命改変プログラム

ファーストなサイコロ

私の出来る事 3

   飛び交う怒声に近い様な音量の声に、鳴り止む事のない電話の響き。そして詰まった様な音を響かせながら紙を吐き出し続けるFAXから零れる紙。知ってしまった事実は、どう受け止めて良いのか分からないほどに重い物で、途端に腕に抱える紙が重く感じる。
  一体どれだけの人が向こうで意識不明に陥ってるのだろうか? この慌て振りから察するに、十人・二十人って単位でもなさそう。既に単位は三桁を超えてるのかも知れない。それをここの人達は必死に隠そうと……いや、無理だよ。今までは片手で事足りてたから大企業と言う力でどうにでもなったかも知れないけど、数が増えるとそうは行かない。
  これはもう、バレるのは時間の問題としか思えない。


(でも……そうなったらスオウは……それに今必死にやろうとしてる事も無駄になるかも)


  冷房の効いた部屋だからかわからないけど、変な寒気に襲われる。不安……その感情が大きくなるよ。本当はこうなる可能性が一番高かったのはスオウなのに……ううん、彼はまだその境界線上に立ってる。
  本当はいつこうなってもおかしくなんかない。それを思うと、胸が締め付けられる。呼吸がおかしくなる程に痛い。暗く怖い想像が頭をよぎる。


「はぁはぁっ−−」


  その時、すぐ後ろで紙を踏み潰す音が聞こえた。驚いて振り向くと、そこには丸く膨らんだボール入れみたいなのを二つ持ってる佐々木さんが立ってた。でもなんだろう……さっきまでと印象が変わって見える気がする。見上げてるからか、メガネが反射してその奥を覗けなくて……しかも後ろに居るのに何も言ってくれないのが変な空気を作り出してる様な……そう思ってると、佐々木さんの口がやっとで開いてこう言った。


「待っててくださいと、言った筈ですが……」
「あっ、えっと……ごめんなさい。なんだかちょっと気になっちゃって……」


  声が妙に平坦に聞こえた。抑揚がないって言うか……なんだろう怖いよ。知っちゃいけない事を知っちゃったみたいな雰囲気がマジである。まさか私……消されちゃう? 大企業ならその位の事が出来そうでもあるよね。
  逃げ出した方が良いのかな? そんな考えが頭を過る。私はチラリと、出入り口を見る。足には自信あるし、エレベーターまでそんなに距離も無い。でも、ここで逃げ出したらスオウの頼みを果たせないし……それならあの抱えてるのだけ奪って……って流石に暴力は不味いよね。その後に何をされても文句言えないし。
  レンズの奥の瞳が見えないのが妙な怖さを演出してる。それに疲れのせいでダランとしてる感じが逆に変な不気味さを演出してる様に私には見えてしまう。ガタガタと立ったり座ったり動き回る周りの音に、いちいちビクビクと驚いてしまう。もしかしたら加勢されちゃうんじゃないかって……武道の心得があると言っても、流石に女子高生が大人の男性を制するのは骨が折れるからね。
  一人ならまだしも、複数人となると無理がある。


「見てしまったんですか?」
「あの……その……」


  だからなんでそんなに抑揚のない声で言うの? 本当に怖いよ。どう言おう。抱えてる時点で言い訳は無理かな?


「それが何かわかりますか?」
「えっと、プレイヤーのリスト……」
「他には?」


  他−−って、確実に私が気付いてるか聞き出そうとしてるよねこれ? どうにか上手く誤魔化……


(待って、それで良いの日鞠?)


