命改変プログラム

ファーストなサイコロ

開戦を告げる



 暗い空に立ち昇る、夜よりも黒い煙。一体何が起きてるのか、僕も……そして周りの僧兵達もわかってない。だけどただ言える事は、僕たちが固まってるその時も、腹の底まで揺さぶる様な音は続いてるって事だ。


【全兵に告げる! 人間を確保したのなら、この馬鹿げた砲撃をしてる奴を即刻とらえよ! 一刻も早くやめさせるのじゃ!!】


 金切り声の放送が響き、しばらく呆然としてる僧兵達。まあようやく僕を捕まえた所でこれだもんな。人使い荒いよ――って思う気持ちも分かる。
 まあ思ってるかは知らないけどさ……それよりもこの砲撃だ。一体誰が? もしかして元老院に不満を持ってた内部の組織が、実はリア・レーゼ側と裏取引してた……とかか?
 うう~んどうだろう? 宗教って信仰だし、そこら辺の組織とは違ってそういうの起きそうなイメージもあんまりないけど……それにこの僧兵達の元老院への信仰っぷりを僕は知ってるしな。
 信仰はそれを正しいと思わせる事だろ。それならその正しさを説いてる奴らに信者が反旗を翻すって考えにくいじゃないか。僕は捕まった大きな泡の中でくるくる回りながら考える。


(まあ、どこの誰だか知らないけど……とりあえず目的は達成出来た……かな?)


 結果オーライだろ。


「とりあえず目玉を砲撃してる場所へ! 一~六小隊はついてこい! 残りはそいつを『サウニー郷』の元へ!」


 サウニーって言うのあの長帽子の老人モブリ? ププ――ちょっと笑える。笑える状況じゃないけど……だけどこれは考え方をちょっと変えれば、試合に負けて勝負に勝った――みたいな物だよね。グッジョブだよ僕。
 ある意味、肩の力が抜けてホッとしてる。捕まってるのにね。てか、目玉を目玉と僧兵の連中が呼んでるのがビックリ。名前くらい付けてあげろよ。
 よくよくみたらあのクリッとした目が………………気持ち悪いな。そう思ってると、目玉達は一斉に上の階に消えていく。やっぱりもう一階上だったんだね。てか、この船何層構造? 
 既に僕が逃げ回っただけで三階程度は上ったぞ。更に上があって、その上が甲板だろ? 五層か? でも最初に僕がいた場所が最下層とは限らない。
 もう一・二層あるのかも。そう考えるやっぱりデカいなこの船。普通の定期船は三層位で、一つの階は大部屋使用だったからやっぱり作りが大分違う。
 まぁ、軍事用とただの定期船じゃ、目的とか違うし、当然だけど。周りの一回り小さな船は見た目あんまり定期船と変わらないけど……どうなんだろう。
 そっちと比べた方がわかりやす――――


「んなっ!?」


 ――――僕がそんな声を出すと同時に、隣の船が真っ二つに切断されて爆発炎上して森へと落ちていく。周りの僧兵達は慌ててガラス張りの窓に張り付くよ。
 ここも船首部分でガラス張りの空間なのは変わりない。だけどここは下の階よりも広くはない。なんだか薄暗い雰囲気の場所で、実際イマイチ何の目的の部屋なのか、僕にはわかりません。
 偉い奴のプライベート空間か何か? いや、そんな事よりも、今はこの状況だ。


「何だ? なにが起こった?」
「船が真っ二つなんてそんな!?」


 そんな事を言って戦々恐々と見下げてる彼らはなんだか、モブリだからちょっと可愛いな。偉そうにしてなければ、愛くるしさはナンバーワンだからね。沢山で集まって怯えてる姿は、なんだか絵本でものぞき込んでる気分になるな。
 いや、だからそんな状況じゃないか。そんな事を考えてると、今度はこの旗艦が激しく揺れる。実際、僕は泡の中で遊泳中だから揺れは感じれない。だけど周りの僧兵達が軒並みコロコロ転がったんだ。そして激しい音もした。
 しかも今、見えた。白く勢いある何かが、このガラスの所も通ってった。一瞬だったけど……僕の胴体視力は見逃してない。
 その証拠にガラス張りの外側に水滴がついてる。しかも魔法陣がいくつか展開してるのも見えた。あれは……何?


