命改変プログラム

ファーストなサイコロ

風を求めて

 気持ちの良い青空のしたから、僕は再び空陰る大地へと来てた。いや、まあ実際には来てみたらこんな感じだった……ってのが正しいかな。


「あれがきっと風の棲家と呼ばれてる場所よ。ご指定の場所であってる?」


  シクラの奴が月光色の髪を靡かせながらそう言うけど、僕はここには来た事ないからな。実際あってるかなんかわかんないっての。僕たちの目の前……ってか数百メートル先には風が繭見たいに集まってる場所があるんだ。風があそこでぶつかってあんな状態になってるのか、それともあそこが風の発生源なのか分からないけど、とにかく凄い迫力だ。それとあの繭の近くは常に暴風に晒されてるみたいな物だからかな。周りが更地になってるよ。
  あの風が全てを吹き飛ばしてるんだろうなって、見ただけで分かる。取り敢えず、なんだか意味はありそうだよな。わざわざ風の部分を強調した所にローレの奴は僕を寄越した訳だし。何か修行的な事でも出来るのか?


「お前が嫌がらせで全く別の場所とかに連れて来てないなら、きっとあってるだろ」
「あは☆ まっさか〜私がそんな事すると思う?」
「お前だからしそうなんだろ」


  誰よりもお前だから疑うっての。まあ見た感じ風の棲家と言われれば納得出来るけどな。あれだけ見ただけで「風!!」って思う場所も早々ないだろ。まだ離れてるから良いけどさ、あれ近づき過ぎると風にバラバラにされそうな感じがするな。


「全くスオウは手厳しいな。てへ☆」


 そう言って舌を出してコツンと自分の頭を叩くシクラ。スッゲーからかってるよなこれは? いつもの感じに戻ってるじゃん。まさか本当に……実は全く別の場所? そう疑いに掛かろうとしてると、横から柊の奴が面倒くさそうにこう言ってくる。


「あってるわよ。あれが風の棲家。私達もそんな暇じゃないんだからいつまでだってあんたの相手出来ると思わないでよね」
「ああーヒイちゃん私の楽しみ取らないでよ〜。全くイケズなんだから☆」


  シクラの奴は柊に頬ずりしようとして嫌がられてる。まあ柊は真面目なタイプだ。それに本当に、全く持って柊の奴は今や僕に興味なさそうだもん。
  なんだかついちょっと前から、早く帰りたいオーラが僕には見える。だからこそ、面倒なやり取りなんかすっとばして「後は勝手にどうぞ」みたいなさ……それも考えると、さっさと目的地に置いて行きたい柊はシクラの遊びになんか付き合わないよな。
 でもはっきり言っとくけど、別にお前達に相手してもらいたいとは思ってないからな僕は。柊の奴の言い方だと、僕がありがたがって付き合って貰ってるみたいだけど、そんな事あり得ないから。お前達に囲まれてると生きてる心地がしないっての。


「ねぇねぇシクラ! あれって強いのかな? ちょっと言って来て良い?」


  目をキラキラさせてそう言うのはヒマワリだ。まあなんと言うか予想出来た反応だな。バカは台風の日にわざわざ外にでたがったりするよな。いつもと違う風の音とかで、ワクワクするんだ。きっと今のヒマワリはそんな感じだろう。


「行くって……何しによ?」
「もちろん倒しにだよ!」


  拳を握りしめてそう宣言したヒマワリ。うん、やっぱりこいつバカだよ。風の塊みたいなのをどうやって倒すんだよ。そもそもあれって倒せる物なのか? よく分からないけど、シクラの奴は面白がってこう言うよ。


「やってみればいいじゃない。もしも倒せたら、あんたの好きな物食い放題よ☆」
「うおっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!」


