命改変プログラム

ファーストなサイコロ

炎に焼かれる



 セラが放った矢が世界樹の幹へと空しく突き刺さった。見据える空中にはもう何も居ない。煌々と燃え盛る本殿の明かり……僕達はようやく優勢に立てた筈だった。
 だけど、これだよ。全てをひっくり返された感じ……


「何やってるのよ!? まだ敵はそこら中に居るわよ!!」


 そんなセラの言葉に引き戻される。そうだ、まだ終わってない。追いかけるんだ……今直ぐに!
 襲いくる敵を切り伏せて、僕は転移魔法陣の方を見る。今直ぐにあれに乗って追いかければ、まだ間に合う筈だ。


「早く――」
「速く、本殿の中の人達を助けてあげないと!」


 僕の早くと、シルクちゃんの速くは違った。僕は前を……自分の事だけを見てたかも知れない。そうなんだ……あの燃え盛る本殿の中には、リア・レーゼの人達が居る。それにクリエだって……
 実際、今一緒に戦ってる僧兵の中には、向こうに駆け寄る人達も居る。てか、だからこそこっちが手薄にもなる……


「混乱してる……それにリア・レーゼの兵の動揺が酷い。どうにかしないと……このままじゃ悪循環だ」


 テッケンさんがそう言うよ。確かにこのままじゃどんどんこの場から離れていく僧兵が増えて、そのせいで僕達はこの場に固定されてしまう。僕だって向こうに行きたい。クリエの事が気になる。
 炎が激しすぎて僧兵達は本殿の前で立ち往生してるし……僕達なら無理矢理にだって……このままじゃ何も状況が好転しない。
 必死になって小さな事を積み重ねてようやく引き寄せた筈のチャンスだったのに。


「くっそ……次から次へと沸いて出やがって!」


 サン・ジェルク側の僧兵の人達はよくやってくれてる。だけど邪神復活が目前に迫った事でモンスター共は再び勢いを取り戻してる。
 離れてしまったリア・レーゼ側の僧兵の穴から、回復の要のシルクちゃんに迫るモンスターが数体。だけど冷静にピクの炎で攻撃。でもそれを耐えた奴がシルクちゃんに急接近。
 誰か……誰かいないのか?


「シルク様!!」


 セラの叫び。その時、頭上をから素早く滑空してくるバトルシップ。そこからピンポイント射撃が火を噴いた。そして外周に外付けするのも面倒になったのか、泡みたいなのに入ってサン・ジェルク側の僧兵が大量投入される。


「これは……」


 誰の魔法だ? 見たことないぞ。すると一緒に両腕に円上の何かが展開してるモブリが降りてくる。


「君たちは本殿の方へ! ここは我らサン・ジェルクが引き受けよう」
「ノエイン!」


 それは現シスカ教教皇猊下様だった。アイツの魔法も特殊っぽい。見たことないけど。両腕につけてた腕輪がマジックアイテムか何かなのかな?
 まあ今はそんな事よりも――――僕は目の前の敵に止めをさして周りのみんなと視線を交わす。みんな丁度敵をなぎ倒してる所だった。


「私もここに残ります。本殿の方は任せますよ」


 ノエインの近くに行ってそう言うのはアンダーソン。あの二人に任せてれば大丈夫だろう。


「行こう!!」
「「おう!!「はい!」


 セラの奴は無言で頷いただけだったけど、一斉に僕達は動き出す。モンスターに誘い出された枝の橋から飛び出して本殿外周へ。そしてそこから全速力で本殿までを駆け抜ける。


「急げお前達!!」


 そんな言葉を放ちつつ僕達を待ってたのはリルフィン。聖獣にぶっ飛ばされた筈だけど、無事だったみたいだな。
 リルフィンと合流して、僕達は本殿へと迫る。熱気が肌を焼いてくる感覚……気合いでいけよ――とか思ってたけど、ゴメン。これは無理だわ。思わず僕達も足を止める。
 全く炎の勢いが収まってない。これじゃあ中の人達は……そんな想像が脳裏をよぎる。いや……ダメだ。僕は嫌な想像を振り払う。


「シルクちゃん!」


 僕はちょっと遅れて追いついてきてたシルクちゃんを見る。彼女なら……彼女ならどうにかできる魔法を持ってるかも知れない。
 するとシルクちゃんはピクから落ちる羽を一枚取る。そしてこう言った。


