命改変プログラム

ファーストなサイコロ

行き先?

  白い雲が前から後ろへと流れて行く。上を見るとさんさんと輝く太陽がまあるく綺麗に見えてる。それもその筈、だって今僕達は雲の上に居る。遮る物なんか何もないから、地上に居る時よりも太陽は輝いて見えるよ。


「テッケンさん……本当にあの竜はあいつを見つける事が出来るんでしょうか?」


  後ろからそんな声を掛けられて振り返ると、艦長席を離れてこのバトルシップの艦長である僧兵君が後ろに居た。気になるんだね。この僧兵君は聖獣戦の時に色々と一緒に頑張った仲だ。だからこそ、他の僧兵の人達よりもスオウ君の事を気にしてくれてる。


「いや、別に気にしてるっていうかですね、ああいう世界に反逆しちゃう様なバカな奴の最後には興味があるな〜ってだけですよ。自分も随分と振り回されたし、どうなるのかくらい見てみたいかなっと」
「それを気にしてるって言わないでどういうんだい? 大丈夫、きっとピクは見つけてくれるよ。僕はそう信じてる」


  そう言って見据えるのは前方だ。そこには桜色した小さな竜が先導する様に羽を広げて飛んでいる。まあ先導する様にじゃなく、確かにピクは僕達を先導してるわけだけどね。ピクの感知能力に頼って僕達は飛んでいるんだ。
  だってスオウ君はどこにいったか全く分からない。あのシクラ達に連れ去られて行ったわけだからね。予想も推測も全く持って出来ないよ。しかも足がつかない転移魔法……メールも帰ってこないし、普通ならこの広すぎるLROでたった一人の人物を見つけるなんて、無謀としか言いようの無い事のはずなんだ。
  諦めて向こうからのコンタクトを待つのが実際現実的。でもピクならもしかしてって僕達は考えてる。僕達全員待ってなんかられなかったから、ピクに無理矢理期待してるのかも知れないけど、でもピクは嬉しそうに頑張ってくれてる……気がする。
  僕達はあの無邪気な小竜が居たからあんな無茶をやった。そして僕はみんなの代わりにここに居る。必ず見つける。その使命が僕にはある。


「そうですね。教皇様達は無事でしょうか?」
「それは……いや、それも信じるしかないよ。気にしててもしょうがない事だし。ヘマはやってない筈だしね。何かあったら連絡が入る筈だよ」
「まあ、それはそうなんですけど……」


  なんだか僧兵君は上手く言葉を飲み込めないみたいな感じだ。気になる事があるのだろうか?


「いえ、ほら教皇様は優しい方なので、何かあっても連絡をしない可能性もあるかな〜と」
「それは確かに……ないとは言えないね。だけどそれぞれの行動に関連性は無い様にした筈だし、寧ろ心配なのはシルクちゃんだ」


  彼女の行動は裏切りギリギリの行動だ。まあ邪神に報告とかそんなのはきっと無いとは思う。だってそれをして首が締まるのは自分達なんだからね。身内の事はきっと隠してくれる筈。それなら、邪神が動き出す事もないし、教皇様の協力がバレる事もない筈だ。
 短距離転送の痕跡なんてある筈ないし、向こうに残して来てる分身が窮地に陥る要因は今の所考えてもない。ただそこに居るだけしか出来ないけど、大々的な捜査とかされる筈もないのなら、教皇様が上手くやってくれる筈。
  でも人の方に侵入者が来た……暗いの報告はされるかも……そうなると多少の捜査は入るかな? まあ変装……というか変身してたし、まずバレる事はないだろうけど。あの頭身からモブリは外れるしね。あれは人前で始めて使った隠し球。分身はバレてるだろうし、結構一般的な技ではあるけど、あの変身スキルは特殊だ。ただの偽装の為の変身スキルじゃない。
  だからバレる事はやっぱりないと自信を持てる。