  シクラの一言で気合が万倍に跳ね上がったヒマワリ。もうそれは女の子があげる叫びじゃない。ゴリラみたいだぞ。せっかく外見は悪くないのに、こいつの言動は残念だから、その魅力が全く持って生かされないな。
  まあ、らしいと言えばらしいけどね。ヒマワリって名の通りに太陽に向かって一直線! って感じの性格。ヒマワリは正直、裏を読む必要がないから気が楽だよね。シクラは言うまでもないけどさ、柊だって頭つかってる奴だからな。正直いろいろと勘繰りながら話すのは疲れたりするんだよ。
  まず身構えるしね。でもヒマワリにはそんな事一切ないから楽でいい。


「ちょ! ヒマ、馬鹿な事やめてよ!」
「バカじゃない! お姉ちゃんって呼べええええええええええええええええええええ!!」


  柊の静止が逆にヒマワリの心に更に燃料を投下したようだ。そんな叫びと共に、ヒマワリの奴は一気に風の棲家に向かって突進してく。その勢いは凄まじく、まさしく突進。あれが真の突進だと思わせるほどの勢いだよ。まるで人間大砲みたいな奴だ。
  僕もかなりスピードには自信がある方だけど、なんだか種類が違うよ。僕は風を味方に付けて、それに乗るイメージだけど、ヒマワリはどこまでも強引だ。風さえも押しのけて、自身の力一つで押し進んでる。しかもそれで居て、あれだけのスピードだ。本当にこいつらは規格外過ぎる。
  一直線に進んでくヒマワリはあっという間小さくなってく。だけど次の瞬間、一気に後方に吹き戻されて来た。


「うにゃああああああああああああああああああ!?」


  そのままギャグ漫画みたいに頭から地面にめり込むかとおもったけど、身体能力だけは高いヒマワリは強引に着地を決めて「こなくそおおおおお!!」と叫び再び風の棲家へと突進する。弾丸が弾ける様な音が響き、地面を抉りながら進むヒマワリ。だけどあんな目の前の障害全てを弾き飛ばしそうな勢に見えそうなのに、これが簡単に吹き飛ばされて戻ってくるんだよな。
  一体どれだけ凄い暴風が吹き荒れてるんだよ。


「ヒマ〜諦めたら?」
「まだまだだよ! 絶対に食べ放題する!!」


  食い物の執念はなかなかに根太いな。ヒマワリは今度は上に飛んだ。真っ直ぐがダメなら上からって事か。バカなのに案外考えてるんだな。だけど結果としては同じだった。風の棲家には触れる事も出来ずに吹き飛ばされてしまう。
  空中でクルクル回るヒマワリ。このままの状態では無理だと判断したのか、体が自由に動く所で一気に地面に突き刺さって、地面を崩す。するとその砕かれた地面の破片がヒマワリの体へとまとわりついてく。


「あれがヒマワリの力……」


  確かノンセルスでもやってたと思うけど、あの時はちゃんと見れなかったからな。どうやらヒマワリは周囲の物をなんでも自身の力に変えられる能力? なのかな? なんてチートな。土の鎧を見にまとったヒマワリは、既に外見ではヒマワリと分からなくなってる。フルアーマーってな感じの装備だよ。
  重そうな装備。だけど重量を増して吹き飛ばされ憎くしようって事だろう。それに元の力が規格外だからか、案外軽快に動きやがる。勿論元と同じスピードとは流石にいかないけど、フルアーマーの装備とは思えない程に身軽にヒマワリは動けてる。普通に走り出したしな。一足で五メートル以上は進んでるぞアイツ。
 重量が増した分、地面に刻まれる足跡も深くなって音もその分重厚になってる。簡単に飛ばされずに、今まで以上に前へ行くヒマワリ。でもその足取りも次第に鈍くなってく。近づくに連れて暴風の勢いは増してるだろうし、進む事自体が難しくなっていってる印象だ。


