命改変プログラム

ファーストなサイコロ

神に仕える鬼

 ドスン––と一歩を踏み込む足音が聞こえた。振り返るとそこには砂嵐の中、黒く大きくがっしりとした、まるで鬼の様な何かが俺に向かって歩いてきてた。握った拳は岩よりも大きく堅そうで、そこへと続く腕は団子がそれぞれ続いてるのかと言うくらいにパンパンに膨れてる。
 中央の胸板は大きく二つ膨らんでるけど、あれは胸か筋肉なのかの判断はつかない。どっちみち肩幅が広いから体も異様に筋肉質なのは間違いなさそうだ。下半身の方は正直良くわからないが、この上半身を支える下半身が貧弱な訳がない。
 ちなみに下半身がなんだかわからないのはスカートみたいなのが揺らめいてるせいだ。胸の事もそうだが、まさかあれは性別的にメスなのか? 


「ありえねぇ……」


 そんな風に呟くと、いきなり鬼の瞳が真っ赤に輝いた。それはまるで今の呟きが耳に入って、あたかも怒っちゃったかの様な……いや、そんなまさかな。鬼に人語が理解できる訳がない。気のせい気のせい。


「ううがあああああああああああああああああああああああ!!」


 空気の震えと共に、激しい衝撃が俺の体を吹き飛ばす。地面を二•三度転がって体を起こすと、なんだか鬼から赤い蒸気が出てるような……そしてこっちに向かって一歩––二歩と激しく地面を揺らして走ってくる。しかも結構綺麗なフォームで! 逆に怖いわ!!


「うおおおお……おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 俺は必死に逃げる。最初から全力出すと直ぐに失速するとか、そんな事考えられない。だって後ろから迫る鬼の姿はまさに羅刹みたいな……絶対に捕まったら殺される。それをビンビン感じる。
 死ぬ気で走り続けるしか無い!! だけどそんな矢先、地面に足を取られた。バランスが崩れて地面が目の前に……ズザザァァァァと立て直す事も出来ずにそのまま荒い地面を滑った。
 現実だとこんなものか……でも、これは現実なのか? そんな疑問が浮かんだけど、直ぐにそれを考える余裕は無くなる。なぜなら鬼がそこに既に来たからだ。奴は凶暴な手をこちらに伸ばしてくる。人間なんて簡単に握りつぶしてしまいそうで、簡単に引き裂くことも出来そうな……そんな凶悪な手だ。
 脚や腕から流れる血が、ズキズキと痛む。熱を持って「逃げろ」と言う。だけどもう動けない。俺は獲物なんだ……捕食者に追い詰められた哀れな羊みたいな存在。何をしたってこの凶悪な化物から逃れる術なんて無い。哀れな羊はただ命を搾取されるだけ……


(こんな所で……)


 終わり。どこか知らないけど、そう思うと頭に浮かぶ彼女の姿。愛の姿。その笑顔が、その声が頭で回る。するとやっぱり死ぬわけには行かないって思えてきた。どうにも出来ないけど……俺はその名前を叫ぶ。


「愛……愛! ……あいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


 鬼の腕が何かを潰した様な音が響いた瞬間、全てがブラックアウトした。




「んにゃ……はい……なんですかぁ秋君? ダメですよぉ……そういう事は、ちゃんと結婚してからと……うにゃにゃ……」
「はれ? 愛?」


 目を開けると何故か俺の眼前にうたた寝してる愛の姿があった。なんて可愛い姿だ。天使だと思ったら女神だったって感じ。しかも寝言でも俺の事を喋ってるって思うと、ニヤニヤするな。


「キモい顔しちゃって」
「うお!? 日鞠……お前もうちょっと言葉を選べよな」


 朝一でなんでそんな事を言われないと行けないだよ。朝は一日の始まりなのに、テンション下がるだろうが。日鞠の奴は自販機横に設置してあるベンチに腰掛けてる俺達を低い目線で見ながら「はいはい」と生返事。
 全然悪いとか思ってないなこいつ。言っとくけどキモいとか言われると傷つくんだからな。


