命改変プログラム

ファーストなサイコロ

改変の始まり

 リルフィンの背に乗って空を進む僕達。空から見ればLROは居たって平和で、いつも通りに見える。大きな変革が起きようとしてるなんて微塵も感じない。空はどこまでも青く広いし、大地はどこまでだって続いてる様に見える。
 青々とした世界は力強ささえ感じさえてくれる程だよ。そもそもシクラ達がやろうとしてる変革というか改変は一体どこまでの物なんだろうか? 一から作り直す……って訳じゃないだろうけど、プレイヤーを排除し、マザーを掌握して、この世界の主導権を全てセツリに譲渡する気なんだよな。
 そしてセツリの理想とする、セツリを絶対に裏切らない世界を創ろうとしてる。NPCはセツリの為の存在になって、世界はセツリを中心に回り出すって感じかな? 基盤は今までのこの世界のままで、ルールが変わるってことなのか? 
 そこら辺は良くわからないな。ただ一つ確かな事は、そんな世界を創ったって、結局それは僅かな夢でしか無いってことだ。セツリが眠って既に三年……アイツの体は限界を迎えようとしてる。でもまだ体がリアルで頑張ってるのは、迷いがあったから何じゃないかとも思う。
 セツリの体は無くなった自信の精神の帰りを信じているからこそ、ずっと頑張って来たと思うんだ。でもセツリが完全に帰るのを止めれば……それはもう肉体的には自身から死を宣告された様な物じゃないか。
 きっとセツリが望む世界が完成した時、肉体は完全に捨てられる。そうなったら近いうちに死は必ずやって来る。肉体が死ねば、精神だって死んでしまう。理想の世界を手に入れたって……そんなの何の意味もないじゃないか。


(まあこんなのは散々言い合ったんだけど……)


 ただ伝えるだけじゃもうダメな所に来てる。セツリの事を一度裏切ったし、信じれなくしてしまったのは僕だ。そのせいでアイツの意思は深く潜る方向にまた行っちゃったんだもんな。ホントアレは大失敗だったとしか言いようが無い。
 あの時の自分をぶん殴ってやりたいよ。でもそれは出来ない。過去に戻る事は出来ないからね。不用意な発言は行動で示して撤回する。聞く耳を持ってくれないのなら、無理矢理引っ張ろうと思ってる。
 けど……それもやっぱり難しくなって来たな。まさかこんな手で来るとは……だし。変わらなく見える世界には、もう僕とセツリ以外のプレイヤーはいない。こっちの味方には神が居るけど……すでにそのアドバンテージも無くなったしな。
 ホント、戦力が九割型減少してるよ。リルフィンの言った事は間違ってない。まあ今まで通りの世界だったとしても、今のあの姉妹に勝てるかは謎だけどな。チートをこじらせてるからな。会う度に。
 チートってそれだけで反則なのに、更にそれをこじらせて行ってるから奴等は質が悪い。僕だって実際真っ当に成長してる訳じゃないだろうけど、奴等のそれは成長スピードまでもチートなんだから話に成らない。
 システムの裏側から裏道を悉く走って行ってる……そんな感じ。一体どれだけの差が出来てしまったのか……想像も出来ないな。そうだ!


「なあリルフィン、お前やテッケンさん達ってシクラ達の本拠地に行ったんだろ? 僕が出会ってない姉妹にもあったのか?」


 よく考えたら、そこら辺よく聞いてないんだよな。あの時は色々と慌ただしかったらな。その分今はまだ余裕……は無いけど、サン・ジェルクに付くまでの猶予はある。色々と情報は欲しいからな。


「そもそもお前がどれだけの姉妹に会ったかを知らん」
「それもそうだな。えーと確か--」


 僕は直接会った奴等を指折り数えて行くよ。


「まあまずはシクラだな。こいつは当たり前として、次に会ったのは柊だな。末っ子。そしてアルテミナスで一応全員を遠巻きには見たけど、あれは会ったって言えないからな。その後にヒマワリだな。馬鹿な奴。そして今回の蘭だっけ? 武士みたいな姉御肌の人。それだけだな」
「なら一人居るな。お前が知らず俺が知ってる姉妹が一人」


