命改変プログラム
幼馴染と親友と
全身頭の先から足の先まで、隅々と検査を終えた僕はいつもの病室に戻されてた。当然リーフィアは取り上げられて……今がとっても大事な時期なのに……せめて今日だけは駄目だって事です。
自分の事を心配してくれてる人たちにそんなに強く当たる事も出来ないし……受け入れるしかなかったんだ。まあ結構駄々はこねたんだけど、そこら辺は流石医者。言いくるめられました。
いつもの殺風景な風景。まだこの病室まで埋まってたりはしてないみたいだけど、移動中に部屋の前に名前が記載されてる病室は確かに多くなってた。
どうやら先生の言ってた事は本当みたいだ。まあ嘘を言う必要性もあの人にはないわけだけど。そういえば検査の結果としては、今の所命に別状はない――って事だから一安心。
今回は前回と違って派手な出血してないし、どうやって死にかけてたんだ自分? って感じだよ。実際イクシード3まで使ってこれは驚き。
最後のローレの攻撃はほんと何だったんだ? あれは間違いなく直撃した感じだったし、今までの魔法の中でも最大級に凄かったぞ。
実際あれを食らってこの程度の外傷ってのがな……信じられない。外側に出なくても、内側から内蔵破裂とかしててもおかしくないと思える攻撃だったんだけど……実は当たってなかったのかな?
そうとしか思えない。所々の筋肉の断裂はきっと、イクシード・アウラに付いていけてない体の反動か何かなんだと思う。
でもそれくらい……攻撃を受けての外傷はほとんど今回は確認されないんだよね。まあラッキーと言えばラッキーなんだけど……なんだか虚しくもあるような。
頭だけはしっかりと働くってのは色々と考え込んじゃうよ。自分の情けなさとか、情けなさとか、情けなさとか……窓の外からは燦々と降り注ぐ太陽の光。蝉の鳴き声もまだまだ元気な昼下がり。
もう聞いてるだけで暑そうだけど、この部屋は至極快適だ。クーラーが頑張ってくれてる。そういう暑さとは無縁の空間。
「取り合えず自分の情けなさは置いとくか」
それを幾ら後悔したって、ここに居る限り挽回は出来ない。もっと生産的な事を考えないとな。次に繋がる……事。次……はあるのかな? 余計な不安が襲い来るよ。
LROはどうなってるのか……とっても気がかりだ。だって僕達は失敗した。やってはいけない失敗だった。選択肢を選んでくゲームで、僕達はバッドエンド直行のフラグを立てた様な物だ。
邪神は復活。世界樹は枯れて、暗黒大陸との垣根は消えたらしいからな……今頃LROは阿鼻叫喚の嵐になってるかも……僕がこっちに帰ってきて既に数時間。
LROの方が時間経過が早いからな……事態は僕が暢気にベットの上にこうして居る間にもきっとドンドン進んでる。気持ちが焦る。焦らない訳がない。太股に掛かってる布団を握りしめる僕。
だけど実際はそうしたい……と願うだけ。力を入れると直ぐに激痛が腕には走る。腕も脚も稼働が激しかった場所は、筋肉が限界超えて終わっちゃってるんだ。
一人では動けもしない状態。これでラッキーだったと言う自分も相当Mっ気に目覚めてきてるかも……まあ自分の中では死んでなきゃ既にあらゆる事がラッキーなんだけどね。
(うわ~なんだか末期だな~。自分に引くわ~)
そう考えてると、どっかに行ってた日鞠がコンビニ袋片手に戻ってきた。
「何、変な笑い漏らしてるの?」
「日鞠……変なとか言うな」
失礼な奴だ。号泣してた可愛らしさが感じれなくなっちゃったな。いつもの日鞠だ。変に似合わない三つ編みとか、黒縁メガネとかそろそろ狙ってるだろって思われるから止めた方が良いと思う。
服装は普通なのに、なんでそこだけ優等生ぶるんだ? 腕も胸周りも今日は結構空いてる。てか、黒のタンクトップみたいなのだから当然と言えば当然か。
下は淡いグリーンの踝まであるロングスカートに、足を縛るようなサンダル? 靴? ヒール? よくわかんないけど、ダサくはない。
「何々スオウ? 今更私に見とれないで……ってやっぱり見とれても良いよ。存分に!」
そういう日鞠はなんだかクネクネしだしたぞ。優等生面した変態だな。なにで感じてるんだよ。
「訳わかんないことやってるなよな。所で何を買って来たんだよ?」
