命改変プログラム

ファーストなサイコロ

第一研究所

「こっちだ」


 ロウ副局長の後についていく僕達。外に行くのかとおもいきや、なんだか今度は別の動く歩道に乗っちゃったよ。そして今度は明らかに地下に降りて行ってる様な……


「ここって?」
「研究成果の情報とかは機密だからな。大通りを堂々と歩いていくわけにも行かんだろ。その為に作られた直通通路だ」


 なるほどね。確かに研究成果とかは大切だしな。錬金が盛んで発達してて、その最高の研究機関が第一や第二•第三なら、そこの情報を欲しい野良研究者ってのは結構居るのかもしれないな。
 所長だけじゃないのかも知れない。マッドサイエンティストなんてアホな肩書きを背負うのはこの人位だろうけど、この街にはもっと沢山の研究者が居るのかも。そういう人達はそれこそ、この人達の研究成果とかはほしい物だよな。
 ある意味権力を持ってる奴等がその技術とかを集約してるって感じだろうから……研究所機関に反発してる研究者達が居てもおかしくはないのかも知れない。ここにモンスターは居ない。だけど人はモンスターにだって成れるんだ。


「ここまでするって事は反政府組織でもあるのか?」
「いや、まあ無いわけではない。錬金の研究の核は第一が握ってるからな。それをよく思ってない奴等はいる。だが、そんな野良共が資料を見たところで何かが出来るとは思わんがな」


 やっぱり野良研究者は所長達の他にも居るわけね。でも考えたらアレだよね。皆最初に通う学校は同じらしい事を言ってたって事は、その学校で優秀な成績だった人がこの研究所に入れるわけだよな?
 最上級の奴等がきっと第一に行くんだろう事は当たり前だよな。その次のそこそこ優秀な人達がきっとこの第二研究所に来れるんだろう。第三は優秀だけどパッとしないって感じか? それともある意味、個性を強くしてるかのどっちかだろうな。
 第一が天才の集まりで第二が秀才の集まりなら、第三にはどっちとも違う色が必要だもんな。あんまりパッとしなかったけど、一芸に秀でてる奴とかを集めてるのが第三なのかも。まあもしかしたら普通に第二の更に下位互換って事もあるけどね。
 けど今は第三なんて勢力は実際どうでも良いか。僕達が気にするべきは第一だ。


「優秀なのは全部第一に居るから野良なんて落ちこぼれしか居ないって事?」
「我々も優秀だがな。まあだが間違ってはない。そこのマッドサイエンティストも含めて、研究所に入れなかった奴等は落ちこぼれだ。そういう奴等が何も出来ない分際で、我等の努力をただで手に入れようとは片腹痛いと思わないか?」


 ロウ副局長はバカにしたようにそう言う。実際バカにしてるだろうけどな。でも言わんとしてる事は分かるよ。実際この人達は天才の第一とは違うんだ。努力に努力を重ねて今の地位を手に入れた人達が大半だろう。
 そんな第二の人達にしてみれば、落ちこぼれ共が、楽しようとしてるんじゃない! って事だろう。しかも核の研究は結局第一の連中しかやらせてもらえず、二番手に甘んじるしか出来ない……そりゃあ不満も貯まるよな。
 落ちこぼれ共をバカにしてもしょうがない。


「ふん、優秀な奴が誰しも研究者に成るわけでも無いだろうに偉そうだな。俺みたいに目的が明確で自由を求める奴は機関の研究所になど入らんというのにな」
「入れなかっただけじゃない。私もアンタも」
「助手!」


 フランさんの暴露に立つ瀬ない所長。いや、まあどうせそうだと思ってたけどね。だってフランさんはともかく、所長が優秀だとその学校のレベルが知れるというか……


「おい貴様、なんだか失礼な事を考えてないか?」
「別に。だけど所長はともかくフランさんも落ちてるなんて意外だね」
「おい、今ともかくって言ったよな? な?」


 なんか五月蝿い声が聞こえるけど、それは無視してフランさんを見るよ。彼女はこっちを見ようとしないけど、その口は語ってくれる。


「私は僕達が思ってるほど優秀じゃないわ。どっかのバカなマッドサイエンティストが底辺を走っててくれれるから相対的に優秀に見えるだけ」
「なるほど……」


 僕は所長の方を見る。確かにどっかのバカなマッドサイエンティストは常に底辺をひた走ってそうだな。だからフランさんが優秀に見える……そうかもしれないのかな? でも第二研究所に行くまではフランさんも結構強気だったような。
 どこからその自信は出てきてんの? ってのが一杯あったよな。


