命改変プログラム
風帝武装
盾を失い、勢いだけで迫ってくるエルフ聖獣。奴は盾の事をそこまで気にしてなんか無い。だって僕達は既にかなりのダメージを負ってる。
その強力な武器で止めを刺せる……そう思ってるんだ。そしてそれはきっと間違いじゃないだろう。僕達は確かに既にボロボロだ。この夜の闇にいつ消えていってもおかしくはない。
だけど……まだここに居るのも事実だ。小さな小さな反撃を積み重ねてきた。そして奴が思うよりも、僕達はその盾を壊せた事を大きいと捉えてる。
確かにあれだけじゃないけど、でもあれが対峙する時にどれだけ驚異だったか……それを僕達は感じてた。
エアリーロは後ろから迫る聖獣から逃げる為に、一気に下を目指す。追いつかれると、奴の武器が僕達を襲う事になる。まあ奴の攻撃範囲はこの夜の闇が届く範囲……それならどこに逃げようと同じなんだけど、唯一それを逃れられる場所が、皮肉にも奴らが燃やしたリア・レーゼだ。
だから取り合えずそこを目指してる。だけど――
「貴様等の狙いなどお見通しだ!!」
そんな言葉とともに、その武器を適当に振ったかと思う聖獣。だけど直ぐに気付いた。闇の中から何かが迫るこの感覚。それをエアリーロが目指す下から感じる。
「ダメだ! 横だエアリーロ!!」
僕の言葉にとっさに反応したエアリーロは回転を加えて無理矢理真横に進路を変えた。だけどそれでもやっぱり完全にはかわしきれなかった。
所々を肉を抉る感触が伝わる。ヤバい……HPが後数十を切ってる。次に掠ったりしたらそれだけで僕は昇天してしまうだろう。
「くっそ……頭がクラクラしやがる……」
【やっぱり完全にはかわしきれないですね。このままでは貴方の作戦を実行する前に、貴方はやられます】
言いづらい事をスッパリ言う奴だな。でも確かにその通り……このままじゃ持たない。どうすれば……奴は再びこちらにその刃を振ろうとしてる。
【やらせません!!】
そう言ってエアリーロは風の凝縮した玉を放つ。それは前に奴の影を吹き飛ばした奴だ。だけどそれらを難なく切り裂いて、こちらに迫ってくるエルフ聖獣。
やっぱりこの夜が広がる下じゃ、奴まで攻撃が届かない。盾は無くした筈なのに、あの攻撃は反則だ。少しの間時間が欲しい……なのに、その猶予も無いなんて……肌を激しく撫でる風。再び聖獣とエアリーロは追いかけっこをしてる。
だけどエアリーロは僕をおもんばかってか、トリッキーな動きとか少なくなってきてる気がする。こいつはもっと自由自在に空を飛べる筈なんだ。
僕はもう一度強くエアリーロの背中の毛を握りしめる。
【スオウ?】
気付いてくれた……僕は絞りカスみたな状態のセラ・シルフィングのイクシードをみる。今ここで、僕が持ってる物はこれしかないと思うんだ。
「エアリーロ……僕がとびっきりの風を貸してやる。だから奴を……ぶっちぎれ」
【何を?】
不思議がるエアリーロ。だけど僕はこの言葉を唱える。
「イクシード……2だ!」
2からは条件としてHPが赤まで届いてないといけない。今ならその条件を満たしてる。最上位は3だけどさ、流石に今の状態で3は後が怖い。
怖じ気付いたとかじゃなく、聖獣はコイツだけじゃないって事だ。聖獣は全員倒す……その為にはコイツだけで倒れる訳にはいかない。
発動したイクシード2。それは通常のイクシードよりも風に傾きを置いた力だ。萎みかけてた風が勢いを増して刀身から吹き出す。
それは今の僕では押さえる事すら出来ない力だ。しかも鞘に納めてた方までガタガタと震えて、その風と共に飛び出す。
セラ・シルフィングが僕の手を放れていく。だけど僕は手を伸ばさない。だって分かってた事だ。僕はただ、その背に額を押し当ててこう叫ぶ。
「頼むエアリーロ! これが今の僕に出来る精一杯だ!」
【十分ですよ。御して見せましょう。風を司る召還獣の誇りに賭けて!!】
そう言ってエアリーロも強い風を吹き出した。キラキラと煌めく風と、制御を失った強力な二つの風。それらが互いに接触すると、お互いを飲み込もうとし始める。そしてそんなイクシードのうねりは、エアリーロの風を伝って、その翼にまで達するよ。
大量の羽が夜空に舞う。
「はははっは! 一体何をやってる? 自爆とは面白い!! そんな事をしなくても、直ぐに殺してやるさ!!」
聖獣の野郎の高笑いの声……確かにそう見えるかも知れない……けど違うんだ!