「もう、まだまだ全然視線が足りないぞ。スオウチャージャーは六十パーセント位なんだけど」
「お前の中の変な機械は今直ぐ壊した方が良いと思うぞ」
前々から思ってたけどな。その変な機械のメーターを満たす為に家にカメラやら盗聴機やら仕込むのマジで止めろよな。
知り合いじゃなかったら、確実に警察のお世話になってるレベルだよあれ。だけど日鞠は笑いながらこう言うよ。
「あっはは~、もうスオウったら冗談ばっかり。この機械がなくなったら私死んじゃうよ」
「そんな物なくなったって人は死なないっての」
きっといらない機能だぞそれ。だけど今度は猛烈に反発してくる日鞠。
「死ぬよ! 私は死んじゃうの!! 確かに私と言う肉体はあり続けるかも知れないけど、心が死んじゃうよ! 良いスオウ? スオウを求めない私なんて、それはもう私じゃないんだよ!」
「……お……おう」
迫り過ぎだろ。どんだけ熱弁してるんだ。本当ならここまで言われたら少し位嬉しくなっても良さそうだけど、なんか引くわ~。
まあそれも今更だからなんだけど。こいつは本当にいつもいつも平常運転だな。いや、平常運転がいつも暴走気味ってことだけどね。
「で、結局何を買ってきたんだよ?」
「それはね~ジャジャーーン!! いつもよりお高い高級アイスだーー!」
「ハーゲンダッツじゃねーか」
確かにいつもよりお高いけど……コンビニで買えるアイスを高級とか悲しくないか? いや、まあ普段なら絶対に買わないけどね。
「でも何でハーゲンダッツ?」
「高級な方がエネルギーを取れると思って!」
アイスでエネルギーはどうだろう? ウイダーインとかの方が良いんでね?
「ウイダーインはデザートじゃありません!」
何を気合い込めて言ってるんだよ。つまり自分がちょっとお高いデザート……っていうかアイス食いたかっただけじゃん。
日鞠は早速椅子に座って、買ってきたハーゲンダッツを並べるよ。
「スオウはどれが良い? バニラとクッキー&チョコと抹茶にストロベリーに期間限定サンサンマンゴー!」
「いや、なんでそんなに買って来てるんだよ。二個で良いだろ」
なんで五個もあるんだよ。全部食う気か? それとも食わせる気か? 腹壊すぞ。ここクーラーも効いてるのに……
「大丈夫、スオウは一個で良いよ。後は私が毎日来て食べるから」
はぁ……だと思った。そんな毎日こなくて良いって言ったって当然の如く来るだろうし、もう良いけどね。
「んじゃあ……取りあえず期間限定の――」
「ふえ!? うう……」
おい、なんだその反応? なんで恨めしそうにこっちを見てるのコイツ? まるで「それ行っちゃうんだ? スオウのバカ」って聞こえるぞ。
期間限定って言葉に惹かれたんだけど……それは僕だけじゃなく日鞠もってことかよ。てか、僕の為に買ってきてくれたんじゃないの? まあいいや。
「――じゃなくて、えっと抹っ――」
「うぎぎっ!」
ええ!? なんだその強い眼差し。なんで一気に宿敵を見つめる瞳になってんだよ!? まるで「知ってる癖に、私が抹茶味が一番好きなの知ってる癖に!!」って聞こえる。
まあ知ってるけど。たくしょうがない奴だな。ほんと誰の為に買ってきたんだよ。
「――でもなくて、じゃあストロベリーでいっか――」
「ツーン」
おい、なんでツーンって口で言ってんだ? 唇尖らせてなんでそっぽ向く? なんか「じゃあストロベリーって、それはイチゴに対して失礼だよね。そもそもストロベリーって女の子食べ物だよね」って聞こえる。
そろそろ面倒になってきたな。本当の本当に誰の為に買ってきたんだろうか? これ僕の為じゃないの確実だよな。なんだかため息出てくる。
「はぁ~じゃあそうだな。バニラで良いや。定番だし」
「はい!」
おっ、正解らしい。てか、なんかバニラに失礼だなコイツ。大定番だぞ。アイスの王様侮辱するなよ。
「だって私バニラのあの独特の味が苦手なんだもん。良かったよね。ケーキにバニラ味がなくて」
バニラ全否定された。そういえば確かにケーキにバニラ味はないな。でもそれってどういうこと? 女の子の大好物のケーキまでバニラに浸食されないで欲しいって事か?