 おお、それは有益な情報だな。大切な事だ。


「誰なんだそれは?」
「確か百合とか呼ばれてたな。奴等の中では一番上。つまり長女らしいぞ」
「なるほど……他に何か無いのか?」


 その時に力の片鱗を見たとか言ってなかったっけ? 誰のか知らんけどさ。


「能力を見た……と言うか感じただけだがな。いやもっと言うと、感じる事しか出来なかったとでも言うべきかも知れん」
「なんだそれ?」
「良くわかんないね」


 クリエの奴も頭に?を浮かべてる。テトラの奴は興味ないのか、スヤスヤとこの気持ちいい毛に包まれて眠ってる。お気楽な神だな。もうちょっと世界の心配しろよ。


「お前もさっき蘭を見たから分かるだろうが、アイツとシクラは気が合わない」
「ああ……それは何となく分かる気がする」
「そうだね。怒りっぽかったもんね」


 怒りぽかったっていうか、真面目なんだと思うけどな。蘭には武士道精神があるみたいだから、いつもふざけた感じでやってるシクラとは根本的に気が合いそうにない。しかもシクラの場合はそれでも居て最高の結果を叩き出しやがるから、悔しいんじゃないだろうか。
 あの人の場合、なんか序列を気にしてる感じだったしな。姉と妹って言う明確な序列をさ。妹のシクラがリーダーやってるのが気に入らないんだろう。だけど自分の妹が出来る事は認めてるから質が悪いみたいな。姉としてのコンプレックスなのかもな。


「だからあいつ等は喧嘩をした。それを止めたのが百合だ」
「あの二人をね。まあ蘭の実力の程は正直まだ良くわかんないけど、あの姉妹だし、ついさっきの戦闘が全てとは思えないよな。シクラの奴は言わずもがなだし……あいつ等をどうやって止めたんだ?」


 無理矢理押し倒すとか? 制圧するとか? あんまり想像出来ないな。まあ姉妹同士での喧嘩ならそこまで本気って訳でもなかったのか?


「馬鹿言うな、空が落ちかけてたぞ」
「空が落ちるってどういう状況だよ」


 想像出来ないんですけど。隕石が落ちて来たって事か。前に見たメテオみたいな?


「世界の終わりを想像しろ。それで事足りる」
「それで事足りるって言われても……」


 だから、世界はそうそう終わらないんだよ。まあアルテミナス戦の光景は結構終わりっぽかったけどな。やっぱり大量の隕石落下はインパクトがあった。その後に残ったのは殆ど何も無かったしな。
 てか重要なのは世界の終わりの様な喧嘩じゃなくて、それを止めた手段なんだけど。


「それはアレだ……多分、百合の力は時間操作だ」
「時間操作……また厄介な。ローレみたいな感じって事か……」


 僕が思案顔でそう言うと、リルフィンの奴は深刻そうな声でそれを否定する。


「いや、ハッキリ言って奴の時間操作は主の比じゃない……と思う。主を下になど見る気はないが……優劣をつけるとするならば、主の時間操作よりも確実に向こうが上だ」
「………」


 まさかローレの一番の信者とも言っていい筈のリルフィンがそんな事を言うなんて意外過ぎる。でもそれだけ凄いって事なんだろう。認めざる得ない……みたいな。これ以上聞くのが怖くなって来たかも。
 だってどれだけ絶望を叩き付けるんだよって思う。でも聞かない訳にもいかない。知ってた方が良いに決まってるしな。僕は覚悟を決めてこう言うよ。


「それほどまでって……何をしたんだ?」
「奴は時間を巻き戻した。しかも気付いた時には全てが完了してた。それに一番驚く事は、一度昇りきった太陽さえも後退させた事だ」
「おい……それって空間の一部を切り取っての範囲内時間操作なんて物じゃなくて……この世界全体の時間を巻き戻したって事か? 一瞬で?」
「そうとしか思えん」


