命改変プログラム

ファーストなサイコロ

立ち向かう勇気

 鋭く大きな牙が迫ってくる。開いた口はブラックホールの様で、飲み込まれたら終わりの様な気がする。まあ実際終わりだろう。なんか奥から変な熱気と言うか、熱量を感じる気がするし、そもそもこの牙で噛まられたら皮膚グチャ骨バキッ内蔵メキョッだしな。
 そんな口が間近でガキンという音と共に閉じられては冷や汗ダラダラだ。広くなったとはいえ、流石に追いかけてくる奴には手狭な通路。デカイ恐竜型のロボットは首を伸ばして僕達を食べようとする度に、壁を削って瓦礫を落としてく。


「くっそ! なんだあれは!」
「デッカイこれでしょ。それよりも問題なのは更新された内部地図がおかしいって事よ」
「どういう事だ助手?」
「自分で確認してよ!」


 その言葉に所長が指輪を操作してる。こっちはあの指輪無いから確認しようもない。てかこのロボットを操作してるのもフランさんか所長だからな。僕達は実際しがみついてるだけだ。
 こっちも状況を理解したいけど、それが出来ないのはもどかしい。


『問題ってのは多分更新された内部地図がおかしいって事に姉ちゃんは気付いたんやろな』
「何?」


 ってそうか、この目玉ならこのロボット達が受け取った更新内容を見れるのか。僕はどさくさに紛れて僕とクリエの間に入ってる目玉に詳細を求める。


「おい、おかしいってどういうことだよ?」
『簡単や。自分等が使ってるこいつらに送られてきた内部地図が自分達の移動してきた場所の印と合致してへんのや。所々の壁に更新された標識が有ったんやけど気付いとらんのかいな』
「うっ……それはまあ置いといて。それって……パチもん掴まされたってことか?」
「まあパチもんっつうか、嵌められたっぽいんやな」


 だからパチもんだろ。変化した内部とは違う地図をこのロボット達に配布したんだ。そのくらい第一に奴等なら出来そうだ。そしてそれはきっと僕達をミスリードするため……待てよ!


「フランさん、地図がおかしいって気付いたのはついさっきですか?」
「ええ……おかしいなっては思ってたんだけど、確信が持てなくて……」
「じゃあ、僕達はもう結構敵の思惑通りに走らされたって事にならないですか?」
「どういう事よ?」


 後ろの五月蝿い奴を一度見て僕は前に視線を向ける。


「だから最初は更新された地図を元に出口を目指してた筈ですよね? だけどそれが間違いだったって事は、向こうは僕達を捕まえる準備をしてるって事です。そして僕達犯人が脱出する為に出入り口を目指すのはわかりきってる。
 それならじゃあ間違って更新された地図の出入り口の場所には一体何があるのか……わかりませんか?」
「まさか待ち伏せ!?」


 僕は頷く。


「それしか考えられない!」
「ルートを変更するわ!」


 そう言ってフランさんは表示してる地図をなぞってる。アレでルートが変更出来るのか? てかもしもそうならこのロボット達って自動で走行してるんじゃ? 地図を使って目的地とルートを設定しての自動操縦って感じに……よく避けてるな。
 もしかしたら危険が迫ったら避けるってのは元から組み込まれてるの機能なのかも知れない。そうでないと説明つかないよな。クリエとかしがみついてるだけだし、それに流石にフランさんや所長がこんな上手く複数の固体を操ってるってのもやっぱ無理があったよな。
 自立式なら納得できる。


「くっ、目的地が無いんじゃどうすれば……取り敢えず逆方向にでも逃げるでいいわね?」
「今はそれしかないです。その地図に表示されてる出入り口から遠く離れれば取り敢えずは……」


 助かる……か? 楽観的かな? このティラノサウルスみたいなロボットが出てきたって事はそれなりに本気になったって事だよな? まあそもそもこのインテグの件が第一の奴等にバレてないとしても、向こうははなから僕達を逃がす気なんかないよな。
 この研究所で研究されてる内容はどれも国家機密の様な物だろうし、その情報を盗みに来たと思われる奴等をみすみす逃がすなんてあり得ない。
 ハッキリ言ってこのティラノサウルスみたいなの完全に殺しに来てるくせに警告の一つしないって……この研究所内では泥棒は極刑なのかもしれない。ここで研究されてることの重要性に比べれば、盗人の命なんて……ってことじゃないだろうか? 逃げられて情報を外に持ち出される位なら、殺してしまえ––がここの共通認識かも。