「今の揺れは一体?」
「攻撃を受けたんじゃないのか?」
「ええ!? 大丈夫なんですか?」
「この船には強力な魔法障壁が組まれてる。そうそう抜けはしない。それよりも早く砲撃をやめさせるんだ。行くぞ!!」


 僧兵達のそんな会話。なるほど、あの外の魔法陣は攻撃を防ぐ魔法障壁って訳ね。だからこの船はまだ無事なのか。最初に落とされたのも障壁はあったんだろうけど、この旗艦ほど強力な奴じゃなかったって事だろう。
 でも戦艦を一撃で真っ二つに出来るあの攻撃力が異常じゃね? 幾らこの旗艦程の防御力じゃなかったとしても、かなり強力な筈だろ。
 それを一撃で抜くなんて……今の一撃……まさか聖獣か? ガラスについた水滴を考えると、超圧縮された水。魚聖獣の攻撃かも知れない。


【全艦隊に告げる。我らは攻撃を受けている。旗艦を守りつつ高度を上昇るのだ!】


 放送でそんな指示をだすサウニー郷。直ぐに反撃をするかと思ってたけど、そうじゃないのか。奴の事だから野蛮で無礼なモンスターなんかに攻撃されたら黙っちゃいないと思ったけど、案外慎重じゃないか。
 やっぱり相手が聖獣からかも知れないからか? それにリア・レーゼからの情報で、聖獣は完全体へとなってるって知ってるしな。慎重にならざる得ないのかも。まあ判断は間違ってないと思う。高度を上げれば、魚聖獣の攻撃は届かなくなるだろう。
 だけど飛べる奴も居たよな……


【急いで砲撃をやめさせろ! 儂等が今聖獣共とぶつかってもなんの得もない!!】


 さっきのは全艦隊に向けての放送で、これはこの船だけの中への放送か? 全艦隊へは一応体裁を保ってたけど、ここでは焦りまくってるな。
 でも、今更攻撃を止めた所で、奴らが攻撃を受けた事実は変わらないよね。菓子持って謝りに言っても、話通じる相手でもないし……ここはもう潔く全面抗争と行くしかないと僕的には思うな。


「隊長! 目玉達から映像が届きました!」


 そう言って、僧兵はお札を見てる。僕も何とか見てみようと、泡の中をグルグル回る。どうやら誰もがあの目玉の映像を共有出来るらしく、お札を出してみんなが見てるから、近くの奴のを覗き込む魂胆です。だって気になるじゃんか。
 一体誰が、僕の代わりにこんな事を……するとちらりと後ろ姿が映ったぞ……あれは!


「我らと同じ僧兵だと?」


 まさにその通り。ここに居る僧兵の皆さんと同じ格好してる。するとその大砲をぶっ放してた犯人は、目玉に気づいたのか逃げ出すよ。そしてまた、ここで衝撃が!


「しかも複数だと!?」


 逃げ出したその僧兵は最初一人に見えたけど、四人位が別方向へ走って行くのが見えたんだ。だけど最初は確かに一人に見えてた筈だけど……重なってたのかな? 別の目玉の角度からなら元から四人に見えてたのも知れない。


「くっ……それぞれの小隊で別に追うぞ!! 一人たりとも逃がすな!!」


 そう言って一から六までの小隊のモブリ達が動き出す。目玉もそれぞれ、別方向に行った犯人を追い出してる。そして艦隊も上昇を始めた。地面が更に遠くなり、厚く黒い雲が近くなる。ここまでくれば流石に魚聖獣の攻撃は届かなそうだな。


「さて、私達も早くこいつをサウニー郷の元へ届けるぞ」


 そう言って残りのモブリ達の移動も始まる――としてると所で僕は気づくよ。こいつらもよりも高い目線で下を覗き込めるから真っ先に気づいた。


「おい! ちょっと待て! アレを見ろ!!」
「うるさいぞ。無駄な時間稼ぎは止めろ。貴様はあの方のお怒りをかったのだ。今から心底怯えてろ」


 僕の言葉を投げやりに捨てようとする僧兵。全く、人が折角大切な情報を教えてやろうとしてるってのに……


「うるせぇ! そんなのどうでも良いんだよ! それよりも不味い状況が迫ってるって言ってるんだ! 下を見ろ! 下を!!」


 僕の剣幕に不信感を抱いたのか、ようやく僧兵達は下を見ようとガラスの方へ移動する。だけどその時だ。大きな炎の玉が大量に上がってきて、それと同時にこの船も大きく揺れる。


「「うわあああああああああああ!!」」


 そんな声を一斉にあげて、またまた転がる僧兵達。だから言ったのに!!


