命改変プログラム

ファーストなサイコロ

恋路と見えない道

「花の城? そんなおとぎ話みたいな物が本当に……」


 彼女は信じられないって感じだな。確かに僕だってまだ見た事無いし、あるかどうかなんか知らないけどさ、ここはLROだ。あってもなんら不思議じゃない。てか、こういう世界には空に浮かぶ城やら大陸やらは必須ではないだろうか? まあそう言うのは終盤でいきなり出て来るのが定番だけど……もう僕はそこまで来ちゃってるのかも知れないな。ラスボスともバトルッたしな。それなら次に空に浮かぶ場所というのはなかなか相応しい気はする。


「ある。--そうだろ?」


 僕は断言して僧兵を見る。まあリルフィンも知ってるけど、ここはやっぱりこいつだろ。すると僧兵は色々と周りの機械をいじりながらこう言うよ。


「ああ、俺達はそこに行ったんだ。 この世界にその場所はあるんだ。てか、俺を必要としたのもその為だろ? あるってだけならそこのリルフィンさんも知ってる訳だし」
「まあね」


 もっと正しく言えば、僧兵本人と言うよりも、このバトルシップなんだよな。もしかしたらサーバーとかに上がってたりもするのかも知れないけど、正式な許可をとって出航してた訳じゃあの時は無かったからな。あの日のこの船の記録はこの船だけに残ってて、無かった物と同然なんだ。でも本当に消した訳でもなかった。だからこの船にはあの時のあの場所の情報が残ってる。それが唯一、花の城に繋がる道だ。それを使う為にはこの僧兵も必要だった訳だよ。リルフィンじゃ操作出来ないしね。


「そこってヤバい奴等がいるんでしょ? 途中で降ろしてくれるんでしょうね?」
「それは難しいな。アンタが僕達の事を内密にしてくれるのならいいけど。約束出来ないだろ? 口軽そうだし」


 そこら辺のギャル並みに軽そうじゃん。彼女を下手に解放して、元老院共につけ込ませる隙を与えるのは不味い。だから解放は難しいよな。でも実際、このまま連れってても足手まといは確実だ。でも丁度いい落とし所が見当たらないんだよな。実際、彼女の処遇にはこっちも困ってるって感じだ。だって僧兵の記憶が戻った時点で、実際用無しなんだからな。


「アンタ達ってホント私を過小評価しかしてないわね」
「違うのか?」


 どこに反論の余地があるのか興味深い。まあ実際、良く知らないからな。僕達のこの考えの根底にはミセス・アンダーソンの刷り込みがあるのかも知れない。あのおばさんが散々言ってるから、役立たずみたいな印象が先行してそういう奴なんだと僕達は思い込んでたけど、実は違うのかも知れない。さあ、もしも反論があるのなら、聞かせてもらおうか。もしかしたら何かの役に立つのかも知れない。


「え~と、別に違わないけど。私は魔法も得意じゃないし、戦闘能力なんて皆無だもの」
「やっぱ役立たずじゃねーか」


 なんでモブリのくせに魔法が苦手なんだよ? それってモブリである事を否定されてないか?


「うるさい。私は上に立つものなの。その意味分かる?」
「さあ?」
「つまりはね、私は人を顎で使う側なの。自分に能力が無くても問題ない。能力のある奴を使うだけ。私の武器ってそう言う事なの」
「無能に使われる奴は哀れだと思うけど」
「無能じゃないわよ!」


 必死にそう叫ぶ彼女。無能じゃないの? 何も出来ないくせに? 人を使うって……それってただ人をつかうだけってだけじゃダメだろ? 指揮官クラスには色々と適正とかが求められるのが普通だぞ。彼女じゃ全て落第しててもおかしく無いだろ。何も出来ないけど、権力を嵩に人を使うって……無能な政治家が見栄えを気にして無駄に護衛を付けるのと同じだよな? ようは、そいつの周りに人員を割くだけで無駄だと言う事だ。無能じゃないというのなら、どう無能じゃないのか聞かせてもらわないと判断出来ない。


「どうしてアンタにそんな事を判断してもらわないと行けないのよ? この私が!」
「まあ別に無能と思い続けて良いんならいいんだけどな。けど、無能のままじゃこっちも守り辛いっていうか。何か出来る事があるなら、それを作戦とかに組み込めるだろ? 君が言った様に、花の城の連中は危ない連中だから……出来る事はやっておきたい」