(イクシード……頼む、力を貸してくれ! 支えてくれ……僕達を、エアリーロを!)
僕はそんな事を必死に願う。だってイクシードは僕の風だ。確かにたまには手が付けられなくなる時があるけど……それでも僕の風だ。
手を放れても、何か出来るはずだ! 受け入れさせたい。イクシードに……エアリーロを!! だけど夜空に響く、エアリーロの甲高い叫び。
【とてつもなく荒々しい風……ですが、やってみせます。全ての風は、私の支配化に落ちなさい!!】
激しく輝くエアリーロ。そして下を目指してた筈なのに
、一気に上へ上へと上がってく。その動きにあわせて、うねりがどこまでも伸びる。
「ぐっ……くっ……エアリー」
激しすぎる……このままじゃ振り落とされる。そう思ってると更に回転まで始めるエアリーロ。僕は流石に耐えきれなかったよ。
握力切れで、僕の体はエアリーロから弾かれる。夜空に放りだされた僕に気付いてないのか、更にエアリーロは空へとあがる。
実際色々と思うところがあったわけだけど……その姿を見て、僕は思わずこう思った。
「綺麗だ」
だって一筋の星が空に向かって流れてく様な……そんな美しさがある。エアリーロの煌めきの風を受けて、イクシードの伸びてる風も輝いてる様に見える。
回転が加わってるから渦巻きみたいになって、それがどんどん遠くになるにつれて細くなる……まさに昇り星じゃないか。
(セラ・シルフィングは流星の剣……今が一番そう見えるかも)
何となく、大ピンチな筈なのにそんな事が浮かんできた。そう思ってると、聞こえる凶暴な声。
「遂に召還獣にも見放されたか!? ならば逝け。直ぐに仲間も送ってやる!!」
別に見放された訳じゃないし、きっとみんなは僕と同じ所には送られないだろう。だけどそうだな……今回は本当にここまでかも……そう思ってると、ゴゴゴゴと何かがうねる様な音が聞こえ出す。
「なんだ!?」
「これ……は? うわああああ!!」
今まで落ちてた筈の体が浮きだしてる!? 一体何がどうなってるんだ? だけどそれはどうやら僕達だけじゃない。世界樹の葉が枝が、ざわざわと揺れて、回転する様に空へあがってる。
月を中心に周りの雲までも、その姿を細長くして、流れてる様な……まさかこれって……エアリーロとイクシードの影響か?