「行ける……のか?」
「どうかな? ヒマじゃ無理かもね☆」


  他人事だな。お前がやらせてる様なもんだぞ。


「そもそも食べ放題とかさせる気ないだろお前?」
「そんな事ないけど☆ 言っとくけど私達は別に貧乏じゃないわよ。私達はやりたい放題できるからね!」


  わあ、言ったよ。言っちゃったよこいつ。まじ引くわ〜。やりたい放題確かにやってるけどさ、自分で言うのはドン引きだっての。まあでもヒマワリのお願いがないがしろにされる事はないようだな。
  敵だけどさ、なんでかな? こんな風に思うのは実際おかしいけど、ヒマワリの奴だけはその〜言い表し辛いけど、端的に言うとバカだから……か? ついつい心配しちゃうって言うか……そんな気持ちが働く様な……でもこれって戦いに置いてはなかなか危ないよな。
  本気でヒマワリと対峙した時、こんな感情湧いたんじゃやり辛い事この上ないぞ。ヒマワリの野郎は自分でも知らず知らずにそのバカさ加減で誰かの心に保護欲を掻き立てる事が出来るのかもしれない。なんて怖い能力! でもないけど、いずれ必ず障害になるって分かってる相手にまで、自分の存在を刻めるのは地味に効果的か。止めを刺す時……いや、もっと攻撃の瞬間瞬間に雑念でも生まれそう。


「ヒマは姉妹の中で一番のトラブルメーカー。でも私以外の誰も本気で怒らないのは、あの子のあのバカさ故よね☆ スオウだってヒマの事気しちゃってるし、私はいつも悪役ね。ほんと損な役回り。私の事も少しは女の子らしく扱っても良いんだよ」


  僕の心でも読んだのか知らないけど、そんな事を言って、不意に自分に寄りかかってくるシクラ。マジやめろよな。何かの技で一瞬で消されるかとヒヤッとしたっての。


「お前は見た目は女だけど、別の何かだと僕は思ってるから。それは無理だな」


  はっきりとそう言ってやった。シクラを女の子らしくって……それは僕の中の何かが完全に拒否ってるっての。出来るわけない事言うなよ。


「なによソレ? こんな可愛いくて綺麗で気立てもいい美少女にお願いされて、よくそんな事が言えるわね! 本当は既にビンビンな癖して。握るわよ☆」


  一人でジタバタやったと思ったら、最後に背筋が凍る事を満面の笑みで言いやがった。何がビンビンで、どこを握る気だ? てか、その後どうする気なんだよ。怖いっつうの。そんなんだからシクラは敵以外では見れないんだよ。
  こいつのキャラと力なら、高笑いしながら万の兵位潰せそうじゃね?  そんな奴がいくら可愛くてもな……いや、ただ時々そう言う面を見せるだけならまだしもさ、こいつはいつだって裏で色々と策を巡らせてる。
  それで何度痛い目に遭って来たか……僕は既にお前を見るだけで震え上がるっつうの。だから可愛いとか綺麗とか感じ得ない。こういう行為もどんな策略だ? って勘繰る。そしてだからこそ、マジで握って来たりしそうで怖い! 
  さっさとこいつを離さないと……でもあんまりビクついてたら、逆にこいつの「面白い」的な琴線に触れるかもしれない。そうなると色々と厄介だからな。とにかく面倒臭い風を装って、軽く流す感じで行こう。それがきっと一番の無難だろう。
 平常心平常心−−


「ふざけるな。何を握る気だよ」
「だからナニを」
「させるか。言っとくけど、別にビンビンじゃねーから。逆にお前がすり寄って来てるから、何を企んでるんだと、ヒヤヒヤして逆に縮んでるっての」
「全く、人を小悪魔みたいな女みたいに。今は別に安心したっていいのに☆ 言ったでしょ? スオウを殺すのは今じゃないって。それにそれは私の役目でもないわ。だから別に今、私がスオウにイチャイチャするのは純粋な遊び心よ」


  おい、完全に遊び心言ってるじゃねーか。どっち道、人の心を振り回すのは変わってねーよ。だから小悪魔……いや、こいつ相手に「小」なんて殊勝な漢字を付ける必要ない。どう考えても悪魔だから。てか結局離せてないし。てかさっきからマジで僕のナニを狙って来てやがるんだけど……信じられないこいつ。本当に握る気じゃねーか。
  そんなんだから女としてみれないって気づけよ。