 あり得ない……自然と体が震えて来るぞ。腹の底から悪寒が這い上がって来る。まさか……そんな事が可能なのか? 全ての出来事を巻き戻したって事だよな……だけど当然、その自覚は僕には無い。
 それを感じれたのはその場に居たリルフィン達だけ……でもそんなの一体どれだけの負荷がシステムに掛かるんだろう。だって行動を巻き戻して、しかもそれに違和感を持たせないなんて……リアルでは時間を戻せば時間軸が分岐して、前の時間軸上での行動は無かった事にでも成るのかも知れないけど、LROじゃそんな超常現象は無理だよな?
 宇宙の謎の仕組みまで再現なんて出来るとは思えない。だけど物理的に時間を戻した様に見せるシステムは出来るとは思う。だってこれはゲームだ。ログがきっと残ってる。そしてここでの僕達の体は完全に自分達が支配してる訳じゃなく、いわばシステムからの借り物。
 時間操作と言うスキルの時には、システムが強制的に干渉すればどうにか時間が戻ったとか遅くした位は出来るだろう。ログを辿って、それを世界全体に強制巻き戻しとして適用すれば良い。


(でもだ……ここでそれを強制的に出来るとしても、違和感は相当残るしましてや‘知らない’なんて……)


 宇宙の法則が適用されないのなら、そこに記憶はある筈なんだ。時間を巻き戻した前の記憶は僕達の頭にあってしかるべき……でも僕達には巻き戻しの違和感ってのはない。これは実際どういう事なんだろうか?
 システムが記憶を勝手に整理や排除してる? リーフィアが実は脳その物に干渉してるって事になって相当ヤバい代物に思えるけど、出来ないとも思えない。既に精神までゲームの世界に引き込まれる程だしな。
 実は脳をいじくり倒す事が出来ます(テヘ☆)てな発表があってもやっぱりか--位にしか思えないな僕は。でもそれかもう一つの可能性も実はある。


「なあリルフィン。その百合って奴は本当に世界全体の時間を巻き戻したのかな?」
「どういう事だ? 俺が嘘を言ってるとでも?」
「そうじゃねーけど……にわかには信じがたいというか」
「俺はこの目で確かに見た。テッケンにも聞いてみれば良い」


 テッケンさんにだって聞いてみたいけど、少し前からメール機能自体がおかしいからな……まあリルフィンが嘘を言ってるなんて本当に思っちゃ無い。ただ自分達の記憶と合致しないってのが、もしかしたらの可能性を残してるんじゃないかとも思う。


「いやさ、本当に世界の時間を全部戻したって訳なら、僕達にだって一回進んだ分の記憶と、戻ったときの違和感位ある筈じゃないかな~って思うんだよ。けど、実際にはそんなの感じてない」
「あの場に居て力を目の当たりにした奴しか理解出来なかった……とかじゃ無いのか?」
「まあそれもあり得るけど……でも本当に実際問題、世界全体の時間を巻き戻すなんて出来ると思うか?」


 僕のその言葉にリルフィンはしばし思案する。流石に迷うべき質問だからな。だけど結論を出したリルフィンはこう言うよ。


「出来るんじゃないか? お前も言ってただろう。奴等は規格外でそして文字通り次元が違う。世界全体の規格外の巻き戻しも、そもそも次元が違うのなら、やれない事もないだろう」


 確かにあの姉妹なら……そう思える事が恐ろしい。でもだからってなんだって出来るって思って納得して行くのも危険な様な気がする。それは考える事を放棄してるってことだろ。それに僕達の敵はあいつ等なんだ。それを受け入れて行ったら、勝てる見込みなんてなくなる。規格外で次元も違う……でも僕達は必ずぶつかる。
 だからこそ考える事を放棄しちゃいけないんだ。小さいな違和感で些細な事なのかもしれないけど、それが重要なのかもしれないじゃないか。


「確かにやれない事もないと思う……思える。けどもしかしたら違うかも知れない。僕達の記憶に異変が無いのは『起こってないから』……その見方も出来るかも知れないだろ?」
「だが確かに昇った日が戻ってた。あれがその場だけの効力じゃないという証拠だろう」
「確かにそれは良くわからんけど……実際問題本当にやれるとしてもやるかって気が……」


