命改変プログラム
反撃の狼煙
ビルの近くの路肩に車を止めて、俺達は外へ。見上げる古臭い雑居ビルはここだけやけにくすんでる様に見えるけど、まあきっと気のせいだろう。俺はキョロキョロして辺りを確認する。
「天道さんの車ないな。ラオウさん居るのか?」
そこら辺に止めてあるようには見えない。結構派手な車だったからな、近くにあれば直ぐにわかる筈だが……それが見えないって事はもしかしたらって事も?
「近くの駐車場にでも止めてるんでしょ。高級車が引っ張って行かれたりしたら滑稽だしね」
「これも結構な高級車の筈だけどな」
俺達が乗ってきたこの車だってエンブレムがかっちょいいぞ。だってこの車は愛の家の車だからな。高級車だろう。すわり心地とか違うしな。あとなんか黒光りの度合いが違うというか?
なんか派手にギラギラしてるんじゃなく、落ち着きいて深く光ってるって感じ? やっぱり本物は違うなって感じる。そう思ってると日鞠の奴が勢い良く扉を締める。それにちょっと俺は驚く。いや、いきなりだったからな。
「さて、ここからは盗聴を気にすること無く喋れるかな」
「え?」
「は?」
「あっ」
日鞠以外の三人固まる。いやホント……ピシってな音が成って体が一瞬硬直したよ。だって、誰がそんなん覚えてたよ!? てかそんな設定あったな……いやあったかな? 確証はなかったと思うけどその可能性は確かに言ってたな。
「まあ……そんなの意識するまでも無く私の言葉には問題なかったと思うけど。いつも通りだったし」
「いつも無駄な話ししかしないからな」
それか妄想の話。メカブの言葉はさほど重要でもないから確かに問題はない。
「確かにメカブちゃんの話しは問題無いわね。でも……これからどうやるかとか、メールの内容が嘘とかいってたわよね? いいのそれ?」
天道さんの言葉は最もだな。幾らなんでもベラベラ言い過ぎてただろう。てか既に向こうは俺達がジェスチャーコードを手に入れてる事に確信を得てるはずだ。それなの嘘のメールとか意味無さ過ぎだろ。
向こうは腹抱えて笑ってるんじゃないのか? 犯人がどんな顔してるかは知らないが、なんか大体想像は出来るぞ。
「天道さん。人は一体どれほどの事を言葉だけで伝えきれるのでしょうか?」
「何? いきなりその哲学みたいな問いかけ?」
「良いから答えてみてください」
そう言われて天道さんは考える。言葉だけでどれだけって……俺達は言葉がないと意思疎通なんて出来ないだろ。漫画みたいに思考を読んだ会話なんて早々出来る物じゃない。手っ取り早く意思を伝えるのに一番効果的で実効性が高いのが言葉だよ。
これがなくちゃ、俺達は何も出来ない。煩わしい事になるのは目に見えてる。てか社会がそれを体現してるだろ。言葉が通じない奴? 俺は日鞠を一瞬見る。そんな奴を相手にするのってマジで疲れるからな。
それに日本人って外人苦手じゃん。それって言葉が伝わらないからだろう。自分をどう伝えていいかわからないし、向こうの事も分からない。だから余計不安になる。言葉は鍵でもあると思う。
俺達を繋げる鍵で、心を開く鍵だ。言葉だけで全てを伝えれるとは言わないが、言葉にしないと伝わらない物があるのも事実だからな。だから大体の事は伝わるだろう。
「大体の事は伝わるんじゃない?」
あっ、天道さんも同じような事を……でも大体の事は伝わって貰わないと普段困るしな。そうであって貰わないとって所でその言葉が出てくるのは普通だな。だけど何故かここでメカブの奴が口を開いた。
「はっ、言葉なんて空っぽなものでしょ。口に出す言葉と本心は違う。言葉ってのは嘘と建前で出来てる物よ。だから大体伝わる事は、腐った部分でしか無いわ」
「お前は一体言葉にどんな恨みがあるんだよ」
良くそこまで断言できるな。なんか妙な迫力あったし……てかそれ言うとお前の言葉も大体腐ってる事に……ああ、間違ってないかも。
「恨みなら数えきれない程あるわね。腐った言葉を吐く豚共がこの世界には大勢居るもの。そしてそんな奴等ほど群れたがるから、ブヒブヒ言う声が大きい。そのブヒブヒにアイツ等は鋭い刃を仕込むのよ」
腐った言葉を吐いたからか、道路に唾を吐き捨てるメカブ。う〜ん、なんか変な琴線に触れたか? 嫌な事を思い出させたみたいだな。でもやっぱりこいつ––
「メカブちゃん」
「ごめん日鞠。話の腰を折ったね」
「ううん、私はメカブちゃんの事好きだよ」
「んなぁ!?」
日鞠の唐突な告白に変な声を上げるメカブ。てか何言ってるんだこいつは?
