命改変プログラム
散った船の残り
飛空挺を蹂躙してた木を破壊した僕。その瞬間、部屋中に張り巡らされてた枝部分が元気を無くして枯れていった。過度なエネルギー供給がなくなっただけじゃない。
核を無くして、生きてられなくなったみたいだ。
「はぁはぁはぁはぁはぁ……やった」
僕は荒い息を吐きながら小さくそう呟く。勢い尽きすぎてちょっと飛空挺に穴を開けてしまったけど、しょうがない。あそこで勢いを落とす訳には行かなかったんだ。
そう思ってると、ガシャンと重低音な音が近くで響く。僕がその音のした方に顔を向けると、大量のウッドール共が武器を構えてこちらを伺ってる。
「そうだったな、まだお前等が居たな」
僕はそう言って、ウッドール共に向き直る。
「来いよ。全員漏れなく、親の元へ送ってやる!!」
僕の言葉を皮切りに一気に攻め込んでくるウッドール共。僕はイクシード2で応戦する。
大部屋の敵を一掃して、僕は穴に向かって言葉を叫ぶ。
「お~~い、みんな大丈夫?」
「…………」
どうしたんだろう? なんだか反応が返ってこないんですけど。もしかして動力炉の敵をちゃんと倒しきって来なかったから……
「あちゃ~~」
嫌な想像が膨らむな。僕はまたここから降りようとするよ。イクシードも2に昇華してるし、余裕だろ。テッケンさんはかなり無理してたし、僧兵さん達じゃウッドールに押し切られたのかも知れない。
もしもそうなら自分のミスだ。僕は胸のざわめきを押し殺して穴の奥を見つめる。ここからじゃ青い光位しか見えないな。
でも大丈夫。今直ぐ行くよ! 僕は軽く地面を蹴る――するとその時、壊れた大部屋の扉の向こうから「スオウ君!」なる声が聞こえた。
そちらに視線を向けるとなんとそこには元気なテッケンさんの姿が! 僕は直ぐにその名前を呼ぼうとしたけど、その時自分のミスに気付きました。
僕の視界は一瞬でテッケンさんよりも低くなって穴を一直線に落ちていく。僕の声はきっと「テッケンさああぁぁぁ」ん、てな感じに段々聞こえなくなってたと思う。
こっちからもテッケンさん達の声が遠くなってたし同じだろう。僕はウネリを下に向けて着地――
「っと!? ととと……」
危ない危ない。ウネリの勢いがありすぎて床に穴が……イクシード2はまだ完全に制御出来ないな。まあここに来てようやく通常のイクシードを使いこなせる様になってきた位だし、仕方ないか。
てか、これじゃウネリを使って直ぐに上へ戻るって出来ない。これ以上床を壊すのはどうかと思うし、そもそも今ので支えにする床ないし……別の所に穴開けてまで、強引に上へ戻る必要ももうないかな。
「スオウ君、無事かい?」
なんだかついさっき言った言葉が返されるって変に恥ずかしい。僕はちょっとおちゃらけて「もう、テッケンさん達の方こそ無事だったんですね。失敗失敗」とか言って笑ってみる。
「ごめんよ。あの後彼らに回復して貰って、動力室を出たんだ。心配だったからね。だけど……流石だよスオウ君。僕達はそこに止まってても全然問題なかったみたいだ」
「いや……あはは、そんな事ないですよ。ありがたいです。心配して貰っちゃって。これはついつい自分が早とちりしたせいなんで気にしないでください」
そうそう、こんな失敗は一刻も早く忘れたい。まあ一声掛けてくれれば――とか思わなくもないけど、あの時は突っ走ってたからね。きっと耳まで届かなかったろう。
せめて後数秒早く到着してくれてたら……
「僕達も急いだんだけどね。通路にはまだ結構ウッドールが居て、そいつ等を倒すのに手間取ってしまったよ」
