命改変プログラム

ファーストなサイコロ

夜空からの救援



 スパークする青い雷撃がはぜる。その瞬間、モンスターの肉片が飛び散り燃え焦げた。


「おまえ達は――逃げろ!!」


 僕は倒れてるモブリ達にそう告げる。そして最後の回復薬と共に、アンダーソンも放り投げるよ。


「なに……を?」
「お前がそいつ等を先導しろ! 僕が可能な限りくい止める!」


 僕は急いでセラ・シルフィングの所へ走り、ぶっ倒れてるモンスターの頭からセラ・シルフィングを抜き取る。そしてモブリ達に迫ってたモンスター達の間に雷撃を撃ち放ち足止めする。


「お前達の相手は僕がしてやるよ。チビなんかに構ってるんじゃない」


 言葉は理解できないだろうから、挑発するみたいにコイコイしてやるよ。すると後ろから狼モンスターがかぶり付いて来やがった。


「いって! 何するんだこいつ!!」


 僕は空いてる腕でモンスターを掴み、引き剥がそうとする。だけどリアルの犬なんて目じゃない牙と凶暴さと強靱さを有してるモンスターは人の力で引っ張った程度じゃ剥がれない。
 寧ろ更に力入れて、食いちぎろうとしてる。服から滴りだす赤い血液。僕はセラ・シルフィングを回転させて持ち方を変えて背中に居るモンスターに突き刺す。
 それでようやくモンスターの力が弱まり、牙の食い込みが離れた。僕はその一瞬を見逃さずに、剣をぶっさしたまま振るった。
 その勢いでモンスターは剣から抜けてこちらに迫ってた別のモンスター共にぶつかる。


「はぁはぁ――づっ]


 傷口が痛む。なんだか沸騰してるように感じる様な……まさか何か特性があったのか? そう思いつつ、腕を伸ばすと、傷口は当然イヤな感触だった。
 ぬちゃ……として血と肉を感じる感じ。だけどそこに異物があるような……僕は首を目一杯後ろに回す。すると傷口付近に、新芽が見えた。赤紫色したドスグロい新芽。
 なんだあれ? そう思ってると、新芽は更に成長して、真っ赤な……まるで血みたいな花を咲かせる。
 そしてそこから泡みたいなのを出し始めたよ。


「なんだ……これ?」


 そう思って、その泡の行く先を見つめる。この泡、周りの風に影響されずに進んでる。その行く先は、さっき僕に噛みついたモンスターの所。
 そしてその狼タイプのモンスターの表面へと泡は消えていってる。まさかこの泡――


「その花は宿主の体力を吸い取ってるわ!」


 ――僕がもしやと思ってたことを先に言ってくれたアンンダーソン。全く早く逃げろって言ったのに……僕は取り合えず届く花を毟ってみる。


「うっ!? があああああああああ!!」


 想像を絶する痛み。抜いた花をみると、見た目からは予想出来なかったかなり長い根が僕の血液を浴びてた。抜く時の体の中をゾワゾワした気持ち悪い感触もこれのせいか……くっそ、一度抜いたら効果が切れるまでまた生えてくる――とかは無いようだけど……牙の後が付いてる所から既に数本花は咲いてる。
 これを全部抜くのはかなり勇気が必要だ。でもこのままじゃどんどんHPが……微々たる物だけど、それでも安易には考えられない。最後の回復薬もアンダーソンに渡したしな。


「それなら!」


 僕は前にいるモンスターに迫る。邪魔な奴らを止めは後に、取り合えず吹き飛ばし、狙うは狼野郎だ! 抜くのもイヤなら、こうするしかない。狙うはこのスキルを発動させてる術者自身。それが一番手っとり早い。
 きっとこの狼野郎が死ねば、このスキルは解除される筈だ。だけどその時、ウッドールの野郎が自身の腕の枝を伸ばして僕の腕の動きを阻む。
 やっぱり止めまで刺しておくべきだったか。だけどこいつらしぶといから……そう思ったのが駄目だったか。流石に元から強力だと言われてた森のモンスター共だ。どこまでもしぶとく邪魔をする。


「ち!」


 僕は舌打ちして体を勢いよく回転させて、足でその枝を蹴って強引に引っ張る。そして足の裏でそのまま地面に踏みつけてやった。
 強引に引っ張ったからウッドールは倒れてる。僕は武器を持ち直し、今だと思い口を広げて迫って来てた狼モンスターを一刀両断する。