 そもそもあいつ等相手に準備をしすぎてる……なんて事はあり得ないんだ。寧ろ幾ら準備したって「これじゃあダメなんじゃないか?」と不安を拭えないレベルの奴等だ。だから用意はあるだけいい。一つでも何か出来る奴と、何にも出来ない奴の価値は天と地ほど違うだろ。


「ふん、行ったでしょ。私は人を使える。それが唯一の特技。でもアナタ達私の指示とか聞く気無いでしょ? 意味ないわ。私に仕えない奴に、私の事を知る権利は与えない」
「そっか。まあ実際どうするか……とかはまだ全然だし、別にいいよ。とにかくバトルシップの中には居てもらうし。花の城を見つけたとしても、外に出なければまあ……多分、いや多少は安全だろ」


 実際には気休めにもならない差だろうけどな。シクラ達が本気を出せば空を飛ぶバトルシップも簡単に落とせそうな気はする。あいつ等その気になれば自身での単独飛行まで出来るしな。まあこっちが向こうを見つけても、向こうには見つからないってのは最低条件だ。見つかったら逃げられる保証ないからな。するとリルフィンの奴がカツカツと靴を鳴らして近づいて来る。その視線は明らかに彼女に向いてる。


「な、何よ?」
「スオウの奴は甘いから言わなかったが、くれぐれも俺達の邪魔はするな。面倒もかけるな。その時は迷わずお前は切り捨てる」
「ちょ! 何よそれ!! 私は元老院を納める長の孫娘よ。偉いの、とってもね。こんな大犯罪犯しておいて、守りもしないなんて神様だって許さないわよ! ちゃんと守りなさいよ!」


 神様が居る前で神とかいうのはどうだろうか? 一応だけど本物だぞそこの奴。まっ、ありがたい神じゃないけどな。


「守られたかったら、そこの奴を頼るんだな。お前の唯一の味方だろ?」
「ちょ! どうして俺が!」
「あれじゃ頼りないわ。悪いけど、そんな信用してないし」


 おいおい、凄い言われてるぞ。するといつもの通りに意地を張り出す僧兵。


「はっ、こっちだってなんでわざわざアンタなんかを守らないと行けないんだ」
「何言ってるのよ。アンタが私を守る役目なのは決まってる事よ。僧兵には私達を守る義務がある。当然でしょ。どこに就職してると思ってるのよ。アンタが護衛なんてホント頼りないけどね」
「そうかいそうかい。悪かったな頼りない僧兵で。エリートでもなくて、庶民で悪かったな!」
「そうよ、庶民なのが行けないのよ! もっと上に居なさいよ! それなら……」


 それなら? 今、何を言おうとした? 彼女は途中で自分で口を塞いだから、それ以上は分からない。だけど今の言葉は……僧兵だって聞いた筈。どう返す?


「どうせ、どうせ俺はたかが庶民だよ! 実力も無いし、エリートでもねぇ! 悪かったなザッ普通で!」


 そう担架を切って、僧兵はもう一切彼女を見ようとせずに、運転に集中しだした。そうじゃないだろ! って言いたい。彼女きっともっと違う言葉を期待してたと思うぞ。言葉は悪かったけど、彼女は基本ああいう言い方しか出来ないし、察しろよ。折角ちょっとは近づいた筈だろうに、これじゃあまた今までと同じだぞ。


「お--ん?」


 僧兵に声を掛けようとしたら再びテトラに止められた。ええ? これもダメなのか? でもこのままじゃこの二人ずっとこのままの様な……


「それなら結局それだけの繫がりでしか無かった……そう言う事だ。本当に好き合ってるのなら、その内動かずにはいられなくなる」
「そう言う物なのか?」
「そう言う物だ。クリエも言ってただろう。走り出した恋は止まらないと」


 そう言ってクリエに視線を向けるテトラ。するとクリエがブイってな感じで指を示す。得意気な所悪いけど、今まさにその恋は止まろうとしてる様に僕には思えるんだけど……するとテトラはやっぱりこう言うよ。


「それは、それだけの繫がりでしかなかっただけ。たったそれだけの事なんだよ。関わるな。手をだすな。お前はもう十分過ぎる程にやった。後はあいつ等二人の問題だ」
「…………」


 本当にそれで良いのか? ダメになるかも知れなくても、誰かが手を貸せば上手く行くかも知れない事って結構ある様な気がするんだけどな。野暮なのは分かってるけど、それだけの繫がりだったって決めつけるのはどうなんだ? テトラの考えでは、外からの助力でもしもくっついても、それは結局それだけでしかないのかも知れないけど、このまま離れてしまうよりは、変化があるかも知れない。誰もが運命とかの赤い糸で繋がってるって訳でもないだろ。でもまだ更に追い打ちを駆けるかの様にテトラはいうよ。