なるほどそう言うことか。確かに通路側からはもうウッドールは姿を表さない。テッケンさん達が一掃してくれたからか。
なんだか一気に物静かになった気がするな。聞こえるのは僕達の会話と、直ぐ近くの動力炉のヴィ~~~~ンみたいな音だけだ。
「テッケンさん、先に操舵室に行っててください。僕も後から行きますから。一刻も早く出発したいですしね」
「わかったよ。それじゃあ先に行ってるよ。とりあえずお疲れ様スオウ君」
とりあえずね……確かに取りあえずだ。本番はこれから。だけどここからリア・レーゼに着くまでは取りあえず小休憩みたいな物だな。
だから僕もこう返す。
「お疲れさまです――って言っても、これからですけど」
「そうだね。でもここでの戦いは終わったよ。その労くらい先に労っても良いだろう?」
「ですね」
テッケンさんの言葉に素直に納得する。そうだね。まだまだ……まだまだ……まだまだ……そんな風にずっと考えてたらどこかで崩れちゃいそうだもんな。
僕は基本、怒られるよりも、褒められて伸びるタイプだから、一回一回区切り付けて貰った方が良いかも。「よし、次もやるぞー」って気になるしな。
「さて、僕もグズグズしてられないな」
イクシードを解除して、セラ・シルフィングを鞘へと納める。そして僕も甲板の操舵室を目指す。そこでふと自分のHPを気にかけると既にギリギリ赤にならない黄色だな。
「回復しとくか……」
そう思ってウインドウを開き掛けたけど思いとどまる。
(いやいや、回復薬は重要だ。これ以上補給も望めないし、いざって時はこれに頼るんだ。不用意に使うのは良くないよな。
どうせ操舵室に行けば僧兵さんに回復して貰えるんだし、ここはちょっと我慢するか)
そんな結論に達して僕は操舵室へ急ぐ。
激しく打ち付ける雨を被りながら階段を上って操舵室のドアを開ける。するとそこでは三人のモブリがちょこちょこ動き回ってた。
どこの異次元に迷い込んだんだ僕? って一瞬思ったけど、流石に見慣れたかな。いや~一人もまともな身長の奴がいないと、マジでファンタジーな世界って奴を感じちゃうんだ。
なんかシルバニアファミリーみたい……そんな世界に紛れ込んだみたいな。CMしか知らないけど。
「あっ、スオウ君。ちょっと待っててくれ。もうすぐで動く筈だから」
「はい」
あの二人の僧兵さんも運転の知識を持ってる訳じゃないのか、結構大変そうだ。まあ僧兵全てが飛空挺運転できるって訳じゃないのは、当然だろうけど。
でもどうにか出来そうなのは良かったよ。そう思ってると、僕の体を光が包む。おお、回復魔法だね。けど、一言言ってくれたら良いのに。僕は魔法を掛けてくれてる僧兵さんに「ありがとうございます」って言う。
だけど僧兵さんから返事は貰えなかったよ。この人は良いのかな? 舵の所に加わらなくて。まあ僕が口出す事じゃないか。僕は部屋の隅に腰を下ろすよ。
こう言うことにはなんの力にも成れないしね。少しでも体を休めるのも大切だろう。
「そう言えば――」
僕が思い出した様にそう言うと、ビクってな感じになる僧兵さん。何? 僕は怯えられてるのか? そんな怯えられる様な事、した覚えないけどな。
でも別に回復を止めて逃げる訳でもないし、チラチラとこっちみてる。聞く気はあるって事かな。仕方ないので独り言みたいに話すよ。
「――この船に乗ってた乗員はどうしたのかな。中に姿がなかったってことはやっぱり……」
普通に考えたら、きっと全員やられたんだろうな。モンスターがわざわざ敵を生かすなんてしないだろうし……そう考えるのが妥当だ。
僕はふと前を見る。するととっても重い空気になってた。もしかしてみんなわかっててスルーしてたのかな?
