命改変プログラム
意地悪しないで
「スオウーーーーーー!!」
いきなり涙ながらに走って来て飛びつくのはクリエだ。かわそうかとも思ったけど、流石にそれは可哀想だから止めました。
泣いてたしね。そんな事したら幾ら冗談でも涙の量が倍増しちゃうよ。
「大丈夫だったかクリエ? てかちゃんと生きてるよな?」
僕は抱き止めてるクリエの感触を確かめつつそう紡ぐ。まあちゃんとここに居るし、重さもちゃんとあるしで、その質問はおかしいんだろうけど、なんか心配になるじゃん。あんな事が目の前で起こったんだからな。体にどんな異常があるかわかんない。
それにあの時……一回は本当に死んだんじゃないかって思った。神の力が二つとも抜けたとき、クリエは確かにその体は冷たく成っていってた。
だからこの暖かさはなんだか安心。でも実際聖獣に力の半分を取られた訳だし、そこら辺が大丈夫なのかって事だよね。
「大丈夫だよ。クリエはクリエは平気。でも……ね」
「どうした? やっぱりなんだか体がダルいとか、変な違和感があるとかか?」
クリエはちょっと顔を伏せ気味だ。やっぱり何かしらの影響があったんだって思った。僕は言葉を矢継ぎ早に紡いでクリエの体を見回すよ。でも怪我とかは無いみたいだな。
「違うよ! てか、スオウのエッチ! クリエの体をウミョ~って見つめて変態さんだよ!」
「何が変態だ! 僕はお前を心配してだな――ってか、外見じゃわかんないし、何がでもなのか早く言え。心の問題なら、言わないとわかんないぞ」
僕がそう紡ぐと「変態変態」言ってたクリエが再び大人しくなってその小さな拳で自身の服を握りしめて震えてる? 僕は真剣な顔して、そんなクリエの頭に腕をポンと置く。そして撫で撫でしながらもう一度、今度は優しい口調で聞いた。
「どうした? ほら、言ってみ。ちゃんと聞くからさ。大丈夫、勇気を出して口に出してみようクリエ」
僕はどう優しさを表現していいかわかんないけど、取りあえず思いのままにやってみた。するとクリエは僕の胸に体を預けて来て、その態勢のままゆっくりと話してくれた。
「あのね……クリエの……クリエの……お友達……居なく成っちゃった」
「お友達? ってそこら中に居るんじゃなかったのか?」
いろんな自然物がお友達なんだろ? 居なくなるなんて事あり得ないだろ。どういう事だ? もしかして力の半分が奪われた事でその力事態がなくなった……とかか?
「ううん、違うの。みんなの事じゃない。クリエの一番のお友達。ずっと一緒に居てくれたクリエの大大だ~~い好きなお友達!」
「???」
なんだか良くわからないな? こいつには仮想友達しか居ないはずだろ。いや、その仮想なお友達が居なくなったって事か。自然物とは違うようだし、頭で作ったいわばエア友達……う~~ん、どうする事も出来そうにないな。
てかそもそもエア友達は居なく成らないだろう。やっぱり意味がわかんね。僕が困り果ててると、そんな様子をニコニコしながら見てたシルクちゃんが助け船をくれるよ。
シルクちゃん達の毒は完全に取り除かれて、今は全員元気百パーセントの状態。まあだからこそクリエ達とこうやって合流出来た訳だよね。
ついでに言うとここは、再びLROと言う世界を見下ろす世界樹の頂点付近です。回復を終えた僕達は真っ先にローレの元を目指す事に成ったんだ。するとびっくりしたことにクリエもノウイもここに居た。
いやまあある程度予想はしてたけどね。援軍を求めるとか成ったら、ローレに進言しない訳には行かないしね。それにどう考えてもこの場所が一番安全だ。
ノウイはクリエを最も安全な場所へ運ぶ約束と同時に、僕達の為の事も考えてくれてたって事だろう。もしかしてローレが重い腰を上げたのはノウイのおかげかも知れない。どうかはわかんないけどさ。
そんなノウイは僕の視線に肩を竦めて欧米人の様なリアクションでわからないアピールしてる。今まで一緒にいた癖に、何も相談されなかったのか。クリエの信頼は勝ち取れていないみたいだな。
「クリエちゃん、どういう事なのか? お姉ちゃんにも分かる様にお話して欲しいな」
シルクちゃんの鈴を鳴らした様な可憐な声が優しく響く。なんだか男と女じゃズルい位に違うね。優しさの表現って言うか……シルクちゃんは常に優しさ放出してるよ。そして今のは二百パーセント位の優しさを感じた!