凄まじい気流に巻き込まれた僕達は成す術なく上昇していく。そして見える天辺のエアリーロの姿。それはもう羽を動かしてもない。ただゆっくりと上へと漂ってるような……まさか、イクシードの風にエアリーロの方が耐えきれなかったのか? 僕は気流に飲まれながら、なんとか声を出そうとする。
「えあっ……エアリッ……エアリーロオオオオオオ!!」
僕の声が届いたのか僅かに反応するエアリーロは、その蒼天の様な青い輝きを放つ瞳をあける。そして僕を見つけてこう言うよ。
【やっと戻ってきましたか。あのまま落としてたら大変でしたから良かったです】
あれ? なんだか随分もの静かな言葉だな。思ってた状況と違うのか? 全然切羽詰まった感がない。
「生きてたか召還獣。人に飼われた哀れな獣……我までこの風で自分の元まで送るとはな」
そんな事を言いつつ聖獣もエアリーロへと迫る。てか、何もしなくても僕達はエアリーロへと近づいてる。
【勘違いしないでください。私は貴方を招待した覚えはないですよ。ただ、まだこの子はなかなか言うことを聞いてくれないと言うだけ】
えっと……なんと言った? 今エアリーロはなかなか言うことを――って、それはもしかして……するとエアリーロはこちらを向いてこう言ったよ。
【大変でしたけど、対話は終わりました。貴方に似てなかなかじゃじゃ馬な子でしたよ】
それはつまり……僕は色々と聞きたかったけど、この状況じゃそうもいかない。だからただ一言こう言った。
「だろ、見せてくれよエアリーロ!!」
僕のそんな言葉を受け止めて頷いてくれるエアリーロ。体が月光の光とは違う輝きを放つ。そしてうねりがまとわりついてるその翼を大きく広げる。
すると僕達をここまで運んだうねりの柱が分裂した。そしてそれぞれのウネリに分かれる僕と聖獣。そして聖獣の居る方のウネリを更に大きく振りあげ勢い良く振るう。
するとただ風に流されてた聖獣は当然の如く、一気に下方へと消えていく。風のウネリの影響で、上手くも飛べないみたいで、羽を広げてもその勢いを殺せないまま消えたよ。
そして僕の方へは煌めく風が優しく体を包んでくれて、僕をエアリーロの方へと促してくれる。そして背中に戻されると、こう言われたよ。
【見ててください、貴方の風の力を】
その言葉の直後、エアリーロは自身の体を回転し出す。おいおいまたかよって思ったけど、今度は早い割に、風自体は痛くない。むしろ優しい感じ。
すると長く伸びてたウネリがここに集まってきてた。エアリーロの翼から、二つのウネリが重なりあって、僕達を包み込む。完全に三百六十度包み込まれたのに、何故か明るい。
きっとこの明るさはエアリーロの風の影響だろう。ウネリが自身を包むと、回転を止めるエアリーロ。だけどその体事態も眩しい位に光ってる。てか、なんだかこの風と同じように光ってる様な……すると風が少しずつエアリーロの体にまとわりついてくる。
どうなるんだ一体? 僕はただ、エアリーロの風が僕の力になるように、エアリーロも僕の風を力に出来るのを知ってたから、前よりも強力なイクシード2でどうにかして貰おう……そう思っただけなんだけど……なんだか想像を超える現象が起きてる気がする。
「ぐっ!?」
その時僕の胸辺りに焼けるような痛みが……なんだ? そう思ってると、ウネリの中から二対の剣が差し出される。セラ・シルフィング……もう必要ないって事か。イクシード2の力はエアリーロへと預けれたか。
受け取ったイクシードには何かの模様の様な物が、その刀身に浮かんでた。なんだろうかこれは? 僕は取り合えず「ありがとう」的な思いを込めて、その刀身に手を添えた。
すると湧き出す眩しい光。それがこの風の中、全体を包み込む。そして次の瞬間、見えたのはどこまでも広がる星空。包み込んでた風は今の光が収まる間に消えてた。
だけどそこには新しい風が姿を現してる。いや、これはもう、新しい風の化身が姿を現してる……そう言った方が良いかも知れない。
光輝く風には薄い緑が付いて、その翼を動かす度に、鮮やかな線を引いて後ろの大きな月へと消えていく。翼と胴体の根本には防具みたいな物が付いていて、それは頭にもある。
そして僕が座る胴体にも防具が現れてて、しかも今度はちゃんと取っ手まであるんだ。なんだかゴツくなったように思えるけど、フォルムはむしろスラッとした感じ。
そして最大の特徴はきっと、エアリーロの翼の外側に展開してる四本の金属棒みたいなのだろう。片側に四本だから両方で計八本の謎の物体が現れてる。
するとエアリーロが僕の反応に満足したのか、こんな事を言ったよ。
【『風帝武装 アウラ』まさかこの姿を主以外の力で解放されるとは思ってませんでした。ですが、これなら……やれます!】
その瞬間、大きく羽を動かすエアリーロ。するとこれまでの比じゃない早さで動き出す。その一羽ばたきが凄すぎて衝撃波が周囲に伝わった位だ。
ヤバい……かっこ良すぎるぞ。風帝武装アウラ! しかも今回は乗ってる人にもとっても優しい設計で、エアリーロが動き出す前に、別の風が背中を包み込んでくれたよ。
これで僕にはその激しい風の影響はない。あっと言う間にエルフ聖獣に追いついたエアリーロ。そして聖獣が対応をする暇を与えないスピードで、更に加速して突っ込んだ。
辺りに広がる衝撃と共に、タックルをかまされた聖獣は盛大にリア・レーゼの街へと墜ちる。完全な不意打ちだったとはいえ、これは凄い。
モクモクと上がる噴煙。するとそこから聖獣が一気にこちらに向かって飛び出してくる。そして振るうは刀身のない武器だ。
感じる圧力。ヤバい、ここはまだ夜の闇の範囲だ! だけど風帝の武装を纏ったエアリーロは凄かった。もの凄い動きで襲い来る夜の剣劇を交わす。そして再び聖獣にタックルをかます。
「ぐおおおおおおおおおお!!」
そんな叫びと共に、盛大に土埃をあげる。まさかここまでとは……これはいける。てか、別にこれなら小細工せずとも勝てそうな気がしなくもないな。
【慢心はいけません。私は自身の弱点を知ってます。ですからやりましょう。次に奴が上がってきたときに決めるんです】
エアリーロは聡いな。召還獣だからと言って威張ったりもしないし、良い奴だ。こんな奴だから信頼できる。言っちゃうと、主のローレよりも信頼できる!