「ふふ、そんなに同様しちゃって。私の今の言葉、嘘じゃないってわかってくれたんだ」
「そうね、おかしいわ。メカブちゃんは言葉は嘘と建前で出来てるって言ったわよね? それなら今のだって疑うべきじゃない?」
「それは……」
天道さんに指摘されて口ごもるメカブ。まあこいつは大体いい加減に言葉言ってるだけだからな。でもさっきの感じはそうでもなかった気がしたが……そう思って見てるとメカブのお得意のスイッチが入ったようだ。
「くくく、人間風情が私を言葉で欺けると? 私は本心と建前を見抜くことが出来るのよ。だからわかる。日鞠の言葉は本心だってね」
「それは願望でしょ。結局貴方もそんな変な設定を作って他人を遠ざけようとしてても、どこかでは繋がりを求めてるって事。優しい言葉の一つで靡くのがいい証拠。イジメられて世界を知った気に成るのは良いけど、逃げ出した奴にこそ言える事なんか何もないわよ」
「なっ……何も知らないくせに!!」
天道さんの辛辣な言葉に、耐え切れず大声を出してしまうメカブ。するとその時空から大きくて力強い何かが降ってきて地面を揺らした。
「敵襲ですか!? 早く避難を!! くっ罠に反応は無かったのに手練がいるようですね」
俺は降ってきたその人の行動に呆然としてた。だって……今何階から降りてきた? いや、出発前にもあったけど……あまりにも普通に飛び降りてくるからな……しかもその格好はなんだ? シスター服はいつものままだけど、いつもは装備してない武装が乗っかってるぞ。
まずは照準器を見ながら構えてるデッカイ銃が一つに、背中に背負ってるのが一つ。後背中にはその背負ってるのの弾なのか、それも巻いてる。そして小型の銃が両腰に一丁ずつ。と更に手榴弾っぽいのも見えるな。
普通の人達からみたら痛いミリタリー系の人がいるなぁ……で済むのかもしれないが、俺は知ってる。それらが全て本物だということを。触ってはないけどさ、この人が持ち出す物からBB弾とか出るわけない。
ここでまさに戦争でもおっ始めそうな……そんな格好だ。周りの多少の通行人もラオウさんの登場から格好までを理解できなくて固まったままだ。
(てか……これやばくね?)
俺も固まったまま思考してそう辿りついた。これ不味いよね? だって銃だぞ……モノホンだぞ。俺達は色々と理解できるからまだいいが、ここに居合わせた人達は、この硬直が解けた直後、どういう行動を取るだろうか?
空から降ってきた巨大な人間。イメージを加算して推定二メートルに一般人には見えててもおかしくない。そして手に持ってるものは大口径の黒光りした銃だ。これだけで日本人ちびっちゃうぞ。更にその巨体には複数の武器が……どこか遠くでそんな事をやってる奴を見かけても普段ならミリオタ乙で済むだろう。
だけど今、彼女はその思考回路を完全に打ち砕いてると見ていい。俺達以外の人達からしたらラオウさんは降って湧いたモンスターって所だろう。その証拠に皆さんの顔の強張り具合と言ったら……コレが恐怖を表した人の顔か––と思える程の物だ。
絶対にヤバイ。誰か一人でも咳を切って騒ぐと、そういう物は直ぐに伝染する。そうなったら俺達の最大戦力であるラオウさんが警察のお世話に成ることに! しかも現行犯とか言い訳出来ない。目撃者も大勢……詰むぞ完全に。
(どうにか……どうにかしないと……)
そう思ってる間にも誰かが叫びだしそうな雰囲気。下手に声を出す事まで憚れる空気。すると突然’パンパン’とこの場の空気を壊す音が聞こえた。俺はその方向を見据える。だけどまあ、そこには予想してた奴の姿が予想通りにあったよ。
「はいはい、もう全くラオウさんはお茶目さんなんだから。駄目だよ、いきなりそんな玩具向けたら皆さん怖がって動けないじゃないですか。取り敢えず中に戻ってくださいね」
「日鞠、これは玩具などでは……」
「いいからいいから、銃口を向ける相手はゲームの向こうのゾンビだけにしてね」
そう言われながら、ラオウさんはビルの中に押されてく。まあ日鞠程度の力で押してる訳はないから、ついついラオウさんが足を動かしてるんだろうけど……それよりも、張り詰めてた空気が日鞠の行動で一気に解けたのがデカイな。
まだ状況を理解できてない様だけど、取り敢えず危機が去ったとか、勘違いだった? とか思ってくれてそうではある。それに今の日鞠の行動で「やっぱりミリオタか」という結論付けも出来るだろうし、騒がれる事はないだろう。もしかしたら通報する人は居るかも知れないが、その程度ならどうにでも成るだろ。