「任せてください!」


 掴んだ羽が輝く。あそこにストックされてる魔法が解放されるんだ。羽の周りに帯状の模様が展開される。


「行きます、補助魔法【イージス1】です!!」


 すると展開される魔法陣に僕達の頭上から降り注ぐキラキラとした光。そしてそれが体を覆うような包むような感じに。


「これで熱を防げるはずです。身体強化も出来てますから炎の中で無茶やっても多少は大丈夫な筈です」


 流石シルクちゃんだ。頼りに成る。


「イージスなんて豪華な魔法を使ってきたね」
「でも1ですから。それに何が起こるかわからないなら、強力な方が良いです」


 テッケンさんの言葉にそう返すシルクちゃん。イージスはどうやら上級な補助魔法らしいです。太っ腹だね。でもいつも掛けてくれてるのと何が違うのだろうか? よくわかんない。
 いつものは3位まで行ってたけど、純粋に物理と魔法の対策の為のって事なのかも。それに属性をつけてるのがイージス? まあ僕はシルクちゃんを信頼してるから、安心だけどね。
 そうやってる間に、木造の本殿はどんどん燃えて行ってる。既にいつ崩れてもおかしくない。


「急ぐぞ! グズグズするな!」


 厳しい言葉を掛けるのはリルフィンの野郎だ。まあ焦る気持ちは分かるよ。こいつにとって何よりも誰よりも大切なのはローレだ。
 そのローレもどうなったかわかんないんだもんな。僕達は本殿を見据える。


「気をつけてください」


 そんなシルクちゃんの案ずる声を受けて、僕達は本殿へと突っ込んだ。




 本殿の中は真っ赤で、そして煙で視界も悪かった。そう言えば外では熱ばかり気にしてたけど、火事で一番危険なのは何気にこの煙なんだ。
 でもそこら辺は流石シルクちゃん。ちゃんとこのイージスは煙も防いでくれてる。全く苦しくないし、熱くもない。これならスピードそのままに駆け抜けられる。
 だけど中は想像以上に酷い。奥に行って見つけたのは、大量のモブリの丸焼き……ってな事もあり得そうな程だ。そんな想像したくないけど、この炎の勢いを目の当たりにすると考えてしまう。


「どこに避難してるんだ?」
「奥よ。奥の大広間や、奥の部屋をぶっちぎってつかってた」


 なるほどね。とりあえず大広間を目指せばいいのか。大丈夫、道はわかる。だけど一応、僕達は声を出しながら進む。
 もしかしたらここら辺にだってモブリがいるかも知れないからね。だけど結局は誰も見つけられないまま奥まで進む。
「クリエは大丈夫だよな……」
「クリエ? ああ、クリエなら――」
 僕の言葉に何か言おうとしたセラ。だけど進んでると、廊下の先に青い膜の様なものが見えた。


(あれは?)


 近くにくると、その膜は部屋とか廊下とか関係なくぶっちぎって、円上にその内部を守ってるみたいだった。ようは結界っぽい。この膜より内部は全く燃えてない。スゴいぞこれ。
 これだけの炎を完全に防ぎきってる。


「これがあるって事は生き残りがいるって事だな」
「そうね。これだけの魔法、あの生け好かない奴じゃない?」
「いけ好かない?」


 おいおい、セラの失礼な言葉にリルフィンが眉間に皺寄せて反応してるぞ。てか名前まで呼びたくないのかよ。それに誉めたいのか貶したいか……面倒臭い。まあこれを張ってるのがローレかもって所は同意だな。
 他のモブリも協力しあえば出来そうだけど、あの一瞬でこれだけの結界を張るとなると、合唱魔法じゃ間に合わないと思うんだ。どうやったのかはわかんないけど、ローレなら……この位は出来ると勝手に思える。
 僕とテッケンさんは睨みあってる二人を宥めながら、この魔法に目を向ける。


「だけど、これじゃ進めない。これを壊す訳にも行かないしね」


 確かにテッケンさんの言うとおりだね。これは壊すわけには行かない。


「いや。これは確か――」
「きゃああ!」


 リルフィンが何か言おうとしてるとセラが実に女の子らしい声を上げる。どうしたんだ?