「あの~それじゃあ、自分達に任せとけば問題ないってあの言葉も強がりですか? 自分達は優秀だって言ってたじゃないか」
「アレは事実。実際私達のおかげで進めてるじゃない」


 そう……か? って事は実はグリンフィードの修理も、今森の方に向かってる第二研究所の人達に任せるって事か?


「全てを任せる気はないけどね。私達だって研究はずっと続けてきたわ。誰もが研究所に入れなかった時点で、モグリに成る中……私達はそれでも研究者を名乗ってきたんだもの。あざ笑われ様とも……」
「……そっか」


 他の奴等は研究者さえ名乗らなく成る中で、それでもフランさんや所長は研究者を名乗り続けてきたプライドがあると……そこが他の落ちこぼれ共とは違うのか。


「研究者をおおやけに名乗ることは責任が伴うからな。簡単に使っていい言葉ではないんだよ。だから俺達はそこらの奴等とは違う。片手間でやってきた訳じゃないからな。俺達は命かけて、いや、人生全て賭けてやってんだ!」
「言い訳だな。確かに研究所に合わないと言って入らない奴も居るが、その後に芽を出したのは居ない。それこそ随分昔の第四研究所の所長位だろう。君がそう成れるとは思えんよ」
「なに!」


 ロウ副局長の言葉に所長が噛み付く。まあ無理もないな。憧れてるんだろうし、芽を出そうと頑張ってるんだろうしさ。でもやっぱり昔の所長は有名人なんだな。まあこの街救ったしな。
 厳密に言えば救ったのは僕だけど……でも僕だけじゃどうしようもなかった訳だし、みんなでこのブリームスを救ったんだよな。そしてその殆どはプレイヤーな訳で、残った所長に手柄が行くのはしょうがない。


「そもそもフラン君も第四では限界が有ると思ったのだよ。君の限界を悟ったからこそ、彼女はこちらに来たがってる。そうだろう? 否定できるかい?」
「それは……助手」


 そう言ってフランさんを見る所長。だけどプイッとそっぽ向かれた。いつもなら「がーははは」って笑ってフランさんが自分の所を離れるなんてないない––って言うだろうに、なんかちょっと前……と言うか昨日店を出てからなんかおかしいな。


「おい所長、あんた一体どうし––」
「スオウ! 動く道終わるよ!」


 クリエのせいで僕の言葉が遮られてしまった。そしてそのまま流れてく。動く歩道が終われば到着って訳でも無さそうだ。そこはどう見てもトンネルっぽい。モンスターが居ないからダンジョンとは呼べないよな。だから単純にトンネルだ。
 トンネルのアーチ状の天井の左右に緑に光るライトが心許なく付いてて、それが結構先まで見える。ワーワーとテンション上がってるクリエを他所に第二研究所の皆さんは慣れてるからか、別段説明もすることなく進みだす。


「おいクリエ」
「うん!」


 クリエの奴を呼んで僕達もその後に続く。一本道なのかと思ったら、なんだか結構分岐してたりする。まあそこらの分岐には目もくれずに第二研究所の人達は一番大きなこの道を道なりに進むだけなんだけどね。


「なあ、こんな地下が有ったって知ってたのか?」
「いえ、初めて知ったわ。まさかブリームスの街の下がアリの巣みたいに成ってるなんてね」


 フランさんも知らなかったのか。じゃあ勿論所長も知るわけ無いよな。でも地下って、ブリームスを隔絶するあの力の影響はどうなってるんだろうな? もしも地下は無限大に影響受けてくれるてるのなら、拡張できないっていうブリームスの悩みなんか吹っ飛ぶような……地上の街は見せ掛けで、実は地下に大都市が建造されてるのだ! ってのが出来るだろうにね。
 でも、やってないって事はやっぱり制限が有るんだろうな。ここもあまり使われてるって感じしないし……ブリームスの錬金のレベルなら地下帝国位作れそうな気が個人的にはするもん。
 僕は近くの第二研究所の職員さんに質問するよ。