警察だって「銃を持ったデカイシスターが町中で暴れてる!」って通報と「ミリオタシスターが銃を持って徘徊してます!」じゃ対応が随分違うだろう。前者なんて言葉だけなら完全なテロリストだ。完全装備の警官隊に特殊部隊までも動くかも知れない。
だけど校舎なら「はいはい」程度だろう。特殊部隊までもはきっと動かない。ひとまず危機が去った事で俺達も息を吐く。雲がゆっくりと流れてくのと同じように、徐々にこの通りもさっきまでの喧騒を取り戻してく。
「私達も行くわよ。喉乾いたし」
「ああ、そうだな」
「お邪魔します」
俺達もビルの中に向かう。外は糞熱いし、さっきの緊張でメカブだけじゃなく、俺も喉乾いた。てかなんか日鞠の奴の「言葉で伝わる––」云々の件は有耶無耶に終わったな。けどそう思ってたのは俺だけだったのか、階段を昇る最中、天道さんがメカブにこういった。
「さっきはごめんなさい。嫌な事言ったかな?」
「…………別に、私にとってはどうでもいい事だったわ。そう、どうでもいい事なのよ」
「そっか」
気まずいと言うか、静かな沈黙が訪れる。響き渡るのは俺達の階段を上る足音だけ。最初のフロアに辿り着くと、調理場の方からドンガラガッシャーンと言う分かりやすい音が聞こえた。俺達は顔を見合わせて調理場の方へ。扉を開けるとそこから真っ白な煙みたいなのが溢れてきた。
「おい、誰か居るのか? 大丈夫か?」
扉の外からそんな声を掛けてみる。部屋全体が真っ白で何も見えない状態だからな。下手に侵入は出来ない。すると中から変に作った様な声が聞こえた。
「だ、大丈夫です〜。問題ないです〜」
「問題ない?」
この惨状で? てか誰だこの怪しい声の奴。もしかしたらどこかの工作員? 何か食い物に仕掛けでもしようとしてたんじゃ? まあそこまでするか? って気もするけど、こんな声の奴知らないしな。SPの人達は出払ってるし、この建物内に居る人間は限られてる。
その中でこんな声の奴は知らない。そうなると、部外者って可能性が高い。それにこの変に作った声は、その怪しさを倍増させてる。
「そうです〜気にしないでください」
「そうは言っても……」
怪しい奴を放っておくことも出来ないからな。俺は後ろの二人に目配せをして部屋の中に入ってく。口を手で押さえて小刻みに呼吸しながら真っ白な中を進む。そこまで大きな部屋じゃない。てか換気扇あっただろうし、使えばいいのに……そこら辺怪しいよな。
わざわざ換気をせずにこの煙を充満させたままになんて……ん?
(これ……煙じゃない?)
よく考えたら煙くないな。それに目に染みないし……むしろなんか目にゴミが入ったようなそんな感じが……これ小麦粉か何かか? 取り敢えず火とかを使ってないのなら、火事とかになる心配は無いな。
この建物事態を無くそうとする過激派では無いってことか……緊張しながら慎重に進む。真っ白でも近づけば人影くらいは見えるだろう。それは向こうも同じかも知れないが、今の所役にたった感覚ないし、そろそろ手柄が欲しい所だ。俺的に。向こうが仕掛けてこないのは一人だからって可能性あるし、それならなんとかなるかもだろう。俺が時間を稼げば、ラオウさんとかが援軍に来てくれるだろうし、そうなればこっちの勝利だ。
そう思いながら進んでると、突如ガツンと脛に衝撃が!! 攻撃か!? いや、多分中央に置かれてたテーブルの足にでもぶつかったんだろう。なんとか声は殺したが、警戒心なくぶつかったからかなり痛い。
片足で跳ねてたら、今度は別の障害物に俺はぶつかった。そしてそれごと盛大にコケる。今度は流石に声を殺すなんて意味ない。盛大な音が響いたからな。だけどそれと同時に俺は奇妙な声も聞いてた。それは「きゃ!」と叫ぶ可愛らしい声。その声には聞き覚えがある。
そして最悪な想像が頭をよぎる……
(まさか……まさかまさかまさかまさかまさかまさか愛までも人質に!?)
俺は思わずそのぶつかった何かを押しのけて前方に進もうとした。するとその瞬間、額に衝撃が走って後ろにのけぞる。ゴチンと嫌な音が脳内に響き渡ったからその衝撃を察して欲しい。
「いっつぅぅぅぅぅぅぅ……」
そんな声を上げながら目を細めると、前方に黒い影が……多分あれに今度はぶつかったんだろう。そう思ってると向こうも「つうううううう」と言いながら頭を抑えてる様に見える。
(まさか犯人か?)
