命改変プログラム

ファーストなサイコロ

前と後ろの選択

 逃げに徹する……そう提案する所長。だが確かにこの目玉に第一研究所の全てのデータが有るのなら、危険を犯して内部に潜り込み続ける必要はないだろう。それは分かる。だけど問題はこの体だよ。
 僕は今クリエで、クリエは今僕なんだ。これがどうしても慣れないって言うか……所長の奴はあの蛇を作ってやるって言ってくれてるけど、そんな簡単に他人が作った物を再現出来る物だろうか?
 そりゃあ既に確立されて市販されてるような錬金アイテムなら、きっと所長の腕でも造れるだろうさ。でもアレは違っただろう。「こんなの初めて見た」とか言ってたって事は少なくともブリームスでは出回ってない一品物って事だろ。
 貴重な材料とか使ってるかもだし、第一研究所の凄い製法で作られてるとしたら、完全再現なんて大変だろう。ハッキリ言って、不確定要素が多すぎるよな。そこまで所長の事信じれないって言うか……


「仲間じゃないのか? 俺達はチームだぞ。そこに大切なのは信頼だ! リーダーの俺を信じろ!!」
「ん? ちょっと待ってよ。リーダーって?」
「ん」


 自信たっぷりに自分を指差す所長。へぇ〜いつから所長がリーダーだったんだろう? 初耳だ。仲間だしチームって所はまあいいよ。確かにその通りだしね。僕達はそれぞれの目的の為に手を取り合った仲間でありチームだろう。だけど所長がリーダーって……


「何が不満なんだ? この中でリーダーを務められるのは俺しか居ないと思うがな」


 僕はチラリとフランさんを見るよ。すると彼女は申し訳なさそうな笑顔と共に「お願い」って小さく口を動かした。ホント苦労してるよね。所長が所長出来てるのってどう考えてもフランさんのお陰だよな。
 まあ裏のリーダーっていうか真のリーダーはフランさんって事で納得しとくか。ここはフランさんに免じてそれを受け入れよう。


「別にそれでもういいけどさ。マジでちゃんと作れるんだろうな?」


 そこが一番心配なんだよ。すると所長はどこから湧くのか分からないその自信でこう言い切る。


「だから問題ないと言ってるだろ。お前はまだ錬金と言うものを理解してないんだ。錬金は魔法とは違う。魔法は会得するのも上手く使うのも修練が必要だが、錬金は違うんだよ。魔法は使い手を選ぶが、錬金はそんな事はしない。
 誰もが使える。それが錬金だ。だから錬金には生産性も必要だ。市場に出回るものだからな」
「なるほどね。確かに錬金アイテムは店で買えるっぽいけど……アレはそんな汎用品じゃないだろ? 量産体制が整った物じゃない試作品って感じだったんじゃないか? それだと、市場に出すとか考えて作られてるか微妙じゃね?」
「それは……」


 所長の顔に陰りが落ちる。だって最初の方は「こういうことが出来たらいいな」って事を思い浮かべてそれが出来る物を作るだろ? そこには出来るか出来ないかしか無いと思うんだ。
 それで出来たからといってその工程を全て工場のラインで活かせる物でもないだろ。最初に出来るものってそれが出来る為に色々とぶち込んでる物だ。予算とか予算とか予算とかな。
 だから最初に出来た物で製造ラインとか無理に組んだら予算が大量に掛かる物を大量に生産することに成って大赤字って事に……まあ売れればそれでもいいんだろうけど、どう考えてもあの蛇の錬金アイテムってそんな売れる物じゃないよな。
 なんか一発芸的な使い方くらいしか思いつかないし、日常生活が便利に成るものでもない。あれを必要とする需要なんて早々無いだろ。だからあんまり無茶な値段なんて設定できないし、かと言って今のままじゃ生産段階で大赤字……いや、どのくらいの予算があれば作れるかは知らんけどさ。
 でも試作段階の物なら、ここからフラッシュアップしてコストダウンを目指すものだよね。そうしないと誰もが作れて使えるって物に成らないからな。


「おい目玉。あの蛇のアイテムって他人が作れる物なのか? 情報は有るんだろお前の中に?」
『そうやな〜まあやれんことも無いんとちゃうか? そこの兄ちゃん達の実力次第やな』
「実力次第か……」


