命改変プログラム

ファーストなサイコロ

太陽の遣い

 全員が儀式の最中である事が分かった僕達は、大胆に動ける様になった。シクラ達はあの儀式に集中してるから、実質城の中はもぬけの殻。遠慮する必要はない。いつ終わるかも分からない儀式なんだ、コソコソなんて既にやってられない。僕達は手分けして、この広い城をかけずり回った。数百以上ある部屋を、片っ端から開けては中の物をひっくり返しまくる。それはまさに物取りの犯行。でもそんなの言ってられない。そもそもゲームの中の勇者は他人の家に入って勝手に壷を割ったりして、中にあったコインやアイテムを盗んでくじゃないか。
 あの感覚と同じ……これは合法です! そんな風に強引に思ってると、ポッケに入れてたお札がバイブする。ミセス・アンダーソンに渡されたお札は便利な連絡手段だ。僕はお札を取り出して、指で表面をナゾってでるよ。


「はい、こちらスオウ」
『そっちはあったか? こっちはあらかた探したが、それらしい本は見当たらないぞ』
「そうか、こっちもまだ見つけてない。まだ探す所はあるけど……微妙だな。取りあえず終わったんなら、お前はリルフィン達と合流してくれ」
『貴様等の方は大丈夫なのか?」
「こっちは大丈夫だよ。ピクの危機察知能力もあるし、クリエは抱えてれば邪魔にはならない」
「むむー邪魔って何よ! クリエ邪魔してないもん」


 そう言って頭をぽかぽか叩いて来るクリエ。抱えてるって言うか肩車状態だからな。


「止めろよ。暴れるな」
『ははは、まあまだ儀式も終わっては無い様だし、大丈夫だろう。だが急げよ』
「ああ、分かってるっての」


 ポカポカ殴られながらも、通話を終了。てか、そろそろ止めないと怒るぞ!


「だってスオウがクリエを邪魔なんて言うのが悪いんだもん。クリエの事すっごく頼りになるって言えば良いのに」
「それは嘘だろ。殆ど何もやってないだろ?」
「やってるよ! ピクとの通訳してるもん」
「ああ」


 確かにそれは便利な事だけど、別にこっちは分からなくても、向こうには通じてるし、案外問題ないよな。危険な時は鳴いて知らせてくれるしね。ピクは働き者だよ。クリエよりもよっぽど。だって僕が通話してる最中も一人先行して、通路の先まで見て来てくれてるからな。ピクが安全言うなら、間違いないのだ。


「ピクばっかり褒めてズルいよ」
「そうはいっても、ピクにはいっぱい助けてもらってるからな」


 ふてくされた始めたクリエ。クリエももっともっと魔法が使える様になれば、とっても心強いんだけどな。だけどまだまだ現状じゃその可能性は低いし、やっぱり子供って感じが強いもん。まあいっちゃうとピクだって子供は子供なんだけどな。小さいドラゴンだし……成長要素はあるのだろうか? でも成長し続けたら、今の愛らしさは確実になくなるだろうな。だってなんてたってドラゴンだ。今の愛らしさに置き換わって、きっと凛々しさや美しさが現れると思う。それはある意味で楽しみでもあるけど……やっぱり今のこのピクが見れなくなると思うと寂しいな。
 まあ僕が心配してもどうにもならない事か。僕は先の通路までの扉を片っ端から開けて中を物色していくよ。実際本棚とかはどの部屋にもあるんだけど……それを丁寧に抜き出してる暇はない。だから二人で一気に床にバラまいて、素早く見る! それはもう一瞬の早さだよ。てか僕の場合は地面に落ちる前に全部を判断してるかな。それだけの動体視力がなんだか身に付いてた。そして部屋の他の場所も見て回る。大体一つの部屋に掛ける時間は三十秒程度。それで十分。何百とあるんだ、数分・数十分なんて掛けてられない。
 時間は見えないだけで、刻一刻と迫ってるのも確実だからな。全ての部屋を確認することがまずは大事。だからこそのスピードだ。