 だってどれだけの負荷がLRO全体に掛かる? しかもその時はまだ不透明な存在で溢れかえってた筈だろう。システムへの負荷が大きかった筈だ。そんな中、世界全体プレイヤー全体を巻き込んでの時間操作って……その瞬間LROが落ちてもおかしく無いだろ。
 だからどこかに裏がある様な……そんな気がする。でもやっぱり否定意見のネックに成るのは、太陽までも戻したって事だよな……その明確な風景情報が無ければ世界全体が--なんて思う事無い筈だ。
 すると僕が必死に信じようとしない様を見てかリルフィンの奴にこう言われた。


「お前が必死に否定したくなる気持ちも分からんでも無い。これ以上差を見せつけられると辛いからな。立ち向かう側も、相手が巨大過ぎるとやる気が削がれるという物だ」
「その理屈で言うと、テトラはそこまで巨大じゃなかったって事に成らないか?」


 邪神と呼ばれてこの世界の神的存在なのに、結構普通にこいつぶつかってったよな? するとリルフィンはぶっきらぼうにこう言うよ。


「巨大とは思ってたさ。だが記憶の無かった俺には実感がな。それにそいつと本気でやりあったのはお前くらいだろう。俺はいつだってあしらわれてただけだ。ムカつくがな」


 まあテトラの奴は案外優しかったからな。邪神言われてた割に、そんな好戦的でもなかったし、絞めるときは絞めてたけど、確かに本気でガッツリとやりあったのは回数的に僕が一番か。それにいきなりドカーンと強大な力を見せるとかじゃなかったしな。徐々に強さを見せて行くって良くあるパターンだけど、度肝を抜かれるインパクトには成り得ないのかも。
 少しずつでも片鱗は見せてた訳だしな。その間に覚悟が出来ちゃうのかも。だからこそ、リルフィンもテトラにはぶつかって行けた。でも百合の場合はいきなり半端ない力を見せつけられから、衝撃がおおきかったんだろう。つまりは恐怖を植え付けられた……


「可能性を信じるのは仕方ない。だが、目は背けるな。確かに世界全体の時を戻した訳じゃないのかもしれないが、事実として奴の時間操作は主よりも強力だ」
「分かってる。肝に銘じておくさ」


 それが分かってるだけでもかなりヤバい事だからな。時間操作なんて厄介以外の何者でもない。後まだ一人・二人は能力も分からない奴が居るんだよな……なんてけったいな姉妹だよ。予想的には一人は攻撃魔法特化型とか、それか想像も付かない特殊スキルを持ってそうだな。
 今の所姉妹の後衛は末っ子の柊しか居ないもんな。いや、でもよく考えたらその百合って長女が時間操作系なら後衛に成るのか? それしか使えないなんてないだろうしな。ホント不安は尽きないよ。気持ちいい風を受けながらも自然とため息が漏れる。




 大きな入道雲を抜けるとようやく見えて来たサン・ジェルク。リルフィンの速度でもかなり時間がかかったよ。まあそれでも一時間程度だけど。でもリア・レーゼとサン・ジェルクは十分未満でこいつ走ったんだよな。
 あの時はホント時間との勝負で魂賭けてたから限界突破してたのもあるとは思うけどね。こんな快適な乗り心地じゃ正直無かったしな。握力が相当奪われたよあの時は。必死に毛にしがみついてないと落とされそうだったからな。
 それにしても……だ。


「やっぱりサン・ジェルクって上から見るとホント綺麗だよな」


 湖に浮かぶ街で、四方からは滝が落ちてその水しぶきが虹を常に作り出してる。太陽の光を受けて、水面はキラキラ光ってるし、和風の建造物も趣があって絵に成ってるんだ。全てが調和してるって感じ。