別に僕に向けられてないのにキュンキュンしたよ。危ない危ない、心臓発作かと思ったよ。
僕が一人で悶えてると、シルクちゃんの言葉を受けたクリエはもう一度ちゃんと話してくれる気に成ったみたいだ。そのか細い声を僕達は聞き逃さない様に耳を傾ける。
「……クリエはね一人だったの。シスターはずっと一緒だったけど……友達……じゃないし、クリエは一人で遊ぶ事もとってもとっても多かったの。
そんなある日ね、シスターが『今日は特別な日だから、なんと月にお願いすると、どんな願い事も一つだけ叶える事が出来ます』って言って、細長い紙をくれたの」
ふむ……それはきっと七夕の短冊だな。確かにあの人がクリエの為にそう言うことやりそうなのは分かる。それに結局、世界の声が聞こえても遊べる訳じゃないもんな。ずっと友達らしい友達が欲しかったのかも知れない。
そもそも箱庭は元老院がクリエを閉じこめる為に作った場所だったし、そんな声さえも聞こえなかったんじゃないだろうか。
「クリエはその紙に『お友達をください』って書いて、シスターが用意してた笹の木に結んだの。シスターもね、願い事結んでたから『何お願いするの?』ってクリエは聞いたの。
シスターはにっこり笑って『同じですよ』って言ってくれた。シスターが見せてくれた紙には『クリエにお友達が出来ますように』って書いてあったの」
ヤバい……クリエだけじゃなく僕まで震えてきそうだ。なまじシスターの最後を知ってる分、そんな思い出が心に何かを訴えてるみたいに感じる。てか、シルクちゃんなんか既にポロポロ涙流してるんだけど。
なんでそこまで感情移入出来るの? 僕はともかく、シルクちゃんはシスターに会ったことさえ無いのに。いやまあシルクちゃんらしいけどね。
そんな僕達の様子はお構いなしにクリエの話は続く。
「クリエが何でシスターも同じ事書くの? って聞くとね、シスターは『これで効果は二倍なんですよ。神様が見落とさないように念には念を入れないと』って言ってくれたの。
そしてその日の夜はなかなか寝れなくてね、クリエは夜に一人で外に出たの。外は風が結構強くて、庭にちょこんと植えた笹の木はビュービュー吹かれてた。
クリエはお願い事が飛ばないか心配だったの。するとね、一際ブワアアアアって大きな風が来て、クリエのお願い事の紙を飛ばしちゃったんだよ。
クリエは紙を取ろうと必死に追いかけたの。大きな大きな月に向かって昇ってく紙を必死にクリエは追いかけた。だけど途中で転んじゃって、泣きそうなって……でも、泣いてないよ。だってその時、その子は来てくれたから」
「その子?」
ようやくお友達とやらが登場か。もっと端折れた気がするけど、そう言うことを子供に求めるのも酷だろう。こういうのは辛抱強く……というか、広い心で望むべきなんだ。
「うん、私の一番のお友達。その子はクリエの前に現れて『大丈夫?』って声をかけてくれたの。クリエより大きくて、シスターよりも大きくて、てか、今まで見た誰よりも大きくてちょっと最初はビックリしちゃったよ。
それに肌の色もなんだか黒いんだもん。でも周りはキラキラしてたかな? 黒い髪を後ろで束ねてて、そこに赤い不思議な模様のスカーフをしてるのが印象的だったかな?