(きっと、きっと大丈夫だよ)
「シルクちゃんってあの竜のご主人様ですよね? 拷問とか受けてないと良いですね」
「拷問って……」


  それはとっても想像したくない事だ。でもありえ……いやないな。僕が現れた事で、ピクは得体の知れない誰かに連れされたって事になってる筈だ。そしてピクは今のこの世界唯一のサポートモンスター。
  狙われる可能性は高い。不自然じゃない。タイミングが丁度良過ぎただけ。シルクちゃんが疑われる要素は最初の魔法しかない筈だ。でもそれもきっと上手く彼女なら誤魔化してる筈だろう。シルクちゃんはああ見えてしっかりしてるからね。一番長く僕が彼女と居るんだ。よくわかってる。
  彼女は守ってあげたくなるくらいに女の子してるけど、心根は強い。自分が守りの要だってわかってるから、どんな時でも最後まで生き残ろうとするタフさとかちゃんと持ってるんだ。だから僕は僧兵君にこういうよ。


「いや、大丈夫。僕達は頑張ってくれたみんなに良い報告が出来るように頑張ろう。もしも何かあったとしても引き返す事なんか出来ないんだ。僕達がみんなの気持ちに応えるには、スオウ君を見つけてその無事を報告する事だよ」
「それはわかってるんですけど……こんな事は言いたくないんですけど、無事なんですかねアイツ?」


  その不安は痛い程によくわかるよ。だけどそれも既に仲間内で考え尽くした事だ。僕達の結論を伝えよう。


「それもきっと大丈夫。彼はまだこの世界にちゃんと存在してる筈だ。だから見つけよう」
「そうですか。なら良いんです。まあそんな簡単に死ぬ奴じゃないと思ってましたけどね」


  そう言って笑う彼。ふざけた笑い声に聞こえるけど、照れ隠しか何かだよねきっと。安堵してるんだ。彼もあの戦闘を見てたんだろうし、不安になるのは当然だ。いっちゃ悪いけど、スオウ君は虫の息だったしね。


「本当は駆けつける気で居たんじゃないかい?」
「なっ!? そんな馬鹿な事はしませんよ!」


  僕が冗談目かしてそういうと、案外面白い反応が返って来てしまったよ。これは本当に駆けつけようとしてたんじゃないだろうか?


「ちっ、違いますよ! 自分は組織の人間です。たとえ……たとえ自分ではそう思ったとしても、行く事は出来ませんでしたよ。だってこのバトルシップがあそこでスオウを助けたら、それは教皇様達の立場的に不味いってわかります。自分たちだけの問題ではすみません。
  それに少しだけ一緒に戦ったからといっても、自分の中でのあいつの存在がノーヴィスや教皇様以上って事はないですから。結局自分はここで傍観してました。それが賢い選択ですから」
「確かに、そうだね。僕にも否定は出来ないよ。間違ってるなんて言えない。バトルシップが出て行ってたらノーヴィスは今頃、なくなってたかも知れないからね」


  最後まで自分で選択出来なかった自分よりも君は偉いよ。結局僕は何も決められなかったんだ。僕は結局、どっちつかずの性格なんだよ。いや、もしかしたら本当はどれが大切とかも無い人間なのかも。
  大切だと思おうとしてるし、それは無理矢理なんかじゃ決してないけど、どれも選べないって事は、それだけって見方も出来るよね。実はその程度の執着しかないとかさ。


「僕は酷い奴なのかな? スオウ君の事もノーヴィスの事も中途半端でさ」


  僕がそんな意味不明な事をポツリと呟くと、案外聞いててくれたのか僧兵君がこういってくれる。


「それって、あの時テッケンさんが最後にあいつから放れた事を言ってるんですよね? 実は音声はそこまで明確に拾えてなかったからどんな会話をしてた……とかまではわからないですけど、中途半端とかそういうのじゃ無いと自分は思います。
  テッケンさんは自分とは違ってあいつとの関係も深いだろうし、割り切れる間柄じゃ無いって事じゃ無いですか? 大切じゃないから選べないんじゃなくて、どっちも大切だから選べない。そんな事もあるんだと思います」
「僕はそんな心根良い人物じゃないけどね」


  ありがたいけど、自分じゃどうにもそうは思えない気がする。確かにどっちも大切だよ。LROに来て、ずっとお世話になって来た第二の故郷の様な存在のノーヴィス。出会って過ごした期間はまだまだ短いけど、一緒に過ごしてきた時間はきっとこのLROでは一番濃ゆいスオウ君。
 やっぱり自分じゃ大切だと思える。だけど選べない。だから選べない? 大切だから? 大切じゃないから? 