「次に行くぞクリエ!」
「うん」


 そして結局この通路の部屋にも無かった。光はまだまだ強く輝いてて、空の浸食が広がってる様子もない。ただそう見えるだけで、実は内側の浸食は広がってるのかも知れないけど……いやきっと広がっているんだろうな。


「スオウ急ごう!」
「おう!」


 そうだな。感傷に浸ってる暇はない。次の通路は更に部屋が多くなってる。窓に沿ってた通路から内側の方に入ったから両側にそれぞれ部屋がある。ほんと、どれだけ部屋があるんだ……僕は一回息を吐き、だけどその後直ぐに吸い戻して顔を上げる。こうなったらとことんだ。見つかるまで止まらずにいく!!






「はぁはぁはぁ」
「もう疲れたよスオウ。全然ないんだもん」
「それを言うな。それを……」


 でも確かに疲れたな。これだけ探しても無いとはな……毛色が違う感じの部屋もあったんだけど、悉く外れ。やっぱりシクラの部屋か、セツリの部屋が一番怪しいよな。セツリがメインに使ってる部屋。それか宝物庫とかさ。これだけの規模の城ならあるだろう。でもそんなあからさまな所にシクラが置いとくか? って疑問もある。あいつ捻くれてるからな。それに人をバカにしてるし……案外誰もが見落としそうな所にデドンって置いてても不思議じゃない。


「ピーピー」


 そう鳴いてるピクが地面に下りて丸くなる。ピクも疲れたのかも知れないな。アイテム欄から取り出した水を手のひらに溜めて、ピクの前に差し出すよ。すると小さな下でペロペロと飲んでく。やっぱりピクは可愛いな。リアルに持ち帰りたいくらいだ。飛べるのに逃げないって良いよな。自分の周りに常にドラゴンが……ちょっとカッコイイと思える。そうだ。ピクを見てたら思いついたぞ。


「なあピク。お前のその不思議な力で探し当てたり出来ないのか?」


 僕がそう言うと「ピィッピッピピィピィ」と鳴いた。何か言ってたけど、なんて言ったのかは僕にはわからない。


「おい出番だぞクリエ」
「もう都合の良い時ばっかり……スオウはホントいけずだね」


 どこでそんな言葉を覚えてたんだか。待ちに待ったお仕事だろうに。しかも他の誰にも出来ないクリエ専用だぞ。やりがいあるだろ。


「え~とね、ピクは見た事も無い物は探せないって」
「ああ、なるほど」


 そう言えばそうだな。ピクは法の書を見た事も無いのか。ピクの探索能力にもやっぱり条件があるのかも。見たり触れたりしてないと、探しようがないと。外見上の特徴だけじゃ無理があるんだな。それはしょうがないな。するとその時、再びお札が振動する。またテトラか? そう思って出てみると、違う声が聞こえて来た。


『スオウか? 貴様なんで邪神をこっちにやった? こっちは二人で十分だ』
「そうは言っても、アンダーソンも歳だしこっちよりも必要かなって思って」
『ふざけるな。あんな奴の助けなど--」
『--犬、威勢がいいのは仕方ないが、もっと素早く済ませろ。これでは日が暮れるぞ』
『ああ!?』


 全くお札の向こうで何をやってるんだか。協力出来る時くらい協力しろよな。今は一刻を争う事態なんだぞ。


『お前の助けなど無い方が早く進む。お前はスオウの方にでも行ってろ』
『このペースで間に合うとは思えんな。自覚しろよ犬。奴等が儀式をやってる最中しかチャンスは無いんだ。次は無い。それを肝に銘じてるか? 貴様が俺を嫌いだろうがなんだろうが、どうでも良いが。このまま世界を奴等に明け渡す気は俺にはない。貴様等の協力がいらないのはこちらの方だ。後は俺がやってやるよ』


