……でも今からだと絶対に鉢会う様な。そうなると振りだよねこっちは。
どっちが多いとかわからないけど、こっちは疲弊してる……それにスキルを奪われた人達もいるし……なかなかに不味い。一つの危機は去ったけど、まだまだ安心は出来ないか。
「全てを高みで……それが出来たら楽なんでしょうね」
「ああ、俺の人望の成せる業だな。王の特権だ。それで言えば貴様は王にはなりえんな」
「私は王様に興味ないですから。夢はお嫁さんです」
堂々と何を会長はいってるんでしょうか。てかお嫁さんってやっぱりあいつの?
「ふん、王ともなればハーレム築き放題だ。嫁など小さい所で収まるなど馬鹿らしい」
「そうかもですね。でも私は決まってますから。今もずっと追い付くためにやってます。だから勝ちますよ。負けません」
宣言と共に会長は紙を取り出す。真っ白な……いや、何か透かしが見える綺麗な紙だ。それを見てデザイアの声が少し上ずった。
「奇妙なスキルを使うようだな」
「いえいえ、私のスキルは非力ですよ。自分だけじゃ決して勝てないスキルです。けど、皆のお陰で強くなるスキルでも有ります」
会長はその紙を自分達とデザイアを隔てる膜に押し当てる。するとその紙に何かが綴られていくように見える。そして次にもう何枚かの紙を取り出した。そして次はペンでスラスラと書きだした。
その紙は勝手にフラフラと部屋の周りに張り付いていく。そして会長はつぶやく。
「王の揺り籠解除」
その瞬間シャボン玉が弾けるように膜が拡散した。目が飛び出る程に驚くデザイア。そして壇上になんともなしに上がった会長は言い放つ。
「貰いましたよ。この城」
「やっぱりデザイアの奴を壇上から蹴り落としておくべきだったかもしれないです。自分のミスです」
自分はそう言って頭を下げる。やっぱりあの壇上とその他を隔てる力はデザイアの特別な物だったのかもしれない。そのせいで皆はまだデザイアに手を出せてないとか……奴を蹴り落とす位数秒で出来たはず……ミスったよ。
「まあそれは行ってから考えましょう。さあ綴君」
そう言って差し出される手。昨日もあったけど、その度にやっぱりドキドキしてしまう物だ。会長だからね。コレがルミルミさんとかなら別にそうでもないんだろうけど、会長はやっぱり憧れが強いから……出した手が宙を彷徨ってると、会長に掴まれた。
「てぃや! さあ行くよ」
なんでもない様にこの人は……自分がどれだけ眩しいか気付いてないのだろうか? まあだけど、そんな強引さもまた会長だ。会長は紙を出してそこに自分のペンで何かをしたためる。そして門にその紙と共に手を置くと一瞬で城の敷地内に入った。
「へぇ〜なかなかいい感じだね」
「よくそんなこと言えますね。敵地ですよここ」
「まあそうだけど、なんだってホント思い通りにできるんだな〜って思うじゃん。どうやって造ったんだろ?」
「確かに……」
会長がそんな事を気にするから、少しは興味が湧いてきたじゃないか。簡素な建物は出現させるだけで良かったりするけど、個性を出すとなると職人の協力が必要だからね。エリア発展の為に職人のNPCは用意されてたりするけど、今はエリアバトルも活性化してるせいで、その需要は多い。
各国の職人は軒並み貸出状態……これだけの物を作るとなると、数百人規模でその人達を雇ったとしか……でもそうなると費用も半端ない事に……まあリアルとは違って何年も工事に掛かるとかないけど、普通よりは掛かるのは確か。
期間は長ければ長いほどに費用が割増に成るのはこちらも同じ。お金を貯める……それって実はスキル上げよりも結構難しい。確かにモンスターを倒せばある程度のお金は手に入る。でも今はまだそこまで高額のモンスターを狩れる人達は多分一部だろう。
高級素材を狙うにしても、そうポンポンととれないから高級なんだし……金策とはホント大変だ。自分の身包みを背伸びしなければそこまで気にすることもないけど、これだけの物を作るとなると普段通りにやってるだけじゃきっと駄目だろう。一体どうやって……
「そういえば家の会計事情はどうなってるんですか? 今まで気にしたことなかったですけど」
生徒会の得た金品はほぼ全て会長の元で管理される様に成ってるけど、他のチームの事はよくわからない。それに散々エリアバトルやってきたけど、それほどアイテムに困った記憶はない。消耗品である回復薬とかそれなりの出費だろうにね。それほど安いって訳でもない。高需要だからねアレは。
しかもエリアバトルが活性化してる今は特に。やっぱり他のチームの財成とかも管理してるのかな? でもそれって結構な反発がありそうな。自分達は会長を信じれるからいいけど、吸収した人達は直ぐにそうとは行かないしね。
まあ無理矢理にでも従わせる事は出来る。けど会長がそんなことをするとは思えない。圧政は亀裂を生むしね。まあしなくても亀裂は出来てたから世話ないけど……やっぱり甘いのだろうか?