「お前な、いい加減にしろよ。ヒマワリの奴が一応頑張ってるんだから、ちゃんと見ててやれよ」
「あれはヒマが勝手にやってる事じゃない。それに幾ら吹き飛ばされたってヒマは死んだりしないわよ☆ きっと飽きたら勝手にやめるでしょ」


  全然全く心配してないな。まあ、確かにこいつと同じ存在のヒマワリが幾ら吹き飛ばされたって所でってのはある。きっとダメージになんてなってないんだろう。そもそも吹き飛ばされるだけでダメージ判定されてるのかも微妙だしな。
  だからって僕に絡んでくるのはお門違いだけどな。ヒマワリの奴、叫びながら必死にその場に踏みとどまってるのに、その姿さえシクラの奴見てないもん。こいつには人情って物がないのか。ちょっとは気に留めて置いてやれよ。姉妹だろ。


「あのバカは心配するだけ無駄で、そんな事をしたら付け上がるだけなの。放っておいて、痛い目にあう方がいいわ☆ まあこんなんじゃ役不足だけど。それよりも本当に縮んでるのか確認を−−」
「なんでこっちにはそんなに執着してるんだよ!」


  こっちにも無関心でいろよ。どうしてそこまで僕のナニを狙ってくる? 変態か!? するとそんなシクラにそれとなく止める声が後方にから聞こえた。


「やめてよシクラ。バッチィでしょ。そんな物……そもそも付いてるの?」
「付いてるよ! お前はお前で何とんでもない疑いを僕に向けてるんだよ!!」


  柊の言葉には流石に度肝を抜かれたぜ。どうしてそんな疑いもそもそも持った? 僕がお姉系にでも見えるというのか? それは流石にショックだぞ。


「あはっはははは! 流石ヒイちゃん、言う事が文学少女的ですな☆」
「どこがだよ。後そのキャラなんなんだよ」


  すべてが意味不明だっての。


「ふふ、ヒイちゃんも実は気になってるんだよね☆ 確かめて見ない?」
「おい、柊まで巻き込もうとするなよ。って、お前も何で唾を飲み込む?」


  ごくって今喉が動いただろ! それに「えっ?」って本で顔を隠しながらチラチラとこっちをみてるし、興味がありそうな素振りやめろ。ますますシクラが調子こく。


「た、確かめるとかそんなの私興味ない。汚い物なんて見たくもないし、触りたくもないもん!」


  よし、その調子だ柊!


「ふ〜ん、でもヒイちゃん。男と女の違いってきっと知っておく事は大切だと思うな☆ 今時はヒイちゃんの年で知らないんなんて恥ずかしいレベルかも」
「はっ……恥ずかしいの?」


  くっそ、流石にシクラの奴は上手いな。柊が知的を売りにしてそうなのを良い事に、その部分で知っておかなくちゃって思わせようとしてる。だけど別にそんな事はないんだ!


「気にするな柊。そんなの全然恥ずかしい事じゃない。そもそもそんなのは進んで得ようとする物でもないんだよきっと」
「ええ〜でももしもそんな時が行き成り来たら困るよね〜。ヒイちゃんだってお年頃だし、恋の一つや二つしたっておかしくない。その時になんの予備知識もないんじゃ可哀想よ。ヒイちゃんもだけど相手もね☆」
「行き成りなんてそうそうこないっての。よって急いで教える事じゃない。無駄だろうが」
「ねえ、スオウ。学校の勉強ってなんの為にやってるのかしらね?」


  おい、何行き成り関係ない話をぶっこんでるんだこいつ? 意味がわからないんだけど。なんでここで学校の勉強なんて単語が出てくる? そもそも学校なんてお前知らないだろ。