「取り敢えず次の横道に入るからしっかりみんな捕まってて!」


 そんなフランさんの言葉に僕は気を引き締める。少し先に確かに横道に逸れる場所がある。あそこから別のルートに入るつもりだな。後ろから追い詰めてくるデッカイロボットの攻撃をかわしつつ、その距離が縮まるのを待つ。
 後五メートル……三メートル……一メートル––ここだ! 真っ直ぐに行くと見せかけて……とかやろうと思ったが、予め決めたルートを正確になぞるのがこの恐竜型のロボットだった。
 その横道に対してまずは逆の壁際に寄ってそこから綺麗に入ろうとする。だけど察せられたのか、その横道に入る間際に追いかけて来てたティラノの顔がヌッとその横道をとうせんぼしやがった。そして大きく口を開けて威嚇する。
 すると自分達で危険と判断したのか、咄嗟にロボット達はルートを元の道に戻した。


「ちょっ!? なんでよ!」
「いまのはしょうがないだろ助手。こいつ等の判断が正しい。次に切り替えろ!」
「分かったわよ」


 そう言われてフランさんはまた地図と向き合う。だけどそれから何度かルートを変更しようとしたけど、その度に妨害が入った。まるでこっちのルートを誘導してるみたいにだ。いや、これはみたい––なんかじゃない。確実に誘導されてるだろう。
 ガブガブと無駄に口開いて噛み砕こうとしてた奴が、こっちがルートを変えようとした時に限って先回りしやがる。そこには他の誰かの意思さえ感じる程……待てよ。


「おいインテグ。あれってまさかオートじゃないのか?」
『その可能性はあるわな。別にオートだけやないし、マニュアル操作だって出来るはずや。奴を通して自分等の様子も見てるやろうしな』


 そういうことか……どうやらここの奴等は何があっても僕達をある場所へ誘導したいみたいだな。多分そこに誘い込めば一網打尽に出来る罠とかが待ってるんだろうな。早くどうにかしないと不味いな。


「こいつ、私達を似がす気無いみたいね。強制的に前のルートに戻されるわ」
「それならタイミングを見計らって動きを止めればいいだけだ。俺の咆哮を使え」
「確かにリルフィンの咆哮なら数秒位時間が稼げるな」


 それなら行けるかも次のタイミングで妨害される前に咆哮でこのデカブツの動きを縛れれば……リルフィンの咆哮には実績もあるしな。更にはこいつの強靭な糸を組み合わせれば、このデカブツだって縛れるんじゃないだろうか?


「こんな奴に俺の毛を使うのは勿体ない」
「どんなプライドだよ」


 背に腹変えられないって言葉知らないのか? 逃げれる要素は一つでも増やしておきたいだろ。勿体ないじゃなくて使えよ! あっ、ふふ〜〜ん。


「自信がないと。なら最初からそう言えよ」
「ふざけるな。俺の毛ならあんな奴を縛るのなど訳はない。だがな、その価値がアレには無いだけだ」
「価値ね〜はいはい、そういうことにしておいてやろっかな? まあ価値ないもんね」
「貴様、俺を煽ってるつもりか?」


 バレてるか。でもここまで言われてやらないなんて言わないよな? リルフィンもプライド高いしやってくれるだろう。確率は少しでも上げておきたいからな。咆哮は強力だけどさ、物理的な縛りも合わさったほうが良り確実だろう。


「そこまで言うのなら、この一本で縛ってやる」
「それだけか?」
「これで十分なんだよ」


 まじかよ? リルフィンの奴は余裕そうにそう言うけど、にわかに信じられないぞ。向こうは天井に届きそうな位にデカイのに、その毛は長いけど一メートルあるかないかだろ。物理的に長さ足りないとかそこはきっと突っ込むところじゃないんだろうな。


「なんでもいいわ。確実にやれるっていうのならね。取り敢えずもうすぐだから準備してて。これでルートを変更できないと、もう跡が無いわ」
「つまりは次が最後のチャンスってわけか……」
「そういうことね」


 無駄に何回も失敗しすぎたな。もっと早くに対策するべきだったけど、まさかこっちもただルートを変更するだけでこれだけ妨害されるとは思ってなかった。てかここまでこの後ろの奴が器用だとは思ってなかったんだよな。デカイ癖に要所要所では細やかなキレを見せやがる。
 それはやっぱりオートじゃないって事なんだろう。奴の行動の底に見える人の思惑って奴が僕達を手こずらせた。だけどもうそうはいかない!