「なんで攻撃が届いてるんだ?」
「だから下を見ろ!」


 何とか這い蹲ってたどり着いた僧兵達は下をのぞき込む。すると、その光景にゾッとした感じでこう言った。


「なっ……んだあの数は!? しかも飛んでるじゃないか!!」
「だから飛べる奴らでせめて来てるんだよ!」


 そう言った瞬間、もう一隻の船が炎に包まれて落ちていく。流石に今回は周りの飛空挺も一撃って事はないみたいだけど、威力の低さを今度は数でカバーしてやがる。


「おい、このままじゃ、戦力のじり貧だぞ!?」
「そんな事を言われても……戦うかどうかを決めるのは我らじゃない!」


 確かに、それを決めるのはあの老人モブリか……どうするんだアイツ? そう思ってると、なんだかゴゴゴゴなる音がして、船体が斜めになってる様な……しかも障壁の魔法陣とは別の魔法陣が外で光ってる?


「まさか主砲を!?」


 そんな声が数人の僧兵からきこえた。主砲……まさかそれまで、今逃げてる奴がやってるのか? でもどうやって? そんな疑問だけが次々と沸いてくる。だけど答えも見つかる間もなく、エネルギーを溜めた所で旗艦先端の主砲は発射される。いくつもの魔法で衝撃を和らげての発射。だけどそれでもかなりの揺れがこの船に伝わった。
 放たれた赤い光は、モンスターを大量に巻き込んで森を両断するように木々を燃やし尽くす。これはもう、宣戦布告も良いところだろ。


「やってしまった……」


 僧兵の誰かからそんな震える声が聞こえた。妥当な感想だな。自分達の住処を派手に焼かれたモンスター達は怒り心頭してるのか、更に激しく攻撃を飛ばしてきてる。そんな攻撃にもう一隻の船も犠牲になって沈んでく。
 これは……もう悠長にやってる場合じゃない。これ以上被害が拡大する前に、反撃するべき。いや、それが目的だから……とかじゃなく、純粋に心配しての考え。


「はわわわ……どうしてこんな……」
「女神様……我らにご加護を……」


 僧兵の人達は悲観してついには祈りだしたぞ。なんだかここら辺がアルテミナスとは違うね。エルフなら、戦闘にすぐ思考が切り替わりそうな物だけど……モブリはまず祈るようだ。
 そんな頼りなさげな僧兵達に僕はこう言うよ。


「おい、いいからさっさと僕を元老院の所まで連れて行け。闘わないと、全滅だぞ!」
「貴様が言うな! 貴様が!! そもそもの原因は貴様が逃げ出したりするからこんな事に! この邪神の使いめが!!」


 むむ……邪神の使いって、そこまで言わなくても。それに僕は何もしてない。出来なかったんだ。この状況を作り出してるのは知らない奴だっての。
 自分達の無能さを僕に押しつけるな。全く、良い迷惑だよ。でも周りからは僧兵の言葉に便乗するみたいな、厳しい視線が僕に向けられてる。


「ふん、喚かなくても連れていってやるさ。だが、サウニー卿も、もう貴様に優しくはしないぞ。何をする気かは知らないが、貴様の言葉など、あの方が聞くわけがない」
「はは……優しくなんて元からされてないし。それに別に強要することなんか言わない。でも自分の意見は叫んでやる。このままじゃ全滅だ! てな。お前達はどうせ、何も言えないんだろうからな」


 命令に従うだけをうまとしてる、ヌイグルミ軍団には無理なことだろ。僕はここでこいつらと心中する気なんかないから、仰ぎまくってやるよ。


「わ……我ら僧兵は!!」
「いいよ、もうそれは。聞きあきた。だけど、自分からは何もしなくて良いってその考えは、やっぱり何か違うと思う。今落ちた船には、お前達の同類が居るんだぞ!」


