命改変プログラム

ファーストなサイコロ

双頭の蛇

 奈落へと落ちるクリエに手を伸ばす。クリエの奴もこっちに必死に手を伸ばしてる。でもまだ遠い。僕はセラ・シルフィングに逆の手を添えて、風を足に集めて、宙を蹴る。


「クリエ!」
「スオウ!」


 ガシッとクリエを抱きとめる。するとその直後、僕達の体が何かに支えられた? 腹の所に何かが巻き付いて来たような……内蔵を押しこまれて「ぐえええ」ってな感じに成りながらも僕は振り返る。
 すると青いロープみたいなのが僕達を支えてるのが見えた。こんな長いロープ持ってきてたっけ? って感じだけど、これも錬金で創りだしたアイテムなのかも知れないな。それなら普通のロープとは色々と違うんだろうし、頼りに成るものなんだろう。
 実際、どうやって僕達を捕まえたんだよって話だしな。このロープ別に先端に何かがついてる訳じゃない。それなのに僕の体に巻き付いてしっかりとホールドしてる。どうやったんだよ……だろ。
 このロープ自体に何か仕掛けが有るんだろうな。


「スオウ……怖い」
「だから離れるなって言ったんだ……でもまっ、もう大丈夫––うっ!?」


 安心しきってた所でロープの張りが無くなった。再び落下が始まる。一体どうして? そう思ってると答えが自ら降ってきた。


「わああああああああああああああああああああああああ!」
「きゃあああああああああああああああああああ!」


 リルフィンは別として、所長とフランさんが悲鳴あげて僕達を追いかけて来てる。てか何でだよ! リルフィンの奴が居るんだし、支えきれない筈ないだろ! しかもこっちは二人に向こうは大人三人だろ。どうして落ちてくる? 理由が分からん。


「お前等もっと踏ん張れよ!」
「五月蝿い、吐き出されたんだからしょうがないだろ!」
「吐き出された?」


 どういう事だよ。だけどそれに疑問を持ってる場合では無いかもしれない。このままどこまでも落ちていくのは不味いだろ。てか、マジで終りが見えない奈落だ……毎回毎回変化するんならさっさと変化して安定させろよ。なんでずっとバラバラなんだ? 


「うひゃひゃ~力の干渉を感じるです~地力で何処かの空間に入るです~」
「地力でって……」


 フランさんの肩に必死に捕まってる小人がそう言う。力の干渉って事はそのせいでこの第一研究所の内部生製が上手く入ってないって事か……僕は辺りを見回す。どこか適当な空間は無いものか探すんだ。


(アレは……)


 するとそれなりに大きな塊になってる空間を発見した。距離も手頃な所だし、取り敢えず一度彼処に着地するのが妥当だろう。誰も居なけりゃいいけど……取り敢えず目を凝らして中を見てみる。


(人は見えないな……よし)


 取り敢えずアレを目指すことに決定だ。


「あの空間に入ろう!」
「おいおいどうやって今の状態で動くんだよ?」
「そうよ。空飛ぶアイテムは無いわよ」


 そう言う所長とフランさん。なんだよ、結構進んでると思ってたけど、個人で飛ぶアイテムはまだないの? まあだけど問題ない!


「大丈夫、しっかりこのロープ掴んでてくれればね」


 僕はそう言って今度こそセラ・シルフィングを一本だけ抜く。ある意味このロープは都合いい。これさえあれば、全員を引っ張れるんだからな。


「ちょっと握ってれば良いってどういう––ひっ!?」
「うおおおおおうおおおおおお!」
「そのまま絶対に放すなよ!」


 僕はイクシードを発動させて風を纏い、それを足に集めて蹴りだした。全員を引っ張って奈落を走り、目指す空間に飛び込む。


「とう!」
「がは!?」
「ぐへ!?」
「きゃ!」


 無理矢理引っ張ってきたからか、僕以外の奴等は尽く着地に失敗して悲惨な状況に……取り敢えずフランさんだけは救ったけどね。女の人だし、傷つけるわけには行かないだろ。所長は僕に感謝すべきだな。


