命改変プログラム

ファーストなサイコロ

知ってほしい



 空中に放り出された僕と、サン・ジェルクの僧兵。僕達は空に出た瞬間にバトルシップの勢いに吹き飛ばされて、サン・ジェルクの空を派手に回って落ちて言ってる。


「「うあああああああああああああああ!!」」


 ヤバい、このままじゃどう考えても死ぬ。比較的高い建物に僕達は迫ってる。僕は用意してくれてたお札を使う事に。


「解放!」


 その言葉と共に、握りつぶしたお札が光る。そして建物と僕達の間に浮かぶ魔法陣。その魔法陣は、僕達をクッションみたいに受け止めてくれる。
 そして勢いを吸収して僕達を外側へ弾き飛ばすと同時に消え去る。


「うお!  うあうあおおおお!!」


 ちょっと腕の中の僧兵がうるさいな。一応あんまり目立ちたくないんだから、大声上げるなよ。勢いは殺したんだし、地面に叩きつけられて死ぬって事はもう無い。
 ただ……まだ結構高いのは問題だな。でも大丈夫、リア・レーゼの僧兵さんが急遽作ってくれたお札はまだある。
 どうやらあんまり高度な魔法じゃなければ誰でも作れるらしい。風・雨避けのお札とか安かったしね。だからこのお札には無事に地上に着く為に必要な魔法を宿してもらってる。
 てな訳で更に「解放!」で今度は真下に魔法陣が現れる。それをトランポリンの要領で踏んでジャンプして、それを繰り返して、なんとか地上に到着。
 少しお札は余ったな。まあ、これから何かの役に立つかも知れないし、一応大切にとっておこうじゃないか。


「おい、もう付いたぞ。いつまで怖がってるんだよ。ここはお前の故郷だろ」


 僕はそう言って、抱えてた僧兵をおろす。するとようやく地面を実感できたのか、ホッと胸をなで下ろす。


「ははは、良くやったな。うん、大儀だったぞ」


 なんで威張ってるんだ?


「まあいいや、それよりも早く案内しろ。教皇までの近道をな!」
「わかってる。えっとここが大鐘楼の下だから……こっちだ!」


 僧兵は早速道を示してくれる。やっぱりサン・ジェルクに詳しい奴を味方に付けたのは正解だったよね。僕は少しの間しかここに居なかったから、正直サン・ジェルクの地理を完全になんて把握してない。
 そもそも湖の上に建てられたこの街はとっても複雑だ。まあ大きな社を中心として広がってる様は、何となくリア・レーゼと似て無くもない……と思うけど、それはリア・レーゼを知ったからだよね。
 どこからでもあそこにはきっと繋がってるんだろうけど、それでも最短距離を。そしてあの社の内部をちゃんと把握してる奴の助けは重要だ。
 一応、教皇の案内で知った道を使うつもりだけど、そこに到るまでが問題だからね。
 入り組んだ街中を走り続ける僕達。人通りの多い大通りを避けて、人気の少ない道を選んでグングン僧兵は進む。こんなに暗いのに凄いな。まさに体で覚えてるって感じ。だけど……どうしてこんなに狭い道ばかり――


「ちょっと待てオイ! お前達モブリの感覚だけで進むなよ! 僕にはそんな小さな穴、通れないぞ!!」


 さっきから獣道ならぬモブリ道を多様しやがって。こっちへの配慮って奴を少しはしろよ。


「全く、そっちが早くって言うから出来るだけ近道してるってのに文句言うなよ」


 不満気にそんな事を言ってくる僧兵。いやいや、確かに早くって言ったけど、そっち基準だけで考えるなよ。通れなきゃ意味ないだろ!


