命改変プログラム

ファーストなサイコロ

頭痛が絶えない



 上を見れば漆黒の中に煌めく星々の明かりが遠くに見えて、下を見れば僕達が駆け回ってる世界がそこにはあった。青く大きく、そして輝かしい世界の姿が見て取れる。この漆黒の中、無数にある世界の中でも、きっと一際美しいと思える世界、それが僕達の冒険の舞台、LROなんだ。
 クリエの涙は止まらない。自分のせいで大切な友達が連れ去られたと思ってる。自分が背負わなかった重荷が、初めての友達を奪い去った――そう思ってる。


「うぐっ……えぐっ……うぅ」


 声を押し殺して嗚咽を漏らしてるクリエ。だけどそんなクリエを撫でながら、シルクちゃんは優しくこう言うよ。


「おもいっきり泣いて大丈夫だよ。友達が居なく成っちゃたっら悲しいもん。我慢しなくて良いんだよ。クリエちゃんはまだ小さいんだから、お姉ちゃんが全部ちゃんと受け止めてあげる」
「うっうっうぅぅぅぅ……」


 クリエはだけど首を振る。どうやらクリエは泣きたくないらしい。


「ダメだよ……それじゃあダメなの! クリエが助けなくちゃ! だって……だってクリエは友達だもん!! だから泣きたくなんかない! でも……でもでも、クリエには何も出来ないよ。
 だから……涙が出て来ちゃうの……うっうぅぅ」


 本当は自分で助けたい。そんな風にこいつは小さいながらも思ってるらしい。友達だから……やっとで出来た友達だから、自分にしか見えなくても……いいや、だからこそ、クリエは自分しか助けられないとも思ってるのかも知れない。
 でもまた、自分の無力さもこいつは分かってる。神だ、なんたらの力だと言われても、クリエ自身はそれを使える訳じゃない。
 自分が無力なだけの子供と自覚してる。全く、きっとその子も別にお前に期待なんてしてないと思うけどな。それでもその子も友達の為に自らを犠牲にしたんだろう。
 クリエはこの通り泣き虫で全然子供で、寂しがり屋だからな。僕はクリエを抱えてるシルクちゃんと視線を交わす。僕はため息一つと肩を竦めてみせる。そして彼女は少し頭を傾けて、その銀色の輝かしい髪を揺らして笑顔をくれる。
 ついでにノウイや鍛冶屋、テッケンさんとも視線を交わすよ。みんな良い笑顔をくれる。セラの奴は遠くで背中向けてるのでなんともいえない。ついでにリルフィンは世界樹の内側の方へ視線をやってソワソワしてる。
 きっと早くローレに会いたいんだろう。まあ聞いてはいると思う。余計な事言ってこないしな。そこら辺はきっと空気を読んでるんだろう。
 僕は一回目を閉じて、そして今度は真っ直ぐにクリエを見る。


「なら、僕達を頼れよ。そうしようとしたんだろ? 良いんだよソレで」


 僕のそんな言葉にクリエは涙を流す顔をこちらに向けるよ。


「でも……スオウ達は友達……じゃないし……クリエがクリエが助けなくちゃって……」
「何言ってるんだよ? 僕達も友達に成りたいって、そうシルクちゃんも言っただろ? それにお前がその子の事でいつまでも悲しむなんて見てられるかよ。
 丁度良いから恩でも売って友達に成ろうと思う。その子とな。だから――――――――――――任せとけ。お前に出来ない事、僕達がやってやる」


 するとその時、僕の方になかなかの重さがのし掛かる。それはテッケンさんだ。それに逆側の肩に澄ました感じで手を置くのは鍛冶屋。どうやらみんなその気の様だよ。
 ホントお人好しバッカだな。
 ピチャンピチャン……とクリエの大粒の涙が床に落ちていってる。その瞳がたくさん濡れて、大きな瞳が一際輝いてる様にみえる。


「だけど……スオウにはもうお願いしてる……クリエのお願い……聞いて貰ってるよ……お願いは欲張ったらいけないって……シスター言ってたよ……」


 あらら、確かにあの人はそう言う人だったのかも知れない。クリエを思ってそう言ったのもわかるし、間違ってるとも思わない。
 だけど僕は神様じゃないから、こう言えるよ。