バニラ可哀想に……
「そういえば確かに昔からバニラ味は食ってなかった気はするな」
今頃気づいたけど。まあアイスの味なんて早々気にして見てないからね。
「そうなんだよ。逆にスオウはなんでも普通が大好きだからバニラを選んであげたんだよ」
「おい、なんで僕が普通好きの設定なんだよ」
別に指して普通が好きな訳じゃない。普通に憧れてるだけだっての。
「昔から人の中に溶けこもうとしてるのに、全然出来ない所とか。反抗的だけど、実は校則を一番しっかり守ろうとするところとかかな?」
「うっ……」
恥ずかしい事をサラッと言うなバカ。
「なんだか世の中の普通に手を出すのが好きみたいだから。そしてそこで失敗してるスオウが可愛いよ」
何他人事みたいにコイツ言ってるんだ? 僕が普通になりきれないのは実を言うとコイツのせいだからな。折角制服を完璧に着こなしてても、男子女子共に「点数稼ぎか!!」っとか言われるんだぜ。
逆に悪っぽくしていくと今度は「構ってちゃんか!!」って言われるんだ。僕はそれで一時期中学時代に不登校なったからね。
それもこれも全部日鞠のせいだってそろそろ気付よ。こいつと居る限り普通の日常なんて手に入らないんだろうな~とか思ってた訳だけど……今こうやって戦ってると、案外これまでの自分の生活は普通だったんじゃないかと思える不思議。
別に普通を求めたんじゃないしな。憧れてだけで……でも普通の定義なんて人それぞれでもあるわけだもんな。今までの生活は実は僕には普通だったのだ。
世間一般の普通に当てはめようとするから、失敗してただけで……ね。なんだか別に怒る気失せた。
「もうどうでも良いからアイス寄越せよ」
「スオウは何かを悟った顔をしてる。私はそんなスオウの顔に見取れちゃいます」
「なんでナレーション口調なんだよ」
「ふふ、スオウは最近こっちでは大人しくなっちゃったなって思って」
そうか? 色々と危ない事やってるんだけど。
「まあ、変に普通も求めてないからな。僕は今の生活が自分にとっての普通だと気づいたんだよ。お前が居て秋徒が居て、学校に行って……嫌われ者で……」
なんだか気持ちが沈むな~。本当はもっと友達欲しいんだけどね。すると頬にヒヤッとする感触が。僕は思わず体をよじって激痛が……
「お前な……」
「あはは、スオウってば面白い。でもね勘違いしてるよ。学校のみんなはそんなにスオウの事嫌ってないよ。寧ろ私の学校ではみんな友達だから、そんな事あり得ません」
相変わらず平和な頭してるのな。そう思うのは誰もがお前を慕ってるからだよ。そしてそれを向けられるのがお前だからだ。
日鞠が慕われれば慕われる程に、僕は孤立していくんだよ。小学校も中学校もそうだったろ。
「う~んでも本当にスオウを心から嫌ってた人はいないと思うな。高校でも確かにスオウはちょっと孤立気味だけど、クラスで虐められてる訳じゃないでしょ?」
「まあな」
虐めとか日鞠に嫌われるから、誰もやらないだけだ。空気って訳でもないけど、いつも厳しい視線は感じてる。
「はい、判決がでました~」
「なんのだよ?」
てか、いきなり何が始まった? そう思ってると、日鞠は二回パンパンと手を叩く。そしてこう言うよ。
「スオウは自分のコミュニケーション不足を私と言う存在に押しつけてる! スオウはみんなに避けられてると思ってるし、みんなは色眼鏡でスオウを見てるのが原因だよ。なので二学期はそんなスオウに友達を百人作ろうプロジェクトを開催したいと思います。わーーパチパチパチ」
「はあ?」
何を一人で盛り上がってるんだよ。そもそもコミュニケーション不足って……そんなの……
「はい、そのイヤそうな顔が他人を遠ざけます。スオウは基本私と居なきゃ話しかけ難いもんね」
いや、お前が居るから話しかけ難いんだよ。
「別にスオウを無視してる人なんか居ないんだから、もっと色々と話して行けばいいんだよ。友達未満クラスメイト止まりを解消するにはそれしかない。