「クリエもサン・ジェルクの街は好きだよ」


 街はね……中では腐った元老院が幅を利かせてたからな。まあそれもノエインが立ち上がったからマトモになると思うけど。リルフィンはサン・ジェルクの端っこに降り立つ。そこから中央の社を目指すんだ。きっと居るだろう。飛空挺は港に一杯あったし。いつ戻って来たかは実際不明だけどな。
 テトラを叩き起こして町中を走る僕達。なんだかそんなに変わりない……いや、やっぱりなんだか物寂しい感じが少しする。あれだな。プレイヤーが居ないから、町中にモブリ以外の種族が見当たらないんだ。
 だからなんだか寂しい感じがする。それにやっぱり人口密度が緩和されてるよ。どの道を通っても人が溢れ返ってる……なんて事が無いもん。こんなにNPCってパッと見で居たんだぁ--ってのと、こんな物なのかぁ--って感想が同時に頭に湧く。意外であり拍子抜けでもある感じ。複雑だな。
 でもやっぱりプレイヤーが居ないと活気ってのが感じれないな。生活感は十分にあるんだけど、プレイヤーは旅行者みたいな物だから、テンションに違う物があるのかも。ここら辺を言い表すのは難しい。それこそ感じろってしか言えないよな。
 まあ色々と気になる事はあるけど、それはノエインにあってからだな。僕達はそびえ立つ社の入り口に辿り着く。


「よし行くぞ」


 そう言ってリルフィンが先行する。さすがローレの右腕を勤めてただけあるよな。堂々とした物だ。いきなり教皇様に会えたりする物なのか? とか思ってたけど、どうにか成りそうだな。てか名前を出せば普通にあってくれるよな。
 建物内に入って受付みたいな所にリルフィンは進む。そして教皇を指名して……と思ったらリルフィンが言った名前はミセス・アンダーソンのほうだった。


「どういう事だよ?」
「こっちの方が立場的に身軽だろ。それにアンダーソン伝いで教皇にも会えるんだから面倒は少ない方が良い」


 面倒ね。色々と手続きとかがいるのかな? 流石に教皇ってなったら面倒があるのかも知れないな。だからアンダーソンね。受付の和服モブリはお札で連絡を取ってくれてる。まあ僕達の名前は伝えてるし(テトラは別で)直ぐに通されるだろう。そう思ってた。


「済みませんがミセス・アンダーソンお会いに成れないそうです」
「何故だ?」


 リルフィンが鋭い瞳を細めて小さなモブリに迫る。可哀想だけど、納得出来ない。だって向こうだって僕達の戦いがどうなったのか興味ある筈だろ? てか無い訳ない。それなのに会えないっておかしい。ちゃんと伝わってるのか?


「ちゃんと皆様のお名前はお伝えしました。ですが、そんな名は知らないと……」
「知らない?」


 そんなバカな。あり得ないだろそんなの。どういう事だ一体? 


「リルフィンどうするんだ?」
「……そうだな……知らないというのなら、通さざる得ない立場を名乗るまでだ」


 そう言って今度は役職? みたいな物とリア・レーゼの使者みたいな事を付け加えるリルフィン。なるほど、外交上の顔を使う訳か。確かにこれなら知らなくても通されるかも知れない。そして案の定、今度は通された。渋々だったけど、仕方ないみたいな感じだった。


「お前ってそこそこ偉いんだな」
「当然だ。俺の主はローレ様だぞ。その右腕を無下には出来んさ」


 初めてリルフィンがいて良かったと思えたかも。僕達は複雑な社内を案内されてアンダーソンの部屋に辿り着いた。案内役のモブリがノックをして中からアンダーソンの声が聞こえる。扉が開かれて招かれた僕達を見たミセス・アンダーソンの顔はやっぱりなんだか怪訝そう。
 それはあたかも始めて会う相手に向けるかの様な眼差しだ。そう思ってると、ミセス・アンダーソンは信じれない事を言った。


「ぞろぞろと貴方にしては珍しいですね。どちら様ですか?」


 聞き間違いであって欲しい思った。だけどきっとそんな事は無いんだろう。どうやら何かが……この世界で何かが起こってるらしい。

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