 僕は小さくそう呟いて所長を見る。どうなんだろう? 実際凄いのかな? 全然そんな雰囲気ないんだが……でも能ある鷹は爪を隠すって言うしな。隠してるか微妙だけど……もしかしたらその可能性も僅かに有るのかも知れない。
 けどそれに賭けるってのはリスクがでかいような。だってきっともうここには入れないと思うんだ。そしてたらあの蛇の開発者と接触する事はきっともう叶わない。実際気になることもあるしな……ここで逃げに徹するのは正しいと思うけど、正解じゃない気がする。


「で、結局どうするのよ?」
「だからここはリーダーに従え。俺達はこれから第一研究所脱出に向けて動き出す!」
「ちょっと待て。気にならないのか? この目玉の事とか、どこかおかしい。ゴミを大量に捨てたあの人物をやっぱり追うべきだ!」
「それは貴様が元に戻りたいからだろ? 安心しろと言ってるのに、どこが不満なのか? わざわざ別の理由も持ってくるとは姑息だぞ」


 姑息って……本当に気になるからだっての。どう考えても目玉にこれだけのデータがあるのはおかしい。自分で使うためだとしても、何に使うのか聞いたって損はなくないか?


「そもそも接触はご法度だろ。俺達は隠密行動をしてると忘れるな」
「既に隠密ではないがな」


 リルフィンの奴が横からそう指摘した。てか既に一人と接触してるしな。所長達はおかしくなってたから知らないだろうが、さっきの部屋でここの研究員とギリギリ接触というか邂逅したよな。
 それに既に僕達は追われる身……こうなったら誰かを人質に取ったほうがある意味いいかもしれないじゃないか。もしもここの研究員のメビウスの指輪に構造変化のデータが送られてるのなら、それはとても欲しい物だ。接触は危険だが、壁をすり抜ける事が出来なく成った今……あっ


(やっべーそう言えば壁すり抜けられなくなったんだった)


 僕は薄暗い天井を見つめる。あの天井の向こうにフランさんのゴムは残されたんだ。それを所長やフランさんには言ってないな。あれが無いと逃げるのも厳しいし……絶対怒られるよな。


「取り敢えずリーダーである俺に従え。俺達はこれから脱出に向けて動き出す。それはもう決定だ!」


 その宣言の同時に通路の端の方で何かがぶつかる音が響いた。一体何が……そんな事を思いながらその方向を見ると、重低音な音を響かせて凶悪な姿が壁から這い出してくる。


「げっ!?」


 そう口に出した所長はさっきまでの威勢はどこへやら、即効で距離を取るために後方へ下がる。なんて頼りないリーダーだ。


「助手、早く道を作れ。逃げ道を早く!」
「はいはい––ってあれ? どこやったっけ?」
「助手!!」


 ゴムって小さいから実は二つ目が予備としてあるって事に期待したんだが、どうやらそういう事も無さそうだな。もしも予備があったら、別に申告しないでも大丈夫かな? って淡い期待を抱いたんだが……そうじゃないのなら言うしか無い。


「あの……実はさっきここに抜けるために使ったんだ。そして何故かさっきの場所に残っちった。てへ」
「つまりはもう抜け道を作ることは出来ないと?」
「端的に言えばそういうことに成るかもな」
「何やってんだ貴様は!」


 うう〜ほら怒ったよ。だけどな、こっちも言わせてもらえばお前たちがおかしくなったせいでも有るんだからな。こっちは見よう見まねで必死になって使ったんだ。だからこそ、今二人は正常に成ってるんだし、まだ捕まってもない。しょうがなかったんだよ。


「しょうがないわよ。それよりも何か役立つ物アンタは持ってきてないの?」
「くっ、仕方ないか!」


 そう言って所長は白衣にその手を隠す。まさか何か有るのか? そして次の瞬間銃っぽい何かを取り出した。機械的なそれはグリップとトリガーの先が丸っこく成っててとても弾丸が飛び出すような構造じゃない。
 なんだあれ? そう思ってると、所長がおしりの所をカチッと回すと、ギギギと少々おぼつかない感じで丸っこく成ってた部分が三つにわかれて開いた。まるで昆虫の足みたいにちょっと曲がっててなんか気持ち悪い構造だな。すると所長が得意気になって長ったらしい講釈をたれ始める。


「説明しよう! これは『オラソニック銃』と言って、なんと対象の物の速度を極端に遅くする事が出来るのだ!」
「おお! それは凄いじゃん!!」


 どうせ役に立ちそうもないヘンテコな発明品なんだろ? とかバカにしててごめんなさいだ。まさかそんな凄そうな物を発明してたとは……いや、既存品か?