「よし、そうだな。艦隊にも協力して貰うか」
艦隊の主砲は強力だ。それの一斉照射は盾をなくしたエルフ聖獣には耐えられないだろう。問題は素早い奴をどうその軌道上にタイミング良く誘導するか。
まあそこは今のエアリーロならやれるだろう。それならもう一つ、確実に当てる様に出来る事もやりたい所だな。それにはバトルシップに協力して貰う。
僕はエアリーロに自分の作戦を伝えるよ。
「頼むぞ」
【なるほど、確かにそれなら確実でしょう。ですが可能ですか? バトルシップにそれだけの人員がいるとも限りませんが】
「大丈夫だろう。仕掛けは先に済ませて貰う。僕達が奴をポイントまで誘導するんだ。仕掛けをおくだけなら、バトルシップの人員が少なくても出来る。
それにバトルシップ内には魔力増幅装置みたいなのがあったからな。外に魔法を仕掛けることが出来るのはちゃんと確認してる」
そう、サン・ジェルクで既に一度やってる事だ。それに今度はあの時よりももっと簡単で良い。一瞬だ。一瞬だけエルフ聖獣の確実を確実に止めれれば、後はエアリーロの風で更に拘束……そして最後は――
【そうですか。一度実証済みなら問題はないですね。では伝えましょう】
するとその時、リア・レーゼの街で黒い球体が発生した。大きく広がるその黒い球体は天井に亀裂が入り、そこから一気にエルフ聖獣が姿を現す。
「きっさまあああああああああああああ!!」
【随分余裕がなくなって来たようで】
そう言ったエアリーロは再び素早く動き、最初の攻撃をかわす。それと同時に、翼の外側に展開してる、長方形の金属みたいなのから光線をだした。
凄い、攻撃の幅が増えてるぞ。しかもこの武器、三百六十度どこでも向きを変えられるらしい。エアリーロがどこを向こうと、その武器は自動で回転して聖獣を狙い撃ってる。
「こざかしい事を! 今更こんな物で我を落とせると思うなよ!!」
確かに聖獣はその攻撃を避けて追ってきてる。そしてその光線を斬ると同時に、僕達の周りにも届く夜の刃。その度にこっちも激しく動く訳だけど……当たらない事に聖獣はイライラし始めてるな。
だからこそ気付いてない。エアリーロがなんでわざわざ一定の距離を空けて飛んでるのかって事に。二度も吹っ飛ばされればイヤでも分かるだろ。
風帝の武装を纏ったエアリーロは今までよりも速いって。本当なら、今の聖獣をスピードで圧倒出来る。まあ奴の真の本気がどこかはまだ知らないけど、今のエアリーロと同等とは思えない。
今だって必死に食らい付いてる様に見えるしな。ワザと追わせてる事にも気付かないってのは相当だ。
すると上からチカチカと見える光。僕はエアリーロに合図を出す。すると一気に下方を目指す。てか殆ど直下行なんですけど!?
