命改変プログラム

ファーストなサイコロ

最後の時

 変態仙人モブリに指示された材料集めに半日を費やした。結構特殊な素材が多くてね。流石に擬似契約解除なんて事を行おうと思ったら、そうやすやすと出来る物でもないみたいだよ。それに元はこの変態が自分に掛ける為に編み出した物だしね。
 それってつまり自分の力をアテにしての物だったわけだろうし、それを他人が使うとなると、色々と改良が必要みたい。僕達には魔法の知識なんかないしね。簡単簡潔に使える様にしてもらう為に色々と必要なアイテムがあったわけだ。
 競売の方で仕入れれる物は仕入れたけど、本当に貴重なのは早々出回らないし、結局は自分たちで取りにいかなきゃいけない。まあバトルシップがあったからなんとかなったけど。一番大変だったのは結局サン・ジェルクにもいかなきゃいけなかった事。
 リア・レーゼにもあったんだろうけど、本殿は燃えちゃったからね。代替品はサン・ジェルクにしかなかったんだ。そのアイテムを求めてサン・ジェルクの方の本殿へ侵入を試みる事になったわけだけど、まあここら辺はなんとか上手く行きましたって事で。
 具体的には変態の残しておいたルートと、あとは長の娘の協力でね。あと僧兵も役にたったよ。全ての材料も揃い、アイテムは完成した。使用法も教わった。だけど作れたのはたったの一個。ようは一発勝負。


「あと言っておくと、そんなに長くは持たんからな。使いどころを間違うと意味なくなるからの」


 そんな風に念を押されたよ。この変態もなんだか後半はまともな感じが多くなった気がするな。変態な事も時々言うけど、それよりも凄い所が見れたから、僕達の見る目は結構変わったよ。だからここを出る前に一つだけ聞いておきたい事があった。


「なあ、あんたはどう思ってるんだ? ローレは世界を平和にしようとしてる。あいつが作ろうとしてる世界が実現すれば、モンスターとの争いはなくなるかもしれない。でも、僕達はそれを止めようとしてる。
 そんな僕達に協力したって事は……」
「儂は別に誰かの思想に加担したんじゃないぞ。ただ単に儂は全てのめんこい娘の味方なんじゃよ」
「あっそ……」


 真面目な話を振った僕がバカだったか。でも実際、それだけじゃないと思うけどね。教皇であり、星羅を作り、ここまでに育てた偉大な奴だ。本当はこの世界にとどまってるのも、生前に女の子とイチャイチャ出来なかった……ってだけじゃないだろ。
 でもまあ、今はなにをしてやれる訳でもない。僕はそんなに器用でもなくて、容量も良くないしね。この借りはいつか返せればいいと、そう思っとく事にするよ。


「助かったよ。これでなんとか戦えると思う。ありがとう」
「礼ならいらんよ。もう貰ったしの」
「は?」


 意味わからない事を言うから振り向くと、変態の手には僕が裸のローレを押し倒す写真が握られてた。ってなんでお前がそれを持ってる!? 


「ぬおっほっほっほ! 堪らんのう! 堪らんのう! これで十年は安泰じゃな!」
「何がだよ? てか、一体いつ抜き取った?」


 それってローレが逐一僕を脅すために撮ってたデータの複製品だろ。元データはローレの奴が握ってるからこれを破いて捨てた所でなんの解決にもならない最悪な写真。アイテム欄の深い階層に沈めてたはずなのに、どうやって抜き取りやがった? 


「儂は幽霊みたいな物だからの。すり抜けるなんて造作もない事じゃ」
「でも、その写真の存在は知る筈もない事だろ。お前は逐一人の所有物を漁ってるのか?」


 犯罪だろ。プライバシーの侵害だ! すると変態は鼻高々にこう言った。


「まさか、そんな事は儂はせん! ただワシのめんこいっ娘センサーにビビっと来たんじゃよ。するとほれ、大当たりじゃ。ワシのセンサーはどんな場所に隠そうとめんこい娘に関係ある物なら、反応するのじゃ」


 なんだその変態自慢。ただ変態の感性が人一倍強いだけじゃないか! ふざけんな! 