俺は唾を飲み込んで掴みかかる。抑えこまないと! 俺は意を決してその影に飛びかかる。大丈夫。思ったよりも小柄の様だ。それになんか柔らかいし、力もそんな無いようだ。取り敢えず全体重を掛けて床に押さえつけて、外の二人に声を掛ける。
「よし! やったぞ! 煙をなんとかしてくれ!」
その合図で二人の足音が内部に入ってきて、そして暫くすると窓が開いたのか、空気の流れが変わった。充満してた白い粉が窓から流れでてく。
「よし、これでようやく犯人の顔が拝める……な?」
「んーんー!!」
あれ? なんか俺が押さえつけてる奴が愛に見える。いやいやいや、そんな訳無いだろ。愛はきっと部屋の隅とかで震えてるはず……そう思って辺りを見回すけど、押さえつけてる奴以外には居ないようだ。
「え〜と、って事はまさか愛なのやっぱり?」
「そうですよ秋君!!」
「ご、ごめんなさい!」
俺は即効で愛から離れて土下座する。こういう時は迷っちゃいけない。謝る時は全力で謝るんだ!
「うう、秋君に圧死させられるかと思いましたよ」
「それよりも何やってたの愛?」
「それはですね……」
なんだかモジモジしだす愛。調理場でやることなんか一つしかないような……そう思ってると天道さんが呟いた。
「見るに料理をしようとしてたんじゃないかしら?」
「お恥ずかしながら……けど私、料理とかはあまりやったこと無くて」
それで失敗したと。まあ本物お嬢様だしな。それに箱入りだ。包丁とか持ったこと無いんじゃないかってくらいだしな。そりゃあ粉もばら撒くな。
「そう言えばこの方は?」
「ああ、えっと当夜さんの幼馴染の天道さんだよ。LROへの出資会社でもあるんだっけ?」
「まあ大体あってるわ」
「そうですか。お見知り置きを。私は藤堂愛です。えっと……秋君の彼女…でもあります」
それは言う必要があるのか? まあ嬉しいけど。だけどそこは華麗にスルーして天道さんは「よろしく」と手を差し出した。まあそうなるよね。二人が和解してると、更に二人ここに来た。日鞠とラオウさんだ。
「何やってるの皆? 遅いから心配したよ」
「ですから昼食は私が食べやすい物を作ると申した上げたのに……」
「ごめんなさい……」
愛はラオウさんのため息に申し訳なさそうにそう答える。まあ確かにこれは申し訳ないな。部屋中粉まみれだし。片付けとか大変そうで、調理できる場じゃない。
「ご飯は後でいいよ。奴等に動きがあったからそれどころじゃない」
「何?」
日鞠のそんな一言で緊張感が走る。愛は現状をどこまで知ってるのか知らないが、それなりにラオウさんに聞いてるのか、ついてこれてない訳じゃなさそうだ。で、動きってなんだ?
「これよ」
そう言ってスマホを見せる日鞠。そこには動画があって、再生ボタンを押すと、悲痛な声と断末魔の叫びが轟く映像が……まあ対象は足しか映ってないし、それからも頑なに体全体を写すような事もなく、部屋の周りをとったり時々外がみえたりでどんな酷いことをされてるのかはこの声で想像するしか出来ない映像だ。
だけど……これだけで十分……
「ヤバそうだな」
「そうかもね。でもそうじゃないかも。取り敢えずこれは大きいわ」
「何がだ?」
俺のその質問に返してくれたのはラオウさんだった。
「外の風景が幾つかありました。窓から見える些細なものですが、その風景で粗方の場所の予想が付きます。それをタンちゃんが調べてくれた奴等の追跡映像と照合すれば––」
「場所が特定できる!」
頷いてくれるラオウさん。なるほど、それは朗報だな。でもそこで日鞠がこういう。
「でも向こうはさっさと情報を寄越せって言ってるわ。真実の情報をね」
「それってお前が盗聴器の前で散々嘘の情報混ざるとか言ってたからだろ」
ほら裏目に出てるじゃんか。どうするんだよ。すると日鞠の奴はやけに余裕ぶってこういった。
「そうかもね。だけどそれでいいんだよ秋徒。言葉は大切だけど言葉だけで真実は分からない。だけど言葉で伝わる物は多大にある。嘘と真実、建前と本音、それらをどう解釈するのかは受け手側の自由だよ。
彼等は結局、私の言葉の何が嘘で真実かなんかわかりっこない」
なるほど……無闇に真実を言ってた訳じゃないって事か。確かに誠実に話してても伝わらないことってあるよな。それは受け手側の問題だ。それに最初に日鞠は宣言してた。「聞かせたい奴には聞かせとけばいい」って。
そんなの堂々と言う奴の言葉のどれを信じればいいか……向こうからしたら厄介だろ。真実、本当の事ばっかり日鞠の奴は車で喋ってたけど、聞き手側からしたら、あんな宣言した奴が、そこまでベラベラと喋ると思えるだろうか?