「全く、愛さんは優しいよね。自分が一番疲れてる筈なのに、失礼な事して鉄拳制裁食らったバカを介抱してあげるんだもん」
「悪かったなバカで––ってあれ? 俺はなんで愛に膝枕されてるんだっけ?」


 余りの幸せにそこら辺考えてなかったけど、確かついさっきも起きた記憶が……二度寝してたらって事か? 寝起きだったからか記憶が曖昧。


「覚えてないの? なんか怖い物見なかった?」
「怖いもの? そうだな〜さっき見た夢は怖かったな。なんだか鬼みたいな体の女に追われる夢を見たんだ。だからこそ恐怖で起きたんだしな」
「覚えてるじゃない」


 へ? どういう事だよ。だから俺が言ってるのは夢であってリアルじゃないんだ。リアルであんな女居るわけ無いだろ。


「へえ〜あっそぅ〜」


 なんだその返し。生返事過ぎるぞ。まさかあんな鬼の様な姿した女がリアルに存在してるとでも? ないない。そう思ってると、下の階から何やら香ばしい匂いが漂ってくるのに気付いた。
 そんな匂いに釣られてか、俺の腹の虫が音を立てる。愛が寝てて良かった。愛に聞かれるのはなんか恥ずかしいからな。日鞠にはそんな事全然気にしないんだが、やっぱ愛にはまだまだ格好良い自分を見せておきたい。
 まあ俺の事をどう思ってくれてるのか……とかはわかんないんだけどな。


「威勢の良い腹の虫ね。匂いに敏感に反応しちゃって。でも私も流石にお腹ペコペコだからね。昨日は結局殆ど食べ物口にしてなかったらから」


 そうなんだよな。朝からドタバタ騒ぎ続きで何かを口に運ぶ暇なんて無かったよな。茨城のファミレスまでも行ったのに、結局そこでも何も食わなかったしな。考えたらマジで昨日は胃に何も運んでない。
 流石に体が栄養を求めるのはしょうがないというものだ。所で気になることが一つ……


「あのさ、朝食はありがたいんだけど、誰が料理作ってるんだ? まさかメカブとか言わないよな?」


 いや、アイツしかいないんだけど、なんだか料理が出来るイメージが皆無だから不安しか無いというか。でも匂いは良い感じ。匂いだけでない事を切に願うか。そう思ってると、愛もこの匂いで料理の夢でも見てるのか


「料理のさしすせそ位、知ってますぅ〜むにゃにゃ……まずはサメ……フカヒレはコラーゲンたっぷりだよぅ……むにゃ」


 とか言ってる。それはもうサメの「さ」なのかフカヒレの「ふ」なのかわからなくないか? と思った。なんて可愛らしい寝言だ。この場合は普通「もう食べられないよ」とかの定番が来るかと思ったが、愛はそんな大食いキャラじゃなかったな。
 ある意味フカヒレってところに愛らしさが出てるかも。高級食材だしな。だけど「さ」が鮫なら「しすせそ」は一体何がくるのか……そもそも根本的に言うと、料理のさしすせそは食材じゃないからな。
 初っ端から間違ってるぞ愛。寝言だからだよな? 愛がその位の知識ないとは思えないし。でもお嬢様だからな……なんだかリアルじゃ包丁一つ持ったことなさそうな……運転手にSPまで居たんだ。専属の料理人位いたっておかしくない。


「う〜ん、流石にフカヒレは用意してないなぁ」


 寝言に真面目に返す日鞠。面白かったから乗っかっただけだろうけどな。


「まあでもユニークな朝食だとは思うよ。普通とは違うかも?」
「なんだよそれ?」


 やっぱりメカブの奴は料理できないんじゃないのか? ユニークって、本物の料理人が使うなら許されるけどな、素人が料理でユニークに走ると碌な事無いだろ。


「ふふ、それは目にするまでのお楽しみね。タンちゃんはどうやら後で食べるらしいし、秋徒も下に降りて食卓について」
「愛はどうするんだよ? 流石にここに横にさせるのは気がひけるぞ」