いつの間にか、相互不干渉が成立しちゃうのが駄目なの」
それはまあ……わかるけど。大変じゃないか? 少なくとも好意的じゃない相手に歩み寄るのって。
「私はやってるよ。最初は悪い印象を押しつけて来る人も居るけど、大丈夫。私が友達になれなかった人なんかいないもん!」
それはチート能力全快の日鞠だからだろ。
「あっ、今スオウは私だからとか思ったでしょ? ちっちっち、私はそんな特別なんかじゃありません。そもそも人間関係において特別な能力なんかないよ。
ただその人に歩みよれば良いんだよ。自分を曝け出して歩み寄る。これで世界中はお友達!」
ほんと、コイツは幸せな頭をしてるよ。でも実際実践してるかなぁ……バカには出来ない。テーブルに置いてあるハーゲンダッツの容器に滴が貯まり流れる。きっと退かしたら円上に水滴が残るんだろうな……そんな風に思ってみてると日鞠が声をあげる。
「うわ!? 大変溶けちゃうよ。食べごろかも知れないけど、一気に全部は食べないから、冷凍庫に入れとかなくちゃ」
そう言って日鞠は自分用の期間限定のマンゴーと僕用のバニラだけ残して後を冷凍庫にぶち込む。そしてまずはバニラからあけて、スプーンで掬い、僕の方へ。
「はい、あ~ん」
「あ~ん…としろと?」
「だって自力で食べれないでしょ?」
それはそうだけど……これはかなり抵抗が……
「大丈夫だよ。誰もいない。私たちだけだよ」
うう……なんだかズルい声出してる日鞠。安心できるような、優しく染みる声だ。さっきまでのテンションとちょっと違う。コイツはこうやっていろんな側面を持ってる。
これも武器……だよな。
(はずい……)
だけど日鞠はずっと待ってる。引く気がない。てか見えない。わざわざ上目遣いでちょっと頭を傾けてずる賢いポーズ取ってる。
白いスプーンの上のバニラアイスが溶けてるのか、スプーンの底に同じ色の水滴が貯まりつつある。
「ほら、スオウ落ちちゃうよ」
「あ~もう!」
僕はやけくそ気味にカプッとスプーンをくわえる。ヒンヤリとするアイスが舌に触れる。うん、バニラバニラしてるな。さすがハーゲンダッツ。
「ん?」
ふと日鞠を見ると、頬に手を当てて目を輝かせてる。やばい……これは何かに目覚めた顔だ。そう思ってると、日鞠は僕の口からスプーンを抜いた。そして今度はイスから立ち上がり、僕のベットに侵入してくる。傍らにちょこんと座るんだ。
そして更にもう一口塊をとって「はい、あ~ん」とかしてくる。ヤバいな、こいつのメガネに僕の困惑した顔が映ってるよ。
「あ~ん」
再びそう言う日鞠は、僕の頬にそのままアイスを押しつけそうな勢い。僕はしょうがないから言われるがままに口を開けるよ。そしてそこにアイスを入れる日鞠。
なんかアレだな……これって端から見るとバカップルだよね。
「おお……バカップルが居る」
「ぶっぼぉおおお!?」
思わず吹き出したじゃねーか!! 扉を開いてこっちを見てるのは秋徒だった。
「ゲホッゴホッ――ケホッ……」
噎せた。盛大に噎せた。ヤバい超苦しい。てか腹痛い。何故か背中も痛い。いや、もう咳の反動か体中痛い。
「スオウ大丈夫? もう、空気読みなさいよね!」
「ご……ごめん」
空気読めとかそう言う事じゃないと思うんだけど……相変わらず日鞠には頭が上がらない奴だな。
「ぜーはーゼーハー」
なんとか呼吸を整える。日鞠からお茶を貰ってそれをかっこんで落ち着きを計る。
「大丈夫か? ごめんな、なんか邪魔して」
おい、嫌みかそれ。でもなんだか文句言えない。今のを見られたのが恥ずかしくちょっと……
「もう全くだよホント。そんなデリカシーに欠けたらその内愛さんに捨てられるわよ。そもそも釣り合ってないんだし」
「そ……そんな事言うなよ!!」
日鞠の言葉に思わず大声出す秋徒。まあ今のは怒って良いことだよな。秋徒は頑張ってると思うよ。色々とやってるみたいだし。
まずは長期休暇の宿題を終わらせたことに驚きだ。アルテミナスの事態が一応の決着付いて、僕が入院してる間にだったかな?