「バカにするな! これは俺の発明品だ!」
「そうなんだ。てか良いからさっさとやってくれ!」
「ふっ……慌てるな。これは一撃撃つのにエネルギー重鎮に五分掛かる」
「ガラクタじゃねーか!!」


 くっそふざけんなよ所長! どう考えてもガラクタだ。戦闘中の五分がどれだけ長いかわかってない。五分も止まったまま待ってくれる敵なんて居ないんだよ! 


「ガラクタとは失礼な奴だな! 見てろよこのオラソニック銃の威力を––ってうおわあああああ!!」


 銃を構える所長に真っ直ぐに向かってその大きな口を開いた恐竜型のロボットみたいな奴。なんとか間一髪で交わしたが完全に所長狙いだぞそいつ。きっと銃を向けてるからターゲットに成ってるんだろうな。
 そしてオラソニック銃とかいう奴は青白い光を放ちながら三つの足の先端部分で小さな球体を集結させてる。だけどまだまだ小さい。ホタルの光よりも脆弱だ。まだ一分も経ってないからな……あれじゃあ駄目なんだろう。


「ひいいいいい!」


 情けない声を上げながら抜けた腰で這い這いする所長はすごく残念だ。まあ戦闘経験ほぼ無いんだから仕方ないだろう。しかもこの恐竜型のロボットかなり怖いしな。重厚そうな体に、躍動感を感じさせる動き。そして薄暗い通路で時々光が走る体の節々。良い演出してると思う。
 だからこそ強そうでもある。頑強そうだし……それに今の僕には力が……そう思ってると僕の横を僕が通り過ぎた。いや、だから僕の横を僕の体のクリエが通り過ぎたんだ。


「クリエがスオウの分まで頑張るんだ!」


 そう言ってクリエの奴はセラ・シルフィングをその両手に握りしめて敵へと向かう。使えるのか? って思ったけど、セラ・シルフィングの攻撃力なら別に適当に振っても真っ二つ位には出来るかも知れない。
 それにあんまり無茶はさせたくないけどさ、あれってボスレベルの敵じゃなくこの街の設定から言うと雑魚––とまでは言わないまでもそれなりの量産タイプぽいからな。その程度の相手ならクリエの奴にもどうにかして貰いたい所ではある。
 流石にリルフィンの奴一人じゃ数で来られたらキツイからな。それに多数を相手にするならイクシードの方が向いてるしな。使えるかは知らんけど。


「いけえええええクリエ!」
「やああああああああああああああああああ!」


 僕はクリエの背中を後押しする様にそう叫ぶ。そしてそれに応えるように声を荒げたクリエが二本のセラ・シルフィングを同時に振り下ろす。だけど直前で恐竜型のロボットは素早く体を回転させる。そしてその力強い尻尾で僕の体を殴り飛ばす。


「きゃあああああああああ!」
「クリエ!!」


 悲痛な叫びがあがる。やっぱりクリエには荷が重い事なのか? だけどクリエの奴は案外根性が有る奴だった様だ。


「ええ〜〜〜〜い!」


 ヤケクソ気味にセラ・シルフィングの一本をロボットに向けて投げたクリエ。するとそれが案外ロボットの片足に直撃した。そしてやっぱり攻撃力は十分な様でそのどっしりとした体を支える二本の足の内の一本が削られた事でロボットは態勢を崩して床に大きな音と共に倒れ伏した。


「やっ、やったよスオウ!」
「おおう、凄いぞクリエ!」


 まさか本当にやれるとは思ってなかった。でもそういえばクリエの奴は中々凄いやつなんだよな。その潜在的な力がって事じゃなくさ、その行動力とか心がってことね。そもそもこの小さな体で全く知らない外の世界に飛び出せる程の勇気を持ってるやつだ。やれて当然なのかもな。所長たちよりもビビってもないし。まあそこら辺はやっぱり馴れだろうけどな。