「まああんまり余裕はないよね。人がいる割に、これといった稼ぎがあるわけじゃないし。まあ私は色々と請け負ってるけどね」
「何をですか?」
「クエストの依頼って何もモンスター絡みばっかりじゃないんだよ。私のスキルを役立てる物もあったりするんだから」
「へぇ〜そうなんですか」
初耳だな。いや、自分も時折そういうのチェックしに行くよ。普通に街の人達から成り行きで受けるクエストとかもあるけど、そう言う依頼を一手にまとめて開示してる場所はちゃんとあるんだ。
けど大体高額なのって要人の護衛とか警護とか、それかやっぱり討伐関係なんだよね。しかもその動きというか……流れが早い。普通の……今までのRPGとかなら自分がやるまでとか、その期間はずっとその依頼は受注出来たりする。
けどLROはそうじゃない。誰かが受けた依頼は直ぐに消えていく。多分、LROでは同じように冒険を進めるなんて事はきっと出来ないんだ。自分だけの道を歩かなきゃいけない……それってもう人生みたいな物だよね。
「てか、会長他にも色々と仕事してるんですか? 自分達をもっと使ってください。流石にデザイアの奴の様にしてくれとは言わないですけど、会長はもっと自分を大切にするべきです」
「大切にしてるけどな〜皆に大切にされてるし。でもそんなに無理はしてないよ。ここでは二束三文の仕事ばかりだからね」
「それならいい……」
あれ? いいかな? 良くないような。てか自分が会長を説得するとか無理だからね。
「心配してくれてありがとうね。でもお金の管理とか自分一人でやってるわけでもないし、大丈夫だよちゃんと皆に役割振り割ってるし」
「そうなんですか。あれ? 自分何も言われてないですよ?」
戦力外通告ですか……そうですか。自分の知らない所で何かが進んでいくってちょっと悲しい気がするよね。
「ち、違うよ。別に綴君が頼りないって訳じゃなくてね……大変かな〜って思って」
必死にフォローを居れてくれる会長。まあいいんですけどね。生徒会の皆は頼られるの好きだからね。特に会長に。きっと我先にと役割を奪い合ったに違いない。その場に自分が居なかったとしたら、こうなるのも仕方ない。
「会長の大変の定義が自分にはよくわかりませんけどね。働き過ぎですよ。LROの事もそうですけど……自分達は結局部分的にしか会長の仕事把握してないです。それでも度が過ぎてるってのは分かるし、倒れられたりしたら困ります」
「う〜ん、私的には問題ないレベルなんだけどな。まあ皆のそう言う気持ちは素直に受け取ってるよ。ありがとう」
向けられた笑顔にドキッとする。結局会長は今までどおりを貫き通す覚悟の様だ。
「あっ、あれは?」
何かに気付いた会長。祖指さされた方向にはプレイヤーが倒れてる。そういえば後から起こしに来ようと思ってたんだった。
「あれはトイ・ボックスに囚われてた人達ですよ。トイ・ボックスが消滅したんで開放されたみたいです」
「なるほど、ちょっと起こしてあげようか」
そう言ってテクテクと近づく会長。そういえばあの中には裏切り者共の一味も混じってるんでは? そう考えてると会長は彼等を揺さぶって既に目を覚まさせてた。
「う……ん、お、お前は……」
「じゃじゃ〜ん、会長だよ〜」
自分で自分の事を会長と呼ぶのもどうかと……まあここではそれが名前なんだけどね。寝ぼけ眼の皆さん。その中で、ドバっと飛び上がる二人が居る。
「お、お前どうして!?」
「え? って事は……」
「良かったね。まだ負けてないよ」
「失敗……したということか」
「まあウルさんも色々と思う所があったんだよ。君達の為にね」
「くっ……それなら!」
そう言って一人が武器を抜く。自分と他に倒れてた数人は一気に警戒を強めるよ。けど、会長は落ち着いてる。自分達が対峙する様に武器を抜くのを制した。
「落ちつていて、ここで私達に武器を向けても何も変わらないと思うけどな」
「それでも、自分達のエリアを取り戻すにはこうするしかない!」 貴様の偽善者全とした侵略をこれ以上許してたまるか!!」
なんだか酷い言われようだ。偽善者って……会長は加わった人達にも充分配慮してるだろうに。別に自由を奪ったり、虐げたりしてるわけでもないし。エリアが勝者に常渡されるのはこの世界の仕様であって会長のせいじゃない。
そもそも勝負を受けて負けたからって文句言うのはお門違いだろう。そっちに有利な条件でエリアバトルだってやってるんだからね。まあ全てルールだから––で済ませられたら、世界に秩序って奴が簡単に訪れるんだろうけどね。