日鞠はずっと誘導してたのかもしれない。奴等が真実を聞き逃すように……すると日鞠は一歩を踏み出し宣言する。
「さあ、反撃の狼煙を上げよう」
まったくこいつは……俺達は顔を見合わせてそれぞれ一言「はい!」やら「おう!」と声を発した。
「天道さんの車ないな。ラオウさん居るのか?」
そこら辺に止めてあるようには見えない。結構派手な車だったからな、近くにあれば直ぐにわかる筈だが……それが見えないって事はもしかしたらって事も?
「近くの駐車場にでも止めてるんでしょ。高級車が引っ張って行かれたりしたら滑稽だしね」
「これも結構な高級車の筈だけどな」
俺達が乗ってきたこの車だってエンブレムがかっちょいいぞ。だってこの車は愛の家の車だからな。高級車だろう。すわり心地とか違うしな。あとなんか黒光りの度合いが違うというか?
なんか派手にギラギラしてるんじゃなく、落ち着きいて深く光ってるって感じ? やっぱり本物は違うなって感じる。そう思ってると日鞠の奴が勢い良く扉を締める。それにちょっと俺は驚く。いや、いきなりだったからな。
「さて、ここからは盗聴を気にすること無く喋れるかな」
「え?」
「は?」
「あっ」
日鞠以外の三人固まる。いやホント……ピシってな音が成って体が一瞬硬直したよ。だって、誰がそんなん覚えてたよ!? てかそんな設定あったな……いやあったかな? 確証はなかったと思うけどその可能性は確かに言ってたな。
「まあ……そんなの意識するまでも無く私の言葉には問題なかったと思うけど。いつも通りだったし」
「いつも無駄な話ししかしないからな」
それか妄想の話。メカブの言葉はさほど重要でもないから確かに問題はない。
「確かにメカブちゃんの話しは問題無いわね。でも……これからどうやるかとか、メールの内容が嘘とかいってたわよね? いいのそれ?」
天道さんの言葉は最もだな。幾らなんでもベラベラ言い過ぎてただろう。てか既に向こうは俺達がジェスチャーコードを手に入れてる事に確信を得てるはずだ。それなの嘘のメールとか意味無さ過ぎだろ。
向こうは腹抱えて笑ってるんじゃないのか? 犯人がどんな顔してるかは知らないが、なんか大体想像は出来るぞ。
「天道さん。人は一体どれほどの事を言葉だけで伝えきれるのでしょうか?」
「何? いきなりその哲学みたいな問いかけ?」
「良いから答えてみてください」
そう言われて天道さんは考える。言葉だけでどれだけって……俺達は言葉がないと意思疎通なんて出来ないだろ。漫画みたいに思考を読んだ会話なんて早々出来る物じゃない。手っ取り早く意思を伝えるのに一番効果的で実効性が高いのが言葉だよ。
これがなくちゃ、俺達は何も出来ない。煩わしい事になるのは目に見えてる。てか社会がそれを体現してるだろ。言葉が通じない奴? 俺は日鞠を一瞬見る。そんな奴を相手にするのってマジで疲れるからな。
それに日本人って外人苦手じゃん。それって言葉が伝わらないからだろう。自分をどう伝えていいかわからないし、向こうの事も分からない。だから余計不安になる。言葉は鍵でもあると思う。
俺達を繋げる鍵で、心を開く鍵だ。言葉だけで全てを伝えれるとは言わないが、言葉にしないと伝わらない物があるのも事実だからな。だから大体の事は伝わるだろう。
「大体の事は伝わるんじゃない?」
あっ、天道さんも同じような事を……でも大体の事は伝わって貰わないと普段困るしな。そうであって貰わないとって所でその言葉が出てくるのは普通だな。だけど何故かここでメカブの奴が口を開いた。
「はっ、言葉なんて空っぽなものでしょ。口に出す言葉と本心は違う。言葉ってのは嘘と建前で出来てる物よ。だから大体伝わる事は、腐った部分でしか無いわ」
「お前は一体言葉にどんな恨みがあるんだよ」
良くそこまで断言できるな。なんか妙な迫力あったし……てかそれ言うとお前の言葉も大体腐ってる事に……ああ、間違ってないかも。
「恨みなら数えきれない程あるわね。腐った言葉を吐く豚共がこの世界には大勢居るもの。そしてそんな奴等ほど群れたがるから、ブヒブヒ言う声が大きい。そのブヒブヒにアイツ等は鋭い刃を仕込むのよ」
腐った言葉を吐いたからか、道路に唾を吐き捨てるメカブ。う〜ん、なんか変な琴線に触れたか? 嫌な事を思い出させたみたいだな。でもやっぱりこいつ––
「メカブちゃん」
「ごめん日鞠。話の腰を折ったね」
「ううん、私はメカブちゃんの事好きだよ」
「んなぁ!?」
日鞠の唐突な告白に変な声を上げるメカブ。てか何言ってるんだこいつは?