「よし!」


 僕はちらりと背中をみた。すると花がサラサラと消えていく。やっぱり思った通りだな。すると今度は足下から地鳴りが……少し安堵出来たと思ったらまた何か来るのか?
 そう思ってると地面から沢山の触手みたいなのが生えてきた。これは――あの貝か! デッカくて動きの鈍い奴。だから代わりに沢山の触手を使うんだ。
 モンスターに落とされたリア・レーゼには既にこういう動きの鈍い奴らまで進入してるのか。


「ちょ!? 大丈夫なの?」


 そんな声が後ろから聞こえる。確かに状況は不利になる一方の様に見える。でもだからこそさっさと行ってほしいんだけどね。


「いつまでもこんな所にいるなよな! こっちは大丈夫だから、さっさと逃げろ!」


 僕は襲い来る触手を切り落としながらそういう。だけどアンダーソンは周りをキョロキョロ見回してこう言うよ。


「逃げるってどこに!? 私たちだけじゃ、本殿へも行けないわ! 道は崩れたのよ!」


 確かに……逃げる場所なんてここにはないかも知れないな。でもこのままじゃ、いずれこいつらに押しつぶされるだけ。


「それなら、骨組みを登って行くとかある。とにかくここじゃ何も出来ないだろ!」
「そんな事……出来るならやってるわ。でも怪我人が多いのよ!」


 ぬぬ、確かに下に落ちた衝撃、それとその後にモンスターに襲われて負傷してる奴がいっぱいだ。どうにかして全員回復出来れば良いんだけど、どうやらそれぞれが小さな傷を癒す魔法程度で精一杯ぽい。
 どんな巡り合わせか、ここにいる奴らは前衛タイプのモブリ達みたいだ。


「どうすれば良いんだよ……」


 ここでモタモタやってる間にも本殿では聖獣が暴れてるかも知れない。それに次々増えていく気がするモンスター共……このままじゃ本当にここで終わってしまう。
 まだなのか……まだなのかよノエイン!! 僕はそんな思いで空を見上げる。するといきなり星が見えなくなった様な……そして夜空が揺れた様に見えて、さらには落ちてくる!?


「ちがっ――これは貝本体か!?」


 ズドオオオオンと大きな煙を上げて地面にその堅い体を叩きつけた貝。なんとかギリギリ範囲外に逃れたけど、その衝撃までは交わしきれなかった。てか、この貝……仲間まで巻き添えに……


「セラ・シルフィング……」


 さっきの衝撃で腕から抜けた剣を求める。すると剣に貝の触手が絡み付いて盗みやがった。しかも僕にまで絡み付いてくる触手。ヌメヌメして気持ち悪いったらない。
 てかこの貝、一体どうやってこの巨体を持ち上げたんだ? そんな事を考えてると、ドンドンと締め付けが強くなってきた。くっそ……無駄な事を考えてる場合じゃないか。
 だけどこいつの攻略法を僕は知ってる。こいつは貝だからな、雷に弱いんだ。聖獣クラスは流石に僕の雷撃程度じゃどうにもできないけど、こいつくらいなら効きはする。それは実証済みだ!


「――んっでえええええええええい!!」


 僕は全身を雷撃で包み込む。それは触手を伝って貝の本体にまで届く。少し拘束が緩くなってきた。後少し! そう思ってると、ゴツンと頭に響く衝撃と痛み。そして次々に体の至る部分にそんな痛みが伝わる。
 下を見てみると、そこにはモンスター共が石を投げて来てやがってた。なんつー原始的な事を……でも意外に効いてるからムカつく。
 地味に効く攻撃のせいでなかなか集中出来ない。このままじゃいずれ奴らはアンダーソン達の方へ行ってしまう。


「さっさと……放しやが――――れ!?」


 いきなり襲いかかる浮遊感。そのまま一気に地面へと落ちる。すると今度は地上のモンスター共が一斉に襲いかかって来るじゃないか。


「イテっ、て言ってる場合でもないか」


 襲い来るモンスターが迫る。すると上方から回転しながら、何かがモンスター共の体を斬り割いて行く。響くモンスター共の悲鳴。僕はその回転する物の行方をみる。


「なんだ、生きてたんだアンタ」


 ムカッ――回転するそれを受け止めた奴が最初に放った第一声がそれでした。こいつ、実は安心してる癖に、もう少し言葉を選べないのか? 