「認め合うのが遅すぎて、気付いた時には全てが手遅れだったとしても、それはお前が気にする事じゃない」
「……離せ。お前の持論はありがたく聞いてやるけど、それに従うかどうかは僕が決める事だ」
「他人の恋路にあんまり関わると、ろくな目に遭わないと思うがな? これはあいつ等の為でもあり、お前の為でもあるんだが」


 邪神が人の心配とは似合わないっての。ドロドロにこじれてく恋模様とかを見てもっと下衆っぽく笑ってる方がそれっぽいぞ。人の心配して、恋の理解者みたいな顔して、これじゃあ普通の神っぽくなってるっての。まあ割り切ってる所は割り切ってるけどさ。でもそれはテトラにとっては結局他人の恋事情だからだろ。こっちは出会わせてしまった責任って物があるんだ。本当ならずっと知らずに生きて行けたかもしれない。だけど二人は出会って、色々と悩む様になったんだ。自分の境遇や立場。地位や世間体。色んな物がズレてて一個も合致しないこの二人には、ただ見守るってだけじゃダメだと思うじゃないか。


「お前とシクラみたいに運命の赤い糸で結ばれた二人じゃないかも知れない。何の共通点も無いんだ。疎遠になる事なんか簡単だ。もうちょっと近づけさせたって良いだろ?」
「近づけさせるな。貴様にそれが出来るとは思えないから止めてるんだが?」
「何?」


 どういう意味だそれ? 聞いてやろうじゃないか。


「貴様に恋の何が分かってる? 恋する男女の機微が、恋一つしてなそうな貴様に理解出来るのか? 何も分かってない奴が、分かった風な顔で語る事こそ腸煮えくり返る事は無い。特に上手く行ってない時には、逆撫でするだけだ」


 腸煮えくり返るって--そこまでなのかよ。流石にイライラする--程度の表現に押しとどめておけよ。


「貴様は恋時を邪魔した奴の末路を知らないんだよ。それはそれは悲惨な物だ」
「いや、僕は応援する側なんだけどな」


 邪魔なんてしてないだろ。末路とかいわれてもそんなの関係無いとしかいえない。何アレか? 人の恋時を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ--的な? 比喩表現だろ。まあそんな酷い事がありますよって言いたいんだろうけど。僕に降り掛かる理由が無い。


「だから貴様は分かってない。余計なお世話は、恨みだって買うぞ。お前はあいつ等の為と思っても、相手がそう受け取るとは限らない。わかるか? 余計な事なんだよ」
「それは……分かるけど……」


 でもこのままじゃ……いつまで立ったってあの二人は意地を張ってる様な気がするぞ。


「それはどうかな?」
「ん?」


 なんでテトラの奴がにやりとするんだよ。そう思ってるとテトラは首を動かしてクイクイっと前方を指す。僕はそれに促されて前を見るよ。するとそこには操縦席の後ろにちょこんと座ってる彼女の姿が。これは……どういう事なんだろうか? 喧嘩してたよな? 僕が頭の上にクエスチョンマークを出してると、テトラの奴が自分は分かってます的な感じで言って来る。


「お前の余計なお節介などいらないという事だ」
「は?」
「スオウにはちょっと難しいかも知れないね」
「なんでお前が知ったかしてるんだよクリエ」


 テトラには百歩譲ってその権利をくれてやっても良いけど、お前は別だ。何にも分かってないだろ。まあでも……確かに余計なおせっかいだったのかもな。




 そうこうしてる内にミセス・アンダーソンも戻って来て、バトルシップに記録されてる座標に近づいて来た。空は快晴で、地平線が綺麗に見える。白い雲は高く大きく沸き立ってるよ。


「そろそろか?」
「ああ、もうすぐで前に花の城があった場所だ」


 大きな入道雲に突っ込んで真っ白な雲を突き進む。そして大空に再び出た時--そこには再び無限の青空が広がってるだけだった。


「おい……」
「いや、確かにあってるぞ。前はここにあったんだ」


 必死にそう言う僧兵。でもどう見ても何も……するとリルフィンがこう言った。


「そう言えば、あの城は姿を隠せるんじゃ無かった? 突如目の前に現れただろ」
「そ、そうだ。きっと隠れてるんだ!」


 隠れてるね。そしたらどうやって見つけるんだ? 