(ミスったぁぁぁぁぁぁぁ)
僕は思わず顔を伏せるよ。僕も大抵空気読まないな。いや、普段は読んでる筈だけど、調子に乗ると外す……一端の勝利の余韻が僕にそのスキルを発動させたんだ。
やっぱり常に気を張ってた方が良いのかも知れない……そう思ってると、前の方からポツリとこんな言葉が聞こえて来た。
「仇は取る」
「ん?」
僕が顔を上げるといつの間にか、目の前には僧兵さんの姿が……なんだかキツい顔をしてらっしゃるけど……
「絶対に絶対に奴らは許さない! 責任を感じてるんなら、お前が責任をとって倒せよ!!」
責任って……あれは事故みたいな物……なんて言ったら流石にキレるかな。まあ責任は感じてるし、負ける気なんてない。
「倒すさ。倒してみせる。必ずだ!」
僕はそう言って拳を突き出して見せる。するとその拳に、ヨロヨロと小さな拳がコツンと当たるよ。
「絶対だから……負けたりしたらリア・レーゼ総出でお前を呪ってやるからな!!」
おいおい、なんて事言って拳を離すんだよ。それは脅しだよ最早。魔法に長けたリア・レーゼ総出の呪いなんか洒落にならない。ゾッとする。
てか、呪うなら聖獣にしとけと言いたい。そっちの方が憂さ晴らしになると思うんだけどね。だけどそっぽを向いた僧兵は話聞いてくれなさそうだし、諦めた。
彼なりの激励なのかも知れない。そうだとしたらちょっと不器用過ぎだけど……そう思っとく事にしとくよ。するとその時、丁度飛空挺に僅かな振動が響き出す。これはもしかして――
「行けるんですか?」
「ああ、出発しよう。リア・レーゼへ!!」
その言葉と共に飛空挺は浮きだした。所々穴あいちゃってるけど、致命的ではないし、問題なかったみたいだな。曇天の空に浮かび上がった飛空挺は進路をリア・レーゼへと取って動き出す。
「なんだか不吉な色をしてるな……」
飛空挺が進む進路の先を見つめて、僕はそんな言葉を漏らす。だって立ち上がって前を見ると、飛空挺が進む方向はなんだか異様に暗く見える。
雲が厚くなってるのか知らないけど、なんだか奈落にでも突っ込んで行ってるみたいだなってさ。
「不吉どころの話じゃないよ。スオウ君の話が事実なら、地獄になっててもおかしくない」
「う……嫌なことを言いますねテッケンさん。みんなを信じてるんじゃなかったんですか?」
聖獣達に攻め入られたってみんなならきっと……って言ってたじゃん。なのに地獄って……
「信じてるよ。だけど街はきっとただでは済んでないだろうなって事。それこそ地獄絵図の様な有様は容易に想像できるよ。
だけどきっとどこかで持ちこたえてるとは思う」
「それってある意味、リア・レーゼ落ちてないですか?」
街は崩壊してどこかでって、逃げ出してるよねそれ。僕がそう言うと慌てた様にテッケンさんは弁解するよ。
「ち、違うよ! どこかでってのは多分世界樹にたてこもったりって事だよ。そこだけは絶対に死守してるはずだ。世界樹を取られたらこの戦いは負けなんだ。
それだけはさせない筈だよ」
「まあ、そうですよね」
納得納得。この戦いは世界樹を守る為の戦い……だもんな。いろんな思惑が入り交じってたけど、ここまで追い込まれたら、ローレの奴もそれを一番に考えてるだろう。負けることだけは絶対に嫌そうだし。
僕達がそんな会話をしてると、操縦してる僧兵さんが訝しげにこう言うよ。
「君達は聖獣がリア・レーゼに攻め込んでるって言うけど、それは確定情報なのか? 彼から聞いたけど、確証はないんだろ?」
「確証はなくても、その可能性は大きい筈だ。聖獣は残り四体居たはずなのに、サン・ジェルクとの戦闘に出てきたのは一体だけ。そんなのおかしいだろ。
他は何をやってるんだって話だ。それを考えれば他がリア・レーゼへ攻め込んでるってのも信憑性があるんじゃないか? 森にもモンスター居なかっただろ?」
僕は丁寧に僧兵さんに説明してやったよ。これだけ言えば分かるだろ。まあ考えられる最悪の事だけど……その可能性は高い――というか、僕の中では確定してるんだ。
でもそのソースを言ったってどうせ信じないだろ? テッケンさんは無条件で信じてくれそうだけど、この二人の僧兵に言ったって「ふざけるな! そんなのは幻覚だ!!」とか言われそう。
それに変に疑われる要素を入れるよりも、論理的な所から埋めた方が良いだろう。結果的にはその可能性は捨てきれないんだからな。
「確かに……そう言われればそうなんだけど……実際どうしても信じたくないって言うか……なぁ」
そう言って僧兵さんはもう一人に話を振るよ。
「そうだね。そんな事考えたくなんかない。だけど……覚悟もしとかなきゃいけないんだよな。この闇の先で、リア・レーゼがどうなってるのか……それを受け止める覚悟」
二人は前を向いて黙る。僕達もなんだか声を出しづらくなったよ。するとその時「ピピピーピピー」となんだか甲高い音が操舵室に響きわたる。何、どこかに異常が出たとかか?
