命改変プログラム

ファーストなサイコロ

どこまでも無謀

 ローレの理解し辛い持論に翻弄されてる僕達。まあだけど、生まれた瞬間から死に向かってるってのは、昔の僕は良く言ってたな。流石に今思うと恥ずかしいけど、それを真顔でここまで完璧に言ってさらに、勝者という高みへと昇ると宣言するとは、ローレの奴はやっぱり色々とぶっ飛んでるな。
 流石にLROの中だけのことだよね? LROにはリアルの自分とは違う人を演じる人も結構居るって聴く。そういう人達はリアルで出来ない事をこっちで思いっきりやるんだって。そのタイプか? 実際ローレの思想ってリアルでいたら、テロリストみたいな……勝手なイメージだけど。
 弱者である限り、僕達は強者や勝者が気まぐれで与える物を必死に選んで掴んで行かないといけないと……それがどんなに理不尽でも、おかしくても、間違ってても……僕達にはどちらかを選ぶ権利しかないらしい。


「僕は……」


 テッケンさんがローレの言葉のあと、ようやくつぶやく。実際変な空気のせいでどの位沈黙が続いてたのかはよくわからない。けど、なんとなくようやくって思った。そしてテッケンさんがどんな言葉を発するのか、それが気になる。
 搾取されるのは僕か……ノーヴィスか……


「確かに弱者だよ。自分が弱いから選択を迫られる。僕だけの力だけで邪神を倒せればこんな選択……」
「そうね、荒唐無稽過ぎて机上の空論にもなってないけど、確かにそれだけの力があれば、こんな選択はあり得なかったわ。そんな自分の弱さを嘆きなさい」


 おいおい、そんなのこのLROに居るプレイヤーの誰一人として、無理な事だろ。そんな力がないからって、嘆かなきゃいけないのかの?  そんなの……おかしいも滅茶苦茶も二人とも分かってる事か。どんなに理不尽でも……そう言ってた。
 理不尽な選択は、理不尽な力でも持ってないないと、解決なんか出来ない。そういう事か。


「スオウ君、僕は変に評価されてるみたいだけど、本当は優柔不断で、怖がりで、臆病者なんだ」
「テッケンさん?」


 テッケンさんがいきなり何を言い出したのか、ちょっとわかんなかった。でも冗談とか言う雰囲気でもないし、ましてや相手はテッケンさんだ。この状況で意味ないことなんか、言わないだろう。今言ったことは、本当の自分って事なのかな? 周りからの評価や、僕が感じてる頼りになる感じというのは、本当の自分じゃないって、そういう事? 


「だからやっぱり結局僕は自分で選択なんか出来ない。大切なんだ、本当にどっちも。でもそれじゃあダメだとわかる。これは逃げなのかも知れないけど、僕はスオウ君の意思に従うよ」


 僕の意思か……確かにそれは責任逃れみたいな物なのかも知れない。でも、それを僕に責める事は出来ない。だって本当にテッケンさんが悩んでくれた事、そしてその言葉が本当なんだって、分かってる。寧ろ最後まで僕に選ばせてくれてありがたいくらいだよ。
 だって、僕の意思は決まってる。自分の意思で選べないのなら、僕がワガママに、自分の意思を叶えさせて貰おう。それで納得してくれるのなら、それで良い。僕はテッケンさんを見て、きっと何度も言ったであろう事を口にする。


「行ってください。ノエイン達の元へ。テッケンさんの気持ちは、ちゃんと受け取ってますから」
「……やっぱり君はそう言うと、それしかきっと言わないと思ってたよ」
「じゃあやっぱりダメですか? 受け入れられない?」


 僕のそんな言葉に、テッケンさんは首を横に振るう。それは受け入れてくれるって事で良いんだよな。


「もう良い加減にしないとね。いくら納得出来なくても、弱い僕が悪いんだ。でもただ一つ……どうか死なないでくれ」


 テッケンさんは真っ直ぐに僕を見上げてそう言ってくる。真っ直ぐな瞳に、後悔や迷いが見えない……とは言えないけど、でも彼はもう無理矢理にでも納得させるしかないんだ。僕はテッケンさんにいつも通りの感じでこう返す。