「ここって繋がってるのは第一研究所だけじゃないんですか? 周りに一杯穴ありますけど……」
「……そう……ですよ。でも……使ってるのは……この道……だけですから。はぐれない……ようにしてください……興味本意で……道をそれると……戻ってこれなく……なりますよ……ふふふ」
「そう……ですか。どうも」


 なんかちょっと不気味な人に声を掛けてしまった。でも実際研究者って変な人が多いのが普通の気もしてたから、ある意味こっちが優秀に見えるかも。ロウ副局長とか普通だもんな。普通にエロいオジサンって感じ。
 だからある意味そこまで凄くは無さそうに思えるっていうか……この人の方がちょっと凄いんじゃないかって? って勝手に思う。でも戻って来れなくなるか……そう言われて周りの穴を見ると、なんか変な視線を感じる気がするな。まるで僕達を誘ってるようなさ。その為に大口開けて待ってます––的な。


「あ〜〜! スオウアレ何かな?」
「おいクリエ!」


 クリエの奴は今の話聞いてなかったのか、トコトコと道を外れようとしやがる。全くコレだからガキは……僕は急いでクリエを捕まえるよ。


「うう〜、クリエちゃんと戻ってこれるよ?」
「そうかも知れないけど、今は第一研究所に進むのが大切なんだ。だからあんまりうろちょろするな」
「でも何かあったんだよ〜。それに『こっちこっち』って声も聞こえるよ」
「なんだそれ?」


 ヤメろよな。そんな寒気する事言うの。


「分かんないけど、クリエを呼ぶ声がする」
「自然の声か?」
「う〜んどうだろう? なんだか男の人みたいで女の人みたいで、おじいさんみたいでおばあさんみたいな声だよ」
「怖すぎだろ!」


 なんだそれ。てか良く平気だなお前。こんな暗がりでそんな声が聞こえてきたら、流石にちょっとビビるぞ。しかもあんな話し聞いた後なら尚更な。帰れなくなるとか言ってたし、そうなった哀れな奴の魂が彷徨ってるとかか? 
 でもこの前のテトラとの戦闘で不確かな存在は一掃というか、成仏してくれた筈では? けどアレはリアル側のガチの魂達がLROという仮想空間に迷い込んできたから、それらを送っただけなのかも知れない。元々設定された魂のない幽霊なら、残ってるのか……


(魂の無い幽霊ってのもおかしいけどな)


 僕は穴の向こう見つめる。するとリルフィンの奴が付いてきてない僕達に声を掛けてきたから、急いで歩き出す。何も聞こえない……そのはずなんだけど、クリエが変な事を言うから、僕の頭が勝手に変な声を捏造してる気がするよ。
 まあ本当の霊じゃなければ、ぶった斬るだけだけどね。きっと出来るだろう。そう言い聞かせつつ僕は歩き続けるよ。




「これは?」


 しばらく進むと、地上の方からこの地下のトンネルに伸びてる筒が見えてきた。銀色してて一箇所に魔法陣みたいな紋章がある。


「これで第一研究所に入る。ようは移動装置だ。中に入れば動く歩道よりも早く簡単に地上まで運んでくれる」
「エレベーターみたいな物か。てか、これ第二にも実装しろよ」


 なんでエスカレーターみたいなのしか無いんだよ。どう考えてもこっちが良いだろ。エスカレーターよりもエレベーターの方がハイテクっぽい。てか何? 差別化? それともただの差別?