 兵隊だから……組織だから……ただ忠実に命令にだけ従ってれば良い。それで諦められる関係しか、僧兵達は築いてないのかよ。


「それでも!! 上の命令は絶対だ。それに我らはこの国と人々為に死を覚悟してる。我らの関係も知らずに……安く語るな!!」
「だけどこのままじゃ、何も出来ずに死んでいく。それじゃあ犬死にだ!!」


 僕の言葉が相当頭に来たのか、何人かの僧兵はその手の武器をそれぞれ構えた。


「今の発言は撤回して貰おうか。我らの同胞を侮辱するな!」
「侮辱も何も……本当のことだろ。このまま何も出来なかったらお前達だって犬死にだ」


 だからこそ、闘わないといけないんだろ。その胸に誇りと気概があるのなら、直ぐにでも立ち上がるべきだ。縛られた鎖に繋がれたまま、何も出来ずに終わる気か!?
 それでいいのかよ?


 僕の言葉に、小さな僧兵達は目をぎらつかせてる。一斉にそんな目で見られると、流石にモブリでもキツい物があるな。


「貴様がなんと言おうと、我らの考えが変わることはない。何も出来ないなんて思わないし、このまま何もしないで居ることもない。
 必ずやサウニー卿は決断してくれる。我らはそれを信じて、今やるべきことをやるだけだ」


 そう言って僧兵達は頷いた。そして傾きが元に戻った船内で、そのサウニー卿の元へと僕を連れていく為に、歩き出す。
 するとその時だ。例のサウニー卿からのありがたいお言葉が放送されてきた。


【全乗組員に告げる。前の任務には最低限の人数だけを残して持ち場につけ! 反撃を開始する! 第一級戦闘配備を急げ!!】


 それと同時に、けたたましいアラームの音が鳴り響く。やっぱりその決断をしたか。まあ妥当……というか、やるしかないよな。ここで逃げたら、折角用意した艦隊がボロ負けしただけになるしな。
 誇り高い元老院のお方は、そう言うプライドが傷つくこと嫌いそうじゃん。ここの僧兵達は「ほらみろ」みたいな顔してるけど、僕はアイツが犠牲になった僧兵の為に立ち上がったとは思ってない。
 どうせくだらないプライドの問題だよ。


「よし、命令は下った! 速やかに持ち場に着くんだ。こいつは我らが責任持って届けよう」
「「了解! お願いします」」


 なんだか自分達の願いが届いたかの用に生き生きしだしてる僧兵達。みなさん素早く持ち場に着くために、散っていく。そして周りの船も動き出した。真っ先にバトルシップが、その素早い身のこなしで、モンスター共に向かってく。それを援護するように、周りの船も砲撃開始。
 ここに聖獣対サン・ジェルク艦隊の戦いは火蓋を切って落とされたんだ。




 激しい音が外の方から鳴り響いてる。この船も定期的に強い振動に揺さぶられてる。戦闘は段々と激化してるようだ。今僕は、通路を先導されてサウニー卿の元へ連れて行かれてる最中だ。
 戦闘が始まってから、随分とこの船の中も慌ただしくなった。さっきから僧兵達が通路をひっきりなしに行き交ってるよ。通路を進み、いくつかの扉を開けて進む。階段を上がり、更に扉を開けて今度は下に行く。


「なんだか上がったり下ったり、忙しいな。迷ってるのか?」


 そんな気がとってもするんですけど。いや、あり得ないとは思うけどね。でも……なんだかそんな気がする。大丈夫か?


「黙ってろ。貴様に教える義理はない。今、サウニー卿が居るであろう指令室は特殊なんだ」
「特殊?」


 なんだ特殊って? もしかして魔法的な何かが施されてる場所? 重要な場所だからこそ、手順を踏まないといけないとか? まああり得なくはないよね。
 それに魔法に長けたモブリなら、そういうの出来そうだ。冷蔵庫もそうだったしな。
 そんな考えをしてる間に、いつの間にか随分と静かな通路に入ってた。しかも幅も広いし、明らかに今までの通路よりも豪華だ。
 床には絨毯あるし……側面には黄金の屏風がある。何これ? 西洋と和の融合か? 文化が昆流してるぞ。まあ食堂にはソファあったけどね。てか、今までと雰囲気違う。