「死にませんよ、きっと……」


 なんの根拠も無いけど、そう言ってみた。するとテッケンさんは、こう言ってくれる。


「そうだと……信じてるよ」


 そう言って彼もまた、同じ種族の元へ行く。これで僕はたった一人。世界に逆らう奴が一人に成った。周りは全部が敵なんだよな。空を覆うモンスターも、ノンセルスを取り囲む山よりも大きい怪物も……そして、この周りに居る五種族の全てが敵だ。360度、何処を向いても敵だらけ……ある意味圧巻の光景だ。


「さて、どうするスオウ? 戦っちゃう? 勝ち目は百パーセントないけどね。それどころか、完全に犯罪者。世界を危険に晒す大罪人−−そうなっちゃうよ」
「諦めろ小僧」


 ローレのあとに、人の代表のおっさんもそう言って来る。ちゃっかり便乗しやがって……なんだかこいつはあんまり今の状況を深刻に受け止めてないみたいな感じだな。何かやらかすかもとか思ってたけど、結局そんな事なさそうだし、そう思えてたのは他の代表達とのこの事態の捉え方の違いだったのかも知れない。
 僕はそんな事を言って来る二人に、今一度こう言うよ。


「そんなの知ったことじゃないな。大罪人になろうが無茶だろうが、僕はこの剣を収める気は無い。そう言った筈だ」
「クリエの為に?」
 「ああ、そうだ」


 そう言って僕は小さく成ってるクリエに目を向ける。小さなその子は「ダメダメ」と言いながら頭を横に振ってる。すると僕とクリエの間にテトラの奴が降りて来る。まるで渡さないとでも暗に言ってるような立ち塞がりだな。


「たった一人で俺を阻む気か? そもそも俺まで届く事も今のお前じゃ難しい」


 そう言って今にも飛び出しそうにする、人とスレイプル、それにウンディーネの軍勢。そこら辺は、邪神に恩でも売っておこうって所か? エルフとモブリは、もう動く気はないって感じだな。今自分たちに出来るのは、それしかないって思ってくれてるんだろう。
 その気になればテトラの奴は空を影させてるモンスター達だって使える。だけど、僕とテトラを阻むのは、プレイヤーという事実。


「もう大人しくしててくれると嬉しいんですけど。動かなかくたって良い筈でしょう」


 僕は三つの種族の代表達にそう言う。すると人の代表のおっさんが出しゃばって来る。


「俺達は総意で邪神を支持してる。それならば、俺達が邪神を守る事は当たり前の事だろう? お前こそ、今、ここで引かないとその命……無くす事になるぞ。お前は今、世界を危険に晒そうとしてる大罪人だ」
「その通りじゃな、邪神の願いに世界のリスクは無い。それならば、機嫌良く叶えさせてやるのも世界の為じゃ」
「たった一人の反乱者……それはそれでそそりますけどね。だけど貴方が万が一にでも邪神を傷つけるような事があっても困るわけですよ。私達はそれぞれの国を背負ってる。だからこそ世界の危機になり得そうな事を放っておく事は出来ないのです。
 分かってますか? 今世界にとっての敵は邪神じゃない。それは貴方です」


 世界の敵は僕……確かにそうなんだろうし、それを分かってるつもりだ。彼等だって正しい。だから引かない。そして僕はクリエの為に引かない。いくら言い合ったって、それぞれの思いがぶつかる事は仕方ない事だってもう分かってる。
 それなら、やっぱり色々と考えてどうにかして邪神にたどり着く術を考えないといけないよな。いや、一つだけあるんだけどね。てか、それしかきっとない。


「もう言葉の掛け合いなんか意味が無いってお互いに分かってますよね。僕も貴方達も。だからこれ以上の論争なんて意味が無い」
「あくまで世界に歯向かうとはな。飛んだ大バカ野郎だ。嫌いじゃないがな、そう言う奴は。だが、無謀だ。お前はきっと邪神に触れる事すら出来ずに、俺たちに潰される」


 そう言っておっさんもその武器を抜く。バランス崩し? とか思ったけど、案外普通の……いや、全然全く普通じゃないサイズの剣をおっさんは抱えてる。五mくらいありそうな馬鹿でかい剣。どっから出したんだと思ったら、どうやら後ろの兵士達が運んでたみたいだな。
 なんて運用し辛い武器。あれがあいつのバランス崩し? 