「しょうがないなぁ。これだから体が大きくても得な事なんかないんだ」


 モゾモゾと穴から這い出てくる僧兵。そして直ぐに別ルートへと変更してくれた。


「なんだか……次第に慌ただしく成ってきた……か?」
「そりゃあ、直ぐ上空でドンパチやってるんだから、ここに住む人達は気が気じゃないだろうさ」


 まあ確かにそうだな。外に出てる人達も増えてきてる。みなさん一様に空を見てるから、僕達を気にする人なんか誰もいない訳だけどさ。


「だけどこれはある意味、好都合かもな。この街のより沢山の人たちに知って貰わないといけない」


 僕がそう言うと、僧兵はポツリとこんな風に返したよ。


「けど、どう思うかは分からない。関わりたくないって思う人が多かったら、そんな集団心理が働くかも」
「でも……その意志を導くために、教皇って存在を頼るんだ。まずは知って貰う事が大事。耳で聞くだけじゃない、何となくじゃなく、その目で、その心で、どう感じるかが大事なんだよ。
 そうじゃないと、ただ元老院の意志に流されるだけだ。自分達でこのサン・ジェルクの人達には考えて貰う。そしてその総意がどうあったって、元老院には止められないさ」


 僕もチラリと空を見る。夜空を彩る魔法と爆発の光。そして飛空挺やバトルシップの動力部分の青い光の線。確かに何も知らなかったら不安になる光景かもね。


「だがその総意がな……どうなるか分からない」
「それはほら、教皇の腕の見せ所って言うか……いや、まあ僕はここの人達を信じてるよ。厚い信仰心の彼らは、シスカ教の教えを信じてる。
 それならきっと見捨てたりしてくれないってね」


 するといきなりスピードアップする僧兵。そしてこういうよ。


「そうだな。みんな慈愛の精神に溢れてるから、当然だ! 急ぐぞ!!」


 小さな歩幅でなかなか早く走るな。てか、入り組んでるから、そう感じるだけかな? サン・ジェルクはやっぱりモブリに住みやすい様に作られてるのかも。




 そんな事を思って走ってると、空から今までよりも大きい光が降り注ぐ。上を向くと、そこには大きな魔法陣が出来上がってた。


「来たか!」


 ざわざわと上空を不安気に見つめるサン・ジェルクの人々。だけどこの程度でざわついてると、映し出される映像には耐えられないかもしれないぞ。
 僕も何が映るかは知らないけど、ショッキングな映像なのは確実だろう。だって彼処から出力される映像は、先にリア・レーゼへと向かったテッケンさん達から送られて来る映像だ。
 実際これは僕達も気になるから思わず足を止めるよ。大丈夫。社はもうすぐそこだ。喧噪の中、僕と僧兵は緊張の面もちで魔法陣を見つめる。
 分かれたみんなの現状……そしてずっと気がかりだったリア・レーゼの様子が分かるんだ。見ないわけにはいかないじゃないか。
 すると先に音が聞こえて来たよ。


【うわあああああああああああ!! テッケンさんこっちはもう持ちませんよ!!】
【こっちも聖獣との戦闘中だよ。飛空挺から取れるだけの映像はこれ以上は諦めよう。全員飛空挺は放棄して降りてくるんだ】
【りょ、了解です!!】


 なんだか凄く大変そうだな。ギャーギャー聞こえるBGMはきっとあのドラゴンに成り損ねたモンスターの声だろう。僕も聞き覚えある。
 てか、早速テッケンさん聖獣とやり合ってるの? かなりヤバい状況じゃないか。もう飛空挺を放棄しちゃうってのも大変さが伝わってくる。


「おいおい、大丈夫なのかこれ? 映像はまだか……」


 隣の僧兵も不安気に魔法陣を見つめる。仲間の状況心配だよな、今の音声じゃ。確かどこかに中継地点を設けて簡易に組んだ魔法で映像と音をリアルタイム送信する手筈なんだけど、不具合でも起きてるのか?
 音が来てる時点で中継はちゃんと出来てるみたいだけど……台座にお札を張り付けて、空に漂わせてそれを仲介装置にしてるから、そこは襲われない筈。
 問題はやっぱり現場……だよな。すると魔法陣の上がザザザザガガガガと砂嵐が出始める。そしてようやく映し出されたその映像に周りが更にざわめいた――と言いたい所だけど逆だった。
 周りの誰もがその光景に息を呑んだ……ってのが正しい。声にも出来ない光景が沈みゆく飛空挺からは撮られてたんだ。
 赤く煌々と燃え盛るリア・レーゼ。そしてそんな中に映ってる大量のモンスター。そして再び、その映像もモンスターの汚らしい口がドアップで映ったと思ったら消えてしまった。
 実際、僕達も声が出ない。まさかあれほどとは……見えた限り、既に街中にもモンスターは進入してた――って事は、もうまさに追いつめられてるって事じゃないか? 激しく抵抗してる様子がなかったのは、籠城戦にでも移行したから……世界樹には比較的ダメージがない様に見えたのは、きっとそこに立て籠ってる?
 聖獣の目的は世界樹だ。下手に手を出して傷つけたくはないんだろう。だけど今は、それを逆手に取ってなんとか凌ぐ事しか出来ない……とも考えられる。
 クリエは無事なんだろうか? 多分大丈夫だとは思うけど……元が本殿に居たんだし、早くから避難も始めてたからな。だけど……それを知らずに今のを見たら……地獄絵図に見えるだろう。
 それだけの絶望的な光景だった。そう思ってると、再び映像が届く。