  私は頭の中で自分に待ったを掛ける。このまま逃げて良いの? もしかしたら危険かも知れないけど、ここで誤魔化したら部外者でしか居られない気もする。覚悟を持って真実を伝えればそれは秘密の共有者……今までの関わりで、この人達が悪人じゃないのはわかってる。それなら突っ込んだ情報を得る為にも、気づいた事を話しても良いかも。
  確かに今は怖い感じだけど、もしかしたらそれは私の主観だけかも知れないよ。佐々木さんだって色々と大変で、疲れてて、更にここで私に気づかれたかも知れないという緊張感で変な空気になってるのかも知れない。
  そう言うのって時々あるよ。誤解のままですれ違うのは良く無いって私は知ってる。まあ人は追い詰められれば豹変する事も知ってるから、どの道危険は拭えないけど……でもここで逃げる選択肢はやっぱり無い
  スオウの事もそうだけど……絶対に会わせなくちゃいけない子が居るんだ。それをしないと、あの夫婦はどこに行ったって、どんなに遠くに行ったってきっと振り切れないって思うから。今ここで私が勝手に思い込んで逃げる訳には行かない。
  私は腕に抱えてたリストを佐々木さんに突き出して意を決してこう言います。


「これのバツがついたのは意識不明者って事ですよね? 病院名はその人達の受け入れ先……一体いつからこんなに増えてるんですか? こんなの隠しきれる量じゃありませんよ」
「全く、君は素直だね」


  そう言って佐々木さんは片手をこちらに伸ばして来る。その動作が何か怖くて、私は思わず縮こまって「いやっ」っと小さく叫ぶ。だけど彼の腕が掴んだのは私じゃなくて、その紙のリストの方だった。


「手を放して貰っても良いかな?」
「えっ……あっ……はい」


   知らず知らずに力を込めて握ってたせいで紙には皺が寄ってた。私は硬直してた自分の手をぎこちなく開いてく。うん、どうやらやっぱり私が一人で勝手に変な想像をしてただけみたい。顔を近づけてメガネの奥の瞳が見える今は、いつもの佐々木さんだね。疲れててクマが見えるけど、恐怖する感じはしない。


「あっ……あの……」
「はははは、気にしないで−−と言うのは無理だよね。知ってしまった以上心配だよね。彼の事が」


  私は勿論頷くよ。心配に決まってる、だってこんなに沢山の被害者が出てるんだよ。いつスオウが戻ってこれなくなるか……それを考えない日なんてない。そしてその足音は確実に迫ってるってこの資料で知ってしまった。気にならないわけない。


「でも大丈夫。今の所、マザー側から送られて来る被害者の中に彼はいないよ」
「そう……ですか」


 ホッと胸を撫で下ろす。取り敢えずはまだ大丈夫なんだね。良かった良かった。実はちょっと前に嫌な感じがしてたから不安だったんだよ。でもここの人が言うのなら間違いはない筈。だってLROのプレイヤーを見守ってる筈だもんね。


「でもどうしていきなりこんな事に?」
「はぁ、あんまり言いたくはないんだけど、知られた以上はしょうがないのかな?」


  しまったしまった−−みたいな感じで話し出す佐々木さん。だけどなんだか違和感を私は感じるよ。だって本当にバラしたく無かったら、私をここに連れて来るべきじゃなかった。そもそも荷物を受け取るだけなんだからエントランスでだって良かった筈だ。
  けど忙しいから上まで来て欲しいって事だったけど、中に居れる必要も実は無かったよね。それに本当に漁らせたくないのなら、一緒についてこさせた方が、自由には出来ないよ。けどこの人は私を一人にして、あまつさえ好奇心って奴をくすぐったんだ。
  それにこのリストがこんな出入り口に近い所にあった事もファイルがちゃんと閉じられてなかった事も考えてみれば怪しいかも。まあこれだけ慌ただしくしてるんだから、別におかしくはないかも知れないけど、怪しみ出したらなんだって怪しく見えてくる。


「実はあのアルテミナスの一件から、少しずつ意識不明者は出てたんだよ。それが最近はどんどんと加速度的に増えて行っててね。君の言うとおり、既に隠し通す事は限界に来てる。それに既に調査委員会が動き出してるし……このままじゃ正直サービス停止は免れないかも知れないよ」
「そんな……自体はそんなに深刻だったんですか?」