 こんな所で寝かせ続けると絶対に体痛くなる。愛のベットとか絶対に超高級な奴に違いないもんな。そんな高級なベットの上で毎日寝てる愛が、こんな公園にある木枯らしに晒されるのと同程度のベンチで寝るなんて、体痛くならない訳がない。
 高級なんてここでは求めないけど、もっとマシなところに移すのが先だろ。


「お前達が寝てた部屋にはベットあるんだろ?」
「そうだけど、さっきまたメカブが……あっ」


 やっちまった––的な顔して手を口に当てる愛。おい、どういう事だ? メカブの奴が寝てるって……じゃあ誰がこの料理を作って……っつ!?
 頭にズキンと走る痛み。なんだ? 何かが浮かんできた様な……俺はもしかしたら重要な事を忘れてるのかも知れない。


「大丈夫秋徒? これ以上愛さんを心配させないでよね」
「おい、それは俺を心配してる言葉じゃないよな?」
「最初に『大丈夫?』って言ってるじゃない」


 ああ、なるほど。確かにそうだな。だけどその後の言葉の方が長いんだけど……いや、いいけどさ。


「それよりも、メカブじゃないのなら一体誰が––っつ!?」
「何? なんか頭痛酷いわね」
「ホントにな……なんだか記憶のどこかに触れそうになると、拒否反応でも示すみたいに頭痛が……」
「ああ〜」


 なんの「ああ〜」だそれは? 心当たりでもあるのか?


「なんとなくね。確かにいきなりだったし、体が無意識に恐怖を覚えてるのかも」
「なんだそれ? なんか気にな––いっつつ!」


 駄目だ、考え込もうとすると頭痛が併発する。どんだけ俺の体に恐怖を叩き込んでるんだよ。しょうがない、取り敢えず考えない事にしよう。日鞠は普通にしてるんだし、その誰かは敵じゃないんだろう。それなら急いで考えることじゃない。
 そもそも敵が朝食作る訳ないしな。てかもしも政府機関が踏み込んできたのなら、俺達ここでこんな風に出来てるわけないしな。当然見張られてるは居るんだろうけど……


「と、取り敢えず愛だ。ここでそのままになんか出来ない」
「それはいいけど、取り敢えず起きたら? 真面目な顔して言ってても、膝枕状態だから笑えるわよ」
「それは……」


 なんか惜しいだろ。膝枕なんかそうそうされないんだぞ。しかも物凄く寝心地がいいと言うか……愛の太腿は触らかくて最高だ。普段の枕とは違って、ほんのりと温かいから温もりって物を感じて、病みつきになりそう。
 これはどんな高級な枕にだって付けれない機能だろ。暖かくするだけならやりようはいくらでもあるけど、このひと肌の温もりって奴は、誰でも何でも良いって訳じゃない。俺にとっては愛だからこそ、いいんだよ。
 だからこそ、なかなかこの膝枕から離れられないと言うか……スリスリと太腿を撫でてると日鞠の奴がゴミを見るような目をしてる。ふん、それがどうした。愛は俺の彼女なんだ。俺には太腿をスリスリする権利がある。
 ゴミの様な目にも負けず、膝枕を堪能してると日鞠の奴がこんな事を呟く。


「早くしないと鬼が来るかもね」
「は? 何言って––」


 その時下の階から鼻歌の様な物が聞こえてくる。でもそれは明らかに今流行のアイドルとかの曲じゃない。なんか軍歌とか行進曲とかそんな感じの……体の奥からザワワーっと何かが這い上がって来る。
 猫が毛を震わせるみたいなそんな感じ。俺は、その変な体の反応を噛み締めつつ、無言で膝枕にお別れを告げた。


「さて、今日も一日が始まったな」
「そうとう刻まれてるね」


 日鞠の奴が面白そうにそういう。くっそ、ホントなんだってんだ。俺の体は一体どうしたんだ? 俺には既に下の階が危険地帯に思えるんだけど……確かに敵ではないんだろうけどさ、俺の体は恐怖にガクブルなんだよ。
 そんな場所で爽やかに朝食をとれと……


「取り敢えず愛さんを移動させるんでしょ?」
「おお、そうだ。てか、なんでメカブ寝てるんだよ?」


 邪魔だから叩き起こしてこいよ。アイツ別に何もやってないだろ。アイツが寝てるせいでベット使えないんだろ? 