「ミサイルでも撃ち放てば分かるだろ」
「お前な。それじゃあこっちの事がバレるだろ。あくまでも隠密作戦なんだよ。お前だってもうシクラ達に勝てないからな」


 コード取られたんだからな。余裕こいてると幾ら邪神でも殺されるぞ。


「こんな事ならやはり無理にでも部下を連れて来るべきでしたね。数人いれば出来る魔法のバリエーションも増えます。まあ今更ですけど」


 ミセス・アンダーソンもお手上げか。クリエもリルフィンも期待するだけ無駄だろうし……ここは僕がやるしかないか。


「僕がやるよ。気付かせずに探索するんなら、僕の風が一番いい」


 風はどこにでもあるからな。不自然がられない。それに透明になってるだけで、そこにあるのなら、風はそれを教えてくれる筈だ。僕は早速甲板に行こうとするよ。ここで風を起こしても意味ないからな。だけどそれを僧兵が止めて来る。


「待て待て、わざわざスキルに頼る事なんかない。最初の時はやらなかったけど、透明って事が分かってるんなら、センサーを切り替えるだけだ」
「バトルシップには透明な相手を見つける術があるのか?」
「ああ、熱源感知とかは勿論、各種センサーは揃ってる。まあどれも反応なんてしてないけどな。だけどそこに物体としてあるのなら、超音波は避けられないだろ」
「超音波?」
「ああ、生き物の中には超音波を出して跳ね返って来た時間とかで距離を割り出すのが居るんだ。それを使う」


 なるほどね。確かにそこに居るのなら、それでも良いな。イルカとかそんな感じで周囲を把握してるんだよな。頼もうじゃないか。


「よし!」


 そう言って数秒感の沈黙が訪れる。何か行われてるのだろうか? 超音波発生装置とかがガシャンと現れたりもしてないし……イマイチ分からないぞ。


「やってるのか?」


 僕は不安になって聞いてみた。すると僧兵は「コク」と頷く。だけどそれから更に数秒待ったけど、僧兵からなんの報告も無い。


「おい、どうなってるんだ?」
「結論から言っていいか?」


 おい、既になんだか嫌な予感しかしないぞ。僕は取りあえず頷くよ。


「どうやらこの周囲には何も無い様だ」
「何もないってそれはつまり……」
「つまり、花の城はこの周囲には無い」


 簡単な答えだった。誰もが予想出来た答え。面白みも何にも無いな。


「居ないという事は、城と呼べる程の物が動いてると……そう言う事ですか? 本当に無いんですね?」
「ええ、間違いありません。この周囲には何もない。ただの広い大空です」


 まあ実は予想してた。天空になんの為に浮いてるのか……それを考えると簡単だ。移動出来るから。それ以外に何がある。一つの場所にとどまってるより、移動する拠点の方が色々と便利だしな。


「予想してた最悪の結果だな。良くある事だが」
「まあな」


 僕とテトラの会話を聞いてた僧兵がこっちに向かって文句を言って来る。


「お前等分かってたのかよ! じゃあなんでいわない? 変に緊張しただろ!」
「移動してるかも知れないってのは見た事がある奴等なら直ぐに分かるだろ? 逆にどうしてここに留まってるって考えられるんだ? 僕達の期待は、ここに居てくれたらいいな~だったんだよ」
「じゃ、じゃあなんでわざわざここまで……」
「確かめたかったからだよ。必要だろ? それに全くゼロから捜索をするよりも、確実に一度は居た場所からの方が良いかなって」


 どれだけデカいのかとか知らないけど、本当に自由に動けるのか? ってのは謎だしな。シクラ達が持ち込んだ物なら、それもあり得そうだけど、もしかしたら最初からこのLROにあった施設だとも考えられる。それなら、移動にだって法則というか、制約があってもおかしく無い。それを知る事はかなり難しいけどな。


「それで、予想は当たってここには居なかった訳だから、次はどんな手を打つのよ? そこまで考えてるんでしょうね」


 ミセス・アンダーソンがなんだか睨みを利かせてこっちを見てる。もしかして、このおばさんも僧兵と同じ様に思ってた? それは悪い事をしてしまったな。


「まあ、少しは。確実かは分からないけど、ここまで来たのにはもう一つ理由がある」
「理由?」
「おう、ここにあって、そして移動したのは確実だ。ならここの風達に聞くまでだろ」
「結局それかよ」