まさか落ちたりしないよな。僕は操舵してる僧兵を不安気に見つめるよ。
「これは……」
「どうしたんだい?」
テッケンさんも緊張の面もち。一体なんだってんだ? 音は相変わらず鳴りやまないぞ。一杯周りにウインドウを出してるようだけど……
「救難信号……かな」
「救難信号? って、事は助けを求めてる人が近くに入るということか」
まさかリア・レーゼからじゃないよね。いや、出しててもおかしくないけど、もしもそうなら攻められてる事確定だな。
でももしかしたら近くに入るプレイヤーって事も……でもそれなら飛空挺づたいじゃなく直接頭に響くか。わざわざ飛空挺の救難信号に引っかかるって事は、個人じゃないのかも。
「どこからだ?」
僕は身を乗り出して聞くよ。
「ちょっと待って……まさかリア・レーゼからじゃないよな」
どうやら僧兵さんも同じ心配してるようだね。彼らはまだリア・レーゼが襲われてない可能性を必死に信じようとしてるから、もしもこの救難信号がリア・レーゼからだったらその可能性は潰えた事になる。
だから結構必死だね。もう一人は祈ってるし。するとウインドウを見てなにやら解析してる僧兵さんがホッとした様にこう言った。
「大丈夫、リア・レーゼの信号とは違う様だ」
「おい、安心してないでどこからか教えろ。分かったんだろ?」
リア・レーゼからじゃなかったからって気を抜きすぎだ。現に信号を受信してるって事は、なにやら大変な事に成ってる人が居るんだろう。
「全くモブリ使いが荒い奴だ。そうだな、信号は結構近くから発信されてるな。でもこの信号のデータはない。ノーヴィスの規格ならそんな事ないはずだけど……」
疑問符を浮かべる僧兵さん。まどろっこしい事は良いよ。小難しい事は分からないしな。
「取りあえず近くに何かあるかも知れないんだな?」
「そう言うことになる……かな」
なんだかハッキリしないな。まあ初めて操縦してるんだろうし、細かな事まで贅沢はいえない。僕は甲板に出て外を見る。激しい雨で視界が相当悪いな。
だけど気づいて欲しいのなら、助けを求める側だって何か目印みたいな物を立ててる筈。僕は左右に走って下の森を見つめる。
すると森の暗がりの中で何か淡く光ってる物が見えた。アレじゃないだろうか。僕は雨音に負けないように、必死に叫んで光の場所を指さすよ。伝わったかな? そう思ってると、進路が光の場所に向かう。
伝わったみたいだな。よかったよかった。
光の方へ向かい段々と高度を落とす飛空挺。だけど木々が邪魔で着陸までは出来そうにないな。そう思ってると、その場所が見えてきた。なんだか結構な範囲が光ってる……
「ん? アレってまさか……」
見えてきたその場所で光輝いて浮かび上がってるソレは、どうみてもバトルシップじゃないか! その周りで光を発生させてるのは、どうやらサン・ジェルクの僧兵だ。
生き残り……か。どうしたら良いのだろうか? そう思ってるのは向こうも同じなのかな? もう見えてる筈だけど、なんだか歓迎ムードが無い。
こう言うのって普通、救援みたいなのが近づいてきたら大はしゃぎするものじゃないのか? でも全くないよ。なんだかザワザワしてるって感じだな。ゆっくりと近くの空に漂う飛空挺。
みんな操舵室から出てきて下を見る。
「どうするんだ? 来ちゃったけど……自分たちはアイツ等を助けようなんて思えない」
もう一人の僧兵さんもコクコクと頷いて同調してる。まあ無理も無いよね。殺され掛けてたし……
「こんな奴らに構ってる時間なんてない。一刻も早く、リア・レーゼの現状を確認したいんだ。放っておいてもその内、サン・ジェルクから救助隊が来るさ」
「確かにそうかも知れない……だけど、ソレよりも先にモンスター共が戻ってくる事もあるかも。さっさとリア・レーゼを落としてたとしたらだけど」
「縁起でも無いことを言うな!!」
船体の橋を叩いてそう叫ぶ僧兵さんの一人。まあ確かに縁起でも無かったな。だけど……実際ここで見捨てたらあの僧兵達は助かるのか疑問だ。
サン・ジェルクが救助隊を出すかも分からないし、ローレの奴は意地でもサン・ジェルクに頼りそうにない。そしたらどういう状況かサン・ジェルク側はわからないんじゃないのか?