「テッケンさんが良い人じゃなかったら、この世界の大抵の冒険者は悪人になりますよ。自分的にはどうしてそんなに自分を否定したがるのかわかりません。大切だと思う気持ちに嘘なんてないですよ」
「大切だと思う気持ちに嘘なんて……あると思うよ。人は自分の気持ちにだって嘘を付く。僕はそれを知ってるよ」
「テッケンさん?」


  思わず下を向いて暗い声を出したせいだろう、僧兵君が心配そうな声をだしてた。しまったしまった。ついつい嫌な事を思い出してしまったよ。


「はは、ごめんごめん、おかしな事を言ってしまって」
「いえ、自分は良いんですけど……大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。心配には及ばない。慣れっこだからね。悪い癖みたいな物だよ。ネガティブ思考なんだ僕は」
「それは……なんと言うか意外ですね。ムードメーカーみたいな感じなのに」
「あはは、それはまあ……僕はテッケンだからね」
「はい?」


  僧兵君は理解出来ない様な表情をしてる。具体的にはちょっと心配そうな顔だ。それに頭をチラチラと見てるし……別におかしくなったわけじゃないよ。まあNPCの彼には理解出来ない事だよね。君達が冒険者として認識してる人達は異世界人なんだよ。僕達は仮初めの体を得て、この世界に夢を叶えにきてる。
  その時に本当の自分とは違う全く別の誰かを作る人だって居るんだよ。僕はテッケン。この世界では小さな体のモブリで、名前はテッケン。新しい自分を作って、新しい自分を演じてる。だからさ、僕はみんなが思うような人じゃない。決してないんだ。


「ピピー!!」
「「んっ?」」


  空に響くピクの声。すると突然バトルシップの小さな甲板に何かが突っ込んできた? 衝突の衝撃で大きく蛇行するバトルシップ。


「ぬあああああああああ!? なんだ一体?」


  ゴロゴロと転がって行く僧兵君がそんな叫びを上げてる。でもこの突然の衝撃と揺れは危険だ。何が突っ込んできた? 僕は床に手を着いて必死に踏ん張りながら煙が立ち上る前方部分を見据える。辺りに鳴り響く警報の音がけたたましい。今は世界がおかしく変革中だからね。迷いモンスターでも突っ込んで来たのかも知れない。
  しかももしかしてそれが暗黒大陸のモンスターって事も……考えたくないけど、十分にあり得る事だ。だって一度ノンセルスに確かに大量のモンスターが集まってた。近くの空を飛んでてもおかしくはないよ。
  空を覆う程にいたんだ。一体位のバカは邪神の命令を無視する奴かも。緊張しながら見てると、転がってく僧兵君をその煙の中から伸びて来た腕がガシッとつかむ。


「うにゃにゃ〜目が〜」
「大丈夫か?」
「うう〜なんと−−はっ!?」


  目を回しながらもなんとかその声に答えてた僧兵君。でも彼は何かに気付いたみたいだ。そう一体誰が助けてくれたのかって事に……


「あっ……うわっ……ぎゃあああああああああああああああああああああ!!」


  轟く叫び。見据えた先に居たのがフードを被った得体の知れない人だったからか、僧兵君は盛大に叫んでる。煙の中から姿を表したのはどうやらモンスターじゃない様だ。けど結構大柄な体で僕達モブリから見たら山みたいな人。
  それにここに一体どうやって乗り込んで来た? そんな疑問も合間ってかかなり怪しく見える。何者だあれは? 僕は腰の短剣に手を伸ばす。


「おいおい、待て待て。取り敢えずこいつは下ろすから落ち着けよ。てか、お前ら結構酷いぞ。少し離れただけで俺の存在を忘れたか? これだから人間風情は」
「ん?」


  僕が戦闘態勢に入ろうとするのを見て、そんな事を言ってくる侵入者。なんだか口振りから察するに、向こうはこっちを知ってるみたいな感じだよ。そういえば……何かを忘れてる様な気がしないでもない様な。
  そんな何処かに置き忘れた存在を記憶の中から探ってると、放り投げられた僧兵君がこっちに向かって逃げてくる。