「あ、ありがとう……案外力持ちなのね僕」
「まあそれなりにですよ。それに風を操ってフランさんを受け止めてるから、重量を殆ど感じない程に成ってるんですよ」


 だからこそ片手で行ける訳だしな。もう一方にはクリエ持ってるし、フランさんを支えてる方にはセラ・シルフィングもある。普通だったら流石に支えきれないよ。でもそれが出来るのは風のおかげなのだ。
 そして僕の風を操るスキルも日々成長してるおかげだな。そう思ってると、なんか近くから恨みがましい声が聞こえてきた。


「それならどうして俺達は助けない?」
「だっておっさん達を支えてもなんの楽しみもないって言うか? 寧ろちょっと損した気分に成るっていうかだし」


 女の人なら、匂いに触れたり、感触を楽しんだり役得一杯だけどさ、男とかこっちに何のメリットもない。それに別に死ぬ訳じゃないだろ。やる気が起きないよな。


「貴様そう言う奴だったのか!? 女の色香に惑わされるとは! しかも助手とは許せん!」
「それってフランさんの色香に僕が惑わされるとダメって事? それともフランさんを助けて自分を助けなかったことが許せないのかどっちだ?」
「それは……」


 僕の質問に所長は言葉を返せない。まあきっとどっちもなんだろうけど……取り敢えず僕はフランさんを下ろすよ。ついでにクリエもね。


「まあ私はアンタに助けられるよりは僕で良かったけどね」
「ふ、ふん! こっちこそ、お前が無事ならそれでいいんだ!」


 そう言って二人共そっぽ向いたけど、なんかおかしいだろ。特に所長の言葉おかしくね? 何、ツンデレか? 新しいツンデレなのかそれ? 思いっきり心配してるじゃないか。しかも何故それを聞いてフランさんもそっぽ向くの? 
 そう思ってるとフランさんの肩に乗ってる小人がこんな事を言った。


「心拍上昇中です~。体温も上がってます~」
「ちょ!? 黙ってなさい!」


 それを聞いて察した。ああ、フランさんは照れ隠しでそっぽ向いたんだね。なるほど。それなら納得。フランさんはホント、所長のふとした言葉に弱いよね。それにしても……なんか心境の変化でもあったようなのは所長だよな。
 いきなりあんな事を言うなんて……フランさんじゃなくてもビックリだ。フランさんが第二に行くかもって事で、危機感を得たのだろうか? てかそれくらいしか心当たりないな。


「おい、誰か来るぞ」
「「「「!!!!」」」」


 リルフィンの言葉に僕達は一斉に振り返った。てか今更だけどさ、この空間に入った瞬間に、あの奈落の空間は一切見えなくなってる。僕達がここに入り込んだ瞬間に組み上がったのだろうか?


「隠れるです〜隠れるです〜」


 小人のそんな声にしたがって僕達はそこら辺にあったガラクタの中に身を隠す。息を潜めつつ通路を伺うと、ガリガリガリと変な音をたててセグウェイみたいなのがやってきた。てかなんかまんまなんですけど……
 何? 突き詰めるとあの形に落ち着くの? そんな感想抱いてると、何故かセグウェイは僕達の身を隠すガラクタの前で止まりやがった。心臓の鼓動が耳を打つほどに高鳴ってる。そして明らかにこっちをジーと見てるような……冷や汗がヤバイ。まさか気付かれてるんじゃ? これがなぶり殺しって奴か? こうなったら素早く出てって拉致するか? それが良いような……


「はぁ、どうして上手くいかないんだろう。理論は完璧な筈なのに……魔鏡強啓第一から第零へ至るために一体何が足りないと言うんだ?」


 そう言いつつ薄暗がりの向こうの人物は何かを取り出す。それはストローっぽい。なんか所長がグリンフィードを吸い込んだ奴に似てるな。そう思ってると、大きく息を吸い込んだその人物がストローを咥えて息を吐いた。
 ストローの表面に幾何学模様の光が走る。するとそこから大量のガラクタがドンガラガッシャーンと僕達に襲いかかってきた。だけど声を出すわけには––