「ふふ、そんなに同様しちゃって。私の今の言葉、嘘じゃないってわかってくれたんだ」
「そうね、おかしいわ。メカブちゃんは言葉は嘘と建前で出来てるって言ったわよね? それなら今のだって疑うべきじゃない?」
「それは……」
天道さんに指摘されて口ごもるメカブ。まあこいつは大体いい加減に言葉言ってるだけだからな。でもさっきの感じはそうでもなかった気がしたが……そう思って見てるとメカブのお得意のスイッチが入ったようだ。
「くくく、人間風情が私を言葉で欺けると? 私は本心と建前を見抜くことが出来るのよ。だからわかる。日鞠の言葉は本心だってね」
「それは願望でしょ。結局貴方もそんな変な設定を作って他人を遠ざけようとしてても、どこかでは繋がりを求めてるって事。優しい言葉の一つで靡くのがいい証拠。イジメられて世界を知った気に成るのは良いけど、逃げ出した奴にこそ言える事なんか何もないわよ」
「なっ……何も知らないくせに!!」
天道さんの辛辣な言葉に、耐え切れず大声を出してしまうメカブ。するとその時空から大きくて力強い何かが降ってきて地面を揺らした。
「敵襲ですか!? 早く避難を!! くっ罠に反応は無かったのに手練がいるようですね」
俺は降ってきたその人の行動に呆然としてた。だって……今何階から降りてきた? いや、出発前にもあったけど……あまりにも普通に飛び降りてくるからな……しかもその格好はなんだ? シスター服はいつものままだけど、いつもは装備してない武装が乗っかってるぞ。
まずは照準器を見ながら構えてるデッカイ銃が一つに、背中に背負ってるのが一つ。後背中にはその背負ってるのの弾なのか、それも巻いてる。そして小型の銃が両腰に一丁ずつ。と更に手榴弾っぽいのも見えるな。
普通の人達からみたら痛いミリタリー系の人がいるなぁ……で済むのかもしれないが、俺は知ってる。それらが全て本物だということを。触ってはないけどさ、この人が持ち出す物からBB弾とか出るわけない。
ここでまさに戦争でもおっ始めそうな……そんな格好だ。周りの多少の通行人もラオウさんの登場から格好までを理解できなくて固まったままだ。
(てか……これやばくね?)
俺も固まったまま思考してそう辿りついた。これ不味いよね? だって銃だぞ……モノホンだぞ。俺達は色々と理解できるからまだいいが、ここに居合わせた人達は、この硬直が解けた直後、どういう行動を取るだろうか?
空から降ってきた巨大な人間。イメージを加算して推定二メートルに一般人には見えててもおかしくない。そして手に持ってるものは大口径の黒光りした銃だ。これだけで日本人ちびっちゃうぞ。更にその巨体には複数の武器が……どこか遠くでそんな事をやってる奴を見かけても普段ならミリオタ乙で済むだろう。
だけど今、彼女はその思考回路を完全に打ち砕いてると見ていい。俺達以外の人達からしたらラオウさんは降って湧いたモンスターって所だろう。その証拠に皆さんの顔の強張り具合と言ったら……コレが恐怖を表した人の顔か––と思える程の物だ。
絶対にヤバイ。誰か一人でも咳を切って騒ぐと、そういう物は直ぐに伝染する。そうなったら俺達の最大戦力であるラオウさんが警察のお世話に成ることに! しかも現行犯とか言い訳出来ない。目撃者も大勢……詰むぞ完全に。
(どうにか……どうにかしないと……)
そう思ってる間にも誰かが叫びだしそうな雰囲気。下手に声を出す事まで憚れる空気。すると突然’パンパン’とこの場の空気を壊す音が聞こえた。俺はその方向を見据える。だけどまあ、そこには予想してた奴の姿が予想通りにあったよ。
「はいはい、もう全くラオウさんはお茶目さんなんだから。駄目だよ、いきなりそんな玩具向けたら皆さん怖がって動けないじゃないですか。取り敢えず中に戻ってくださいね」
「日鞠、これは玩具などでは……」
「いいからいいから、銃口を向ける相手はゲームの向こうのゾンビだけにしてね」
そう言われながら、ラオウさんはビルの中に押されてく。まあ日鞠程度の力で押してる訳はないから、ついついラオウさんが足を動かしてるんだろうけど……それよりも、張り詰めてた空気が日鞠の行動で一気に解けたのがデカイな。
まだ状況を理解できてない様だけど、取り敢えず危機が去ったとか、勘違いだった? とか思ってくれてそうではある。それに今の日鞠の行動で「やっぱりミリオタか」という結論付けも出来るだろうし、騒がれる事はないだろう。もしかしたら通報する人は居るかも知れないが、その程度ならどうにでも成るだろ。