「なっ、何者だお前は! 目的を言え!!」


  威勢良く声をだしてるけど、何故か僧兵君は僕の後ろに居るよ。モブリってやっぱりどこか一番に行く勇敢さが他の種族よりも足りてないよね。まあしょうがない事なんだろうけど。だってモブリは小さい。体格が他の種族よりも圧倒的に小さいから、前に出る役目を担う事が少ない。
  元々魔法主体の種族だしね。この体の小ささは萎縮してしまう原因だよ。でも流石に誰もがそうじゃいけないとは思うけどな。僕はちょっと自分の国を嘆いて見るよ。まあ平和な世界に成るのなら……ってそれはスオウ君が否定してるか。
  平和に成る事を−−じゃなく、その手段をだ。


「あっ」


  そこまで考えてるとふと思い当たる節が出てきた。目の前のあの怪しいフードの奴……まさか。


「どうしたんですかテッケンさん?」
「いや……まさか君は……リルフィン君かい?」
「ふっ」


  フードを取ると現れるのは白銀の髪。太陽の光を反射するから眩しい眩しい。それだけ輝いてるって事だけどね。それに髪だけじゃなく、首から胸、背中からも生えてるモフモフしたそんな毛を持つのは、このLRO広しと言えどもリルフィン君位だろう。
  銀髪はシルクちゃんもそうだけど、なんだか髪質が違うからなのか、同じ様な印象は受けないんだよね。シルクちゃんは女の子だから毎日綺麗に手入れされてる。さらさらでフワリと風に揺れると微かに香るフローラルな香りが鼻腔をくすぐったりする。まさに女の子って感じだよ。
  だけどリルフィン君の銀髪はそんな手入れは微塵も感じられない。無造作ヘア全開って感じだよ。フローラルな香りよりも、野生の匂いをきっと漂わせてるだろう。あの白銀の輝きも、シルクちゃんの魅力的な感覚とは違って、こっちに伝わるのはギラギラした何かだよ。


「ようやくか。俺の存在を忘れるとはな」
「ごめんよリルフィン君。ちょっと事態が芳しく無い方に転んで行ってね。正直、本当に忘れてたよ」


  てかきっと今もみんな忘れてそうだ。だって考えられなかった。何時の間にかその存在は記憶の端に追いやられてたんだ。色々と状況が切羽詰まってたし、あの戦闘の後も僕達の頭はスオウ君の事とかで一杯だったんだ。
  だからごめんとしか言いようが無い。正直、本当に忘れてました。


「邪神の奴め……良い気になってるな。代表の奴等も向こうに付いた。腰抜け共が。あいつがして来た事を忘れたのか?」
「でもどうやら、邪神は世界をどうこうする気はない様だよ。それはローレ様も保証してる。それとも邪神に彼女も騙されてると思うかい? 僕には彼女がそんな玉だとは思わない」


  寧ろ邪神さえ良い様に使ってる……そんな感じだよ。あの人は誰かに屈したりなんか絶対にしない。


「主があいつに利用されてるなんて事はあり得ない事だ。あの人はいつだって自分の意思で行動はしてるさ。俺はよく知ってる。主が見つめる物はブレたりしない。そんな弱い人種じゃないからな」


  相変わらずゾッコンだね。散々対立してる筈なのに、愛は変わらずって感じ。まあリルフィン君にとってはこれでもっともっとその絆を強めたいって物があるんだろうね。まあ他にもどうあっても邪神は受け付けないって理由もあるんだよね。


「そういえば、何をしてたんだい? 随分時間が経ってるよね? ずっと隠れてたわけじゃ無いんだろう?」


  本当はクリエちゃんを奪い返して、ミラージュコロイドで一気に脱出! その途中でリルフィン君も拾う予定だったから、それまで軌道上の屋根の上に待機して貰ってた筈……でもああなったからね。実際今までどうしてたんだろう?