「安心するのはまだ早いぞ! まだ動いてるんだから!」


 所長はリルフィンの足にしがみつきながらそう言うよ。お前な……なんでリルフィンじゃなくクリエが飛び出したのかと思ったら、お前のせいかよ! 一番今戦闘力あるからってそいつを行動不能にするなよ。
 片足が無くなった恐竜型のロボットはまだ確かに動いてる。ガリガリと残った片方の足で床を削る勢いで動かしてズリズリと向かってきてる。ある意味でこっちの方が迫力あるかも。ゾンビ的というか……


「完全に破壊するから退け!」
「うげっ!?」


 勢い良く振り払われた所長。そしてリルフィンは自身の武器をその手に握る。鋭利な棘が周りに着いた棍棒みたいな武器。あれで叩き潰す気なんだろう。だけどその時目玉の奴が飛び出した。


『ちょい待ちや!』
「おい?」
『嬢ちゃん達は脱出したり、マスター追ったりしたいんやろ? それやったらこいつは使えると思うんやけどな』
「何?」


 目玉の奴は近づいたロボットに向けてその目を見開く。すると普通の魔法陣とは違う紋章なのか模様なのか分からない感じの物が床に浮かぶ。そしてその中でロボットがビクンビクンと痙攣し始める。


「何やってるんだ?」
「さあ? だけど使えるとか言ってるから情報を抜き取ろうとしてるのかもな」


 その線が有効だな。でも確かにそれが出来たら中々良い。てかよくよく考えたらアイツの中にはこの建物の構造変化に対するデータとは無いのだろうか? 全てって言ったら有りそうだけどな。


『自分今はこの建物のシステムから切り離されとるかの。更新情報は受け取れんのや。それよりも嬢ちゃんはあんまり近づかんでくれへんか?」
「なんでだよ?」


 なんかちょっとショック。まさかこいつに拒否られるとは。そんな事あり得る筈もないと思ってたのに。


『嬢ちゃんは気付いてないようやけど、なんか変な電波発してるで。錬金と相性悪いわ』
「どういうことだよ?」
『さあの、でもなんか調子悪く成るねん』
「なんだそれ? じゃあもう近づくなよ」
『それは無理や。大丈夫自分の愛はそんなもん屁でもない!!』


 愛って言うか女好きなだけだよなこいつ。だけど錬金と相性悪いか……でも確かにそんな場面が多々有ったような気がしないでもないな。


『ちょっとそこの姉さんと白衣の奴来てくれんか? 指輪を持った奴が必要なんや。それとちっこいのも手伝えや』
「了解です〜」
「えっえ? 何?」


 やっぱ小人には目玉の声が聞こえるのか? 小人がくいくい服を引っ張るけどフランさんは分かってないからちょっと戸惑ってる。小人って喋れるけど、なんだか舌足らずだからな。僕が補足してあげよう。


「目玉が手伝って欲しいんだってさ」
「手伝うね……どうするればいいのかしら?」
「行けば分かるんじゃない?」


 こっちは近寄ることさえ拒否られたからそこら辺はわからないよ。フランさんが歩き出して目玉の側に。だけど所長その場に居た。そういえば所長も呼ばれてたな。


「おい所長。アンタも呼ばれてたぞ」
「まだ動いてる。危険だ」


 そう言ってロボットを凝視してる所長。おいおい、ホントにマッドサイエンティストかこの人は? もう自称もやめたほうがいいんじゃない? と思うレベルで情けないぞ。女のフランさんが近づいてるんだぞ。
 ここで怖気づくなんて男としてどうなんだよ。


「その危険にフランさんだけ晒していいのかよ?」
「助手なら俺が認めた唯一の人材だ。問題ない」
「あのな……」


 問題大有りだ。全くまさかここまで情けない奴とは……僕はしょうがないから危機感を煽ってやることに。


「はぁ、所長がそんなんならフランさんが第二に就職希望するのもわかるかも。今の所長の姿見てたら、さっさと見限った方がきっとフランさんの為にもなると思えるよ」
「んなっ!? ……くっ、バカにするな!」