「ちょ……何か捕まれてるんだけど!?」


 言われてセラの腕を見ると、確かになんか捕まれてる。おいおい、どうなってんだこれ?


「いや、だからそれは――」


 リルフィンの言葉が終わる前に、今度はウニュってな感じで変な帽子を被って布で顔を隠した感じの何かが現れる。
 まさか……敵? 僕達は身構えるよ。すると結界から出てきたそいつの声が頭に響く。


【主の記憶にある姿。適合……照合……承認……完了。合い言葉を言いなさい。『ローレって――』】
「いけ好かない屑でしょ?」
【合い言葉――承認出来ません】
「「「おい!!!」」」


 僕達は思わずセラに言い寄る。何やってくれてるんだよ! てかあれだけ驚いてて、そこだけやけに冷静に言ったよな。ビックリだよ。


「何よ……ローレって言えばそうでしょ」


 確かにそうだけど……あの自信過剰なナルシストがそんな言葉を合い言葉にするわけない。てか、こいつも召還獣だよな。するとリルフィンがイライラしながら声を出す。


「お前等いい加減にしろ! コイツは俺と同じ召還獣の一体だ。それとそこのクソメイド、これ以上主を侮辱すると、またボコるぞ」
「ふん、誰がボコられるのよ。返り討ちにしてやるわ。召還獣だからって、私を見下してるんじゃないわよ。私は神にだってただで見下されたりしないわ。
 それを許すのは自分が認めた相手だけ」


 売り言葉に買い言葉な奴らだな。全くどんだけ犬猿なんだよ。てか、思ったけど……セラとローレってどことなく似てるよな。傍若無人で態度でかい所とかさ。
 まあローレの場合はデカい所じゃないけどね。アイツは自分が頂点にいないとイヤなタイプ。誰かに頭を下げるなんて絶対にイヤ。
 だけどセラは案外人を立ててやれたりもするんだよね。そこら辺はまあセラの方が大人って感じだな。ローレって実は悪役だと僕は思ってるよ。
 まあでもそれはそれ……今はそんな場合じゃないからね。時を場合を考えろよお前等。


「二人ともいい加減にしろ。これが召還獣って事はローレは無事って事だろ。でもこのままじゃ本殿ごと崩れるのも時間の問題だ。
 言い争ってる場合じゃない。リルフィン、その召還獣にお前から言ってやれないのか?」


 同じ召還獣だろ。間違いは取り消して、この結界を通らせて貰おう。だけどリルフィンは言いづらそうにしてるぞ。


「こいつは……よく分からん奴だ」
「なんだそれ?」
「いいから、どうにかしなさいよ。お偉いんでしょう召還獣って。言葉が通じない訳ないでしょ」
 セラの奴、揚げ足でも取ったみたいに……もうめんどいからスルーで。それにリルフィンも、セラに言われちゃやらない訳ないだろ。


「おい、メノウ聞け。俺達はローレ様達を救いにきたんだ。道をあけてくれないか?」
【フィンリル 役立たず 信用不可】
「んだとお前えええええ!!」


 メノウと呼ばれた召還獣の言葉でキレるリルフィン。隣でセラの奴が「ざまあないわね」とか呟いて満足そうにしてる。
 実際満足気に出来る状況じゃないけどな。困るのは僕達全員だ。メノウに詰め寄るリルフィンは、顔を近づけてこう言うよ。


「もう一回言ってみろ。誰が役立たずだ。誰が!」
【対象:フィンリル 回答 必然。 活躍:乗り物 それだけ】


 めっちゃズバッと言ったな。でもゴメン「そうかも……」と思った自分がいました。だってリルフィン、戦闘じゃ殆ど活躍してない。
 それは思い返せば事実だった。まあでも、これも戦闘じゃないし、信用してくれてもいいんじゃないか? とは思う。しょうがないからさ、そこで攻めるべきだ。
 激高してるリルフィンを押さえつけて、僕はメノウに言葉を掛ける。


「頼む召還獣。このままじゃ本殿ごと崩れさるぞ。そうなってもローレは無事だろうけど、中の市民は無事じゃないだろ? 
 これは市民を守る為にローレが張ってるんじゃないのか? 市民を守りたいって意志はアイツと同じ筈だ」


 僕がそういうと、その上半身がグルリとこちらに回る。ビクッとしちゃうよ。いちいち動作が怖いんだよなコイツ。顔を隠す布の奥で何かが光ってる? そう思ってると、ポツリポツリとメノウは呟く。


【解析:スオウ データ不足  詳細希望】


 希望されても……どうしたら良いのかわかんない。そう思ってると、その腕が無造作に頭を掴んできた。マジでコイツの動作いちいち不気味だからビックリしたよ。
 すると眼球に今までの沢山の映像がフィルムみたいに流れる。なんだこれ? 