「折角見直してたのに……」
「ローレはやっぱりええのう。普段から肌の美しさはわかっておったが、この濡れた所が堪らん! エロい! しかも珍しく恥ずかしがっておるのがまた最高じゃ! ギャップもええのう」


 それは本当に恥ずかしがってる訳じゃなく、ただ単に僕を陥れる為にそんな表情をしてるだけだからな。本心ではきっと腹黒い笑い声だしてるぞ。まあ写真だけ見れば確かに興奮出来るけどね。


「えっと……それ返しては……」
「嫌じゃ。これは報酬じゃ」


 報酬ね。正当な対価と言いたい訳か。まあ確かにそれだけの事はしてくれた。写真一枚で満足してくれるのなら、僕達にとってはラッキーなのかも知れない。でもその写真はな〜手元にないと怖いと言うか……


「ちなみに聞くけど、それ以外の対価はないのか?」
「う〜む、これ以外ならそうじゃのう、二十四時間耐久で儂を折檻してくれる権利とかかの?」
「それは褒美なのか?」


 どっちにたいしても辛いだろ。くっ、流石にそんな事を何も知らないセラに押し付ける事は出来ない。後が怖いし。


「他の奴には見せるなよ」
「儂がそんな事をすると? この写真は儂だけの宝物じゃ!」


 スッゲー気に入ってるな。まあいいけど。ここは妥協しよう。僕が我慢すれば満足してくれるんだし、誰にも見せないなら……ね。別にローレはオカズにされてもいいや。


「しょうがないな。それでも満足なら−−って待てよ」
「なんじゃ? 言っとくが返さんぞ!」
「いや、それはもう良いけど……」


 僕は思案するよ。こいつのこの行動で思いついた事がある。いや、テトラとシスカの映像を見てから、考えてた事があった訳だけど……使える、かも知れない。僕は二人を見て「行こう!」と紡ぐ。


「サンキュー。助かったよ本当に」
「若者は悔いを残さぬ様に生きれば良い。正しいとか正しくなかったとかは、大人になればわかる事じゃよ」
「おう!」


 裸の女子の写真を片手に持ってる奴の言葉とは思えないな。おかげで全然決まってないぞ。だけどそれでこそ変態仙人モブリだよ。僕達は松明の灯りを超えて通路に戻る。そこには僧兵達の姿がある。


「どうだった?」


 そう聞いてくる僧兵。僕はそいつに「OKだ」って言った。そしてそのまま止まらずに通路の外へ。ここでようやくテッケンさんが元の姿になる事が出来る。まあ材料集めの時も戻ってたけど、あの場所ではセラでいなきゃいけなかったからね。変態仙人モブリは毛ほども疑ってないからな。
 これはあの変態仙人モブリの為でもあったんだよ。騙すなら最後までキチンとね。そうしないと、本当は男に踏みつけられてたとか、あの変態が可哀想だ。
 だって折角お互いが有益になれたんだ。わざわざ真実をバラして、片方を不幸にする事なんかない。僕にはそんなsっ気ないよ。


「お疲れ様ですテッケンさん」
「彼には悪い事をしちゃったね」
「別に悪い事じゃないでしょ。真実さえ知らなければ、あの爺さんは幸せでいれるんですから」
「それはそうなんだけどね」


 全くテッケンさんは優しいんだから。だけど真実を話す事は残酷だと思う。知らない事の方が幸せって事でいいと思うんだけどね。するとリルフィンの奴がこう言った。


「気にする事などないだろ。あいつも言ってただろ。悔いを残さぬ様に−−正しいとか正しくないとかは、時が経てば分かる−−ってな。それなら俺達は時が経った時に、これが役にたったと、誇れる結果を残せば良いだけだ。そうすればなんの問題もない」
「はは、現状それが一番難しい訳だけどね。確かに色々と有意義な情報もアイテムも得れた訳だけど……これだけで挑むのはまだまだ無謀だよ」