警察だって「銃を持ったデカイシスターが町中で暴れてる!」って通報と「ミリオタシスターが銃を持って徘徊してます!」じゃ対応が随分違うだろう。前者なんて言葉だけなら完全なテロリストだ。完全装備の警官隊に特殊部隊までも動くかも知れない。
だけど校舎なら「はいはい」程度だろう。特殊部隊までもはきっと動かない。ひとまず危機が去った事で俺達も息を吐く。雲がゆっくりと流れてくのと同じように、徐々にこの通りもさっきまでの喧騒を取り戻してく。
「私達も行くわよ。喉乾いたし」
「ああ、そうだな」
「お邪魔します」
俺達もビルの中に向かう。外は糞熱いし、さっきの緊張でメカブだけじゃなく、俺も喉乾いた。てかなんか日鞠の奴の「言葉で伝わる––」云々の件は有耶無耶に終わったな。けどそう思ってたのは俺だけだったのか、階段を昇る最中、天道さんがメカブにこういった。
「さっきはごめんなさい。嫌な事言ったかな?」
「…………別に、私にとってはどうでもいい事だったわ。そう、どうでもいい事なのよ」
「そっか」
気まずいと言うか、静かな沈黙が訪れる。響き渡るのは俺達の階段を上る足音だけ。最初のフロアに辿り着くと、調理場の方からドンガラガッシャーンと言う分かりやすい音が聞こえた。俺達は顔を見合わせて調理場の方へ。扉を開けるとそこから真っ白な煙みたいなのが溢れてきた。
「おい、誰か居るのか? 大丈夫か?」
扉の外からそんな声を掛けてみる。部屋全体が真っ白で何も見えない状態だからな。下手に侵入は出来ない。すると中から変に作った様な声が聞こえた。
「だ、大丈夫です〜。問題ないです〜」
「問題ない?」
この惨状で? てか誰だこの怪しい声の奴。もしかしたらどこかの工作員? 何か食い物に仕掛けでもしようとしてたんじゃ? まあそこまでするか? って気もするけど、こんな声の奴知らないしな。SPの人達は出払ってるし、この建物内に居る人間は限られてる。
その中でこんな声の奴は知らない。そうなると、部外者って可能性が高い。それにこの変に作った声は、その怪しさを倍増させてる。
「そうです〜気にしないでください」
「そうは言っても……」
怪しい奴を放っておくことも出来ないからな。俺は後ろの二人に目配せをして部屋の中に入ってく。口を手で押さえて小刻みに呼吸しながら真っ白な中を進む。そこまで大きな部屋じゃない。てか換気扇あっただろうし、使えばいいのに……そこら辺怪しいよな。
わざわざ換気をせずにこの煙を充満させたままになんて……ん?
(これ……煙じゃない?)
よく考えたら煙くないな。それに目に染みないし……むしろなんか目にゴミが入ったようなそんな感じが……これ小麦粉か何かか? 取り敢えず火とかを使ってないのなら、火事とかになる心配は無いな。
この建物事態を無くそうとする過激派では無いってことか……緊張しながら慎重に進む。真っ白でも近づけば人影くらいは見えるだろう。それは向こうも同じかも知れないが、今の所役にたった感覚ないし、そろそろ手柄が欲しい所だ。俺的に。向こうが仕掛けてこないのは一人だからって可能性あるし、それならなんとかなるかもだろう。俺が時間を稼げば、ラオウさんとかが援軍に来てくれるだろうし、そうなればこっちの勝利だ。
そう思いながら進んでると、突如ガツンと脛に衝撃が!! 攻撃か!? いや、多分中央に置かれてたテーブルの足にでもぶつかったんだろう。なんとか声は殺したが、警戒心なくぶつかったからかなり痛い。
片足で跳ねてたら、今度は別の障害物に俺はぶつかった。そしてそれごと盛大にコケる。今度は流石に声を殺すなんて意味ない。盛大な音が響いたからな。だけどそれと同時に俺は奇妙な声も聞いてた。それは「きゃ!」と叫ぶ可愛らしい声。その声には聞き覚えがある。
そして最悪な想像が頭をよぎる……
(まさか……まさかまさかまさかまさかまさかまさか愛までも人質に!?)
俺は思わずそのぶつかった何かを押しのけて前方に進もうとした。するとその瞬間、額に衝撃が走って後ろにのけぞる。ゴチンと嫌な音が脳内に響き渡ったからその衝撃を察して欲しい。
「いっつぅぅぅぅぅぅぅ……」
そんな声を上げながら目を細めると、前方に黒い影が……多分あれに今度はぶつかったんだろう。そう思ってると向こうも「つうううううう」と言いながら頭を抑えてる様に見える。
(まさか犯人か?)