 そう言って立ち上がった所長は震える足をなんとか前に出してロボットに近づいた。するとフランさんと所長の指輪が反応して前方にウインドウが開いた。それを見て二人は互いを見合わせる。


「「これは……」」
「奪うです〜書き換えるです〜ヤレヤレです〜〜」


 小人がそんな事言いながらロボットの頭部にかぶりついてる。するとその言葉で何かを理解したのか、二人はその開いたウインドウを触りその左右に更に何かを表示させる。そしてそれは更に枝分かれしたりしてるんだ。
 何がなんだか僕には理解できない。だけど、それに二人は何かを書いたり置き換えたりし始めてた。取り敢えず何をやるかは理解したって事だろう。よくわかんないけど、期待するしか……


「ちょ! スオウあれ!!」


 そんなクリエの言葉で指さした方を見ると、更に三体の恐竜型のロボットが……しかも後方からも更に数体……そして遂にはワラワラと第一研究所の小人達がサイレンを鳴らしながら集結しだす。これはやばいな……壁抜けが出来ない以上、全部を蹴散らすしか無いぞ。だけど数は圧倒的に向こうが多い。まだロボットの数はそれほどでも無いが、ここは第一研究所のホームだからな……どれだけ出てくるか予想できない。


「おい、まだ終わらないのか?」
『ちょっと待っててや。今大事な部分なんやで』


 そんな事言ってる間にこっちは逃げ場なくなってるからな……


「しょうがない後方はお前たちに任せる。前方は俺だけで死守してやる」
「わかった! クリエ頑張る!」


 確かにそれしか無いか。僕は一応、何が出来るかわからないがクリエ側にいよう。すると動き出そうとした僕達に向かって目玉の奴がこういった。


『嬢ちゃん達、このキモいのは壊さんといてな』
「はあ!? ロボット壊すなってお前それ無茶だろ!?」
『生き残りたいんやろ? それなら言う通りにしてや。そうすれば切り抜けられるで!』


 なんだこの目玉の自信。僕はフランさんや所長にも視線を送る。すると二人共頷いた。ようはそうして欲しいって事か……でもそんな事出来るか?


「壊しちゃ駄目なの? どどどどうすればいいのかな?」
「無茶な要求を……だが出来んことも無いかもな」
「マジかリルフィン?」


 一体どうするんだよ? ロボットは数えれる程度しか居ないが、小人共は数えるのも億劫に成るほど溢れてるぞ。流石に全部が纏めて来たら厄介だろ。しかも壊すなって……


「捕縛する手段はある。クリエ、お前今イクシードは使えるのか?」
「た……多分?」
「よし、それなら発動させろ。威力は無くていいんだ。ただ暴風をこの空間に発生させるだけでいい」


 そんな指示が飛んでクリエは取り敢えずイクシードを宣言する。そして刀身に集まる風のうねり。クリエはその二つのうねりをそれぞれフランさん達と同じ場所から前と後ろに向ける。まあ狭いからこれでも暴風ってな感じには成るかもな。するとその風で小人達は「あわわ〜」と言いながら宙に浮いてた。その中で動けてるのはロボットだけだ。
 なるほど、これで分離させるわけか。でも捕縛は一体どうやって? そう思ってると風の中を強引に進んできてたロボット共も突然動きがぎこちなく成って足が宙に浮いた。まるで何かに縛られるような……


「俺の毛は何者にも切ることは出来ん」


 そう決めたリルフィンの武器からは細い糸がいくつも出てるのが見えた。しかもそれは壁とかをすり抜けて縦横無尽に張り巡らされてる。そういえばこんな事出来たな。リルフィンがホントなんだか頼れる感じに成ってる。
 無茶な条件はクリアした。さあこれからどうするんだ? 


『さあ二人共いきや!』


 そんな目玉の声はフランさんも所長も聞こえちゃ居ないだろうけど、光が収まったと同時に二人は糸に絡まってるロボット達に近づいてその指輪を頭部にかざす。それだけで今まで必死に暴れてたロボットがおとなしくなった。


「一体何をしたんだ?」


 僕は二人にそう聞くよ。すると二人は一仕事終えた誇りを胸にこう言った。


「何をしたって? 教えてあげる」
「奪ってやったんだよ。第一の奴等からこの発明をな!!」

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