「メカブは後少ない休みを有意義にすごすんだって」
「それ、絶対に有意義じゃないだろ。取り敢えずそんな理由なら叩き起こすぞ。マジで」
「まあ反対はしないけど」


 しないんだ、女子を邪魔だからと叩き起こす最低野郎とか言われると思ったが、そうじゃなかった。


「まあメカブは最悪毛布で包んじゃえば床に落としてても問題ないもん。愛さんにはやっぱりベットを割り当てないとね」


 なんか相当メカブの待遇酷いけど、何かあったのか? ああ、あれか––爆乳だもんなメカブ。


「どこ見て、『納得』みたいな動作してんのよ」
「いや、まあそれじゃあしょうがないかなと。お前も女子だしな」


 そう言うと足の甲をおもいっきり踏みつけられた。なんて事を、人体の急所の一つだぞ。


「お前な……」
「変な事言うからよ。私は別に胸なんて気にしてないもん。スオウはこれがベストだって言ってくれるもん」


 そんな事言ってたか? まあ適度が一番とは言ってたかもな。てかアイツの女基準は全て日鞠だからな。誰だって日鞠と比べて〜〜って言葉が出る。


「別にメカブの事気に入らないとかないわ。ただ、彼女はそれでも平気だけど、愛さんはそうじゃないってだけ」
「まあ人としてのランクが違うしな」


 俺は深く頷く。取り敢えずメカブを叩きだせるのなら、そのベットでいいだろう。俺は愛をお姫様抱っこする。スヤスヤ眠ってる愛を間近で見れるのはいいな。人一人は決して軽くないが、全然苦になんかならない。


「じゃあ付いてきて」


 そう言って日鞠は下の階に……くっ、早速か。でも取り敢えず飯食う場所に入らなければまだ大丈夫。俺達は一階下に降りてそこから横の通路に入る一番手前の扉が開いててそこから香ばしい匂いと鼻歌が聞こえてきてた。だけどそこを俺は素早く通り過ぎる。なんか怖いんだよ。
 そして更に進んで、一番奥の扉まで着た。扉には『時空から切り離されし場所』と書かれたプレートが掲げられてた。やっぱアイツ痛いな。大丈夫かこの部屋? とか思ってたけど、入ってみると案外普通の女の子部屋だった。
 大量のヌイグルミが、部屋一面に所狭しと置かれてて、その中央に大きな天蓋付きベット。後は別に物はない。訂正しよう、普通じゃないなこれ。いや、黒魔法の本とか魔法陣が床に書かれてるとか、鹿の頭の飾りが合ったりとか、ドクロが転がってるとか、そんな事を想像してた物だから、ついヌイグルミを見て普通だなと思ったんだ。
 だけどこれは量が異常だろ。どれだけ好きなんだよ。ベットに近づくとそこには昨日と同じトマトのパジャマに身を包んだメカブの寝姿が……自分よりも大きなグレイタイプの宇宙人のヌイグルミを抱きしめて眠ってる。
 そのチョイスはどうだろうか? と言わざるえないな。でも周りのヌイグルミをよく見ると、変なの一杯ある。メカブはどうやら宇宙人とかユーマみたいなのが好みらしい。ある意味らしいっちゃらしい。


「てか、これ別にメカブをどける必要ないよな?」
「キングサイズのベットだからね。でもこのグレイ邪魔でしょ?」


 確かに。このグレイがベットの半分を占めてる。本当はもっと細くキモい奴の筈なのに、デフォルメされて顔が超デカく、体はフワフワと綿が一杯詰められてそうな感じに膨らん出る。顔に対して体は小さく作られてるんだけど、なんとこのグレイ、もう一体が何故か体の半分を食べてるから大きな団子型の顔がドドンとベットに鎮座してる状況だ。
 てか、このグレイ共食いしてるんだけど……デザインした奴誰だよ。斬新すぎだろ。