服装は白のワンピースみたいなのだったから、余計に頭のソレが頭に残ってるの」
「ふ~ん」
僕は適当に相槌を打つけど、なんか頭に引っかかる感じがあるな。シルクちゃんは既にハンカチまで取り出してるよ。
え~と……なんだっけ? 赤いスカーフ……褐色の肌……それにクリエ達よりもずっとデカい。まあそれはクリエ達が小さい訳だけど……
「クリエはね、興奮しながら『誰?』って聞いたの。するとその子は考え込んでこう言ったんだよ。『お月様から落ちてきちゃった』って。
それを聞いた時、シスターの言ったことは本当だったんだ! って思ったの。クリエはすっごく興奮して『クリエのお友達になってくれるんだよね!?』って聞いたの。もう絶対そうで、そうじゃない訳ないよね」
凄い決めつけきたな。まあクリエの年頃でそんな事があったら確かに純粋に受け取るだろうけど……その子は直ぐに了承したのか?
「もちろん、その子はちゃんと『うん、そうかもね』って言ってくれたよ。だけど不思議な事に、興奮気味にシスターを起こして『願い事叶ったよ!』って言ってもその子の事、見えてないみたいだったの。
不思議だな~って思ってると、『私達は特別だから見えるんだよ』って、それってとっても素敵だなって思ったの。だから、クリエ達は特別な友達! ……だったの」
いきなりシュン……とテンション下がったな。途中から盛り返して来てたのに、最後に現実を思い出したって感じだった。
その特別な友達が、今はどこにもいないって訳だ。まあ僕たちからしたらそもそも居たのか疑問だけど……クリエがここまで話を作れるとも思えないし、そもそもクリエは真剣だ。
きっと、本当に居たんだろう。だけどなんか言い表せないしこりがあるような……なんか今一こうその子が固定されないというか?
「そのお友達のお名前はなんて言うのかな? お姉ちゃん知りたいな」
涙を拭きながらシルクちゃんがそんな事を訪ねる。なるほど、名前か! そう言えばクリエは一度も名前を出してない。だからどこか、二人の関係が見えづらかったのかも。
「名前は……イヤ! ダメなの」
「どうして?」
クリエはだけど何故か名前を教える事を拒んでる。僕もシルクちゃんと同じで「どうして?」って言いたいよ。別に名前くらい伝えてもいいだろ。何か問題があるのか?
「だって特別だから……クリエの特別の特別だからダメなの!」
う~~ん、訳分からんな。
「その子の間で約束でもしてるって事か?」
僕がそう言うと、クリエはブンブンと首を横に振るよ。名前を教えないとかの約束はしてない――と、じゃあ何故? 僕とシルクちゃんは互いに困った視線を交わす。
すると意外な所からこんな言葉が聞こえてきたよ。
「特別――って言ってるじゃない。そんな特別な関係を壊したくない。だから教えない。教えたくない。自分達だけが知ってること。それは小さいけど、確かな絆でしょう。だけどその間に他の誰かが入ったら、枝分かれしちゃうわ。もう自分だけじゃない。特別は普通に成り下がる。
それがもっと広がると、自分は忘れ去られちゃうかも知れない。だからそれを防ぐには独占するしかないのよ」
「セラ?」
眼下に広がるLROと言う星を見つめながらセラがなにやら独自の理論を語ったぞ。えっと……どう受け止めればいいのかな? セラのテンションがやたらに低いのに、その下は饒舌に動くから、確固とした考えなのかなって思えて下手な言葉を出せないぞ。
なんか眼下を見下げるセラの瞳も寂し気だしな。実体験か何かか?