俺は唾を飲み込んで掴みかかる。抑えこまないと! 俺は意を決してその影に飛びかかる。大丈夫。思ったよりも小柄の様だ。それになんか柔らかいし、力もそんな無いようだ。取り敢えず全体重を掛けて床に押さえつけて、外の二人に声を掛ける。
「よし! やったぞ! 煙をなんとかしてくれ!」
その合図で二人の足音が内部に入ってきて、そして暫くすると窓が開いたのか、空気の流れが変わった。充満してた白い粉が窓から流れでてく。
「よし、これでようやく犯人の顔が拝める……な?」
「んーんー!!」
あれ? なんか俺が押さえつけてる奴が愛に見える。いやいやいや、そんな訳無いだろ。愛はきっと部屋の隅とかで震えてるはず……そう思って辺りを見回すけど、押さえつけてる奴以外には居ないようだ。
「え〜と、って事はまさか愛なのやっぱり?」
「そうですよ秋君!!」
「ご、ごめんなさい!」
俺は即効で愛から離れて土下座する。こういう時は迷っちゃいけない。謝る時は全力で謝るんだ!
「うう、秋君に圧死させられるかと思いましたよ」
「それよりも何やってたの愛?」
「それはですね……」
なんだかモジモジしだす愛。調理場でやることなんか一つしかないような……そう思ってると天道さんが呟いた。
「見るに料理をしようとしてたんじゃないかしら?」
「お恥ずかしながら……けど私、料理とかはあまりやったこと無くて」
それで失敗したと。まあ本物お嬢様だしな。それに箱入りだ。包丁とか持ったこと無いんじゃないかってくらいだしな。そりゃあ粉もばら撒くな。
「そう言えばこの方は?」
「ああ、えっと当夜さんの幼馴染の天道さんだよ。LROへの出資会社でもあるんだっけ?」
「まあ大体あってるわ」
「そうですか。お見知り置きを。私は藤堂愛です。えっと……秋君の彼女…でもあります」
それは言う必要があるのか? まあ嬉しいけど。だけどそこは華麗にスルーして天道さんは「よろしく」と手を差し出した。まあそうなるよね。二人が和解してると、更に二人ここに来た。日鞠とラオウさんだ。
「何やってるの皆? 遅いから心配したよ」
「ですから昼食は私が食べやすい物を作ると申した上げたのに……」
「ごめんなさい……」
愛はラオウさんのため息に申し訳なさそうにそう答える。まあ確かにこれは申し訳ないな。部屋中粉まみれだし。片付けとか大変そうで、調理できる場じゃない。
「ご飯は後でいいよ。奴等に動きがあったからそれどころじゃない」
「何?」
日鞠のそんな一言で緊張感が走る。愛は現状をどこまで知ってるのか知らないが、それなりにラオウさんに聞いてるのか、ついてこれてない訳じゃなさそうだ。で、動きってなんだ?
「これよ」
そう言ってスマホを見せる日鞠。そこには動画があって、再生ボタンを押すと、悲痛な声と断末魔の叫びが轟く映像が……まあ対象は足しか映ってないし、それからも頑なに体全体を写すような事もなく、部屋の周りをとったり時々外がみえたりでどんな酷いことをされてるのかはこの声で想像するしか出来ない映像だ。
だけど……これだけで十分……
「ヤバそうだな」
「そうかもね。でもそうじゃないかも。取り敢えずこれは大きいわ」
「何がだ?」
俺のその質問に返してくれたのはラオウさんだった。
「外の風景が幾つかありました。窓から見える些細なものですが、その風景で粗方の場所の予想が付きます。それをタンちゃんが調べてくれた奴等の追跡映像と照合すれば––」
「場所が特定できる!」
頷いてくれるラオウさん。なるほど、それは朗報だな。でもそこで日鞠がこういう。
「でも向こうはさっさと情報を寄越せって言ってるわ。真実の情報をね」
「それってお前が盗聴器の前で散々嘘の情報混ざるとか言ってたからだろ」
ほら裏目に出てるじゃんか。どうするんだよ。すると日鞠の奴はやけに余裕ぶってこういった。
「そうかもね。だけどそれでいいんだよ秋徒。言葉は大切だけど言葉だけで真実は分からない。だけど言葉で伝わる物は多大にある。嘘と真実、建前と本音、それらをどう解釈するのかは受け手側の自由だよ。
彼等は結局、私の言葉の何が嘘で真実かなんかわかりっこない」
なるほど……無闇に真実を言ってた訳じゃないって事か。確かに誠実に話してても伝わらないことってあるよな。それは受け手側の問題だ。それに最初に日鞠は宣言してた。「聞かせたい奴には聞かせとけばいい」って。
そんなの堂々と言う奴の言葉のどれを信じればいいか……向こうからしたら厄介だろ。真実、本当の事ばっかり日鞠の奴は車で喋ってたけど、聞き手側からしたら、あんな宣言した奴が、そこまでベラベラと喋ると思えるだろうか?
日鞠はずっと誘導してたのかもしれない。奴等が真実を聞き逃すように……すると日鞠は一歩を踏み出し宣言する。
「さあ、反撃の狼煙を上げよう」
まったくこいつは……俺達は顔を見合わせてそれぞれ一言「はい!」やら「おう!」と声を発した。
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