「な……に……してんだ!?」


 僕は思わずその手を強引に剥がす。だって……なんだか怖かったと言うか……記憶を吸い出されてるみたいな……


【接続切断 心理 欺瞞 結果:主との感情のリンクを検索 証明:安心】


 安心? てか、よく分からん。やっぱりコイツ僕の記憶を覗いてたのか。


「メノウは精神と時を操る召還獣だ。他人の記憶を覗く事など造作もない」


 リルフィンがそう説明してくれた。精神と時って……こいつかなりヤバいな。雰囲気からしてヤバいけど、まさかそこまでとは……こんな不気味な召還獣にそんな力持たせるなよ。
 なんか危ないと思う。だってコイツから受ける印象は、神秘的じゃ全然ない。何度も言うけど『不気味』だよ。どっちかって言うとモンスターに近くないか?
 もしもコイツが聖獣って言われても、納得できそうだ。


「精神と時……それは随分強力そうだね。じゃあもしかしてこの結界って時を止めてるとかなのかな?」
【答え:正解 時の隔絶状態での強制保護 主の意志 否定 事前規定 心身の危機 自身の判断での行動】


 テッケンさんの言葉にメノウが反応したのに驚いた。お前が答えるのかよ――って。しかも相変わらず理解しがたいし。


「つまりは緊急事態だったから、コイツ自身の判断でこの結界を展開したって事だろう」


 そう纏めてくれたのは鍛冶屋だ。我関せずみたいにしてたくせに、案外一番理解してるじゃねーか。でもまあ、助かった。とりあえずこれはメノウの行動でローレの意志は働いてないのか。


「って事はローレの奴も中で固まってるのか?」


 僕はそんな素朴な疑問を投げかける。


【答え:正解】


 なるほどね。いや、待てよ……それってかなり厄介じゃないか? だってみんな時間が止まってるんだよな? それじゃあ全員を一斉に逃がすって事が出来ないぞ。
 それにこれって中に入って大丈夫なのか? 一回解いて貰わないといけないんじゃ……でもそうしたらきっとモブリ達はパニックになると思う。だって周りはもう火の海だ。
 混乱しない訳ない。


「おい、メノウ。僕たちは普通にこの結界内に入れるのか?」
【答え:不可 時間停止 影響回避不能】


 やっぱりかよ。これじゃあ最も大変な方法を採るしかない。一度この結界を解いて……でもこれだけの人数じゃパニックを押さえきれるかどうか……グズグズしてたら煙にやられる人が出るだろう。


「中に入る事は出来ないって事ですか。どうしようか?」


 テッケンさんもきっと同じ事を考えてる。多分あの爆発が起こった瞬間に、メノウはローレを守る為にこの結界を展開したんだろう。
 この結界で止まってる人たちは、きっと何も理解してない。それ所か、不安の中で起きた爆発の瞬間って、絶対その後の行動はパニックだろ。見えちゃうよ。その光景が見える。


「おい、お前仮にも召還獣だろ。もう一度変身して、結界を解いたと同時に、一気に救い出す事は出来ないのか?」
「無茶言うな。それに今は元の姿には戻れない。主の魔力供給が切れてるからな。エアリーロ達もそれで消えたんだ」


 そういうことか。コイツが消えずに人型に戻っただけなのは、普段からこっちに居るから何だろう。それにしても……


「本当に、全く役に立たない召還獣ね。あんたの強さは見た目だけじゃない」


 おいおい、セラの奴は厳しいな。全く同じ事を思ったけど、僕には口に出せない事を遠慮なく言う奴だ。だけど何故か今度は喰いかからないリルフィン。実はちょっと自分でも分かってるのかも知れないな。
 良いところなかったもんな……最初だけだった。