  いや、そもそも三人目が出た時点でかなり深刻だったんだけど、こうなると三人目なんてただの通過点でしかなかったとしか思えない。でも確かにこのままじゃ確実にサービス停止にLROは追い込まれる……どれだけの人が意識不明になってるのか私はわからないけど、調査委員会ってのが無能の集まりでもない限り、こんな事を見逃す訳がない。
  一人二人なら噂でスルーされるかもだけど、私が見たリストでも既に十数人は居たって事は、他のファイルもある以上、かなりの人数の筈だよ。国が動いて調べてるのに、バレないなんてないよね。それかもしかして公務員だからこそ、テキトーな仕事をしてくれる事に期待するしかないかも。


「LROがそんなにおかしく?」
「いや、これは摂理ちゃんや当夜とは違うみたいなんだ。言うなれば三人目と同じ感じとで言うのか……浸透率は実は変わってない。通常と同じなのに、何かに囚われた様に向こうでもその姿が消えてるんだ」
「消えてる?」
「摂理ちゃんもスオウ君も浸透率が下がってても向こうに確かに存在してるだろ? だが、今昏睡して行くプレイヤーはその存在がLROから消滅してる」


 消滅って…… それじゃあもしかして−−


「まさかそれって、もう意識が戻る事はないって事なんじゃ?」
「いや、だから三人目と同じだよ。彼もLROでその姿を消したが、バイタルはある。だからこそ、君の友達も諦めてないだろう。他の人達もそうなんだ。LROに姿はない。だけど何処かに存在してる痕跡はあるんだ」
「そうですか……」


  それならまだ望みがあるね。良かった良かった。いや、よくはないかな?


「原因はわからないんですか? スオウと違うのなら、行き成り消えちゃうんですか?」


  それならLROの方で大きな噂になってておかしくないよね。でも最近は私もLROの掲示板とか覗いてるけどそんな噂はあんまりなかったと思う。確かに時々そんな板が立ってたけど、アルテミナスって国の後ほど盛り上がってもなかったって記憶してる。でも実は本当だったんだね。けどなんであんなに話題になってないの?
  いや、実は水面下では気付いてる人達も居るのかも知れないけど、LROが無くなると困る人達が止めてるとか? ううん、流石にプレイヤー一人一人には無理だよね。それじゃあ考えられるのは、誰も確証を持てない状況だって事。ここの人達はそれがわかるけど、LRO側のプレイヤーは誰も確かめる術がない。


「原因はわからないが、直前で戦闘をやってた記録はある。どうやら何かに襲われた……そんな感じだよ。噂が広がらないなのは、襲われたプレイヤーは誰も助かってないからだろう」
「なるほど……それなら納得です。けど襲われたって……一体何に? そんな事が出来るモンスターでも居るんですか?」
「いや、それはこっちでも把握してない。そもそもそんな問題になり得る能力を持った奴なんて作らないよ」


  佐々木さんは疲れた声でそう言った。まあ確かに。いくらなんでもそんなモンスターは作らないよね。自分達の首を締めてる様な物だもの。元々LROに存在してなかった何かが原因だとするなら……


「やっぱり摂理ちゃん絡みなんでしょうか? スオウが言ってた外側の存在が怪しいですね」
「私達もそれを疑ってるよ。特にそいつ等が前に産み出したと言う得体の知れない奴が疑わしい。時期的にそいつが生み出されてから、被害者が増えて行ってる」


  外側の奴等が産み出した異形の存在。確かにそんな話も聞いたかも。でももしもそいつがプレイヤーをLROに閉じ込めてるのだとしたら、その狙いは一体何? どうしてプレイヤーを昏睡状態に……ううん、もしかして昏睡状態になってるのはただの結果であって、目的は別にあるのかもしれない。でもここでいくら考えても、私達が答えに辿り着くのはきっと無理だって思う。
  ただここで考えるだけじゃ予測の範囲を出ないし、そいつ等を直接知らない私達には情報が足りないよ。