「そうか、でも僕は神様の様にケチじゃないからな。それに世界中の誰ものお願いに耳を傾けてる訳でもない。僕はクリエだから……お前だからその願いを受け入れる。
 叶えてやるよ。幾らでも。だから……その口で言ってみな。願ってみな。僕達はちゃんと受け取るからさ」


 クリエはそんな事を言う僕を見て、両隣の奴らを見て、更に色々と視線を巡らせた後、自分を抱えてくれてるシルクちゃんを見る。


「私達は友達の願いを無碍になんかしません。クリエちゃんが築いた絆が私達を動かすんだよ。何も出来なくなんか……無いんだよ!」
「――っんん!! 助けて……シャナを助けて欲しい!! 大切な……大事な……クリエの初めての友達なの!!」


 シルクちゃんの腕から飛び出しそうな程に頭を振って僕達に訴えるクリエ。涙が粒子の様に舞ってる様に見えるよ。僕は勿論その言葉を受け取る。最高の笑顔で、親指を立てた拳を突き出して、こう言う。


「おう! 任せとけ!!」


 そもそも聖獣は倒す予定だしな。僕の言葉を聞いたクリエは今度は大口開けて泣き出した。安心したのかな? まあ何はともあれ、死ねない理由がまた一つ出来てしまったな。
 この世界は本当に、いろんな物で僕を縛りつける。まっ、全然悪くは無いけどな。眼下で光LROと言う世界を僕は見つめる。




「やっとで来たわね。遅いのよ全く……」


 そう言ってふてくされてブツクサ言ってるのはこのリア・レーゼ代表、ローレ様です。どうやらさっさと僕達がこなかった事にご立腹なご様子。面倒な奴……じゃなくてしょうがないからご機嫌位はとってやるか。
 確かに待たせたし、そもそも僕達は任務失敗したしな。


「済まないローレ。ふがいなくてさ」
「全くその通りね。こっちは召還獣まで出したのに、倒せたのが一体だけなんて、どんだけ雑魚なのよあんた達? 本当なら今ここで腹でも切らせたいくらい。
 そもそも真っ先に土下座すべき。頭が高いのよ。誰の御膳だと思ってるわけ?」


 ピキッ――と眉間に早くも皺が寄る。人が下手に出ればその高い鼻を見境無しに伸ばしやがって……本当に人を苛つかせるの旨いよなローレは。


「ほれ、さっさと土下座しなさいよ。言っとくけど、私より高い目線じゃ土下座とは認めないから。常に私を見上げる様にしなさいよ」


 ビキビキッ――と怒りのマークが増えていくぜ。くっそ、きっとこの布の向こうでほくそ笑んでるであろうローレをぶっ飛ばしたい。
 顔とか見たこと無いけど、想像で「へのへのもへじ」で顔を書いて笑わせると、マジで腹立つよ。しかも常に見上げろだと?
 野郎、モブリだから常に見上げる為には土下座中頭を絶対にあげるなと言ってるのと同じだ。


「何よその目は? 誰のせいでこんな深刻な事態に成ってると思ってるの? 今ピンチなのよ。アンタが思ってる以上に深刻なの。
 どっかのバカ――アンタが聖獣を解放してしかも一体しか倒せませんでしたとか役立たず丸出しで悪びれもせずに戻ってきて、実際私的には死んで詫びろよと言いたいところを、土下座で済ませてやろうって言うんだから、ありがたく頂戴しなさい。
 でないとそこのガキ、サン・ジェルクに渡すわよ」


 バカと言った後でわざわざ僕を指すなんてこいつ、バカが僕だとバカにした言い方で伝えたかっただけだろ。しかも最後なんて脅迫だし。誰がこんな奴にリア・レーゼを任せてるんだ。


「お前……クリエは大事な交渉材料だろ? そんな事して良いのか?」
「言ったでしょ、状況が変わったのよ。サン・ジェルクに専念できれば良かったんだけど、今はそうじゃない。強力な聖獣共を相手しないとダメなのよ。しかも既にサン・ジェルクは動いてるしね。
 ここを狙われると厄介だわ」
「それってまさか……エアリーロが言ってたサン・ジェルクの艦隊が来てるとかって奴か?」