「我々はまだ全ての力をだな……」
「言い訳ね。他の召還獣はそれでもちゃんと活躍してるわ」
「ぐぬぅ……派手に動くことだけが活躍する事じゃない。俺は普段から主を下から支えてるんだ。さっきの戦闘だって、実は色々とやってたんだぞ」


 なんか愚痴っぽくなってきたな。まあ確かに派手に動いてなかっただけ……とも言えるかな? わかんないけど。でも助けられたのも事実だからな。


「お前等、そんな事よりもどうやって助けるかだろ? おい召還獣、何か策はないのか?」


 一番こういう時に出たがらない鍛冶屋が、僕たちの余りの迷走っぷりに痺れを切らしたようだ。でもそこでメノウに聞くなんて……ちょっと冒険過ぎるぞ。


【提案:本殿破壊 結界外周部の完全破壊で沈下】


 おい、またとんでもない事を言い出したぞコイツ。本殿を破壊って……


「いや、でもパニックを起こした市民を引き連れてこの炎を抜けるのは至難だよ。それならいっそ……」
「マジですかテッケンさん?」


 でも確かに、そこで僕たちは立ち往生してるんだよね。確かにメノウの提案したやり方なら、わざわざパニックを起こした民衆を誘導する必要はなくなる。だって燃えてる部分を全部破壊するんだもんな。
 でもそれって後々問題になりそうな……


「他に方法が無いのならしょうがない。本殿なら直せば済むことだ」
「本当だな? 後で文句言うなよ」


 リルフィンがそういうのなら、メノウの提案に一票僕も入れようじゃないか。


「壊すって言っても、これだけの建造物となるとね……私は先に外に伝えるわ。派手な破壊って性分じゃ無いのよね」


 そんな事を言ってセラは外へ急ぐ。まあこれは同意してるって事だな。内側からの破壊だし、本殿近くに集まってた僧兵達が危ないか。


「完全破壊か、それは俺の為にある言葉だな。粉砕しつくして、燃える材料が無いくらいにしてやる」


 鍛冶屋は随分ノリノリです。まあコイツの武器は確かにこういう破壊に向いてると思う。でも燃える材料がなくなる位に粉砕って無理だろ。
 でもどうやら、メノウの提案に全員が賛成の様だ。他に良い策もないし、速く聖獣を追いかけたい僕にとっては良いかもしれない。
 チマチマと炎の中で救助活動なんかやってられない。いっぺんに終わらせるにはこれが一番だと思う。


【意思統一を確認 作戦実行】


 そんなメノウの言葉と共に、僕たちは一斉に動き出す。それぞれ派手な技を使って結界の外側の壁や柱……いや全てを吹き飛ばす勢いで武器を振るう。




「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」




 響く声。爆ぜるスキルの光。炎が広がってるから、既に内部はボロボロ。だから攻撃の通りが良い。暴れて暴れて、暴れまくる!!
 すると派手にやってたから一気に本殿事態が崩れ出す。柱とかも真っ先にブッ壊してたからな……このままじゃ僕たち全員瓦礫と炎に埋められる。
 だけど僕たちは止まらないよ。落ちてくる瓦礫に向かって攻撃をたたき込む。そして一気にそれらの瓦礫を外側に弾くんだ。


「「「はぁはぁはぁ」」」


 気付くと僕たちは汗だく。外周部分には僕たちが弾いた瓦礫の山。それの沈下の為か、シルクちゃんとセラの指示で、僧兵が魔法で水魔法を発動してた。僕たちの後ろには、大きな濃い青色した丸い結界が残ってる。
 どうにか出来たな……


【安全確認:結界解除】


 そんなメノウの言葉と共に、結界が崩れて行って、中の人たちの時間が動き出す。するとその瞬間に響きわたる悲鳴の数々だけどそんなモブリ達に僧兵の人達が一斉に群がってくよ。
 僧兵の人達は知り合いや家族の無事に安堵してる。だけど中に居た人達はチンプンカンプンの状況。だけど取りあえず、少しずつ冷静さを取り戻してくよ。そんな姿を見て、僕達は「良かった」と心からそう思う。
 助けられた……その思いはとても大きく心を満たす。

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