「どうするんですか?」


  私はついついそんな事を聞いてしまう。だってこのままじゃ被害者は増える一方。そしてバレるのも時間の問題で、そうしたらLROは終わりだよ。何か対策を打たないと、取り返しのつかない事に……ってもう遅いのかも知れないけど。
  佐々木さんは私の言葉に何も返してくれない。今はこうやって被害者を大事に至る前に病院に搬送するので手一杯って感じなのかも。確かに放っておく事なんか出来ないよね。家族が居るならまだ良いけど、もしも一人暮らしの人が部屋で一人昏睡状態に成ってたら、誰にもきっと気付かれない。
  下手したら死と言う最悪の結末に一直線しちゃうかも知れない。誰かの人生を終わらせる……それはどんなに悔やんだって許される事じゃないもん。どんなに批判を浴びたって、言い返す事すら出来ない事。
  そんな最悪の事態にならない様に。今は必死に被害者を迅速に病院に……


「もう限界なのかも知れないね……」


  ポツリとそんな言葉が聞こえた? わからない。周りの五月蝿さに自信が持てないよ。だけど、言ってもおかしくないのかなっても思う。聞こえた気がしたのなら、きっと聞こえたんだろうしね。


「そう……かも知れないですね」


  考えたらよく持ったとも思える。稼働前に二人が意識不明になったのにそれでも発売されたし、一年以上も稼働して、確実にこのゲームは時代に名を刻んだよ。それが良かった事なのかは、このまま行ったら否定されそうだけど……もう限界が見えて来てる気はする。ううん限界なんてとっくに超えてるのかも。
  人を食う様に捕らえるあの世界は三人目の被害者が出た時点でもう、ゲームなんて呼べる物じゃなくなってたのかも知れないよ。


「早くスオウ君を連れ戻した方が良いのかも知れないよ。私達に付き合わせずにね」


  意外な言葉。もしかしたらここの皆さんはもう覚悟出来てるのかも知れないです。自分達が批判される事……犯罪者と呼ばれる様になるかも知れない事。職を失ってお先真っ暗になるかも知れない事……全部を覚悟して、だけど逃げれないからこうやって必死に仕事に打ち込んでる?
  ううん、それは失礼だよね。責任……なんだと思う。それを放り投げる気はないんだよね。私は佐々木さんに向かって首を振るう。


「無理ですよ。スオウはまだきっと諦めてなんか居ないから。だから私もこうやって足掻いてみようかなって。スオウや皆さんと同じ様に。まあ私には責任なんてないけど、世界で一番大切な人が頑張る気で居るのなら、私は支えてあげたいから」
「全く、スオウ君が羨ましいよ。僕もお嫁さんが欲しくなっちゃうよ」
「お嫁さんなんて……間違ってないですけど」


  頬を赤らめて恥ずかしげに私はそう言います。お嫁さん……なんて良い響き。


「じゃあこれを。あとこのデータは他の人には絶対に見せない様にね」
「了解です」


  私はリーフィアが入ってる袋を受け取って、あとUSBメモリも渡された。取り敢えず大事な物だから直ぐにバックにしまう。無くしたら大変だもんね。もしも落として誰かに拾われて、解析なんかされたら、LROの秘密が! って誰も解析出来てないから、佐々木さん達もお手上げなんだろうけどね。
 フルダイブシステムに、LROの仮想現実空間とか、実際その技術は公表されてないのかなって感じだよね。著作権とかどうなってんだろう? でもこれでノーベル賞とってないのは実際おかしいし、当夜さんは技術の核心部分を秘密にでもしてるのかな?
  だからこそLRO以外ではまだ同じ様なゲームが出てないのかも。それを考えると、LROって完全なプロトタイプだよね。何を思ってこんな凄い物を作り上げた天才は、その技術の核を隠すんだろうか? でもそういえばフルダイブシステムは特許取ってた様な……そっちだけならノーベル賞も取ってたかも。元々医療分野で実装が先行されてたし、医療だけに箔は大事だったのかも知れない。
  私が今渡されたUSBメモリの中には世界中の企業がこぞって欲しがる技術があるって事。それを外部に持ち出すんだから、もしかしてこれが会社に知られたら皆さんやばいんでは?