 確かに、それはテッケンさんの言う通りではあるかな。ローレの無力化は計る事が出来る訳だけど、テトラの力は弱体化すら出来ない。でも、まあここなら良いかな。もうテッケンさんも変身を解いてる訳だし、提案してみよう。
 ずっと考えてた事。


「その事なんだけど、ずっと考えてた事があるん」


 僕のそんな言葉でみんなが僕に注目をする。半日経って日が頭上高くに昇ってる。だけど外の喧騒は相変わらず響いてる。思ったんだけど、朝早くからずっと復興作業やってる。いや、もしかしたら寝ないでやってるのかも。凄いエネルギーだ。
 分けて欲しいくらいだよ。そんな事を密かに思いながら僕は注目するみんなに向けて、言葉を続ける。


「テトラの弱体化……とまでは行かなくても、動揺位は与えれるかなって手段」
「内容を言え。それ次第だな」
「そうだね。どんな方法なんだい?」


 二人の言葉に僕はわざとらしく「コホン」と咳払いして、僕は言うよ。


「やっぱり女神シスカをこの地に降ろそう」
「またそれか……それは無理だと結論でただろ」
「そうだよ。僕達にはそれをやれるだけの技術も時間もない」


 凄い否定されてる。だけど待ってくれ。僕の言いたい事はこれからなんだ。僕は手のひらを前に突き出して二人の言葉に待ったを掛ける。


「確かに女神シスカ本人を降ろすのは無理だよ。それは十分に理解してる。けど、そんな必要ないんじゃないか? 本物と区別がつかない程の偽物を完璧に再現出来れば良い。そしてそれが可能なのは目の前で見ただろ」
「それはつまり……」


 リルフィンが僕の言葉の意味を汲み取って、下げる視線の先にはテッケンさんの姿。そして彼も当然理解してる。


「僕に神に変身しろと、そう言う事だよね?」
「そうですね。本物か偽物かは別として、テトラは必ず動揺します。その隙に更にやって欲しい事があるんです」
「まだあるのかい?」
「はい、テッケンさんが変身するからこそ、都合が良い。スキルが豊富なテッケンさんなら、持ってるんじゃないんですか? 盗む系統のスキルを」
「それは……まああるけど」


 よし、条件は確実に埋まって行ってるぞ。だけどここで根本的な問題をテッケンさんが挙げるよ。


「ちょっと待ってくれスオウ君。君は僕が神に変身出来る前提で話を進めてるけど、それは無理だよ。条件が揃ってない。この力はそうやすやすと使えるわけじゃないんだ。精巧な変身には情報が必要なんだ」
「条件はどこまで揃ってるんですか?」
「ええっと、姿は確認出来たし声も性格も知れた−−って、そもそも神を映せるのか……」
「テトラはどうなんですか? あいつは存在して一回会ってるじゃないですか。条件は揃ってないんですか?」


 気になる所はそこだよ。テトラに変身できるのなら、シスカにだって変身出来る。


「揃ってないんだよね。僕はテトラに触れてない。それも条件の一つなんだ。知る事が変身には欠かせなくて、それはきっと『見る』・『聴く』・『触れる』で完了するんだ」
「なるほど……」


 それはなかなかに厄介……いや、普通なら触れるなんて簡単だ。だけどそれが神ともなるとね。でも機会はあった筈だけど、一度も触れてないのは運がないな。口惜しい。


「それに相手は神だからね。スオウ君も知ってる通り、変身には写せない相手も存在する。クリエちゃんやセツリ君。それにシクラ達……貴重で特別な存在程、その確率は高まってると思うんだ。だからもしかしたら、神である彼等も写せないのかも知れない」
「……それは、困ります」