【うああああああああああああああ!!】


 そんな声と共に、燃え盛るリア・レーゼへと、迫る映像。これは多分、飛空挺から離脱した僧兵達の映像か。まさにさっきの僕達だな。


【飛空挺が……】


 そんな声と共に、飛空挺へと映像が向く。するとそこにはゴキブリみたいにウジャウジャと沸いたモンスターに囲まれて落ちていく飛空挺の姿が映し出された。
 大きな爆発で機体全体が炎に包まれてる。これで彼らも逃げるって事が出来なくなったわけだ。そう思ってると、飛空挺を落としたモンスター共が、今度は一斉にこの映像に向かってきてる。
 まあようは、この映像を撮ってる僧兵さんに迫ってるんだよな。やばいぞ、このままじゃあのグロい光景がサン・ジェルクの人々の目に焼き付くことに成ってしまう。
 そうなると、助けるって感情よりも恐怖が先行するかもしれない……だって同じモブリが食べられる所を見るなんて、衝撃だろ。


【う……うわあああああ、来るなあああああああ!!】


 ビクつく僧兵達。それは余りにも怯えすぎだろ――と普通の人達は思うかもしれない。だけど彼らにだってあの光景はトラウマに成ってるんだろう。
 彼らの仲間は無惨にも食べられて行ったんだ。それを思い出さずには居られない状況。最初から分かってた事だけど、やっぱり酷な事だったよな。彼らの怯え様を見ると本当にそう思う。
 だけどそれでも……頑張って貰うしかないんだ。彼らには今のリア・レーゼの状況をサン・ジェルクへと届けて貰わないと……言葉と思いだけじゃ伝わらない事がある。それが例え彼らにとってトラウマでも、彼らが居なかったら出来なかった事だから……
 画面いっぱいに迫る大量のモンスター。バサバサと響く羽音と、奴らの大きく開けた口から飛び出る涎が恐怖こちらにまでかき立てる気がする。
 てか、みんな恐怖で固まりすぎだろ。このままじゃ本当に食われるぞ!


「何やってるんだアイツ等!」


 近くに居る僧兵も思わずそんな声を出してしまう。するとその時、黄金色の細い光が幾つも下から降り注いで、モンスター共に当たっていく。思わず僧兵達から離れて高度を取るモンスター。
 だけどそれを追うように僧兵達をすり抜けて上昇する物体。


「あれは……聖典か!」


 ってことは――


【何やってるのよアンタ達! 死にたいわけ? しっかりしなさい! こっちも二度も助ける余裕はないのよ】


 そんな言葉を発する方へ映像が向く。するとやっぱりだ。あのメイド服はセラ。なんとも分かりやすい目印。普段着でメイド服なんてそうそういないからな。
 てか、案外無事そう……でもないかも。映像には他にもテッケンさんとノウイ、そして聖獣も映ってる。そう思ってると、映像が激しくブレる。何が起きたのかと思ったら、先に降りてたらしいリア・レーゼの僧兵さんが魔法でみんなを受け止めてくれたみたいだ。
 みんな恐怖のせいで地面に着く手段忘れてそうだったからな。グッジョブだ。


【た……助かったよ。だけど……これから一体どうするんだ? そもそもあの変なのなんだよ……】


 不安の声が漏れ聞こえてくる。そして向けられるのは変な仮面をつけた魚人。デッカい魚の頭をつけて、それ以外は筋肉質な体。腕と足周りにはヒレみたいなのが付いてる不気味な姿は本能的に嫌悪感が沸くよ。
 やっぱり何度見てもアイツは気持ちが悪い。