「いいから答えてよ☆」
「将来の為……かな」


  無難に答えてみた。


「将来の為。確かにそうだよね。でも実際社会に出て普通にサラリーマンとかをやる分には実は小学生までの知識で良かったりするじゃない」
「そこは知らないけど、まあ微分積分を日常で使うとは思わないな。普通に生きる分には足し算引き算に基本的な漢字、それにだいたいの自国の歴史を知ってれば恥ずかしい思いはしない」
「そう言う事☆ じゃあ中学高校で習う事なんか無駄じゃない?」
「それは……アレだろ。可能性を広げる為とか……そう言う事だろ? それが将来の職業の選択肢を広げてる……んじゃないか?」


  確証ないけど。きっとだからわざわざ高校過程までが義務なんだろ。するとシクラの奴は「うふふふ」と不気味に笑う。


「そうね可能性−−それってとっても素晴らしいわよね☆ だから私も無駄だからってそんな可能性をヒイちゃんから取り上げる事なんかできないわ! だって、ヒイちゃんは私の大切な妹だもん‼」
「シクラ……」


 しまった。そこに繋げたかった訳か。この野郎わざわざ芝居がかった口調で言いやがって。どう考えても遊んでるだけじゃないか。だけど不意にそんな事を言われたからか、柊はちょっと心が傾いてる様に見える。ヤバイな、このままじゃ僕のナニを柊まで狙う羽目に。
  てか冷静に考えると、僕達は一体ここで何をやってるんだ? っていう疑問が湧くな。だけど女の子(一応)に自分のナニを触らせるとか大問題だからやっぱり阻止しないと。笑って触らせれる度量なんて僕にはない! いや、小さくはないと思うけど、そこまで自信が有るわけでもないし、そもそも他人に触らせる物じゃないよな。特に女子には遊び感覚で触らせるなんて無理。


「ヒイちゃん、これはヒイちゃんの為なんだよ。素直になって。男と女の体の違い……実は知りたいでしょ?」
「それは……」


  柊の奴は本から瞳を覗かせながら僕の下半身を見てる。いや、隠せてねーぞ。案外大胆だね柊。凝視って……なんだか反応しちゃいそうだ。でもこのままじゃ僕の貞操が危ない! 辱められてしまう。それはなんとしても回避しないと。


「ダメだ柊! それは俗世に染まった汚れた奴の誘いだぞ! そんなの知ったって汚れるだけだ! 女の子は清い方が良いって思う!」
「ええ〜それは童貞君の理想よね☆ ハッキリ言いましょう。女の子だってHな事に興味津々だよ。ねっヒイちゃん」


  そんな風に話を振られると、顔を真っ赤にして屈み込む柊。興味津々なんだ……いや、別に理想を抱いてたわけじゃ無いよ。だって一番身近な日鞠の奴がアレだしな。そりゃあ成長して来たら、異性の体に興味が出て来たりする……よな。女の子なんて男よりも変化激しいし、互いに互いを意識しないでいられるなんてあり得ない。
  でもこのままじゃ僕の貞操が! Hに興味津々でも引き下がれるか!


「柊……本が好きなんだよな? 想像力って大切だよな。それをこれからも育んでくれ」


  超苦しいけど、もう僕には意味がわからない言葉しかなかった。まあ想像の方がきっと美しいままでいれるよって、多分そんな事を言いたかったと思う。失敗したな。


「スオウ、想像でも男と女を分ける要素って必要だと私思うな☆ そして男女の最も特徴的な違いがそれだと思う!」
「指さすな!!」


  恥ずかしい奴だな全く。女子扱いされたかったらそこら辺をもうちょっとなんとかしろ。


「そもそも本でここが描写なんてされないっての。特徴的でもそれはないだろ。それとも柊が愛読してるのは官能小説なのか?」
「ばっ! バカ言わないでよ! 私は至って普通の文学を読んでるわよ! そんな……官能小説なんて……あんなの何が書いてあるかサッパリで……」