 僕の言葉に、みんな驚いた様に声を出す。そう言えば言ってなかったっけ? みんなは報告とかの為だけにここまで来たと思ってたのかも。後はこれからの事。だけど実はこれもあったんだよ。


「その通り、今このリア・レーゼから南西十キロの場所に奴らの艦隊が数十隻集結してるわ。森に近づかない場所で様子見をしてるって感じね。
 でもついさっき面白い通信が入ったわ。大変そうだから力を貸してやろうか? って奴。だけどその条件は勿論その子の引き渡し」
「待てよ。サン・ジェルクにはまだクリエは見つかってないって報告したんじゃないのかよ?」
「そうしたけど、私たちの関係は決して仲良くないのよ。疑いあってるし、蹴落とそうしてる。だから信じてなくて当然。実際合ってるしね」


 むぐ……確かに合ってはいるな。だけど確証も無しに、強引に引き渡しを迫るとは、随分な強気だな。
「それだけリア・レーゼが危機に瀕してると奴らも理解してると言うことだ。我らに選択の余地が無いこともわかっての申し出。
 取引ではなくまさに脅迫だな主よ」
「まあ、その通りね。この取引に応じなかったら、なんとか聖獣を倒したとしても、その弱ってる時に奴らに乗っ取られるんでしょう」


 なんか素っ気なく言ってると感じるのは僕だけなのか? ローレの奴は結構軽く言葉を発してるぞ。実はどうでも良かったり……はないか。自分が卑下されるのは我慢成らない奴のはずだからな。
 リア・レーゼはローレの王国みたいな物だろう。それを取られそうなのに……と、言うか色々とピンチなのにこの余裕。何かあるのか?
 そう思ってると、クリエがぎゅっと僕の服を握ってくる。僕たちの会話を聞いてて不安に成ったのかも知れないな。
 まあ良くわからなくても自分の事とはきっとわかってるだろう。不安そうな顔。そんな顔するなよって感じが募る。だから軽く笑って僕はローレに向き直る。


「言っとくけど、クリエを奴らに引き渡すなんて絶対にしないからな」
「そうね、後々面倒だしそれは実際避けたい所だけど、やむ終えない場合ってあるじゃない。私はこのリア・レーゼを守らないといけない立場だし、責任って奴があんた達とは違うのよ」


 ちっ、ローレの癖に責任とか……自尊心の問題だろ。ご立派な言葉に言い換えやがって、確かにローレにはその責任はあるだろう。
 だけど実際その責任って奴をどれだけ本気でこいつが背負ってるか分かった物じゃない。誰かの為に――とか動く奴じゃないよな。


「そんな疑り深い顔でみないでくれる? そもそもの原因はアンタでしょスオウ? アンタが世界樹の加護を壊すのはいけないのよ。
 そこのお子様も恨むならそいつを恨みなさい」


 滅茶苦茶言うなおい! なんて事をクリエに言ってんだ。鬼かコイツは! マジでローレはどうしてその立場に居るのかが理解できない。人選ミスだよ。LRO最大の失敗だよ。
 まあ確かに僕のせいだけど……言うことがなんか偉い奴って感じじゃない。悪いけど僕にはローレの威厳って奴が全くわからん。
 だからこう……直ぐに噛みつきたくなるというか――


「恨まないよ!」
「「!!」」


 僕がまさに何か気に障る発言でもしようとした矢先に、そんな力強い言葉がこの場に響いた。
 沢山の洋服に、布の切れ端が床に散らばり、天井からも色とりどりの布が何枚も降りてるこの場所にクリエのそんな一生懸命な言葉が響いたんだ


「クリエ?」
「クリエはクリエは……スオウの事恨んだりしない! スオウはクリエの為にいっぱいいっぱい頑張ってくれてるもん! クリエはそれを知ってるもん!!」


 はは、なんか嬉しい事を言ってくれるじゃんか。照れくさいけど、やっぱり嬉しいな。だけどそんなクリエを見ても、ローレはブレたりしない。扇子片手に鼻で笑って見せる。それがローレです。