本当に動きに制限がなくなったな。これもより風を操れる様になったから? 幾ら自分に影響でないからって、このスピードで迫る地面は怖いぞ。
てか、マジで大丈夫なの? 全然減速しないんですけど!? グングン火の粉が舞う地面が迫ってる。空気に熱も加わって、ちょっと熱い。
後ろをちらりと見ると、聖獣の奴も興奮してるから減速を忘れて突っ込んで来てる。地面との距離はもう五メートルもない!!
するとそこでエアリーロは大きく羽を広げて更に回転を加えて真横に流れる。この時既に二メートルも地面までなくて、しかも僕が下の方になってた。
頭が擦れないか超怖い。そう思ってると後ろで大きく悲惨な音が……きっと聖獣が地面に叩きつけられた音だろう。流石にこのスピードで自由自在に方向転換ってのは誰もが出来る事じゃない。
まあ狙ってたんだけど……それでも僕も不安になったしな。エアリーロは再び上昇。そしてそこから翼の武器で一斉照射を始める。
案外これで終わってもおかしくはないかもしれない光景。だけど油断はしない。するといきなりエアリーロに向かって、艦隊を襲ってた筈のモンスターが列を成して襲ってきた。
大量の数で一気にエアリーロを襲い出すモンスター。こいつらの数で、位置がズレてしまう。
「こいつら、一体どうして?」
ギャーギャーうるさい声を吐きながら、突っ込み続けて来やがる。まさに自爆覚悟みたいな行動だ。
【聖獣の仕業でしょう。何かに感づいたのか……それともプライドを捨てたかですね】
何かに感づいた……はないと思う。奴の激行ぶりは本物だった。あれまで演技だったのなら、一杯やられた感じだけど……流石にそれはないと思う。
つまりはこちらの砲撃がうざかったって事だろう。今の奴の周りは明るいし、夜の刃は発動できない。だからこそ、支配化にあるモンスターを使った。エアリーロは口から風の玉を放ち、モンスター共を分散させる。
そしてその間に、モンスターから距離を取った。するとその瞬間、エアリーロの武装から響く甲高い音。これはまさか!?
「ようやく捕らえたぞ!!」
【くっ!!】
四方八方から襲い来る夜の刃。いつの間にか聖獣は空に戻ってたらしい。ヤバい……このままじゃ僕のHPが尽きる。そう思ってると、エアリーロの目が光って翼の長方形の金属がその体を中央から割って四方に展開する。
そして現れるのは障壁? それらが全周囲からの攻撃を防いでくれる。
「叩き潰す!!」
その体から黒い影を沸き立たせ、武器を振るう聖獣。奴はこの障壁ごと僕達を潰す気だ。
【ただ守るだけなどしません。元々そこまで強力な障壁ではないですから。撃ってでますけど、私を信じてくれますか?】
「何を今更、僕はいつだってお前を信じてる!」
【……………………行きます!!】
障壁の内側で小さく羽を縮めて、この小さな空間にエアリーロの緑色の風が流れる。そして次の瞬間、障壁を中から壊して一気に飛び出す。それに金属の武器も付いてくる。
線が流れる――そして聖獣が反応出来ない速さで取った背後。至近距離で用意してた風の玉をその背中にぶつける。
弾ける風が一気に聖獣の体を押し上げる。そしてその時、発動する魔法陣。
「捕らえた!!」
あれはバトルシップに頼んでた拘束魔法。だけど既にビキバキ言ってる。でもその間に艦隊に収束してる光。それに気付く聖獣はモンスターを使って前に壁を築く。
「アイツ!」
【退かし――!】
その瞬間拘束魔法が破壊される。
「ダメだ! エアリーロは風で奴を縛れ!!」
僕の言葉にエアリーロはその風を聖獣へと向ける。これで数十秒は稼げる。だけどあのモンスターの壁があったんじゃ威力が軽減される。
そう思ってると、斜めから降り注ぐ光の柱。更に大量のミサイルが夜空に華を咲かせて、モンスターを焼き落とす。
これは……バトルシップ!! その姿が夜空を駆ける。やってくれたな。これで――
「今だあああああああ!!」
その瞬間、艦隊から放たれる幾本もの光の柱。それらが聖獣を飲み込んで行く。激しい光がこの夜空を彩った。
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