僕がそう思ってると、セラはそんな寂しげな瞳にわずかに苛ついた様な色を乗せてこちらを見る。いや、正確にはクリエを見てる。だけど何も言わずにセラは背を向けて歩きだした。そしてそんなセラをノウイが追いかける。
「何だったんだ一体? 何か聞いてますかアイツの事?」
僕はシルクちゃんに今のセラの言葉の意味を知るために情報収集する。シルクちゃんとセラは仲良いから、何か知ってるかも知れない。
「う~ん、セラちゃんとは基本スオウ君の事しか話さないし、それ以外はLROの事だけです。リアルの話題は余り出さないのがLROのマナーですし、積極的に過去の事を聞いたりはしてないです」
「だよね」
そもそも優しいシルクちゃんが人の過去をほじくる様な真似はするわけ無い。それにセラって誰かに弱ってる姿を見せるタイプでも無いしね。
今はシルクちゃんにはそうでも無いのかも知れないけど、二人は知り合ってそこまで日が経ってないもんな。幾ら仲良いからってお互いの全てを知ってる訳がない。てか、僕の事しか……そこはスルーしとこう。今聞く事じゃないし、聞いちゃいけない気がする。
「だけど何となくセラちゃんの言ってる事は分かります。特別で有り続けたい……そんな気持ちは誰しもが持ってる物の筈ですから」
「自分だけがその子の名前を知ってる特別……か」
まあ別に名前なんてそこまで重要じゃないから、そんな特別を奪うつもりは無いけど、果たしてそんな価値観のままで良いのだろうか? とは思うな。
本当の友達とかの関係が枝分かれしていく過程で薄れて行くものか? 本当に特別だと思ってる者同士ならそんな事で関係が希薄にはならないと思うけど。
それに今回は僕達がその存在を確かめたいだけみたいな感じだし、僕達とその子が友達に成る訳じゃない。よって、クリエとその子との間に何も影響はない……と思うんだけどな。
「認識の問題ですよ。クリエちゃんは自分だけが知っときたいんです。きっと初めての友達への独占欲みたいな者なんだと思います。
男の子には分からないかも知れませんが、女の子は初めてのお人形とかと秘密を共有したりしますから、その子は絶対に他の人には触らせたりしないんです。それは自分とそのお人形が特別……だから何ですよね。今思えばですけど」
幼き日のシルクちゃんが可愛らしく脳内で再生されたのはいいとして、そういうものなんだって感じだな。だけど女の子だから……ってだけでもなさそうな気がする。クリエにとっては望んで望んで、やっとで手に入れた友達だから――ってのもあるんだろうな。
「なぁクリエ。お前はその子の事、大好きなんだよな?」
「うん……」
クリエはか細い声で返してくれる。俯いて、僕の胸に顔を埋めてる。さて、どうしようか。実際、その子とクリエはこれからも仲良しで居てくださいで別に良いんだけど、ちょっと気になる部分もある。
それにクリエの今の考え方……特別ってのがそれで良いのかなっても思う。だから僕は少し意地悪を言ってやることにした。
「なあクリエ、じゃあ僕達はクリエにとってなんだ? 特別じゃないのか? そんな重要じゃない、ただの友達か?」
「そ……そんなこと無い。みんな大切だよ。クリエの特別な友達……だよ――あれ?」
首を傾けたクリエが、上目遣いで僕を見てる。
「僕達にとってもクリエは特別だ。良かったなお互いがそう思ってて。じゃあ、その子は別に必要じゃないんじゃないか? 一気にこれだけ特別な友達が出来た訳だし」
「そっ――それはダメだよ!!」
クリエが僕の体をよじ登る様にして顔の近くまで迫って声をあらげた。おお、顎に頭突きされるのかと思った。僕は意地悪く「何でだよ? 特別はもうあるだろ」と言うよ。
「スオウ達も特別だよ。だけどその子とも特別で、だからだから特別はそれぞれできっと違ってて……いっぱいいっぱいあっても良いの!!」
クリエはその小さな頭をぐるぐる回して、一生懸命言葉を紡いでるみたいだった。ほんと、実際目がグルグル回ってておもしろかった。なんか微笑ましい気がしてね。
だけど僕はまだまだ心を鬼にするよ。
「そんな……なんかソレってどうなんだろうな。僕達はクリエの事が特別で、だから一生懸命なのに、クリエは僕達の他にも特別があってって……それじゃあなんだか僕達は寂しいよ」