 なんだその飽きたみたいな反応は。風を掴める様になったのは大きな成長なんだぞ。エアリーロは言ってたんだ。風は全てを知ってるって。だから風に聞くのは合理的だ。


「それはどこまで信用していいんだ? 確実にその方法で見つけれる物なのか?」
「それは……実際探し物をするとかは初めてだな」
「お前な……」


 メッチャ不安な目で僧兵の奴に見られてる! こいつにこんな目をされるとは心外だ。確かに初めてだけど、風の情報量が半端ないのは確実なんだ。必ず風達は花の城の居場所を知ってる筈だ。


「だが大切なのは情報の多さだけじゃない。それだけの大量の情報をお前の残念な頭で処理出来るのか? そこが俺は心配だ」


 テトラの奴、誰が残念な頭だって? 確かにそんな良くは無いけどな。残念って程じゃない。まあ不安は確かに残るけどな。よくよく考えたら風からの情報とか殆どはスルーしてたしな。でも欲しい部分は勝手に抜き出せる様な……そんな感じでもあった様な気もする。それなら大丈夫……の筈だ。不安になって来たけど、やってみるしか無いだろ。他にここから花の城を辿る術なんて無いんだ。すると小さくなってた孫娘が出て来た。


「ちょっと待ってよ。この船って一度その場所に下りてるのよね?」
「ああ、そうだけどそれが何か? 大切な話ししてるんだけどな」


 おいおい、僧兵の奴その言い方は不味いだろ。もっと優しく接してやれよ。だけど彼女は今度は食って掛からない。睨み返しただけで別の席の方へ向かう。


「バトルシップはノーヴィスの魔法技術の粋を集めて作られた船よ。この船には沢山の術式が組み込まれてる。一度着地してその情報が今も残ってるのなら、ある程度辿る事は出来る筈よ」
「マジで?」
「マジ。魔法やスキル、それに命全てに宿ってるエネルギーがある。それらは常に放出されてて、それを私達はスキルや魔法に還元してるし、してなくても出続けてる物なの。そしてそれは千差万別。このバトルシップはいろんな場所のデータ収集も出来る様になってるから、それを解析してセンサーに応用すれば……まあそこまで高精度じゃないかもだけど、ルートの目安くらいには出来るかも」


 おいおい、なんだ彼女? メッチャ優秀じゃねーか! 誰だよ人を使うしか能がないって言ったのは! いや、彼女本人だけど……謙遜だったのか?


「別にこの位、今の若者なら出来るでしょ? おばさん達には無理だろうけど、こんなの自慢にも成らないわ」
「そうか?」


 かなり自慢出来そうな事の様な気がするけどな。でもおかげで助かったな。彼女の組んだセンサーと僕の風の情報を組み合わせれば、グッと信憑性が増す筈だ。軽くバカにされて一瞬ムッとしたミセス・アンダーソンだけど、そこは大人な対応で流してた。


「よし、じゃあここは任せるよ。僕は甲板に出るから。天井は開けとけよ」
「了解」


 なんだか僧兵の奴もちょっと不機嫌だな。やっぱり出来る子だったのが嫌なのか? う~んでも嫌ってことは無いだろうけど……なんといえば良いんだろうか? そんな事を考えてると、ズボンを引っぱる感触が。


「クリエもスオウと行く! お手伝いする!」
「いや、手伝いって言ってもな?」
「お手伝いする! クリエの魔法もスオウにならちゃんと出来ると思うんだ」


 その自信はどこから? まあでも僕とやる時だけが確かに何回か魔法が発動してるな。相性とかあるのか……それとも何か良い影響でも与えられてるのだろうか? すると驚いた声でミセス・アンダーソンが反応する。


「魔法!? クリエ、今アナタなんと?」
「だから魔法だよ! クリエも魔法使える様になったんだよ」


 なったんだよってまだ成ってはいないだろ。自由自在って訳でもないしな。すると今度はテトラがこう言うよ。


「まだまだだがな。だが手伝うと言ってるんだ無下にする事もないだろう。俺が指導してやる。良い練習にきっとなるぞ。それに貴様へのメリットもあるだろ」


 テトラの奴、何を企んでるんだ? まあ確かにクリエの魔法は力を底上げしてくれる感覚だったから、確かに役には立ちそうだ。上手く使ってくれれば、風の情報をより効率よく取り込めるかも。


「よし、じゃあ頑張れよクリエ。サポートを頼む」
「うん!」
「なら俺も甲板に出よう。センサーと風、それと俺の鼻も合わせれば、流石に見つからない物など無いだろ」


 そう言ってリルフィンも甲板に出る事に。三つの力を合わせて、僕達は花の城を見つけ出す!!

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