「まさか、アレが……」


 隣の僧兵は気づいたみたいだな。そして画面の向こうでも、リア・レーゼの僧兵さんがアレの招待を打ち明ける。


【アレが聖獣だ。アレはきっとウンディーネのだ。後一体、ここには俺たちと同じモブリの奴も居るんだけど……姿見えないから気を抜くなよ】
【アレが……聖獣。なんて不気味な姿してるんだ……】


 恐怖にうち震える様な声。確かに不気味だよなウンディーネ型の聖獣は群を抜いて不気味だ。だけどこのイメージで固定されると、残りの聖獣がちょっと不憫……ある意味グロいのアイツだけだし。そう思ってると、どこかからか幼い声が聞こえ出す。


【あははははは、なんだか殺されたい奴らが増えたね。半々にしようよ。そしてどっちが先に殺しきるか勝負ってのはどうだい?】


 そんな声を受けて、映像が色々と動く。だけどその姿を捕らえる事は出来ない。相変わらずモブリタイプの聖獣は姿を隠しての行動か。厄介なんだよなアイツ。
 それに指ぱっちん一つで魔法発動しやがるし、反則にも程がある。


【けっ、何が半々だ。こいつらは全員俺が食う!! お前は隠れんぼついでにサポートだけしてろ】
【ええ~そんなのつまんない~~】


 完全に遊び感覚。だけどこの間に、テッケンさん達もみんな一カ所に集まる。そして警戒しつつどうするかって事を話すみたい。真っ先に声を出したのは、目が点なエルフのノウイだ。
【ど、どうするっすかこの状況? 絶対絶命っすよ。お札仕えないんすよね?】
【そうね。あのチビ聖獣の魔法陣の影響下に居る限り、無理みたいね。だけどアンタのスキルがあるわ。ミラージュコロイドは準備できてるんでしょう?】
【それはそうっすけど……どうやって聖獣ニ体の目をくらませるっすか? 奴らには遠距離攻撃は効かないっす。それに小さいのは姿さえ……】


 相変わらずのノウイ。だけど相変わらずだからこそちょっと安心出来るな。これで妙にノウイのテンションがおかしかったら逆に不安だもん。
 まあ状況は全然安心出来ないけどね。一体どうするんだ? 不安すぎて目が離せないんだけど……ニ体の聖獣に、周りにはどうやらモンスターが一杯。リア・レーゼのピンチさは十分な程の伝わってる。 でも、逃げる場所があるって事は、そこにまだ他のみんなも居る……筈なんだよな。


【誰かが囮に成るしかない……か】
【そ、そんなのダメっすよ。みんなで戻らないと意味ないっす!】


 テッケンさんの深刻な言葉に、ノウイがそんな風に言って食いつく。そうだな、なんとかしてみんな無事に逃げられたら良いんだけど……ここからじゃ祈る事しかできない。


【ノウイ君の気持ちは分かる。だけどそれじゃあ、聖獣に食われる。奴らは僕たちを簡単に逃すほど、甘くはないだろう】
【それは……そうかも知れないっすけど。それなら自分が囮に成るっす! 自分ならやられない自信があるっす!】
【それじゃあ、どうやってみんなを安全な場所に運ぶんだい? 君しかミラージュコロイドは発動出来ない筈だよ】
【うっ、そうでしたっす】


 手詰まり……そんな感じが伝わってくる。周りのサン・ジェルクの人達も心配そうに上空の映像を見てる。実際疑問も多いだろうけど、訳が分からないながらも釘づけた。するとそこで凛とした声が伝わって来る。


【アンタが俯かないでくれるノウイ。アンタのおかげで沢山の僧兵が助かった。それに今ここで私たちを救うのもアンタなのよ。そんなアンタが弱気を見せないで】
【セラ様……でも自分は……】