 ホント口を開く度に、あの二人は喧嘩にしかならないんだから。ま、でも残りをテトラがやるんなら早いかな? リルフィンも流石に言い返せないみたいだし、これ以上ギスギスするなよって感じだ。リルフィンだってそこら辺分かってるんだろうけど、テトラの奴が居るとどうしても……って事なんだろう。でもそこをググッと堪えるのも大人な対応だろ。他の奴には出来るのに、ホントなんでテトラには出来ないのか不思議だ。ハッキリ言って、テトラにぶつかってる時のリルフィンはちょっとバカに見えるぞ。


『うるさい。俺とアイツは気が合わないんだよ。さっさと消えて行きやがって……やる事が無くなったぞ』
『良いじゃないですか。ハッキリ言って私は疲れたからね。神を足蹴に使ってるとでも思いなさいよ。なんだって考え方一つで捉え方も変わる物よ』


 ミセス・アンダーソンが なんか良い事を言ってるぞ。流石聖職者。そうそうもっと良い方に捕らえればいいんだ。リルフィンの奴はテトラの言う事をなんだってバカにした様に捉えるから、気が立っちゃうんだよ。もっとくだらなく思ってれば、笑ってながせるかも知れないのにね。変に意識してるから、テトラの一言一句が気になるんだよ。するとリルフィンに変わって、ミセス・アンダーソンの声がする。


『取りあえず報告しておくと、法の書らしき本はまだ見つかってないわね。そっちもどうせまだでしょう?』
「何で分かるんだよ?」


 勘か? 女の勘って奴か?


『いえいえ、そんな安っぽい物じゃなく、ちょっと違和感を感じるのよね』
「違和感?」


 どういう事だ? ミセス・アンダーソンは何を感じたというんだ? 気になるぞ。


『ええ、なんだか上手く言えないけど、何かの力を感じる様な……』
「おかしいだろ? 奴等の儀式は繊細だから、何もされてないんじゃなかったのか?」
『その筈なんだけど……じゃあアンタはこのまま全ての部屋をしらみつぶして法の書が出て来ると思ってるの?』
「それは……」


 今はかなり怪しいと思ってるけど……だけど全ての部屋を見ない事には「やっぱり」という確信には変わらない。でも「やっぱり」となるって事は無駄になるってことだよな……この時間が。でも止める事なんか出来ないだろ。この城のどこかには確実に法の書はある筈なんだからな。待てよ……


「おい、お前等セツリの部屋っぽい所とか、シクラの部屋っぽい所とか見たか?」
『そう言えば……どの部屋もやたら綺麗で使ってる感じはしなかったわね。まさか……」
「そのまさかかも知れない。僕達は城の中に確かに居るけど、セツリ達の生活区域にはまだ足を踏み入れてないんじゃないか?」


 僕のそんな言葉に今度はリルフィンが声を出した。


『そんなバカな! 既にかなりの部屋を見た筈だぞ。それなのに、奴等の部屋はまだ一つも見つかってないと言う気か?』
「だけどこれだけ探して何か一つでも収穫あったか? 生活感とか……今思うとこの城から感じれるか?」


 まるで今僕達が居るこの城は、玩具の城……いやおままごとに使う様なそんな仮初めみたいな……


『だけど待て、仕掛けは何も出来ない筈だ』
「確かにその筈だけど、何かはある。それこそこれだけの城だぞ。別に魔法的な仕掛けじゃなくても出来るんじゃないか? 物理的な何かが」


 隠し通路とかあってもおかしく無い様な。それなら魔法に干渉する事なんて無い筈だ。


『物理的な何かなんて、どうやって見つけるんだ? これだけ広いんだぞ!』
「それは……」


 実際本当に物理的な仕掛けで隠されてるとしたら厄介だな。本当に足でしか探せない。いや、リルフィンの鼻なら……


「おい、お前なら匂いで--っておい?」
『すまんなスオウ。通信はここまでだ』
「どうした?」


 何が起こってるんだ? なんだか緊迫感がこっちにも伝わって来る様な……バサバサとした羽音が聞こえる。そして次の瞬間風の音が響き渡って通信は途切れた。おいおい、なんだこれ? 敵か? でも今この場所に敵なんて居るんだろうか? するといきなりピクが羽ばたき出した。浮いたピクは進行方向を向いて、さっさと進み出す。