「恐れ慄いたか? だが安心しろ、これはただの武器でしかない。まあ俺用の特別仕様だがな」


 そう言っておっさんはその剣を片手でグルグルと回す。激しい風が起こる中、随分得意そうにおっさんは笑ってる。ってか、あんなデカイのに……重くないのか? やっぱり国の代表になるだけあって、ただ者じゃないって事か。


「ふん、荒々しい奴じゃな。まあ暴れたい奴はそうすればいい。儂は腰が痛いから、ここは任せてやろう」
「全く年寄りはなにも出来ないのに偉そうですね。世界の危機だと言うのに、責任感がなさすぎではないでしょうか? まあそれをスレイプルに求めるのも酷でしょうけどね。ここに居るほとんどはNPCみたいですし……民度がしれますね」
「ふん、冒険者共など信用できるか。奴らは国に貢献する気がない奴らじゃ。それにただの魚などに民度とかほざかれたくないの」
「そう言う事は少しは威厳と言う物を示してから言って頂きたい物ですね」


 スレイプルの代表が怒鳴り散らすのを無視して、ウンディーネの代表はその腕を空に掲げる。するとその手のひらの先に水球が発生する。そしてそれを弾けさせると、周りの兵士達にその水が染み渡る。すると兵士達の体が淡い光に包まれた。


(なんだ? 補助魔法的な何か? 支援スキル?)


 随分と兵士共が生き生きしだした様な−−やっぱりウンディーネだから水を得て元気になったって事か? 色々と分析してると、沢山の護衛の後ろに居るテトラが声を出す。


「不思議な光景だな。かつて五種族は俺を倒す為に連合した。その連合軍が、今は俺を守ろうとしてる」
「私のおかげね。口に出さないと伝わらない事があるって、これで分かったでしょう? それに駆け引きとか、使い様とか色々とね」
「ふっ、確かにな。随分退屈せずに済んだ。そして最後まで、いけるか? なあスオウ……どうする?」


 どうする……ね。なら僕は、こうするさ! 僕はウインドウを開き、目の前に現れるのは白い便箋だ。


「何をする気だスオウ?」


 アギトの奴が離れた所からそう言って来る。アイツは逃げて欲しいと、まだ思ってるんだろうな。そうすれば、ここの誰もが、僕に刃を向ける理由はなくなる。このままじゃ、僕は人とウンディーネの軍勢に殺される事になるからな。
 でもこれは、それを回避する為のものだ。向こうにとっては僕が悪の権化みたいな物いになってるけどさ、だからって流石にこの人数を相手には出来ないよ。僕は邪神とは違う。シクラの野郎とも違う。チート能力なんて有してない普通のプレイヤーなんだ。


「思ったんだ。五種族は邪神に怯えてるから、僕に立ちはだかる。そして邪神はクリエを何かに使う気だ。それなら、僕が邪神をぶっ倒せば僕は五種族に狙われる事もなくなるし、クリエも開放される」
「そんな事が出来ると思ってるのか? 俺達がそれを許すと?」


 でっかい剣が僕の前に突き立てられる。数本の髪の毛が僅かに落ちて、剣の圧力みたいなものを感じる。流石にこれだけデカイとその存在感は圧倒的だ。まあ当然、こいつらは僕達を邪魔する気満々だからな。それを許す訳ない。
 だけど……