「いや、艦隊からの連絡が入らなくなったら異常に気付くはずだよ。定期連絡とかは基本だし、戦闘に入る前にも状況は報告してたはずだ。
まあだからと言って直ぐに第二部隊とかがやってくるとも考えにくいけどね。僕たちがリア・レーゼに行って聖獣を倒せれば……だけどそれでも全てのモンスターは倒せない。戻ってきたら彼らは終わるだろうね。
そもそも勝てるとも限らない訳だけど……僕たちだけが返ってもそこまで戦況は改善しないかも知れない。その可能性が大きい」
いやな事をテッケンさんも言ってくれる。でも確かに、僕たち四人が帰った所で戦況が好転する……なんて甘い考えは出来ないな。
されど四人……じゃない。たった四人だ。僕は下を見つめてボソッとこう言うよ。
「それなら、彼らも連れて行けば良いんじゃないですか? 戦力には成りますよ」
「ふっざけるなあああああ!! あんな奴らと一緒に戦える訳ない! 信じてるものが違うんだ!」
いやいや、おまえ達の信じてるのはどっちもシスカ教だろうが。どんだけすり替えてんだよローレの奴。どうやらリア・レーゼでは既にローレ教が完成してるようだな。
「そもそもサン・ジェルクの奴らなんて信じれない!」
同じモブリで同じ国の中なのになんでそこまで仲悪いんだよ。良く内紛起きてないな。今までどうやって付き合って来たんだよ。
僕は困り果ててテッケンさんに助けを求める。
「落ち着いて。今はモブリ同士でいがみ合ってる時じゃない。それは君達も分かってる筈だよ。 戦力は一人でも多い方が良い」
そんなテッケンさんの落ち着いた声に、僧兵さん二人はちょっと困り顔に成る。
「それは……そうですけど……戦場で奴らに背中を預けるのは……」
「まあその気持ちも分かるよ。二つの街はずっとそういう関係だったしね。とりあえず、ここで僕たちだけで揉めてても仕方ない。降りて話をしてみないかい?」
そんなテッケンさんの提案に渋々頷く僧兵さん達。僕たちは台座で森へと降りるよ。すると僕たちの前には二・三十人位の僧兵がゾロゾロと現れた。
こんなに居たんだ……これはなかなかの戦力には成りそうだ。そう思ってると、一人の僧兵が前に出てくる。
「救援信号に答えてくれた事に感謝を示そう」
そう言ってみんな頭を下げる。案外柔軟な思考してるな。リア・レーゼの施しは入らん! とか言うと思ってたけど違ったよ。
「だが……本当に我らを助けてくれるのか?」
どうやらやっぱり疑っては入るようだね。流石にタダでは……とは行かないよな。そう言おうとして、僕はふとバトルシップを見た。
どんな物よりも速く優雅に空を駆けるその機体。今はボロボロだけど、もしもまだ飛べるのなら、違う可能性が現れるのかも知れない。
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