「んひゃあ!」
「ん? 今何か聞こえたような?」


 誰だ一体! この重さに耐えてるのは自分だけじゃないんだぞ。我慢しろ! クリエの奴は僕の下に居るからなんとか良いけど……実際このままじゃマジ潰れそうかも。他の皆も苦しいだろうけどなんとか今は静かに耐えるしか……早く、早くどっかに行ってくれ。


「まあ別にいっか」


 そう言ってキュルキュルという音が聞こえて、タイヤの回転の音が遠ざかってく。なんとかやり過ごした用だな。はぁ……


「うっ––」


 僕は力を込めて上の瓦礫を押しのける。少々大きな音がしたけど、セグウェイが戻ってくる事は無かったから気付かれなかったようだな。辺りを見るとリルフィンの奴も地力で脱出してきた。
 だけどどうやらフランさんと所長にはそれは難しいようだ。しょうがないから瓦礫の山を二人で退かして救出してあげるよ。


「はぁ……死ぬかと思った」
「全くだ……貴様等はタフだな」
「まあ、この程度は日常茶飯事だしね。てかこの程度で死ねるか」
「外の世界は俺達が思ってるよりも恐ろしい様だ」


 なんか変な誤解を与えてるかも知れないな。けど実際外の世界は危険が一杯だし、ブリームスと同じ感覚で居たら大変な事に成るかも知れないよな。ブリームスが外の世界に出現した暁には武器の帯刀をお勧めるよ。


「ふん、武器など野蛮だな。錬金で事足りる」
「その割りにはこの程度で死にかけてただろ」


 武器に転用できるアイテムはないのか? てか危険が有るのはわかってたんだから、それなりの用意してこいよ。


「用意ならしてある。色々と……ぬあ!?」
「うおっ!? なんだ?」


 いきなり変な声を出した所長。そして突然瓦礫に飛びついてった。そんなにガラクタ好きだったのか? もう一度埋もれたいとか? でもなんだかガラクタ漁ってるな。


「どうしたんだよ所長?」
「助手これを見てみろ! どれもこれも見たこと無い錬金アイテムばかりだぞ!」
「ちょっと退いて!」


 所長の言葉に興奮したフランさんに突き飛ばされる僕。そして二人揃ってガラクタ漁りに勤しみ始めてしまった。やっぱ似た者同士なんだな。まあ研究者なのは同じだしな。ここで興味を持たないのはある意味でダメなのかも。
 てかそんなに凄いのかね? 僕にはやっぱりガラクタ意外に見えないんだけど……


「凄いなんて物じゃない……ここに捨てられてる発明はどれもこれも世に出せば表彰ものの物ばかりだぞ!」
「ホント……なにこれ? これが第一研究所のレベルって事?」


 二人の声が震えてる。所長はともかく、フランさんがそういうのならなんか説得力が出てくるな。


「でも何に使うのか分かんない物ばっかりだよな〜」
「そうだね〜でもでも面白そうなのも有るよ」


 そう言って僕とクリエは適当にガチャガチャとガラクタを漁ってみる。


「おい、気軽に触るな。何がきっかけで発動するか分からんぞ。しかもここに有るのは魔鏡強啓第一の理論が適用されてる。下手に発動すると何が起こるか––」
「––あっ、なんか光ったよ!」
「聞けガキ!」
「––おっ、こっちもなんか光ったぞ」
「お前もか!!」


 なんか蛇の玩具みたいな物を触ってたんだけどこれってヤバイのか? 目が光ってる程度だぞ。なんか口もカタカタ言い出したけど。


「良いから早くそれを離せ!」
「うおっ!? おい––ん?」


 引っ張られた蛇の玩具の衝撃事実。なんとこれは双頭の蛇だったようだ。しかもお尻がなく、左右に頭があるタイプ。クリエの持ってる奴と、僕の持ってる奴はどうやら同じガラクタの様だ。
 するとその蛇の目の光が炎みたいに揺らめき出す。そしてプラスチッキーな質感だったのに、突如ムニュッと言う肉感に変わって、生々しさを得た蛇はなんと僕とクリエの口の中に突っ込んきた。