 セラの言葉でも弱気が拭い去れないノウイ。だけどセラは力強くこう言うよ。


【囮でしょ? 大丈夫、そんなの必要ないわ。アンタは私の合図を待ってなさい。そしてどうか、他のみんなも私を信じてくれると嬉しいんだけど?】


 そう言って僅かに後ろを向くセラ。おいおい、何する気だアイツ? そう思ったのは僕だけじゃなく、テッケンさんもだった。


【何をする気なんだい?】
【奴らの視界を眩ませれば良いんでしょ。そのくらい余裕です。一瞬あれば、私達はこの場から離脱出来る】
【目の前の奴はそうだけど……もう一体はどこに――】


 その時、話し合いを終えたのか聖獣が大きく声を張り上げた。


【うるせえええええええ! お前みたいなガキに指図される筋合いはねぇぇんだよ!!】
【全く、相変わらず強引だねぇ。言っとくけど、僕は君が嫌いだよ】
【言ってやがれ! 奴らは全員俺様が喰い尽くす!!】


 そんな言葉と共に、魚聖獣は頭を上へと向けて、降り注ぐ大量の雨を集めだした。一気に巨大な水球が出来上がる。
 何をするのかと思ったら、今度はそれを自分に落とす。だけど水球は割れない。見てると、水球がどんどんと奴に吸収されて行ってる様な? そして水球が全部なくなると同時に、勢い良く魚聖獣は【ふん!!】と声を上げて体を張った。
 その瞬間、大量の水滴がセラ達を襲う。だけどそれはただの水滴。別に被害があった訳じゃない。でも……映像の向こうに佇む魚聖獣の姿は明らかに違ってる。
 肌がツヤツヤと言うか、それを通り越してなんだか水っぽいっていうか……気持ち悪かった青い肌が、今は透明度を増してまるで水のような……すると魚聖獣はその透明度の増した腕をセラたちへと向けた。


【さあ! ここからは俺様の独壇場だ!!】


 握った拳を開くとそれ同時に、沢山の水滴が銃弾波の勢いでセラたちを襲う。実際僕には見えたけど、周りの人達は何が起きたかわかってない様子。普通の人達には、セラたちがいきなり倒れた様にしか見えなかった。


【くっ……】
【セラ君、やっぱりここは僕が囮になるから、みんなを連れて――】
【うるさい!! テッケンさんは黙ってみんなとノウイの近くに居てください!】
【――セラ君?】


 激しい勢いでそう言ったセラ。テッケンさんはそんなセラの迫力に押し負けた。


【良い目だな。反抗的なその目を屈服と恐怖で蹂躙する。その感覚が俺は溜まらなく好きなんだよ!!】


 そう言って大きく体ごと首を振る魚聖獣。すると、その周りに水の輪が出来る。だけどそんな事を気にせずにセラは立ち上がる。


「ど……どうするの? 早く逃げないと……」


 そんな不安めいた声が所々から聞こえてくる。だけどそんなみんなの不安を一蹴する様な言葉をセラはいうよ。


【あっそう……だけど私はアンタに屈服なんて死んでもしない。私が頭を下げるのはローレでも元老院でも神でもない、唯一認めた友達だけよ!!】


 セラにとっては神は友達以下らしい。流石に信仰心厚いここの人達はちょっと呆然。聖獣も笑い飛ばしてる。


【くははっははは!! 面白い! そんな貴様を屈服させるのはすっげぇ楽しそうだな!!】


 そう言って作り出した輪を手に持ち、投げようとする魚聖獣。だけどその時だ。上空から奴の目の前に地面に幾本もの光の攻撃が撃ち落ちる。
 派手に地面をぶち抜いて煙をおこし足場を崩したのか。だけど聖獣はもう一体だ。


【全く、油断した結果がこれだよ。逃げられない内に、獲物は僕が頂いちゃっていいよね?】


 聞こえるモブリ聖獣の声。だけど既にセラは動いてたらしい。


【私達を舐めるな聖獣!!】


 その瞬間何も見えない空中に光が走る。聖典の攻撃だ。そして聞こえた僅かな悲鳴。それと同時にセラは叫ぶ。


【今よノウイ!!】
【は、はいっす! みなさん手を繋ぐっす!!」


 どうやってセラがモブリ聖獣の位置を掴んだのか? とか疑問は色々とあるけど、そんなの気にしてる暇はない。セラの声でみんなの手が繋がってく。そして最後にテッケンさんの手をセラが取ってミラージュコロイドに飛びこんだ。

「命改変プログラム」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く