「こっちは細かなコントロールは出来ないから、通路に入るモーションをし始めたら咆哮で奴の行動を止めて!」
「分かってる。任せろ!」


 緊張が走る。これは失敗できないんだ。僕達の乗る恐竜達は再び壁際に体を寄せてく。この時に空いた逆スペースに多分このデカブツは潜り込んで強引に僕達の道を邪魔しやがるんだよな。
 だけどそこでガクンとデカブツの態勢が崩れる。そしてそのまま前に凄まじい衝撃と共に倒れた。


「危な!!」


 ホントマジでこっちまで潰されるかと思った。だけど確実に足は止まったな。なんかリルフィンが得意気な顔してるからこいつがきっと何かしたんだろう。まさかあの細い一本の毛でこのデカブツを転ばしたとか? こいつの毛はなかなか凄いからな、無くはないかも。しかもどこにだって設置できる様だし、足を引っ掛ける位造作も無さそうだ。
 これなら咆哮が無くてもなんとか行きそうだな。このデカブツってデカイ癖に前の手はちっちゃいから起き上がるの大変そうだしな。しかもこいつがギリギリ動けるだけの広さしか無いんだ。
 一回コケたら地力での復帰は中々難しそうじゃないか? 


「今のうちだ!」


 リルフィンのその言葉にフランさんがロボット達の加速を促す。だけどそれをよしとしないデカブツは倒れたままデカイ口を開く。するとその奥から突起状の物体が見えた。なんかいやな予感がするな……ミサイルみたいに見えるし。
 だけどまさかそんなこんな狭い場所でんなもんぶっ放す訳が…………ジュゴゴゴゴゴゴという音と共に、ガタガタと震え出すそれ。それと同時に煙の奥から黙々と白い煙が出てきた。おいおい、これってまさかだけどやっぱアレじゃないのかな? てか既に出てきてるっぽいし、やっぱアレだろ。マジでこんな場所でぶっ放す気か?
 ここは第一研究所でそっちのホームなのに打っちゃうのかミサイルを!? 僕は大きな声で叫ぶ。


「不味い! やばいのぶっ放す気だぞ!!」
「任せろ!!」


 リルフィンの奴がそう言って大きく息を吸い込む。そして次の瞬間、音が消し飛ぶ程の何かを叫んだ。いや、咆哮なんだろうけど、今までのとはなんだか違う。それか流石に何回も
聞いてるからか耳がおかしくなってきたのかも。
 そう思ってるとリルフィンの咆哮を受けてデカブツの顔のディスプレイ部分が明滅しだす。やっぱりどこか回路部分にでも影響を及ぼしてるのだろうか? 変な駆動音がどこかからかしだして、デカブツはそのまま口を閉じる。
 すると飛び出し掛けてたミサイルっぽいのを自分の口の中で阻む形に––そして激しい衝撃とと共に、デカブツの頭部が吹き飛んだ。


「おおラッキー」


 頭部なくしたら流石にもう動くことはないだろう。どっかのゾンビとかじゃないんだろうからな。きっと大丈……夫? あれ、なんだか関節部が異常に回転しだしてる様な音が聞こえる。まさか……アレで動くのか? 頭ないんだぞ?


「まだ殺れてない?」
「別に良いわよ。十分逃げれる。私達の勝ちよ!」


 確かにこれなら余裕で別ルートに入れる。倒せてなくても、僕達は奴等の罠から逃れれる。それが大切なんだ。だけど……その時先に別ルートに入ってた所長の震える声が聞こえてきた。


「まさ……か! そんな……」
「なんだ? どうし……た」


 ドスン! と響く振動。暗闇の先から光が微かに走ってるのがみえる。そしてその僅かな光を讃えてもう一体のデカブツが姿を現す。


「そんな……」
「こんなの反則だよ!」


 目の前に現れたデカブツのせいで僕達の乗るロボット達が進路を見つける事が出来なくて足を止める。やばい、多分このままだと元のルートにこいつらは戻ってしまう。多分それが向こうの狙い。
 てか、ここが最後のその場所への分岐なんだ。何も保険を掛けてないなんて思うほうが都合がよかった。んな訳ないだろう。こっちよりも第一の奴等のほうがこの建物の事を熟知してるはずだからな。
 僕達が向こうの狙いに気付いたのなら、どこで勝負に出るかとか向こう側も分かってるはずだったんだ。