「許すさ。これを邪神が受ければな!」


 そう言って僕は便箋を掴んで邪神に向かって投げる。デカイ剣の脇を通り、兵士の数々の間を縫ってその便箋は邪神の前へ。


「何の真似だ? お前からのラブレターとかいらないんだがな」


 ふざけた調子でそう言うテトラ。誰がお前にラブレターなんて送るか。まあだけど、そう取れない事もないかもね。


「受け取って貰う。嫌でもな。僕の始めて出したラブレターだ。無碍にするなよテトラ」
「そうだな。なかなかに面白いラブレターだ。これがお前の選択か」


 そう言うテトラの前には開いた便箋とそこから発生したウインドウが表示されてた。それはまっ、ラブレターと言う名の果たし状なんだけどね。


「それなら、誰にも邪魔されずにやりあえる。今の状況で僕が取れる、逃げないなりの最良の選択だろ?」
「逃げない事が最大の過ちなんだがな。まあ確かに、これはこれで楽しいかもしれない。こう何度も俺に向かってきた奴は居ないからな。そこまでやり合いたいなら、幾らでも叩き潰してやろうじゃないか」


 そう言って、テトラは画面上の選択を選ぶ。ここからじゃどっちを押したのかわかんないけど、でもあのセリフ、それに−−


【決闘の承諾を確認。フィールド作成を開始します】


 −−頭に響くこの声が答え。その瞬間、僕とテトラ双方から青い球体が広がって行く。


「ぬっ⁉ そう来たか!」


 おっさんがそう言ったけど、どうする事も出来ないだろう。青い球体に押される様に、周りにいた代表や兵士達が僕達から離れてく。システムが決闘の為に僕達専用の不可侵領域を設定してくれてる。これで誰にも邪魔はされない。


【フィールド範囲設定完了。勝利条件はHP残量は零です。アイテム使用無制限、装備の変更あり、時間無制限で決闘を開始します。準備は宜しいですか?】


 手元に現れるYES・NOの表示。これを承諾すれば決闘の開始。誰にも邪魔されない代わりに、後戻りも出来ない。


「スオウ君、その条件はダメです!」
「そうだ! せめてHP三十パーセント減少にとどめて置くべきだ! でないと君は!」


 シルクちゃんとテッケンさんが離れた所からそう言ってくれる。そういえば決闘って見せ物みたいな所があるから、彼等にも条件が伝えられるんだっけ? てか外側からもきっと見えるんだろうな。でもそれは……


「無粋な事を言うな。命を賭す覚悟。それが無いと燃えないだろ?」
「ははっ、そういう事だよ二人とも。ゴメンだけど、条件は変えない……このまま行く」


 僕のそんな言葉を聞いて、二人とも納得出来ない様に叫ぶ。だけどもう遅い。今や僕達の周りは不可侵だ。止める事はもう出来ない。


「そうではなくては困る。だがそれでも俺に勝つ事は出来ないがな」


 相変わらず余裕たっぷりだな。まあだけど、こいつが僕を怖れる理由なんて一切ないのも事実だ。僕がこの神に勝てる要素なんか一切ない。イクシード・アウラでだって並べなかった。じゃあどうやって勝つ気なのかって聞かれても、実は何にもないんだけどね。
 だって元々、ここには戦闘するつもりで来てない。一応色々と考えてたのは、勝利じゃなく、足止め程度のプラン。しかもそれはみんなが揃ってる事が条件だった。つまりはこの状況は全くのノープランな訳だ。
 それで後戻りも出来ない決闘だからな。自分でやっといてなんだけど、どう考えても格好付け過ぎたな。でもここで日和ってHPを少し残して決闘終了にしてもって感じじゃん。それじゃあクリエにはこの思いが届かないと思うんだ。
 あいつは僕に死んで欲しくないから、テトラと契約をかわした。でもそんなのぶっちぎってそれでも僕達はあいつの願いを叶える為に動くんだって覚悟を見せる為には、このくらいやらないといけない。
 どうなるかなんか自分でもわかんない。もしかしたら、やっぱりこの選択を後悔しちゃうかも知れないし、もっと上手くやれたかもしれないって思うかもしれない。でも、今のこの時点では、僕にはこの方法しか思いつかないんだ。
 だから……さ。ちゃんと見ててくれよクリエ。一世一代の運任せだ!! 僕はYESを押して、両の手のセラ・シルフィング大きく広げる。そして姿勢を落としてこう叫ぶ。