「セラ……お前な、感激しても良いんだぞ」
「はっ、私が感激? そんな無駄な感情捨てたわ」
「捨てたのかよ!? 人生の楽しみなくなったみたいな物だろそれ!」


 随分大きな物無くしてるぞ。


「うるっさいわね。私の人生の心配なんて恐れ多いのよ。それよりもさっさとそこに落ちてるセラ・シルフィングを取りなさい。一端みんなと合流するわよ」


 そんなセラの言葉に僕の心がちょっと持ち上がる。


「みんなはちゃんと無事なのか?」
「なんとかね。今は生き残った連中で小さな結界作って耐えてるわ。だからとにかくそこに合流するのよ!」


 そう言って再びその手の巨大な手裏剣を投げるセラ。流石に聖典は破壊されすぎたのか、使わないんだな。でもずっと気がかりだった他のみんなも無事らしいし、ひとまず良かったよ。
 まだ生き残りが居る……それだけで前を向ける。僕は近くに落ちてたセラ・シルフィングを握りしめて、アンダーソン達に近づいてくよ。


「生き残りがまだ居るらしい。そこに合流するぞ」
「了解です。皆さんまだ希望を捨てないで!」


 絶望に足を止めてたモブリ達もそんな言葉を聞いて少しだけ活力が沸いてきたのか、なんとか動けそうだ。


「セラ!」


 僕がそう叫ぶと頷いて「こっちよ!」と声を掛けてくれる。セラが先頭で、僕はしんがりを勤めるよ。雷撃でモンスター共を牽制しつつ、僕たちは走る。
 みんなが集まってるって言う、その場所を目指して。




 大きな世界樹の根が入り組んで盛り上がってる場所。幹に近い部分まで僕たちは来てた。そして僕たちは根で囲まれた中にある穴へと入ってる。
 ぽっかり空いた空間。そこに身を寄せあってるんだ。


「スオウ君! それにアンダーソンさんもご無事で何よりです」


 感激の声と迎えくれたのはシルクちゃん。シルクちゃんをみるとなんかちょっと安心できる不思議。本当に、もう存在その物が癒しって感じだよ。素晴らしい。


「本当に良かった。君たちが無事で。勿論他の皆さんもだけどね」


 テッケンさんも無事で何より。まあテッケンさんがやられてる所なんかあんまり想像出来ない訳だけど……


「残ったのはこれだけですか……」


 アンダーソンの言葉に盛り上がってた空気が再び沈静化した。ざっとみても二十人程度か……確かにこれだけではある。道の上に居たときは、もっともっと居た気はするけど、それだけ犠牲は大きかったって事だろう。


「これだけ……なのでしょうか? もしかしたらまだどこかに私たちと同じようにしてる人たちはいるかも知れません」
「もし、そうだとしても私たちにそれを知る術はない。それにここ以外の僧兵たちは動けないでしょう。心も体も大きくやられた筈です。
 聞いておきたい事があります。あなた達はまだ戦う気ですよね?」


 アンダーソンがそんな事を僕たちを見回して聞いてくる。なんだそれは――って感じだな。愚問だろ。


「当然です。私達はまだやれます!」
「ああ、シルクちゃんの言うとおり」
「勿論ね。私は負けたまま引き下がったりしない」


 三人は直ぐに言葉を返してくれる。まあ当然だね。だけど周りの僧兵達は、自信無さ気だ。みんな俯いてしまってる。


「あなた達はどうなんですか? ここはあなた達の街でしょう? 救いたくないんですか?」


 そんなアンダーソンの言葉に俯く僧兵の一人がボソボソと答えるよ。


「救いたいです……そんなの当然じゃないですか。だけど……怖いんですよ。死ぬことが……いいや、そもそも戦う事が恐ろしい」


 おいおい……と思ったけど、これがリア・レーゼの僧兵と思えば変に納得出来るものでもある。初めから相当頼りなかったもん。
 周りを強力なモンスター共で囲まれてても、強力な結界の存在でそこら辺の意識……というか、覚悟が足りてない。まあ僕の場合は大切な物が危機に瀕したら、なにが何でも立ち上がる――勝手にそう思い込んでた節もあるけど、これが普通なのかな?
 僕は周りの僧兵を見渡してこう言うよ。