「やられたな……」
「どうする?」
「どうするも何も、このままだと元の木阿弥だ。突破するしか無い!」
『嬢ちゃんそりゃあ無理やで! あの大きさみいや。嬢ちゃん達の何倍もデカイんやで!』


 五月蝿い目玉だな。だけどそれしか無いじゃないか。元の通路には頭が無くなった恐竜がゾンビの如く這ってるから戻ることも出来ないんだ。そしてこっちは通せんぼ……残ってる道はあからさまに用意された道しかない。
 わざわざ罠だとわかってる所に飛び込む位なら、このデカブツをなんとか倒すほうが……って、何? 僕達の乗ってる恐竜達が踵を返して反対側の通路を走りだす。


「おい、所長アンタびびったのか!?」
「なんで俺だ! 助手!!」
「私でも無いわよ! なんで? どうして勝手に動いてるの? 駄目、操作を受け付けないわ!」


 どういう事だ? 一体何が起こってる。


『ハッキング返しやな。自分等がしたことを逆にされてるんや。もともと向こうのもんやし、そのくらい出来て当然やな』
「こっちの足のコントロールまで第一の奴等に握られてるって事か……」
『気付かれたんやろな。一応情報を受け取るためにここのネットワークに繋がってたのが仇になったんや』


 ネット上に繋がってるって事は外から幾らでも攻撃できるってことだからな。そこら辺はリアルもLROも変わりないのか。


「どうするの? このままじゃ罠に飛び込む事に成るわよ!」
「だがあのデカイのに挑むのはどうなんだ助手?」


 この戦力ではキツイか……所長の意見には賛成だけど、でも罠に飛び込んだらそこは確実に万全な態勢で待ち構えてるはずだ。逃げ場なんてきっと無い。それならまだ一体しか居ないこいつと殺り合うほうが……でももどかしいのは僕自身が戦力で無いってことだ。
 それが一番言葉をつまらせる原因に成る。だって自分自身が先頭切ってあのデカブツに挑めるのなら声を大にして「奴を倒すぞ!」って言える。でも今の僕はリルフィンやましてやクリエにその役目を押し付けないと行けないんだ。
 そんな戦力にも成らないヘタすれば一番足手まといかも知れない僕が皆の行動を決めることなんか出来ない。ただの行動じゃない、これは戦闘なんだ。だけど誰かが言わなかったらこのまま罠の中に……クリエは僕を見てその判断を任せてるし、リルフィンの奴も気がかりはあるだろう。
 こっちの戦力は二人で、守らないと行けないのは四人も居るんだ。僕と所長とフランさんとそしてこの目玉。その四人を守りつつあのデカブツを倒すって負担は、戦闘経験の浅いクリエには任せられない。実質リルフィンが僕らを守りつつあのデカブツにメインで挑むことに成るだろう。
 それを出来るかって不安は流石のリルフィンでもあるはずだ。安易な言葉を誰も言えない……響き渡るのは双方の重厚な駆ける音だけだ。するとその時、高笑いが響き渡った。僕達は一斉にその声の方に視線を向ける。するとそこには所長が体を反らして天井に向かって声をあげてた。
 とうとうおかしくなったか? きっと誰もがそう思ったはずだ。すると所長は笑いを一度抑えてこういった。


「やるぞ貴様等。我等はこれよりあのデカブツを突破して目前の危機を脱出する!」
「ちょっ!? 本気なの?」


 まさか所長がそれを言うとはな。真っ先に安全を求めるタイプの癖に……でも実際良く見ると指先とか震えてるのが分かる。多分、いや絶対に怖いんだろう。だけど、誰かが判断しないといけない……それをわかってるから所長はその役目を買ってでたんだ。所長は必死に自分を奮い立たせながら、いままでで一番真剣な声で指示を飛ばし出す。


「本気だ! 助手、まずはこのロボのコントロールを取り戻すんだ。ネットワークを切断しろ。そしてローカルを構築するんだ。お前なら出来るだろ?」
「本気……ね。わかったわよ!」


 フランの指輪から大量のウインドウが現れるそれを再び組み合わせたり捨てたりすると、突然ロボ達の動きが止まった。っておい、このままじゃ後ろのデカブツに食われるか踏み潰されるかだぞ!