「加勢に行こうとは思ったが、あのバカは決闘を選んだからな。あの空間には干渉出来ない。俺の技でも破れないしなあれは。もうダメかと正直思った。それでも助ける術は探してたんだが、予想外な奴らが出しゃばって来たからな。知り合いかあれ?」


  そういえばリルフィン君は知らないんだっけ? 情報位は入ってるだろうけど、直接見た事は無い筈だから、しょうがないか。


「あれはアルテミナスを襲った奴らだよ。内部崩壊を図り、モンスター共を従えてアルテミナスを落とそうとした連中だ」
「奴らがそうか。なるほど、どうりであの邪神とやりあえるわけだな」


  そう言って何か思案顔なリルフィン君。気になる……のかな? まあ気にならない方がおかしいけど。神にも匹敵する力を見せつけて、後の二人もたった二人で五種族の軍をバッタバッタと薙ぎ倒してたもん。あれを気にしないのはある意味不安に成る程におかしな事だよね。


「ガチでやったら実際どっちが強いんだろうな? お前はどう思う?」


  そんな質問を受けると僕も悩んでしまう。どっちが強い? 正直な所は想像つかないってのが本音です。あの二人は僕達が測れる次元の外に居る……そんな感じがする。邪神テトラも外側のシクラも、チート過ぎてシステムの中で四苦八苦してる僕なんかには想像すら出来ないんだ。
  どっちとも僕は直接手合わせしてないしね。肝心な時に戦うのはいつだって彼……スオウ君だったから。ちゃんと僕達だって戦っちゃ居たけど、彼はボスクラスを相手にしすぎだよ。流れ的にそうなっちゃうんだけど、よく考えたら不思議とその状況に納得してた事に驚きというか……いや、それも彼故なんだろう。
  僕達は実際、助けてるのか助けられてるのか……わからない。今回だってそうだよ。僕達は彼にここに居られる様にして貰った様なものだ。そして僕達はわかっても居た筈だ。彼が邪神に勝てる筈ないって。でもそれでも、送り出してしまう。止められない。それは酷い事なんじゃないのか?
  実は彼を死に誘ってるのは彼自身でもセツリちゃんでもなく、周りで彼を守ってると気取ってる僕達なんじゃないのだろうか? 


「どうしたテッケン? お前の意見を聞かせろ」
「自分はやっぱり邪神の方が強いと思いますよ。神ですから。曲がりなりにも」


  そう言ったのは僕じゃなく、僧兵君だよ。だけどリルフィン君はそんな彼の意見は求めてないらし。


「お前は黙ってろ。この薄情者め。そもそもお前はシクラとかの事は殆ど知りもしないだろう。そんな意見は参考になるか」
「それはそうですけど……」


  ションボリする僧兵君。地位的にはリルフィン君って結構上の方に居るから、僧兵君じゃ言い返せないね。だけど実際、その地位もどこまで今の段階で有効なのか謎の様な。邪神を復活させてしまったのは許されないよね? それに世界樹は今や真っ黒。
  ローレ様はその役目を放り投げて好き勝手やってる。今でも星の御子だしやろうとしてる事は世界平和に繋がるんだろうけど、元老院の連中は叩く準備はしてると思う。ローレ様の付き人件護衛だったリルフィン君の立場も今やあやふや。てかノーヴィス事態が今はてんやわんや状態なんだよね。まあこの事態が終わるまでは今まで通りなんだろう。
 その後にきっと世界は大きく変わる。望むと、望まぬと。


「僕もきっと邪神の方が強いと思う。ノンセルスでも押してたのは邪神のほうだった。でもシクラ達は姉妹がまだ居る。それが全員来て戦うのなら、邪神にも勝てそうな気はするよ」


  僕は冷静に考えてそう言ってみる。するとリルフィン君は「使えるな」とかポツリと言った。どういう事だ? なんだかとんでもない事を考えてそうな……


「この船はスオウを探してるんだろう? スオウと共に、奴らは消えた。ならそこに居るかもしれないな」
「ちょっ、何をする気だい?」


  僕がそう言うと、彼は真剣な表情でこう言うよ。


「決まってる。そいつらと交渉してみるんだよ。俺達には圧倒的に戦力が足りない。だから必要なんだ。奴らのあの力がだ!!」


  リルフィン君の言葉がこの場に響く。確かにその気持ちはわかる。今の僕達はどう足掻いたって邪神やローレ様の脅威にはなり得ない。でもシクラ達なら……確かに脅威たり得る存在だ。でもそれは僕達にとってもじゃないだろうか。
  シクラは君が思ってるよりも数倍質の悪い奴なんだ。でも可能性……それを僕も捨てきれない。だから僕は静かに考える。あのシクラ達を上手く引き入れる策を。

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