「おい、どこだここ?」
「船の中に決まってるだろ。さて、急いで貴様を届けて、我らも持ち場に戻るぞ」


 そんな僧兵の言葉に、他の僧兵もいきおいよく返事する。もう僕も敵だな。こいつらにしたらさ。いや、サン・ジェルクくで暴れた段階でそうだっけ? 長い通路を進み、目指すは大きな扉。その先が指令室か。
 よくよく考えたら、勢いで「連れてけ!」って叫んだけど、これはこのままでいいのだろうか? もう目的は達した訳だし、どうにかしてこの船から脱出したいよね。この船の甲板にはまだ乗って来た台座があるはずだし、そこまで行けば脱出出来るはずだ。
 実際、もうあのサウニーとか言う奴と会いたくないしな。また雷撃受けるのはイヤだぞ。僕は急いで、行動を起こすことに。これもあのやり方で行こうじゃないか!
 自分の拳に青い雷撃を宿して、おもいっきり振り抜く。だけど感触が異様に柔らかい。泡だからか。


「ダメ……か?」


 判定されないな。これだけ薄そうなのに、耐久力はしっかりとあるんだから厄介だ。しかも再生してるように感じる。いや、そもそも弾力というか、通り抜けてるのに出れない感じ? 一部を破ってもこの泡全体が弾けない……みたいな。
 だから傷を付けた所にこの雷撃の力を残すってことが出来ない。これじゃあやりようがない。


「無駄なことは止めておけ。貴様は逃げることなんて出来ない。というか、無駄な仕事を増やすな」


 僕の必死の足掻きを冷めた目で一蹴する僧兵。そう言われて諦めてたら、僕は今ここに居ないんだよ!!


「うおおおおおおおらああああああああああ!!!」


 意地になって僕は腕を振りまくる。だって自分でどうにかしないと、この後のローレの行動とか知らないからな。いつアイツが動き出すのとかわからない。それにこのままこの状態で巻き込まれてるのは心臓に悪い。
 自分で何も出来ない状態ってのは、モヤモヤするんだ。だけど幾ら高速で腕を動かしても弾けない。破れない。傷が残ることもない。


「はぁはぁはぁ……」


 くっそ……折角止まってた血が、再び落ち始めた。流石にこれ以上やると、手を動かせなくなりそうだ。


「無駄な足掻きはおしまいか?」


 ムカ……あからさまに挑発した言い方だった。おしまい? な、訳ないだろ!!
 僕は雷撃を全身に広げて、肩を前にだしてタックルしだす。だけどビョミ~~~ンと伸びるだけで破れはしない。鋭さで今まで押し通してたのに、ここでこの選択は意味ないかも知れない。でも、もう僕にはこれしかない。他にやりようがないんだ。
 だからこれしか……


「やけくそだな」
「ああ、その通り……ヤケクソだ!! でもな、これは僕の意志だ。誰かの命令なんかじゃない。僕自身が自分で決め手の行動だから、最後まで自分自身を信じて突っ走れるんだ!!」


 僕は何度も何度もビュミョ~~ンと伸びる泡に突撃する。僕はその伸びの反動を利用して、背中側に倒れて、勢いを増して再びビョミョ~~~ンと突撃。それを何度も繰り返す。
 勢いもどんどん増すぜ。この伸びにだって限界はきっとある。それを破るんだ。その為にはもっともっと勢いが必要。


「諦めが悪い!!」
「ぐはっ!?」


 僕が超頑張ってたのに、僧兵のやろう。僕がビュミョ~~ンとしてる所にタイミング併せて蹴りを入れやがった。折角増してきてた勢いがこれでパーだ。くっそ……もう一から勢いを取り戻す時間もない。扉は直ぐそこ。


「ふん、大人しくして――ろ!?」


 僧兵の言葉の途中でいきなり屏風から飛び出す複数の影。その影が手際よく僧兵を打ち倒して行く。


「なんだ貴様っ――がっ……」
「ぐえ……」
「きゃ!?」


 そのまま何故か床に倒れ込んで寝息を立てる僧兵。一体なにが? てか誰だ? するといきなり声をかけられた。


「やあ、大丈夫だったかいスオウ君?」


 それはなんだかとっても聞き覚えのある声でした。まさかこのサン・ジェルク側の僧兵の格好をしてるこの人は……

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