「おいピク!」
「お、追いかけようスオウ!」


 いきなり進み出したピクは何かを感じたのかも知れない。僕はクリエを頭に戻してピクを追いかけて走り出す。今まで誰とも鉢会わずに来た通路だ。一体どんな奴がこの場所に現れたんだ? そう思いながら進む事数分、角を曲がった瞬間、熱い風が吹き抜けて来た。


「あっつ!?」


 角から出る前に僕は止まったけど、出てしまってたピクはその熱風に当てられて、壁に叩き付けられた。クリエが直ぐに僕の頭から飛び降りて助けに行こうとしたけど、僕はそれを止めるよ。取りあえずこの風が止まないとダメだろ。そんな長く続くとは思えないからな。すると案の定風は弱まった。その時に僕は飛び出してピクの傍に。大丈夫、まだHPは残ってる。だけど熱風に当てられてぐったりしてる。その時、後方から妙に輝かしい光が冴え渡る。


「スオウ、逃げろ!!」


 リルフィンのそんな声が響いた瞬間、僕はピクを抱えて再び元居た通路に飛び込んだ。するとその直後、壁に激突する神々しい何か。なんだこの光? 眩し過ぎるぞ。しかも熱い。息をするだけで喉が渇く程だ。太陽みたいな奴だ。ぶつかった壁も、直ぐに赤く染まって溶岩の様に溶けて行ってる。あの体全体が超高温になってるのか……接近戦は不味そうだな。セラ・シルフィングに手を伸ばす僕。だけどその時、壁を溶かして出て来たその何かと目が合う。


(あれ?)


 何かが頭に引っかかるぞ。見覚えがある気がする。光る体に……複数に別れた長い尻尾。こんな熱くは無かった筈だけど……あの姿……まさか……


「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 リルフィンが投げた白い武器がその鳥へ直撃する。だけど倒れた方の壁はやっぱり溶かされて、そしてぶつかった筈の武器もその熱で瞬く間に溶かされてく。リルフィンの白銀の毛で作られてたそのトゲトゲの槍みたいな武器は熱の影響か、その繊維を解いて行ってる。


「早く離れろ! 熱にやられるぞ!!」


 響くリルフィンの声。僕はその声に従って更に離れようとする。だけどその時クリエの奴が床につまづいて転んでしまう。なんでこんな時に!? そう思った。手を伸ばそうするけど、そう言えば僕の腕にはピクが居る。ヤバいぞ。これ以上下がったら、こいつの狙いが僕からクリエに成るかも。そうなったら不味い。クリエに防御力はほぼ無い。この熱気をマトモに浴びたらそれだけで大ダメージ受けそうだ。


「立てクリエ! 早く!!」
「だ……大丈夫だよ!」


 涙を拭いて立ち上がるクリエ。よし、良く頑張った。だけどその時。半分位溶かされたリルフィンの武器が床に落ちて甲高い音とジュワッというなんとも熱そうな音が響いた。ヤバい、動き出す気だ。炎と光りに包まれた鳥はその翼を大きく広げてる。このまま突っ込まれた確実に燃やされる。セラ・シルフィングで防御を……いや、それだけじゃダメだ。せめてイクシードを発動しないと……


(だけどピクを抱えてるから抜けるのは一本……それでいけるか? いや、迷ってる場合じゃない!)