「んぐっ!?」
「あう!?」


 苦しい……喉を通ろうとしてる? 気持ち悪いし、吐きそうだ。てか今日だけで何回ゲロを見ればいいんだよ! そう思ってると、何かをゴックンした蛇。その瞬間、僕の視界は暗転した。






「……ちゃん! ……リエちゃん! ……クリエちゃん! 大丈夫!?」


 遠くからそんな声が聞こえる。更にその向こうでは所長が僕を呼ぶ声も聞こえてた。てかクリエも気を失ったのか? どうして……あの蛇一体何を……


「う……うう」
「クリエちゃん良かった。無事だったのね」
「そっかクリエが無事ってのは良かった」
「え?」
「え?」


 あれ? なんかおかしくね? いや、何か分からないんだけど、ちょっと「あれ?」って思った。なんだろうこの違和感。僕の視界に映るのはフランさんなんだよな。この時点でなんかおかしいよな? 
 しかも向こうには所長が抱える僕が見える……


「う〜ん……五月蝿いし口臭いよショチョウさん」
「うん?」
「あれれ〜?」


 どうやら向こうも何かがおかしいことに気付いたようだな。そう何かがおかしいよな。


「ねえ、貴女クリエちゃんなの?」
「僕はスオウだ」


 そう告げてると、同様の質問を所長が僕に言ってた。


「お前はスオウだよな?」
「クリエはクリエだよ! クリエ以外にクリエは居ないよ!」


 僕が何故かクリエクリエ言ってる。おかしいな、アイツ頭打ったんじゃねーの? ははウケる……ウケ……る、訳ない! 


「うおおおおおおおおおおおおおお!? 僕がクリエでクリエが僕に成ってるじゃん!! 何これ? どういう事!?」
「クリエがスオウで、スオウがクリエに成ってる! 楽しいね!!」


 楽しくねえよ!! どうするんだこれ! 大問題だろ! 腕ちっちゃいし足も短足だし、全てが大きく見えるしついでに頭も重い! なんか居心地悪い! あわあわしてると、ドスンと近くに巨人の足が! と思ったらいきなり抱え上げられた。


「えへへ〜スオウをクリエが抱っこしちゃった! えへへ〜」
「やめろ〜やめろ〜」


 なんか恥ずかしい。しかも頬ずりしてくるな。自分に頬ずりされるって物凄く気持ち悪いぞ。


「早く、元に戻してくれ!」
「ええ〜楽しいのに」
「楽しくない! それにこのままだと色々と不味いだろ」


 だって僕がクリエでクリエが僕って事は、戦力が一つ減ったような物だぞ。ただでさえ、僕とリルフィンの奴しか戦力無かったのに、その一角が無力化されたんだ。リルフィン一人じゃ流石にキツイだろう。
 よって早急な解決が必要なんだよ。きっとこれはあの蛇が原因だ。もう一度口に入れれば勝手に入れ替わるんじゃないか?


「蛇は! 蛇は何処に!?」
「なにその口調? てか、どうやら一回しか使えないタイプだったみたいよ」
「何!?」


 そう言ってフランさんが見せてくれた蛇のガラクタはまさにガラクタに成ってた。なんか色変わってるし、フランさんや所長が幾らいじってもうんともすんとも言わなくなってる。な……なんてこった……


「そうだ! これだけあるんだ。もう一個くらい同じのがあるかも知れない!」


 僕は僕の腕から逃げ出してガラクタの山の上に降り立つ。


「ぶぎゃあああああ!?」


 降り立った––と思ったら頭重くてバランスとれずに転げ落ちた。くそう……なんて不便な体だ。てかバランス悪いんだよ。


「あはははは私が転がったよ!」


 よく笑えるなクリエの奴。お前の体が傷ついてるんだぞ。まあガキだし、そこら辺を気にするって神経がないんだろう。


「おいクリエ、笑ってないでお前も探せ!」
「え〜クリエはもうちょっとこのままがいいな〜楽しいし」
「お前な……」
「むふふ。それに今はクリエお兄さんだし? スオウよりも大人だもん!」