「別に実装できないワケじゃないが、こっちは人数が倍くらい多いからな。これは早いが、そんな大人数を運べるわけではない。第二では沢山の人数が行き来するから、床が動いて早足の方が移動効率がいいんだ」
「ふ〜ん、ちなみにこれは何人乗りなんだ?」
「五人乗りだな」
「なるほど」


 確かにそれは少ないな。せめて十人とか二桁行ってほしい。でもその場合は本数を増やせばって……そうなったらコストも掛かるのか? でもリアルのデカイビルでエレベーターが無い所なんか無いよな。
 本当に床が動いたほうが効率いいんだろうか? まあリアルの場合は床をどこでも動かしてるわけでもないけどな。だけど思い出すと第二も別に床が動いてたのは一階だけでは? 後は全部エスカレーターだったような。
 やっぱり一個くらい導入しても良いと思うな。


「ねえ、これに乗って私達も上に行くの? 見つからない?」
「確かにそうだね」


 フランさんの言葉に僕も同意する。だってこれって第一の内部に直通してるわけだよね? なんとなく乗ったら出た所で見つかるよな。しかもこれを使うのが限られてるっぽいし、第二の皆さんの直後にバレたら、確実に疑いがこの人達にも向くだろう。どうするんだよ。


「そんなのわかってる。だからこそ、先に我々が上へ行く。こいつを一体こっちに置いてくから、こいつからの合図を待って上がってこい」


 そう言ってロウ副局長は赤色帽子を被った小人さんを取り出した。やっぱ可愛いな。一家に一体欲しいかも。


「お仕事ですかぁ?」
「ああ、コイツ等に助力してやってくれ」
「頑張るですよ〜」
「了解です〜」


 ロウ副局長の胸ポケから顔を出してるもう一体がフランさんの手に乗ったもう一体に手を振ってる。それを受けて赤帽子くんはビシッと敬礼。上司か何かか? てか序列とか有るのだろうか?


「それで上手く潜入できた後はどうすればいいんだ? どこに向かえば良いとかさ、分かんないの? それか地図でも貰えれば自分達でなんとか出来ると思うんだけど?」


 僕のそんな言葉に何故か周りの第二研究所の皆さんは顔を背ける。どういう事だ? いや、何度もいってるなら別に口頭である程度教えてくれてもいいんだよ。てか普通内部地図位用意しておくべきだろ。怠慢か。こっちが捕まったらそっちも危ないんだから、最大限の協力は必須だろう。
 そう思ってると所長がこういった。


「まさか、あの噂は本当なのか?」
「噂?」


 僕やクリエが頭にハテナを浮かべてると、今度はフランさんが補足するように言ってくれる。


「第一は迷宮みたいに成ってるって噂があるわ。一度入った事がある人が二度目入ったら、全く別の内装してたとか」
「リフォームしたとか?」
「自宅の一室ってレベルじゃなかったらしいわ。まるで別の場所に来たのかと思うほどだとか……でも流石にただの噂かと思ってたんだけど」


 第二研究所の人達は誰もその言葉を否定しないな。つまりはそういうことか。第一研究所に内部構造を示す地図はない。まさかランダムダンジョン作成みたいな……そんな感じの場所か?


「まあ大体その通りだな。第一は入る度にその姿を変える。だから構造を伝えるとか無理なんだ。下手に動いたら確実に迷宮に取り込まれる」
「じゃあ今まどうやってたんだ?」
「外部から来た者を案内するために、これと同じ存在がやってくる。それまではその場から動かないが鉄則だ」


 そう言ってロウ副局長は胸ポケット小人を突っつく。胸ポケットの小人は「偉大です。偉大です」となんか意味分かんない事を言ってる。もしかしてロウ副局長は小人にそれを言わせて悦に浸ってるのではなかろうか?
 リアルでインコや九官鳥に自分を褒める言葉を教えるのと同じみたいな感じでさ。そうだとしたらかなり痛いな。だけど誰もそんな事には触れないから、スルーしておいてあげよう。
 今はそんな痛いことよりも大変な問題が目の前にあるからな。