「取り敢えずグレイだけでも退かせば……」
「ムリムリ、メカブは絶対に放さないから」


 どうやらそうみたいだな。寝てるくせにグレイだけは意地でも放そうとしやがらねぇ。やっぱ叩き落とすか? けどこの寝顔を見てると流石に悪い気がするな。アホづらしてるのに、そのせいで変に愛着が沸くと言うか……取り敢えず俺達はグレイをメカブに被せる形でスペースを確保した。これで良いだろう。
 さて、次はいよいよ……朝食か。なんか胃がキリキリする。いや、匂いはとっても空腹を誘うんだが、自分の体が変な反応を……


「大丈夫よ。そもそもアンタ達知り合いでしょ?」
「知り合いって、だから俺は誰が来てるのかなんか知らないんだって」


 でも知り合いか……知り合いね。学校の奴等じゃないだろうし、誰だよ。こんな所に来る知り合いってわからないぞ。うう……また頭がズキズキとしてきた。さっさとさっきの空いてた扉の部屋へ入ってく日鞠。俺はそこからこっそりと様子を伺う事に。するとあれ? 何も見えないぞ。
 まるで目の前に壁があるみたいだ。壁と言うか布? でも触ってみると、布の下はカチコチだ。やっぱ壁じゃね? そう思ってるとなんだか壁が小刻みに震えてる?


「なんだこれ?」
「あ……貴方という人は……」
「ん?」


 震える言葉が聞こえた。女性の声だ。だけどそれは日鞠じゃない。じゃあ一体どこから? 俺はドアに隠れる為に態勢を低くしてたから、そこから顔を上方へ向けた。すると二つの大きな山が! 


「あれ? なんかこの状況デジャブってね?」
「最低です!」


 太い腕が天に掲げられる。それをただなんとなく見てた俺。するとそれが振り下ろされるよりも先に、日鞠が横から出てきた。


「落ち着いてくださいシスター。そいつは確かに最低だけど、流石に二度も貴方が殴ると死にますよ。それに悪気はないと思います」
「そ……そうですね。無闇に拳を振り上げるものではないと神も言ってます。私も軽率でした。すみません」


 そう言って大きな体が壁みたいに降り曲がってくる。どうやらお辞儀をしてるみたいだ。気づくのに数秒掛かったぜ。てか……あれ? シスターだと? こんなゴツイシスターがどこの世界に……って、ん?


「シスターってまさかシスターラオウ?」
「そうです。メカブさんにエマージェンシーを頂きまして、参上した次第です。神に捧げたこの身を役立てるのは今しかないと思いまして」
「はあ……」


 そう言えば昨日友達に会ってたとかなんとか言ってたな。この人の事だったのか。てか、俺この人にぶん殴られたんだ……そりゃあ体に恐怖が刻まれる訳だ。この腕……この体……人間兵器だろ。


「なんだか余り頼りにされてないようですね。ですがわかります。結果なくして自陣に取り入れるのは危険と言うもの。なので軽く敵の首を取ってきましょう。外に数人監視を見つけてありますので」
「ちょっ!? それは辞めて!」
「そうですか? ではどうすれば?」
「いや、いいよ。十分頼りにしてます」


 そう言うとシスターラオウは笑顔になって敬礼してくれた。ヤバイだろこの人。シスターなのに、未だに戦争したい人だぞ。いや、頼り甲斐はマジであるけどな。この人が居れば、調査委員会が強攻策に出てもどうにか出来そうではある。


「お食事をどうぞ。取り敢えず今は戦時ですから、腹に残る物をこしらえました」


 そういった彼女に促されてテーブルを見ると、そこには料理がこれでもかって位に並んでた。戦時って……完全に戦争モードに入ってるよこの人。この人この量をマジで食べるのか? まさか……一度食べれば二日位は食事不要で行けます的な? 
 だけどこれを食べれないなんて言えない。それをいうと命が危ないからな。俺は席について万感の思いで「頂きます」を告げた。

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