 僕は片腕にピクを抱えて腰のセラ・シルフィングに手を伸ばす。だけどその時、燃え滾る鳥の周りに何かが突き刺さった。そしてその突き刺さった物から、光の膜が丸く展開される。簡単に言うと、鳥を囲ったんだ。鳥かごみたいに。鳥の周りに刺さってるのは四つの十字架……これは−−


「さっさと離れなさい! クリエを殺したりしたら許さないわよ!!」


 あのおばさん……無茶しやがって。僕はセラ・シルフィング伸ばした腕をそのまま床に近いクリエへと向けて、素早く抱え上げた。


「逃げるのスオウ?」
「お前達を安全な所までやるだけだ。それをやったら、リルフィン達に加勢する!」
「そっか……クリエ達は足手まといだもんね……」


 そう言ってシュンとするクリエ。足でまといって分かってるんなら、理解してくれるよな? クリエだって死にたくは無いだろうし……そう思ってると、クリエはこんな事を言う。


「それはしょうがないけど……でもあの子クリエ達を……てかピクを狙ってるかも」
「何?」


 次の瞬間真っ赤な炎が通路に一気に広がった。壁にかかった絵や、調度品なんかを容赦なく消し炭にする程のその炎から本当にこっちに向かって飛び出して来る輝く鳥。今のでアンダーソンの拘束魔法は破られたか。でも普通、モンスターは攻撃をしてる相手を狙う筈……それを無視してこっちに向かって来るってことは、本当にはなから狙いはピクなのか? でもそんな事って……しかもなんでピク? そんな考えを巡らせる間にも一気に奴は炎を纏って近づいて来る。この狭い通路じゃ逃げるのも限界があるな。しかも炎がまだ残ってるせいで、リルフィン達の救援は望み薄……仕方ない!


「クリエ!」
「何?」
「奴の狙いはピクなんだな?」
「そう言ってるよ!」
「なら、お前がピクを守ってやれ。とにかく離れろ! 僕が食い止めてやる!!」
「でも……クリエじゃ……」
「出来るんだろ? ピクを……守ってやれ!」
「…………うん!」


 力強く頷いたクリエにピクを託して僕はクリエを放り投げる。そしてこっちは空いた両手で今度こそセラ・シルフィングを抜いて真っ赤に燃え滾る鳥へ勢い良く向いた。その瞬間、腕を振るって勢いづいてた奴のくちばしにセラ・シルフィングをぶつける。


「っづ!? あっつつつあああああああああああああああ!!」


 ヤバい……なんだこれ。手が焼けただれ皮膚が溶けて肉が香ばしい匂いを上げて油を弾けさせて、そして骨までもドロドロになりそうな……そんなイメージを焼き付ける程の強烈な熱気が僕を襲う。実際、セラ・シルフィングも僕の腕も一気に真っ赤になった。一瞬で体も心も焼き枯れそうなそんな業火……だけど後ろにはクリエ達が居るんだ!! 僕は歯を食いしばって痛みに耐えて、意識を保つ。このままじゃ絶対に不味い。出し惜しみなんてやってられない!!


「イクシード!!」


 ウネリを刀身だけじゃなく腕の方まで伸ばしてなんとかこの業火を遮る。するとどうにかさっきよりはマシになったかな? 熱いけど……一瞬で殺される程じゃ無くなった。だけど間近で見て確信した。こいつやっぱり……


「くっ……」


 僕は目を閉じて顔を振るう。溢れ出る汗も直ぐに蒸発するし、何と言っても眼球も直ぐに乾く。少し我慢しようものなら目が焼けそうだ。するとその瞬間を狙ったのか、押し続けて来てた圧力がフッと消えた。僕はそのせいで態勢が崩れる。しまった! −−そう思った時には奴は既に僕の頭上を越えてた。激しい炎を巻き上げて必死に走ってるクリエへと迫る。僕は態勢を崩しながらも体を回転させて、ウネリを奴に向ける。だけど羽ばたき一つで大量に溢れて来た炎が通路一杯に広がってウネリを阻む。ただのイクシードじゃダメだ。
 だけど引き上げる前に、僕の体は無理な態勢のまま地面に倒れる。肩から胸、心臓にその衝撃は伝わって、空気が押し出される。一瞬視界もぼやけた。そんな刹那の瞬間だ。爆発めいた音と振動、様々な色に燃える炎が僕の頭上に吹き荒れた。

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