「だから誰も絶対に見せない様にって事だよ」
「ありがたいですけど、一介の女子高生のこんなわがまま効いてくれるのはなんでなんですか? 外部に持ち出すリスクはやっぱりとても大きいですよね? やっぱり私がスオウの関係者だからですか?」
「まあ確かにリスクは高くなるね。正直上にバレたら首を切られてもおかしくないよ」


  なんてこっただよ。途端にバックが重くなった気がする。私がもしもバック盗まれて、USBメモリの中身をどっかの企業に売られたり、もしくはネットで配信されたりしちゃうと、漏れなく皆さん路頭に迷う事なると……なんて重いんだろう。女子高生には辛い重さだよ。


「はは、じゃあ返すかい?」
「いえ、その時は新しいゲーム会社でも立ち上げて、皆さんを迎えましょう。良かったらですけど」
「女子高生とは思えない発言だね」


  そうかな? それが責任をとると言う事では良いとおもうんだけど。やっぱりゲーム好きだからこの会社に居るんだろうし。責任をとって会社くらいね。立ち上げるだけなら誰でも出来ますよ。その先が問題なんだけど、この人達は優秀な筈だからいけるんじゃないかな? 適当だけど。


「まあだけど、それはそれで楽しそうではあるよ。でもこのままだと刑務所を出て……の可能性も多いにあるけどね」
「ブラックジョークですか?」
「いや、割りとマジでみんな覚悟してる。だからこそそれを回避する為に僕たちは彼を逃がすわけには……あっ」


  ついつい本音が漏れてしまった佐々木さん。やっぱりそういう事ですか。私のわがままを聞いたのもやっぱりスオウを囲う為の策ですか。


「心配しなくてもスオウは逃げたりしませんよ。幼馴染の私が保証します」
「いや、今のはだね……」


  視線がレンズの向こうでも左右に忙しなく動いてる。もう遅いよ。そもそも最初からなんとなくわかってた事だしね。


「良いですよ別に隠さなくったって。結局このデータを渡してくれたのも、私がどうにか出来る筈もないからでしょうし、でもその事実は残ります。一貸しみたいな」
「あ……はは」
「皆さん切羽詰まってるんですからしょうがないですよ。責めたりしません。それにスオウだって納得して協力してますしね。私は今日ここにきて、皆さんの頑張りが見れて良かったです。責任を投げ出したりしてるわけじゃないじゃないですか。立派ですよそれだけで」
「勿体無い言葉だよ。私達にはね」


  哀愁漂う表情でそう言った佐々木さん。私達の会話はそこで終わって、エレベータの所まで送ってくれた。私は一礼をして扉を閉める。高い場所から低い場所に降りていく。あっという間に下について、今度は内側のエレベーターを目指す。
  その時前方から歩いて来る人が。キッチリとしたスーツ姿……だけどなんだか「おかしいな?」って直感で私はそう思う。だってその人は長袖だよ。クールビズはどうしたの? ううんそれよりも雰囲気がなんだか会社の人間じゃない。湿ったワカメみたいな髪に色白の肌。猫背に曲がったその背でちょっと気味悪く歩いて来る。
  すれ違った瞬間に聞こえてきた声は、ブツブツと何か意味のわからない事を呟いてた。まあ普段は他人の声なんて気にしないんだけど……なんでかな気になった。でも声を掛ける訳にもいかないし、私は結局下に降りて、ゲストパスを受付のお姉さんに返して会社を後にする。


  約束の時間は六時だからまだ時間はあるかな? でも一応連絡してみよう。もしかしたら早く会えるかも知れないしね。善は急げだよ! 厳しい日差しに照らされながら、耳元でプルルル−−と言う音がいく度も響く。

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