 はっきり言って、宛にしてるもん。テッケンさんの変身を見た時に、これって使えるんじゃね? って思った。神が下ろせなくても成りすます事ならこのLROでなら十分に出来るって、思える技だったんだ。
 だってリアルの変装じゃあのレベルは無理だよ。特殊メイクでも声や体格までは変えられない。だけど彼の変身はまさにその姿を完璧に写してる。確かに使いようによっては鬼畜な技になり得る程の物だけど、これは正攻法な使い方の筈で、ここで使わないと! って感じる程なんだ。僕は諦めきれない。だから力強くこう言うよ。


「だけど! 今の所テトラに有効そうな術はそれだけです! あいつを力で圧倒なんて出来ない。だけど心は僕達と代わりなんてない存在なのはわかってます。それならそこを付くしかないじゃないですか! 全員の願いが叶う術でもあれば交渉の余地もあるけど、そんな手段は現状ないです。ならこれを捨てるなんて出来ません! 何か方法は無いんですか? 
 全ての条件が揃っても無理かも知れないのはわかりました。だけど『無理かも知れない』じゃ諦めるなんて出来ません! 他にあのテトラに通用しそうな手段なんて無いんですから!」


 僕は一気に捲し立てた。だって本当にこれしか無いって思ってる。ローレの無力化、そしてテトラの動揺……この二つが揃えば一矢報いれる隙ができる。それだけでいい。たった一度のチャンスを作る。それが大事なんだ。
 僕の必死の訴えにテッケンさんは少し思案する。


「う〜ん、確かにもしも隙を作れるとするなら、効果的だとは思うよ。映像でも二人は特別感が出てた。突然目の前に現れたら疑うだろうけど、平常心って訳にはいかないだろうね」
「あの邪神から力勝負で隙を作るのは骨が折れる。それに比べればこの方法は有効そうだな。奴の心までも鉄壁なわけじゃ無いからな」


 うんうん、ボツにするには惜しいんだ。これまであんまり有効打がなかった邪神テトラに、始めて有効そうな方法だ。力で奴に並ぶには、僕達だけじゃ時間も仲間も足りなさすぎる。それなら、力以外の場所も利用しないと……いやそもそも利用出来る物は何でも利用する気概でいかないと、立ち塞ぐ事すら出来ないよ。


「だけど邪神の方ならともかく、女神様はこの世界に存在してないよ。触れる事が出来ない。まあ本当なら、『見る』事も『聴く』事も無理だったはずなんだけど、それはなんとかなっちゃったから、どうにか届きそうな気がするけど、最後の『触れる』だけはどうにも出来ないよ」
「むむむ、確かに……それは……」


 でも諦めたく無い。もともと三つともが無理だった筈なのに、後一つまで来てるんだよ。ここはLROだし、何か方法があるかも知れない。ほら、本人に直接触れるだけが実は条件じゃなくて、関節的にもOKとかそんな事は無いのかな?


「テッケンさん、それは本人に直接触れる以外はダメなんですか?」
「う〜ん、実際言うと、必ずしもそうじゃ無いんだ。常に肌身離さず身につけてたりする物なら、条件に該当したりするんだよね。でもその基準はよくわからない。それに女神様は大昔の存在だよ。そんな物なんてあるわけが−−」
「−−聖骸布」


 ん? 今なんかリルフィンが言わなかったか? ポツリとなんか言ったようだったぞ? 何ていったんだ?


「いや、だから聖骸布だ。平たく言えば女神の遺品だ。それらは聖骸布と呼ばれてこの世界に残されてる。邪神の物はないが、女神の品はシスカ教の宝だからな。色んな場所に祀られてるぞ」
「それだ!!」


 僕は思わず声を大にして叫んでしまったよ。だけど叫ぶにはいられない情報だろ。ようやく使える情報持ってたな。でもこれなら−−


「テッケンさん」
「ああ、もしかしたら行けるかも知れないね。聖骸布か……確かにそんなのあったね」
「おいリルフィン、それってここにあるんだろ?」
「勿論だ。というか、ノーヴィスの街や村には必ずある筈だ」
「そんなに大量にあるのか?」


 世界中にも散らばってて、ノーヴィスにはその全ての街や村にあると? 流石に残りすぎじゃないか? 偽物も混ざってるんじゃないか?