「ふふん、頑張ってくれてるね。知ってる? ソイツは別にアンタの為にやってるんじゃないわ。まあ半分くらいはクリエの事もあるんでしょうけど、大方は自分の為よ。
 だって邪神の呪いを受けたスオウには時間がない。そうでしょう?」


 むむ……この野郎言わなくても良いことをなんでクリエの居る前でバラすんだよ。本当に好きになれない奴だなこの女狐は。
 絶対に友達いない。確定だよ。


「スオウ……本当?」


 僕を見上げるクリエの瞳がブレてる様に見える。今まで信じてたのに、それが自分の為じゃなかった……その衝撃はクリエの様な小さな子には大きいかもしれない。
 自分が死ぬかもしれない事なんて、クリエに伝えるべきじゃない。そう思ってたのにこの野郎は……赤い布の向こうで扇子を口付近に当ててほくそえんでるのが見えてイライラしてくるよ。


「スオウ……」


 更に強く握り、僕の服を引っ張るクリエ。誤魔化す……とかはダメっぽいな。


「本当だ。だけどそれは僕が邪神の呪いを受けてるって所と実際に命は後数日しか持たないって所だけだ。僕はクリエの事を蔑ろにしてる訳じゃない。
 確かに自分の事も勿論あるけど、だけどクリエの問題をやってるときっと自分の問題も解決出来る様な気がするんだ。
 だから全力でやってる。これはマジだ」


 僕はクリエの大きな瞳を真っ直ぐに見つめる。ここで視線を逸らしたらやましい心があるみたいだろ? クリエの問題を自分の為の踏み台にしてるとか思われたくない。


「クリエ……また自分の事しか考えて無かった。スオウがそんな事に成ってるだなんて全然知らなかった。初めてあった時に、親切にしてくれたのはそういう事だったんだね」


 そう言ってなんだか切ない笑顔を見せるクリエ。違う、だからそうじゃない! いや、そうじゃない訳じゃないけど、何か違う感じがする。


「クリエ、それはお前が気にすることじゃない。お前はまだ子供だし、責任とかそんなの気にする事ないんだ。それに見くびるなよ。
 僕は何も知らなくたって、あの場面で誰かを見捨てる様な事はしない。絶対にだ。だからきっと僕はいつどこで会ってたとしても、きっとクリエを助けるよ」
「だけど……クリエのお願い聞いてるとスオウが死んじゃうかも知れないんでしょ? そんなのイヤだよ……」


 再びその瞳の縁に涙が溜まり出す。僕は今度は力強くこう言うよ。


「信じろクリエ。僕は死なない。そう約束しただろ? それにお前と関わった事の正しさはもう証明されてる。もう一度テトラの奴に会えたしな。
 この道の先にきっと僕もクリエも大丈夫な未来がある。そう思えるからこそ頑張れるんだ!」


 クリエの頭を豪快に撫でて、僕はへっちゃら感をだすよ。クリエは「うん」と小さく言った。実際どれくらい納得してくれたのか分かんないけど、あんまりそこら辺を気にさせたくない。
 でもそれは……もしかしたらただ僕自身が、クリエにヒーローみたいに見られたかっただけなのかも知れないな。自分の為……それがあるとヒーロー度が違うじゃん。


「そう言えばそんな報告受けたわね。確かあんた達が聖獣戦に行く前に」


 僕の言葉で思い出したようにそう言うローレ。そう言えばその報告をあの僧兵で元気な爺さんモブリに任せてたんだっけ? どうやらちゃんと報告してくれてたみたいだね。当たり前だけど。


「あの邪神がここに現れるなんてね。アンタの呪いってどんな条件で掛けられてるんだっけ?」
「……金魂水ってアイテムを使えって言われてるな。でもどの場面でどのタイミングで使うかは不明だし、それを使ってなにがどうなるかも分からん。
 僕がそれを完了出来ると、僕には今以上の力が与えられるって事だ」


 ホント、そろそろ金魂水の使い所位教えろよなアイツ。何の為に出てきたんだっけ? だよ。確か丁度顕現出来る寄代があったからだっけ。自分で見つけなくちゃ意味がないって事なんだろうけど、そんな暇さえこの状況じゃ無いんだよね。
 アイテム欄に入ってる金魂水は、その時に成ったら反応するのかな?