「怖いし、恐ろしい……それは良くわかるし、別にそんな思いを否定はしない。だけどお前達は僧兵だ。何も出来なくて、ただ震えてるだけの存在じゃない筈だろ。
 その手には力がある筈だ」
「力なんてない!!」


 別のモブリがその小さな腕を根にぶつけて言った。そして聞こえる杖の放り出される音。


「そうだ……力なんてない。いいや、あると思ってた力が、どれだけ小さいのかを思い知らされたんだ。これじゃあ、ないのと変わらないんだ!」


 余りにも強大な力を目の当たりにして、自分のちっぽけさを知ってしまった……そんな空気が流れてる。そしてそのせいで心が完全に折れてしまったって所か。
 諦める――それはきっとこういう状態の事を言うんだろう。射してるはずの光も届かない……いや、自分で遮ってしまうようなこんな状態。
 こいつらは自分達形には頑張ってたのかも知れない。一生懸命やってきてたからこそ、ここまで大きなショックを受けてるのかも……だけど自分から自分達の故郷を放り投げる様な事を言うなんて……それは余りにも寂しいじゃないか。


「アンタ達それでも――」


 僕はまた毒舌かましそうなセラの言葉を遮るよ。こいつらがセラの口調で奮い立つ……とは思えない。ただ罵倒するだけじゃないってのは分かってるけど、セラの言葉が良く効くのは僕が一番理解してるからな。
 今の状態のこいつらには止めになりかねないよ。


「――邪魔しないでくれる?」
「セラの言うことはきっとキツいだろうからさ。ここは僕に譲ってよ。弱い者同士、分かりあえると思うんだ」
「アンタはこいつらとは違うわよ」


 ううん? それは誉め言葉か? 意外すぎてビックリだ。僕は思わず目を丸くしちゃったよ。


「はは、ありがとうセラ」
「いっ、今のは言葉のあやって奴よ! 言っとくけど、アンタは別に特別スゴくなんてないんだからね!」


 なんだそれ? 良くわかんない事言ってるぞ。そう思ってるとセラは顔を赤くしてシルクちゃんの方へ駆け寄って行ってしまった。なんだったんだ一体?
 まあいいや、譲ってくれたって事だろう。僕は彼らに向かい合う。


「なあ、なにもないなんて言うなよ。自分達のやってきたこと、誇ってた物が通じなかったか? 僕はそうは思わなかったけどな。
 ちゃんと聖獣共の進行を防げてたじゃん。僕がここに戻ってくるまで、このリア・レーゼが無くなってない、敵の手に落ちてない。それがお前達には何も無くないって証明してると僕は思う」


 だけど彼らは上を向いてはくれないよ。ダメなのかな……僕みたいな奴の言葉をこの人たちは求めてなんか無いのかも……でもそれでも、今は誰かが声を掛けるしかないじゃないか。


「それぞれの力が小さいのなんて百も承知の筈だろ。それでも、力を合わせるからこそ、大きくなれる……それがモブリの力じゃないのかよ。
 このままじゃリア・レーゼはダメになる。それは例えこの危機を乗り越えても同じだ。この場所を一番思ってる奴らが真っ先に立てなくなってどうする!?」
「立てないよ。だって怖いんだ! 死ぬのは怖いじゃないか!」


 みんな一斉に頷きやがる。折角一生懸命助けたのに……流石にちょっとイラっと来るぞ。それに死ぬのは怖いって……そんなの、僕だって!


「スオウ君、それは君の問題だよ。誰かに押しつける事じゃない。選ぶのも後悔するのもしないのも、彼ら自身だよ」
「~~~~っ」


 出かかってた言葉がテッケンさんの言葉で詰まった。確かに彼の言うとおりだ。僕の事情を押しつけるのはまた別だろう。そう思ってると、ミセス・アンダーソンが進み出る。


「皆さん。恐れても良いです。怖がっても……ただ今は手を取り合いましょう。それだけで、大切な繋がりが見えるはずです」


 そう言ってアンダーソンは近くの一人の僧兵の手を取る。すると、その一人が何かを感じたのか、もう一人の手を繋ぐ。そうやって小さな輪は紡がれてくよ。
 流石はアンダーソンだな。手慣れてる感じがする。こうやって信者を増やして行くのかなって思った。手を繋ぎ終わったら、今度は深呼吸を促すアンダーソン。心を落ち着かせる作戦か。
 どうやらアンダーソンに任せとけば大丈夫っぽい。そう思ってると、地上からドスンドスンと大きな地響きが迫ってくる。僕とテッケンさんは共に出入り口から顔を覗かせて外の様子を伺う。
 ここら辺に逃げ込んだ――それはバレてるから、モンスター共は近くを捜索してるみたいだ。このままじゃ、いずれ見つかる。