結局約束やルールってのは互いのモラルの問題なんだ。まあ勝者だから文句も言わず黙って従えってのも確かに傲慢だけどさ……会長はちゃんと聞いてくれるんだし、ここまでの事をやるほどにひどい状況だったかな? と思う。
「一応色々と気を使ってたつもりだったけど、駄目だったかな? そもそもエリアの返還なんて出来たかな?」
「俺達が真に恐れたのはお前に懐柔されることだ。エリアは……それは確認を取るとして、お前の側に居ると、俺達は自分達のチームを忘れ去られる」
おい、こいつらエリアがちゃんと戻ってくるか確認しないまま反旗を翻してたぞ。大事な部分じゃないのかよ。まあでも真に恐れてるのは会長の人心掌握術の方のようだけど。エリアは実際、また広げればいいしね。
「本当に嫌なら除名とかも考えるよ。仕方ない部分だしね。やっぱり楽しく過ごしてほしいしね」
「ふん、どうだか……耳障りのいい言葉で懐柔していくのがお前の手口だろう」
う〜ん、なんだか疑心暗鬼にでも成ってるのかな? 一つの考えに凝り固まってしまってるんじゃなかろうか? なんでも裏を読めばいいってわけでもないと思う。会長は案外去るもの追わずだよ。
まあ実際去った奴は見たことないけど。でも懐柔か……それはあるのかもね。自分達はとっくにそうだから違和感なんか無いけど、何か気味悪い物でも感じてるとか?
「まあ相互間エリアバトルはまだ続いんてるんだし、判断はゆっくりするといいよ。私達の事も向こうの事も、戦闘の時でしか見えない部分もあるだろうしね」
「ちょっ、生かしておく気ですか会長? それならせめて自由を奪うとかしたほうが」
自分は思わずそう言った。だって会長楽観的過ぎるよ。こいつらのせいでピンチに陥ったんですよ。後数秒の差で実際負けてたかもしれない。それなのにまだ自由にさせとくなんて……自分の言葉を聞いて裏切り者二人は臨戦態勢を取ってる。
武器にはスキルの光が……光が……あれ? 宿らない?
「なんだ? どうした!?」
「ちょっ……スキルツリーをみろ!」
二人は急いでウインドウを確認してる。自分達は何が起きてるか把握できてない。すると、構えてた武器が彼らの手から零れ落ちる。
「スキルが……ない!?」
そんな声に自分達は顔を見合わせる。スキルがないって……そのまんまの意味か? けど……なん––は!!
「まさか、トイ・ボックスが……」
「そういえばそんな事言ってたね。トイ・ボックスはスキルを喰うって。皆スキルを確認してみて」
会長の指示に従ってトイ・ボックスに囚われてた人達はウインドウを出してスキルを確認する。そしてその反応は重苦しい……皆、一様に首を横に振るう。つまりは……誰もスキルが残ってないと。
「戻す方法はないのでしょうか? 例えばほら、術者を倒すと戻るとか定番だし。この場合デザイアだと思うんですよ。あいつはさっきの戦闘で皆のスキルを使ってた」
「けど、トイ・ボックス自体は壊したんだよね? 今でも彼自身が皆のスキルを使えるのならその可能性もあるだろうけど、どうなのかな?」
「……トイ・ボックスを壊した時点で飛び出したんでそこまではなんとも……」
「じゃあ取り敢えず彼の居る所まで行きましょう。二人もそれでいいよね? スキルがないのに私達に挑もうなんて思わないだろうし。私達はスキルあるからね」
そう言って自分も数に含められた。まあ確かに、自分はトイ・ボックスにとらわれなかったからスキルはある。会長も……だけど二人共そんな強力な物を持ってるわけじゃないよね。でも会長のスキルとかは結構未知だからか、警戒は強めてるようだ。
それにスキルはここで流した努力の結晶みたいな物。戻るのなら戻したいと思うだろう。取り敢えず自分達は謁見の間を目指すことにした。
「平民共が頭が高いぞ。ベロベロバー!! ははははは!!」
謁見の間に付くとそんな声が響いてた。状況を確認するに、どうやらデザイアはまだ自由の身の様だ。キースさん達は壇上の周りで手をこまねいてた。そんな彼等が扉の開閉で自分達の存在に気づく。
「ほえ〜、綺麗だね。流石王様のいる部屋って感じ」
「会長!」
「会長!!」
皆がこっちに駆け寄ってくる。皆会長の無事を喜んでるようだ。うんうん、あれ? 自分への労いの言葉は? 誰もこっち見向きもしな……
「まあアンタも一応よくやったな」
足元でそう言ったのはルミルミさん。一番予想外な人から労われた。素直に受け取っていいのかな? 金銭とか要求されないか?