「それでも僕は逃げない!! 出し惜しみなんかしない!! イクシードオオオオオオオオオオオ!!」


 刀身に収束する風のウネリ。僕は地面を蹴ってそのウネリをテトラへと向ける。だけどテトラの野郎は、避けようとなんかしない。ただ気楽にウネリを掴み、そしてそれごと僕を引き寄せる。すると叩き込まれるのは奴の黒い影を纏った拳だ。
 腹に入ったそれは、何かが僕の体を突き抜けて、その衝撃を地面に伝える。地面は見事なまでに抉れて、僕はそこに落とされる。


「がはっ−−がっ−−はぁはぁ……」
「今更イクシード程度で俺に勝てるとでも?」


 うるさい……イクシード2以降は条件があるんだよ。それに浄心水はセラたちに取り上げられてたし……ここから始めるしかないんだ。今ので一気に三分の一減った。後どの位で、レッドゾーンに突入できるかな? 我ながら、なんて怖い計算してるんだと思う。
 だけどこいつとは、この状態じゃ勝負にさえ成らない。


 僕はなんとか立ち上がり、再び無謀にも突っ込む。それを軽くかわすテトラは後ろから背中にその拳を叩き込む。


「がっ−−づああああ!!」
「スオウ!!」


 地面を無様に転がってく僕。周りはやっぱりそう成るだろうという声が大多数。だけどその中で確かに聞こえる仲間達の声。でも……遠いな。とても遠く感じる。だけどそれはしょうがない。僕が促した事だ。みんなを遠くにやった。
 今更、助けを求め様なんて思わない。血を吐きながら、僕は体を起こす。HP残量は既にイエローゾーン。あと一撃……だけどまともに喰らうとそれで終わるかも知れない。そう思ってると、頭上から聞こえるテトラの声。


「おいおい、これが貴様の覚悟かスオウ? なら拍子抜けもいいとこだ!」


 そう言って地面に足から突き刺さって来るテトラ。それをなんとかかわすけど、直ぐにテトラは追い討ちを掛ける様に迫って来る。僕は風から雷主体に切り替える。刀身の周りに一回り大きく鋭い刃を作り、それで受け止めるんだ。
 だけど受け止めるだけじゃダメだ。こいつの拳の威力は半端ない。とても耐え来れるものじゃ無いから、なんとか器用に受け流して、懐に入り込む、そして一矢報いる一閃を叩き込む!
 いつもよりも鋭さが増したイクシードだ。だけど……やっぱりイクシードじゃテトラはビクともしないってのが証明されただけだった。刀身は奴の体に食い込んでもいないじゃ無いか!


「少しは成長してるな。だが、俺に並び立つはまだまだ早過ぎる」


その言葉と共に、テトラの身体から衝撃波が放たれる。体が吹き飛ばされ、距離を開けられる。でも今のである意味丁度良かった。受け止めるだけでも削られてたHPだ。今ので僕のHPはレッドゾーン。条件は整った。


「まだだ……ここからだテトラ!! イクシード! 3だああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 その宣言と共に、僕の周囲に風が集まって来る。ざわめく周囲。シルクちゃんやセラ、テッケンさん達が必死に何か叫んでるみたいだけど、風が激し過ぎて聴こえない。でも、何を言ってるのかは……なんとなくわかるかも知れない。


(けど、ごめん)


 僕にはこれしかない。そしてそれらの風は僕の背後、背中側で四本のウネリの翼を作り出す。更にセラ・シルフィングの刀身から星が浮き上がり。それが流星の様に二つの剣の周りを回る。イクシード3……命を燃やすこの技で、僕はテトラに再度挑む。
 まだ終われない。まだまだ終われない。だからここからが本番だテトラ! 僕は息を整えて、力強く地面を蹴る。

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