「大量にあるわけじゃ無い。本当に貴重なのはここリア・レーゼや、サン・ジェルク、それに比較的に大きな社がある場所にしかない。それだけだと片手で数える程度だ」
「じゃあ残りのはなんだよ?」


 やっぱり偽物を掴ませてるのか? それは流石に可哀想だろ。その聖骸布に祈ってる人達だっていっぱい居るだろうにね。


「偽物なわけないだろ。ただ大量に散ってるのは欠片や、大きく残ってた布を切ったりしてそれをばら撒いてるんだよ」
「それはそれはショボそうだな」
「だが、何もないよりはマシだ」


 それはそうだろうけど、切れ端とか欠片だけあってもね……まあそれを女神の所有物だと思い込めれば価値は見出せるのかもね。それが信者って奴かも。


「まあそこら辺はどうでもいい。ここには貴重なのがあるんだろ? それなら期待できる!」


 うんうん、切れ端とか欠片とかじゃないきっとドカン!! とした物が残ってるんだよな? 逆にここので無理なら、残りの全部の街や村を回ったって無理って事になる。僕はリルフィンにワクワクしながら言うよ。


「どこにあるんだ? その聖骸布は? 知ってるんだろ勿論さ」


 すると何だかリルフィンの奴があたりを見回す。あれ? なんだか嫌な予感がする。寄せ付けたくないけど、嫌な予感って奴がはいよって来てる。すると重い声でリルフィンが言うよ。


「ここに……あった筈なんだがな」


 ほら来たーーーーーー!! 絶対そんな事だろうと思った! LROはとことん僕達を追い詰めたいんだ! くっそくっそ、なんでよりによって社全焼してるんだよ!! 聖獣共への怒りが沸々と湧いてくるな。だけどまだだ。諦めるのは早い。だってものの数分でバトルシップならサン・ジェルクへ行ける。
 まあ二度手間だけど、あそこにも貴重な聖骸布があるんならしょうがない。どうせなら材料集めの時に切り出すべきだったか。失敗だな。


「じゃあ気持ちを切り替えてサン・ジェルクへ行こう! あそこには確実にあるんだろ?」
「ある……が、問題が一つだけある」


 なんだ? 何があるっていうんだよ? また嫌な予感が……


「俺はサン・ジェルクの聖骸布がどこにあるか知らん。お前達はどうだ?」


 そう言ってリルフィンは僧兵達に話しを振る。こいつらはサン・ジェルク側の僧兵だからね。詳しい筈だ。


「いや、自分たちもそれは……みんなはどうだ?」


 すると全員頭を横に振るう。どういう事だよ!? なんで全員知らないんだ? ある筈……なんだよな? 疑わしくなって来た。


「あるのは確実だ。記録は残ってる。だがサン・ジェルクはそれを公開した事がない。だからどこにあるのかはわからないんだ。まあ元老院共が握ってるんだろう」
「元老院か。それならもっと偉い奴らに聞こう。それが確実だ」


 流石に教皇とかなら知ってるだろ。テッケンさんに頼んで通信をしてもらう。これはメールじゃないから、傍受される可能性もあるからそこまで頻繁に使いたくないとか言われてたけど、しょうがないよね。
 お札でノエイン達に呼びかけるテッケンさん。だけど何故か何度呼び掛けても向こうからの返事がない。まさか……何かあったのか? 考えられる事はバレたとかしかないけど……でもそうなると、ノーヴィス全体にモンスターの大群が送り込まれる筈。だけど今の所そんな事はない。
 空は青く、気持ちいい風が肌を撫でて、街はこんな状態でも活気に溢れてる。よく考えたら、リア・レーゼでこの陽気は珍しいかも。雨とかの印象が強かったからね。こんな日もやっぱりあるんだと思う。
 んで、結局ノエイン達はと言うと……