「え? えぇっとね……でもそれは……だってだって……しょうがないって言うか……でもみんなに対して同じくらいの特別なんだよ!」
必死に特別の大きさ具合を説明する様に腕を大きく動かすクリエ。
「確かにクリエからしたら同じかもしれない。でもクリエはそんな同じ特別を増やしていける。どんどん僕達は寂しくなるな」
「そ、そんなことないよ! クリエ友達いないもん! いっぱいいっぱいきっと出来ないもん。それにそれならスオウ達だってクリエ以外の特別いっぱい居るくせに! 一緒だよ!」
そういってクリエは僕の腕から飛び出した。だけど僕は地面に着く前に再びクリエをキャッチする。
「は~な~せ~! クリエはクリエは悪くないよ!」
「そうだな、別にお前は悪くないよ」
僕は服の襟部分を掴んだクリエを目の前まで持ってきてそういうよ。意地悪はこのくらいにしといてやろう。気づいてないみたいだけど、きっと分かりはしただろうからね。
「回りくどい事しすぎです。ちょっとハラハラドキドキしちゃいました」
シルクちゃんが何も言わなかったのは僕の意図に気づいてたって事かな? 流石です。
「クリエちゃん、実は私達もその子とお友達になりたいなって事だよ。そうすればさっきスオウ君が言った様な事も無くっちゃうよ」
「で……でもそれじゃあ……」
シルクちゃんの言葉にクリエは眉を下げて唇を尖らせてる。まだ渋る気かこいつは。特別は一杯あって良いんだろ? それならその子の特別だって一杯あって良い筈だ。
「クリエちゃん、クリエちゃんが思ってることはきっとその子も思ってたと思うな。そして今自分が何をしてるかちゃんと考えてみて。
さっきスオウ君が【寂しい】って言ったよね? それはその子の気持ちだよ。ううん、きっともっともっと【寂しい】と思う。だってその子はクリエちゃんしか特別には出来ないんだもの。
でもクリエちゃんは違う。私達と友達になれたし、これからも幾らでも友達がきっと出来る。クリエちゃんは今、その子に寂しい思いをさせてるんだよ。
それは良いことなのかな? どうしてそうするのかは、それってその子の為かな? もうクリエちゃんは気づいてるよね」
そう言ってシルクちゃんは横からクリエを抱きしめるよ。
「大丈夫。クリエちゃんはみんなが同じ位特別だって言った。それなら、きっと大丈夫だよ」
するとクリエは、「うぐっえぐっ」と小刻みに震えてる。あれは泣いてるな。
「クリエ……は、自分の為に意地悪……してたんだね。自分だけで満足して……幸せに成ろうとしてた。あの子だってきっと友達……一杯欲しかった筈なのに……クリエ……怖くて……」
「うん、うん……だからみんなで一緒にお友達に成ってあげようよ。そのために私達にはクリエちゃんが必要なんだからね」
クリエの背をぽんぽんと優しく叩くその様はなんだか母親みたいだ。クリエ小さいから赤ちゃんに見える。思ったけどなんだか僕って悪役で終わってないか?
シルクちゃんに全て持ってかれた。
「許して……くれるかな? クリエの事……嫌いになったりしてないかな?」
「大丈夫だよ。私達もその子の友達に成るんだもん。クリエちゃん尊敬されちゃうかも知れないよ。だからね、その子のお名前知りたいな」
シルクちゃんの言葉にクリエは涙を拭いて、こう応える。
「うん、その子の名前は【シャナ】って言うの。でも今は居なくなっちゃった。クリエの代わりに聖獣につれて行かれちゃったの……」
「おい、それってどういう事だ?」
唐突な聖獣発言に、この場に居る誰しもがクリエを見る。だって聖獣って……アイツ等が奪ったのは力だろ? クリエはその時の事を思いだそうとすると絶対に泣き始める。だけどシルクちゃんが励ましもあってその理由をクリエは紡ぐ。
「クリエと【シャナ】はいつもは一つだったの。そして怖かった力の片方を『任せて』って言ってくれた。だけどそのせいで、【シャナ】は聖獣に持ってかれちゃった。
クリエのせいだよ……クリエのせいで、大切な友達がいなく成っちゃったの……」
クリエはシルクちゃんの肩に顔を押しつけて泣いてる。この世界を見渡せる場所で、小さな子供の堪える涙が悲しく落ちる。神の力はこの体に二つ。シスカの力をクリエが、テトラの力をシャナが持ってた……そう言うことか?
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