「何だその顔は?」
「いや、今は持ち合わせが……」
「どういう……意味だ!」
脛をガツンと勢い良く蹴られた。酷い、日頃の行いのせいだというのに!
「つう〜、結局デザイアはあのまま……なんすね」
「そうだ。お前がサボるからだ」
さっきの労いはどこへやらな言葉ですね。確かに落としとくべきだったと反省するけど、あの時はそんな事を考える事出来なかったんだ。自分はそんな器用じゃないんです。そんなに高い能力もないのに、幾つもの事柄を考えて処理するなんて無理。
一個の事を全力でやるしか出来ないそんな奴なんです。
「まあまあルミルミ。綴君はよくやってくれたよ。後は私にお任せ」
そう言って集まってた皆の輪から会長は踏み出す。そして二つのチームのトップ同士が向き合った。
「こんにちは。随分立派なお城ですね。内装も素晴らしかったです」
「そうだろそうだろ。殆どのリソースを振り分けたからな。分かるだろ? それだけの代物って事は、そう簡単に貴様等に乗っ取られたりはしないということだ。
この城は絶対に落ちたりしない。残念だったな」
そう言って再びこの場に響き渡るような声を響かせるデザイア。絶対自信……確かにそれだけの物がこの城にはあるんだろう。どこもかしこも確かに素晴らしいと思うよ。やっぱりこういう城を直に歩きまわるとか結構感動するものがある。
ハッキリ言えば憧れちゃうよ。一国一城……その言葉のままの立場にこいつは居る。まあ立場までは自分は要らないだけど、男子ならこういう城はやっぱりね。いいものだと思える。和風なのもいいけどね。
「それにもうすぐ部下たちも戻ってくる。そうなるとどの道貴様等は終わりだ。俺達の領地で勝てると思うなよ」
玉座に腰掛けたデザイアの瞳が鋭くなる。確かにこのままじゃ不味い。この城を落とせないのなら撤退して態勢を整えるのも良いと思うけど……でも今からだと絶対に鉢会う様な。そうなると振りだよねこっちは。
どっちが多いとかわからないけど、こっちは疲弊してる……それにスキルを奪われた人達もいるし……なかなかに不味い。一つの危機は去ったけど、まだまだ安心は出来ないか。
「全てを高みで……それが出来たら楽なんでしょうね」
「ああ、俺の人望の成せる業だな。王の特権だ。それで言えば貴様は王にはなりえんな」
「私は王様に興味ないですから。夢はお嫁さんです」
堂々と何を会長はいってるんでしょうか。てかお嫁さんってやっぱりあいつの?
「ふん、王ともなればハーレム築き放題だ。嫁など小さい所で収まるなど馬鹿らしい」
「そうかもですね。でも私は決まってますから。今もずっと追い付くためにやってます。だから勝ちますよ。負けません」
宣言と共に会長は紙を取り出す。真っ白な……いや、何か透かしが見える綺麗な紙だ。それを見てデザイアの声が少し上ずった。
「奇妙なスキルを使うようだな」
「いえいえ、私のスキルは非力ですよ。自分だけじゃ決して勝てないスキルです。けど、皆のお陰で強くなるスキルでも有ります」
会長はその紙を自分達とデザイアを隔てる膜に押し当てる。するとその紙に何かが綴られていくように見える。そして次にもう何枚かの紙を取り出した。そして次はペンでスラスラと書きだした。
その紙は勝手にフラフラと部屋の周りに張り付いていく。そして会長はつぶやく。
「王の揺り籠解除」
その瞬間シャボン玉が弾けるように膜が拡散した。目が飛び出る程に驚くデザイア。そして壇上になんともなしに上がった会長は言い放つ。
「貰いましたよ。この城」
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