「おっ––!」


 僕が思わず声を出しそうになると、所長と目が合った。その目は力強くて、僕は思わず言葉を飲み込んだ。あれはきっと信じてるんだ。フランさんの事を誰よりも所長が信じてる。そうだよな……それなら僕達だってそれを信じるしか無い。そして信じてるから先を見据えて準備をするんだ。


「リルフィン覚悟は出来てるよな?」
「ふん、アイツにああまで言われたらな。やってやるさ」
「クリエも頑張れるか?」
「うん! クリエ今はスオウだから。でもスオウみたいには出来ないかもだけど、スオウみたいに頑張る!」
「ありがとうクリエ」


 何も出来ない僕はそれしか言えない。だけど不思議と立ち向かうと成れば心が座る物だ。クリエもリルフィンもやってくれる。所長達だってただのお荷物なんかじゃない。大丈夫、この五人なら……いやインテグいれて六人なら、いやいや小人も居たから七人ならなんとか出来るだろ。
 直ぐ後ろに迫るデカブツ。その口が開いて鋭利な歯が僕達に迫る。だけどその時関節部が勢い良く回転して体を落とし、そして一気に前方にロボ達は飛んだ。そして振り返り地面を滑りながらその勢いを殺す。


「よくやった助手」
「当然でしょ。それよりもこれからよ……やれるんでしょうね?」
「案ずるな……このマッドサイエンティストに付いてきた事を後悔なんてさせない。何も考えなくていい。リルフィンやクリエはそれぞれ最大の一撃を準備してろ。俺がそれを叩きこませてやる」
「所長……あんた何を……」


 まるで死ぬフラグ立ててるみたいだぞ。明らかに所長が所長じゃない位に頼もしくて格好良い。どうしたんだよ? だけどその言葉に明確な返事をくれずに所長は豪快にこういった。


「ふん! 付いて来い俺の後ろにな!! それだけで分かる!!」


 所長は進む。力強くロボを走らせる。僕達も訳がわからないけどそれについていくしか無い。すると距離を取ったデカブツは前傾姿勢を取り、大きく口を開く。やっぱりあのミサイルを撃ってくる気だ。
 だけどそれだけじゃなかった。尻尾を床に突き刺し、体を固定し、背中からは複数の砲台が組み上がる。口だけじゃなかったんだ。アレだけの数を打たれたらこの通路で逃げ場なんてどこにもない! でも所長は止まらない。真っ先に戦闘を突っ走ってく。


(まさか、自分を犠牲に?)


 そうとしか思えない。だけどそれじゃあ駄目だ。あの数だぞ。たった一人が盾に成ったくらいでどうにかなるものじゃない! 射出される全ての砲弾。その煙でデカブツの体が隠れて、砲弾は真っ直ぐに僕達へと向かってくる。


「ディオン!!」


 フランさんがそう叫んだ様な気がした。だけどそれを気にすることも出来ないよ。だってこれは……すると僕には先頭の所長が一本の銃を取り出したのが見えた。その銃は淡い光に包まれてた。
 あれは……まさか……オラソニック––


「重鎮は完了してる。我が発明にその目を震わせてろ第一研究員共!!」


 グリップが引かれる。それと同時に先端に集まってた光体が周囲に弾けるように広がった。その瞬間だ。僕達を残して時間が遅く進みだす。勢い良く飛んできてたように見えてた砲弾はその姿を焼き付ける事が容易な速さに成ってる。止まってるわけじゃない。だけど……これで十分だ!
 ロボ達は遅くなった砲弾の間をすり抜ける。そして抜けた所で二人が飛び出す。


「行くぞクリエ!!」
「わかってるよ!!」


 二人の雄叫びが重なりあう。攻撃はほぼ同時だった。リルフィンが前傾姿勢になってるデカブツの足を叩き潰し、クリエはイクシードを使いデカブツの頭をうねりで切り裂いた。吹き飛ぶ部品の数々。それらを尻目にリルフィンもクリエも颯爽とロボ達の背中に戻ってくる。
 そしてクリエは嬉しそうに笑顔を見せて、リルフィンは当然と言わんばかりの顔をする。そんな中で木っ端微塵にされたデカブツは爆発と共に炎上する。するとその爆発が遅くなってた砲弾とかを巻き込んで大爆発に。
 僕達は慌ててその炎から逃げるように第一研究所の闇に消えていく。

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