いつもは直前まで手つかずなのに……この裏切り者め。おかげで今年は日鞠と二人っきりになりそうだ。日鞠は嬉しがるだろうけど、こいつへの借りを僕一人で負うって事が心配。
まあそれがイヤなら、やれば良いじゃんって話になるけど、ほら……休みに勉強なんか手につかない。それに今年は大変だしな。
既に何回病院にお世話になってることか……
「そういえば愛さんは一緒じゃないのか? 珍しい」
「珍しいって、俺達はお前たち程一緒にいてねーよ。それに今は大変でな……」
「大変?」
なんかイヤな予感がする。
「いや……ほらえっと色々とな」
秋徒の野郎、あからさまに目が泳いでる。言い辛い事なのか。すると日鞠がこう言った。
「秋徒……そこに座りなさい。何がどうなってるか説明して貰おうじゃない」
日鞠も何かを感じたのか、急に真面目モードに入った。こうなった日鞠は事情を問いただすまで返しちゃくれない。それを僕も秋徒もよく知ってる。
秋徒はその無駄にデカい図体を丸めて丸イスに座る。
「えっと、LROの事情だからやってない日鞠は聞いても……」
「関係ない? 確かにこれまでは私は極力関わらない様にしてきた。スオウがそうして欲しそうだったしね。でもやっぱり限界。
本当はいつもいつも怖いんだよ。もう戻ってこないんじゃないないかって……信じてても、心のどこかでそんな声が聞こえる」
「日鞠……」
考えて見れば無茶な事を日鞠には押しつけてたよな。一番付き合い長いのにさ……死ぬかもしれないことさせてくれって。どれだけ心配を欠けてるか……分かってるつもりで居たけど、こいつは想像以上に苦しんでたのかもしれない。
「それに今回は私にも出番がありそうだし、LROだからって関係ない。向こうに私はいけなくても、出きる事はあるわ。
だから今の状況とこれまで分かってる全ての情報を出しなさい!」
やる気満々な日鞠。秋徒は「どうするよ?」って顔を僕に向ける。僕はそんな秋徒に肩を竦めて「やれやれ」って返すよ。
てか、二人ともやれる事は一つだよなって分かってる。僕たちは三人で話し合う。LROの事に日鞠が加わるのは実際初めてで、なんか新鮮だった。
秋徒が今の状況を説明して、僕はこれまでの事を事細かに伝える。それぞれ驚く様な事ばかりだけど、なんかこの三人だとワイワイガヤガヤとなる不思議。
そこまで深刻になりもせず、だけど素早く日鞠は僕たちの話から色々な事を読みとるよ。
「なんだか不思議な感じだな……」
「何が?」
僕の言葉に日鞠がそう返す。僕は周りを見てこう言った。
「全然違うんだけど……こうやってるといつも通りだなって思う。いつもの休みの最後の日が来たんだなって……何となくな」
僕の家じゃないし、体もボロボロなのにこの三人でこうやってると、不思議と日常を感じる。それがとてもなんだか嬉しいなっ――ってね。最後の思いは恥ずかしいから言わないけどね。でも二人には伝わってかも知れない。二人だから伝わったのかも知れない。
太陽の日差しがまだまだ高く昇る。僕達は三人で沢山の考えを言い合う。考え得る事が、沢山ある。僕達はまだ諦め切れてないからな。
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