「ふ~ん案外対等な条件みたいね。邪神言う割には甘い感じ」
「どこが甘いんだよ。僕は命握られてるんだぞ!」


 甘いとか僕の立場になって言ってみやがれ! 甘いなんて……そんな訳ないだろ。理不尽だっての。


「だけどアンタも飲んだんでしょ? 力の誘惑に負けて。それじゃあ文句を言う資格なんかない。今更何言ったって遅いわ。
 アルテミナスの戦争を乗り越えて自信過剰になってたその時の自分を呪いなさいよ」


 それは実質的に僕自身を自分で否定しろと? まあ確かに完全な自業自得だけど……別に自信過剰に成ってた訳じゃない。
 寧ろあの時はそれとは逆な状態だった。だって暗黒大陸で惨敗してたし、テトラの野郎にはフルボッコされたもん。それにシクラとか柊、その他姉妹の存在。それを考えたら、このままじゃだめじゃないかって……そう思えた。
 だから……リスクを受け入れても僕は『力』を欲っしたんだ。


「だけどその邪神の望みは気になるわね。一体どんな心残りがあってこの世界にまた現れたのか……金魂水って奴を見せてみなさい」


 僕は言われるがままに金魂水をアイテム欄から取り出す。するとなんかピッカピカしてた。


「うおっ、なんだこれ? 超光ってるんだけど!?」
「ちょっ……どういう事よ? 眩しいからしまいなさい!」


 全く見せろとかしまえとか言う事がコロコロ変わる奴だ。言ってる事が滅茶苦茶じゃないか。まあ取り合えず眩しいからしまうけども。


「ふう、何なのよあの輝きは?」
「知るか。最初はあんなに光って無かったっての。綺麗な瓶に入った黄金色の水だったんだよ」


 本当になんであんなにピッカピカなんだ? すると隣のシルクちゃんがこんな事を言うよ。


「何かに反応してる……とかじゃないですか? そう言えばなんでこの世界樹は光ってるんでしょう」


 そう言えば今まで完全にスルーしてたけど、聖獣戦の途中から世界樹が輝いてるんだよね。もしかしてそれに金魂水が反応してるのか? 


「世界樹の輝きね。実際それは私も分からないわ。だってこんな事、今まで無かったもの」
「そう言えば聖獣共が、自分達を待ちわびてるからとか言ってたな」


 僕は聖獣戦の時の事を言ってみる。その時は「んなバカな」とか思ったけど、案外そうなのか?


「んなバカな事ある分けないわね」


 あっ……同じ事ローレの奴が言いやがった。そこは認めないんだ。自分でも原因分かってない癖に。


「世界樹は私を選んでるのよ。あんな奴らなんてせいぜい役に立つことは土の栄養に成ること位。世界樹が奴らを待ってたなんてあり得ないわね」


 なんだその自信。どこから沸いてくるのか不思議でならない。


「じゃあ、なんで世界樹は光ってるんだよ?」
「それは一つの要素が原因とは限らないわ。だって今日だけで色々な事が起こってる。邪神の顕現に世界樹を守る結界の消失。そして聖獣の解放と侵攻。
 そもそも思ったんだけど、邪神が顕現出来たのも結界が無くなったからじゃない?」


 こいつ……また僕のせいにしようとしてるな……そもそもまだこの世界樹の輝きが悪い事か良い事かも分からないのに押しつけるなよな。


「てか、お前はこの世界樹の御子なんだろ? 世界樹の声とかが聞こえるんじゃないのかよ」
「違うわね。私は星の御子なのよ。世界樹だけの御子なんて小さな存在じゃない。世界樹とも勿論私は対話出来るけど、それはアンタが思う様な会話とかじゃないのよね。
 いろんな情報が入ってくるみたいな」
「じゃあそれやれよ」


 その情報の中に何かヒントがあるかも知れないじゃないか。今の状況の打開策ももしかしたら……


「欲しい情報が手に入る訳じゃない。それに世界樹って私嫌いなのよね。なんだか私より上に居るみたいで」


 おいおい、なんてこと言ってんだよこいつは……頭痛くなる。いや、マジで。

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