「じゃあ僕達は合図を待って上へ行き、第一の小人が来る前にその場を離れるって訳か。帰りはどうするんだ?」
「それは……どうにかしろ」
「おい!」


 余りにも他力本願過ぎやしないか? そっちでもどうにかする努力くらいしてくれよ。


「勿論こっちでも探りは入れる。だが、自由には動けん。第一の気を惹きつけるので精一杯だ。お前達は戦闘能力も有るようだし、多少の危険は乗り越えられるだろう。だからどうにかしろ。期待してるんだ!」
「いや、その言い方で『よっしゃあああ!』とは成らないぞ」


 危険もあるって言ってるしな。やっぱりクリエの奴を連れてくるべきじゃなかったかも。でも今更か。ここで戻らせるとか絶対に駄々こねるだろうしな。けど実際、危険は覚悟はしてたよな。無いわけ無いし……そしてどの道、それを乗り越えられるのも僕達しかここには居ない。
 だってブリームスの皆さんは戦闘経験皆無だろうからな。ロウ副局長達には頭脳で頑張って貰うのが妥当か。僕達にはその役目出来ないしな……適材適所というところだろう。


「ふん、せいぜい俺達の存在がバレないようにサポートに徹してろ。それがお似合いだ。二番手に甘んじてるお前らにはな」
「はは、貴様ではなんの役にも立たないだろうから、得た資料の解析は任せとけ。マッドサイエンティストの出番などありはしない」


 おいおい、危険が有るらしいけどいいのか? ってきこうと思ったら、既にバトルってた。どうやら所長は危険とかどうでも言いらしい。多分プライドがそれを忘れさせてるな。フランさんは「仕方ないけど、これしかないわ」って言うし、クリエやリルフィンはさっさと行きたそうだ。
 クリエはきっと建物内が変化するって聞いてワクワクしてるな。そしてリルフィンは第二のアレだけじゃ暴れたりなかったんだろう。まあノリノリならそれでいいけどな。でもほんとどんな危険か想像できないのがな……クリエの奴はほんと置いて行きたいけど、絶対にそれは拒むだろう。
 単純にモンスターがワラワラ出てくる感じなら良いんだけど……ここはブリームス、錬金の地だ。危険の定義が色々と違いそうなんだよな。外のLROとは一味も二味も違う可能性大。でもここで一人にして目を放すよりは、側に居たほうがクリエの為にもこっちの精神衛生上もいいからな……


「わかった。それで行こう。クリエは絶対に僕から離れるなよ」
「うん!」
「では我等は先に行く。魔鏡強啓の先を共に」
「ええ」


 そう言い残して第二の人達が先に行く。魔法陣みたいなのに手を当てると、その紋章から光が上下に走って開いてその中に入ってた。その後は閉まったから分からないけど、次で分かるだろう。


「そう言えばさっきの魔鏡強啓の先を共に––って何?」
「アレは研究者間で使われる健闘の挨拶みたいな物ね。錬金の祖が弟子達そんな事を伝えてたんだって」
「ふ〜ん」


 それが今でも受け継がれてるって事か。でも秋葉のイベントの時には全然聞かなかったけどな。まあアレは色々と特殊だったからな……そう思ってると、フランさんの肩に移動してる小人が「どうぞです〜どうぞです〜」と言い出した。
 準備が出来たって事か。所長が紋章に触れて扉を開けて僕達も中に。中はなんだか青っぽい光で満たされてる。扉が閉まると、その光がキラキラと輝きだした。そして一瞬、変な圧力が内蔵に刺激した––と思ったら、ドサってな感じで何も変わらない場所に降り立つ感覚が……するとチーンという音と共に、扉が開いた。
 どうやら着いた様だ。何が起こったのか全然分からなかったな。僕達が呆けてると純粋無垢なクリエの奴が先行した。


「早く早く! 早く行かなきゃだよスオ––」
「クリエ!?」


 この装置から出たクリエの姿が消えた!? 僕は思わず身を乗り出す。するとクリエの奴は真っ逆さまに奈落へと落ちてるじゃないか! てかなんだこれ? 周りは黒い空間で、廊下や部屋、それどころか家具や様々な物が浮遊してて組み上がっても居ないぞ!


「スオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「くそ!」


 僕は考えるのをやめにして取り敢えず飛び出した。奈落へと落ちるクリエに手を伸ばす。一体全体どうなってるんだここは!!

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