「不味いね」
「そうですね」
「シルクちゃん、ルリフィン君の様子はどうだい?」


 中に戻ると、テッケンさんがそんな事を効く。さっきから何を回復させてるのかと思ってたけど、リルフィンだったのか。


「召還獣の回復は初めてですけど……なんとか動ける程度には……でもやっぱり完全にするには術者の魔力が必要みたいです」


 術者って言ったらローレか……あいつも無事なのかな。


「そう言えばスオウ君、武器が一本足りないですよね?」
「ああ、聖獣の攻撃でね……回収したいけど、今やどこにあるのか……」


 あの場所が崩壊しちゃったから、見つけるの大変だと思うんだ。それに今はそんな事出来る状況でもないし……


「けど、一本じゃ不安です。まだ聖獣との戦いは終わってないんですよ」


 シルクちゃんが心配そうにそう言うよ。そんなキラキラした目で見られたらやばいよ。ドキドキしちゃう。でも現実問題、今からもう一本を探すのは……そう思ってるとアンダーソンがこんな事を言ってきた。


「それは二対で一本を表す剣ですよね? それなら、私が回収出来るかも知れません」
「本当か?」


 僕はテンションあがってそう言うよ。やっぱりセラ・シルフィングは二本じゃないと違和感あるからね。


「ええ、ですがそれには外のモンスターをどうにかしないと……それに早く上にも行きたい。リルフィン、飛べますか?」


 今さっき回復が終わったばかりの奴に酷な事を……だけど確かに速く行きたいのは分かる。そしてここから一気に本殿まで行くのなら、リルフィンの飛空能力便りなのも納得だな。


「なんとしてでも行く。主がピンチなのだろう」


 強がってそう言うリルフィン。立ち上がろうとするけど、なかなかにふらついてるぞ。てか、今は人型に戻ってるんだな。


「やれるのか?」
「貴様に心配されるとはな……あんずるな小僧。我ら召還獣は貴様等よりも頑丈だ」


 その言葉を聞いて僕は周りをみるよ。流石にいっぺんに全員を運ぶ事は無理だ。それに僧兵の人たちは……


「大丈夫ですよ」


 そう紡ぐアンダーソン。


「皆さん、もう大丈夫です」


 その言葉に僧兵達は決して力強くではないけど頷いてくれる。それなら……でもその時、急に周りが焦げ臭くなって汗ばむ程の熱気に包まれる。


「これって……まさか!」


 外を見ると、モンスター共が炎を放ってる。いぶり出す気の様だ。このままじゃやばい! ここにいたら丸焼けだ。僕はテッケンさんと同時に飛び出して、近くのモンスターを切り捨てる。そしてそれに続いてみんなも穴から出てきた。
 それに気づくモンスター共。その数……もう数え切れない。熱気に包まれる中、腹を空かせたモンスター共が、周りを取り囲んでる。絶体絶命だな。


[さて、ここからどうする?」


 勢いで出てきたけど、僕達の戦力はここを突破できる程にあるか分からない。


「私達は、やれる事をやるだけよ。やれる事以上を求めるのはアンタの役目でしょ」


 そう言ってセラとテッケンさんが進みでる。まさか二人とも……ここでモンスター共の相手にする気? 駄目だそんなの! そう思うけど、でもここで終わってる訳にもいかないのも事実。そう思ってると突如モンスター共に降り注ぐ砲撃。
 それによって次々にモンスターが舞い上がってく。


「なんだ!?」


 そう思って空をみる。するとそこには暗い夜空に青い光を灯す沢山の明かりが見えた。


「ようやくですね」


 そう紡いだのはアンダーソン。周りのみんなもその姿を見つけて喜んでる。そうあれは、サン・ジェルクの飛空挺艦隊だ。

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