 人の胸を偉そうに反らすんじゃない。調子乗ってるなこいつ。大きくなれたから偉そうになってる。


「スオウ可愛いよ」
「ふん、ガキの手なんか借りるか!」
「スオウの方がちっちゃいくせに〜ちっちゃいくせに〜」


 一人ホント楽しそうだなこいつ。スッゲーイライラする。しかも自分に言われてるってのがまた……なにこの気持ち悪さ。ほんと一刻も早く戻りたい。でも…………幾ら探してもさっきと同じ蛇は出てこない。


「他の物で代用できないのか?」
「そうは言っても、ここに有るのは見たこともないアイテムばっかりだから……どんな力を宿してるか分かんないのよ」
「かたっぱしから発動させて行くわけにも行かないしな……そもそも体を入れ替える––いや、この場合は中身を入れ替えるアイテムは聞いたこと無い。出来ない事は無さそうだが、実際出来る物なんだな」


 ホーと感心したように眺めるなよ。完全に人事じゃないか。魔鏡強啓第一とか言ってたし、そこら辺の錬金アイテムよりも厄介なものができちゃうんだろうな。くそ……でもまさか中身が入れ替わるなんて……こうなったら作った奴に聞くしか……ん?


「その手があったな」
「どうしたのクリ––じゃなくて僕」
「さっきの奴に聞けばいいんだよ。このガラクタを放置した奴。それしか無い」
「けどそんな暇あるかしら? 私達は一刻も早く魔鏡強啓第一や第零の資料、その他諸々を盗まないと行けないのよ」
「おい、その他諸々ってなんだよ?」
「………えへ」


 フランさんが誤魔化す為に可愛らしい仕草をしたぞ。どうせだから第一の研究成果を全部盗んでやろうとか考えてたなこの人。なんて欲深い。


「しょうがないじゃない。第一は独占しすぎなのよ。ある程度の情報は公開しないと、競争は生まれないでしょ」
「そこら辺はどうでもいいけど、第一を探索するためにもこのままじゃ不味いよ。まずは元に戻ることが大切」
「だが、俺達は元々隠密行動をする筈だっただろ。見つかる……というか第一の奴等との接触は不味いだろ」
「緊急事態だ。現場では臨機応変に対応することが求められるんだよ」
「くっ……ちっちゃいくせに偉そうだなこいつ」


 五月蝿い。こっちは切羽詰まってるんだ。取り敢えず現状の第一目標はさっきのセグウェイの奴の捕縛って事で!


「よし、追いかけろクリエ!」
「分かったよスオウ! 今の私はいつもよりもきっと速いよ!」


 だろうな。なんてたって歩幅が全然違うからな。クリエは僕の体で床を踏みしめながら体を上下に揺らす。タイミングを測ってるのかアキレス腱を伸ばしてるのか……するとその時微かにどこかからか声が……


「いっくよおお!」
「ちょっと待てクリエ」
「––んもう何スオウ!?」


 出鼻を挫かれたクリエが不満を漏らす。だけどそんなの気にせず再びガラクタの山に降り立つ僕。


「散々探したわよ?」
「分かってる。そうじゃなくて……なんだか声が聞こえたんだ」
「声?」


 そう、微かな声だった。今にも消えてしまいそうな、寂しそうな声。僕はガラガラと瓦礫を退ける。すると「もう駄目なんや〜」と変な関西弁で泣いてるアイテムを見つけた。それは真っ黒な球体だ。ただの球体……そう思ってた。だけど僕が手に取ると、その球体は大きな瞳をパチクリと開けた。
 いや違うな。その球体事態が大きな瞳だったんだ。え? 何これ?

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