「ダメだね。もしかしたらこれ以上は危ないと判断して、自分たちで捨てたのかも知れないね。材料集めでどうにか出来そうな雰囲気を感じ取って、なんとかなりそうと思えたから、万が一の危険を排除したのかも」
「それは……痛いですね」


 だけど彼等を恨む事は出来ない。タイミングを間違った僕の責任だね。でもどうしようか。確か前に連絡した時には、すでに目的地に向かってて、種族それぞれ飛空艇に乗ってるんだよね。通信がダメならメールで行きたい所だけど、モブリの船にはプレイヤーの知り合いがいないよ。


「他の場所にも聖骸布はあるし、一応みんなに確認をしてみよう。詳細な情報が手に入るかも知れないよ」
「そうですね。お願いします」


 僕のメールは不具合中だからね。テッケンさんはみんなにメールを一斉送信。すると直ぐに返信が帰ってきたみたいだ。飛空艇の中は監視の目とかないのかな? まあ、とりあえず内容は?


「う〜ん、みんな聖骸布の詳細な場所は知らないみたいだね。確定出来るのはアルテミナスに一つだけ。だけど肝心の聖骸布の場所は封印されてるみたいだよ。重要な物だからかもね」


 なるほど、そういう事もあるのか。それならサン・ジェルクもそうなのかも。後二つの場所は場所すらもわからないと?


「いや候補はあるよ。比較的に大きな社があって、信仰が厚い場所なんだから絞る事が出来る。だけどそれを一つ一つ確認するのは……時間的にキツイかもしれない。それに残りの二つもやすやすと触れるとは思えないしね」
「確かにそうだな。常時公開されてるわけじゃ無い。貴重度が高いと尚更、数年に一度公開されるかどうかだ。それ以外は厳重に保管されてるだろう」


 全くその通りに思える。やばいな……希望が絶たれていくぞ。ようやくテトラに対抗出来ると思ったのに……なんで……


「なんで、そもそも炎程度で無くなってるんだよ! 厳重に魔法とか掛けてなかったのか?」


 管理体制が甘いよ。怠慢だろ。ローレの奴の怠慢のせいで希望が……


「魔法は掛けてあったさ。それに別に無くなったなんて言ってない。燃えてはいない筈だ」
「え?」


 おい、どういう事だ? 続きを聞かせろ。


「あれは指輪だったからな。それに魔法もちゃんと掛けてあった。だから粉砕や燃え尽きたりはしてないだろう。だが、この有様だ。とても見つかるとは思えん」


 なるほど、そういう事か。余りに物が小さいから、こんな瓦礫の山からは見つけられない……そうリルフィンは思ってると。確かにそれは無謀かもしれないな。でももしかしてこの瓦礫がそのままなのは、後でローレは人員を割いて見つける気だったからじゃ?
 それは確実にここに残ってると言ってるような物だよな。それなら、不確かな物を求めにいくよりも、希望がある! 


「僕は探す! 確実にこの瓦礫の山のどこかにあるのなら、探さない手はない! 時間はまだあるんだ! やるだけやるさ!」


 そう言って僕は瓦礫の山にジャンプする。そしてそこら辺の燃えカスを退ける。するとテッケンさんも手伝ってくれる。


「そうだね。やれるだけの事をやろう。今はこれが一番確率が高いよ。ここにあるんだ。それなら全てを駆使して見つけようじゃないか!」
「はい!」


 テッケンさんの目が輝いてる。それはスキルの輝きかな? 探し物を優位に出来るスキルでもあるのかも。すると僧兵のみんなも参加してくれる。そしてやれやれという感じでリルフィンも来る。頑張ろう……諦めるにはまだ早い!!

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