  読んだんだ。焦ってるせいで飛んでも無いボロが出てるぞ。


「ちちち違う! 同人誌即売会って所に行ったら、可愛い絵してる小説があって珍しいなって思って手にとってみたら、中身が絵の背景に文章が有る様なので、それでチラッとだけだから!」


  真っ赤になってまくし立てて来る柊。こうやって見てると、柊の反応は可愛らしいな。それにしても同人誌即売会? そんなのこっちでもやってるのか? いや、わざわざ遠い距離をリアルで移動するよりも、LROなら簡単なのかもしれないな。
  それにデータなら不良在庫なんて抱える事もないし、こういう場所なら実際の顔を合わせるわけでも無いから、始めやすいってのもありそうだ。てか、普通に外に出歩いてるのかこいつら? するとシクラが面白そうにこう言うよ。


「でも絵は見たんでしょ? どうなってた?」


  こいつやっぱり鬼畜だな。そんな事を言わせる気かよ。なんか興奮するな!


「えっと、男の人と女の人が裸になってて重なりあってた……みたいな。直ぐに閉じたからそれ以上は知らない!!」


  なんだ? 柊がとっても可愛く見えてきた。そう思ってると、シクラの奴が僕から離れて柊の方へ。頬に手を当ててこう言うよ。


「大丈夫、今はお姉ちゃんも一緒だから。本当はずっと気になってたんでしょ? 私が優しくアレを使って教えてあげる」


  おい、アレって僕の事か?


「でも……やっぱり私には早いかなって……」
「早い遅いなんてこういう事にはないの。その時が来たら私達はその知識を手に入れる。ヒイちゃんと私はそれが今なの☆」
「え? シクラも始めてなの?」
「そう、だから……お姉ちゃんと一緒に……ね」
「……うん、それなら」


  なんだろうこのドキドキは。自分が危ないのに二人のやり取り見てるだけで前屈みに。てか、シクラの瞳輝き過ぎだろ。


「ヒイちゃん超キャワイイイ!!」


  そう言って抱き付き頬ずりまでするシクラ。いつもなら抵抗しそうな柊も今は何故かおとなしい。てか、あの目の輝きはしとやかな柊に対するものかよ。我慢できなくなって抱きついたのか。どんだけ柊の事好きなんだよ。明らかにヒマワリと扱い違う。


「シクラ、えっとね私……どうせなら見てみたい……な」
「了解了解! ど〜んとこいだよヒイちゃん☆」


  おい、何飛んでもなくハードルあげてるんだよ。見てみたいとか……それはマジ無理。


「スオウ、そう言うわけだから−−ね☆」
「ね☆ じゃねーよ! 誰が見せるか!!」
「そっか、なら二人で同時に掛かって引ん剥いちゃおう☆」
「ヒイイイ!?」


  なんて恐ろしい事を笑顔で言いやがる。残酷過ぎるぜこいつ。二人して僕に近づいて来る。このままじゃヤバイな。でも武器を抜いてもこの二人には……僕の貞操はどうなってしまうんだ!? 


「さあ、観念してズボン脱いでパンツも−−−−ぐふふ」
「これは勉強−−勉強なんだから!」


  こいつら暴走してる。もう何を言ってもきっと無理だ。有る意味これって死ぬよりも酷い屈辱じゃないか? その時、空からドスンと地面に穴を開ける勢いで何かが降って来た。そしてその穴から出て来たのはヒマワリだった。


「ああ〜もう! 結局飛ばされちゃったよ! あんなの無理!! −−ってあれ? みんな何やってるの?」


 よくわからない状況に首をかしげるヒマワリ。僕達は説明に困ってしまう。どうしよう……そんな空気が流れて最終的にシクラと柊がこう言った。


「な……なんでもないわよ☆」
「そうそう、別になんでもないわ。ヒマには関係ない事だから」
「ええ〜なにそれ〜怪しいぞ〜」


  頬を膨らませて不満気なヒマワリ。だけどきっとあいつらの思いも僕と同じなんだろう。きっと二人ともこう思ってるに違いない。


【ヒマワリにはまだ早い】


 ってね。

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