命改変プログラム

ファーストなサイコロ

天秤じゃ示せない



 輝く世界樹……それに伴って染まる空。だけど再び落ちだした雨が妙な不吉さを演出してる気がする。そして遂にその変わった姿を現した聖獣。色を取り戻し、堅くなくなった体を優雅に揺らして大量のモンスターの先頭を歩いてる。


「な……んだよアレ……」


 僕は震える声でそう紡ぐ。だって注目すべきは聖獣だけじゃない。その周りに居るモンスターもなんかこれまでの奴らとは別格に見える。
 大量のウッドールは今まで僕たちとそれほど変わらない背丈で、ヒョロヒョロしながら襲いかかってきてた。だけど今、聖獣の周りに居るウッドールは明らかに強そうだ。普通サイズのメドゥーサ聖獣と比べても明らかにデカいし、二メートル位は有りそう。
 しかもヒョロヒョロなんか微塵もしてなくて、その体は鎧に身を包んだ姿へとなってる。しかも西洋風の鎧じゃなく、日本風の兜とかを被ってるんだ。
 歩く度にその重低音が響きそうな程……変わりすぎだろ!


「くっ……あれが本命と言うことか……」


 倒れ伏してるリルフィンが苦しそうにそう言うよ。本命か、確かにその通りなんだろうな。今まで送り出されて来てた奴らと明らかに姿も雰囲気も違うもん。
 言うなれば奴らが聖獣が自信を持って送り出せる一軍なんだ。僕たちがさっきまで戦ってたのは、多分三軍位の位置の奴らだろう。そんなオーラしか今見ると無いもん。


「だけど……どうやってあれだけのモンスターを集めたのよ。聖獣の声はどこに……居ても聞こえるわけ? それともあの森のモンスター共は聖獣の存在を感知できるとか? でもそれなら、呼ぶ必要がそもそも無いわね。だって勝手に集まってくるのなら……そうでしょう」
「だけど……あの集まり具合……雑魚はさっさと捨て駒にして、強力なのを揃えるまでの時間稼ぎとしか思えません」


 元から聖獣は最初のモンスター共には何一つ期待なんかしてなかったってことか。シルクちゃんの言うとおり、どう考えても捨て駒だ。
 だからこそ躊躇いも無く、みんなと共にあの蛇は毒をばらまいたんだろう。仲間……イヤ、捨て駒しかこの場には居なかったから心置き無くやったんだ。
 爛れた地面に、腐臭の様なイヤな臭いが混じってる。辛うじて生きてるモンスター共からそんな臭いはしてるよ。折角まちに待った筈の聖獣だったのにな……ヒドい扱いするものだ。
 だけどこいつらにまで同情する程、僕もお人好しじゃない。それにしても今は、死に掛けの雑魚なんかどうでも良いんだ。問題は数倍……いや、数十倍のプレッシャーを感じる本家本元の【聖獣軍団】だ。
 ウッドールもサイズ倍増してるけど、他の奴らも明らかにワンランクツーランク上のモンスターと化してる。蛇はまあ……元からそのランクの奴だったから姿形は変わってない。
 だけど貝の奴もトゲトゲを付けて強そうになってるし、狼みたいな奴も、既におかしなサイズになってる。どう見ても、前に居るウッドールの強化版……乗せられるよ。くちばしがデカい鳥は、その赤みがかってた色を黒に変えて、凶悪性を増したように見える。その他にも色々と、既存の奴らのパワーアップ版から、始めてみる奴らまで多種多様……そのどいつもが、強そうだ。
 そういえば言ってたよな……この森は強力なモンスターが一杯いるってさ。リア・レーゼは始まりの街の一つじゃない。だからこそ、周りに居るモンスターも標準よりも強力になってる……とか。
 聖獣以外、イマイチそんな実感無かったけど、今僕はそれを痛感してる。マジでなんだよあの軍団。なんか僕の目が恐怖か何かでおかしく成ってるのか、行進してくる聖獣共の後ろの森まで迫ってきてる感じがしちゃう。んな訳ないのにな。
 仮面を被った聖獣共。そしてそれに付き従うモンスター。知性なんて欠片もなさそうなモンスターをどうやって聖獣は操ってるんだろう?
 奴らは獣人って訳じゃない。本当に野生なんだ。


「いや……違うよスオウ君。この森に生まれるモンスターはただの野生じゃない。この森に生まれるモンスターは聖獣の下に一つ……その理を植え付けられてるんだ」
「なんで……そんな事?」


 理解できないよ。一体どこの誰がそんな意識? いや、無意識を植え付けてるんだ? 一体なんの為に? 聖獣にとって都合がいい……だけじゃないんだよな? 聖獣のどいつかの能力……とも考えられない事はないかもしれないな。


「全く……ゾロゾロと地響きまで響かせて……うるさいったらないな。ゆっくりと寝ることもできん……まあ奴らの歌が続いてたとしても、子守歌には成らなかった……だろうがな」


 皮肉なのかどうなのか、鍛冶屋の奴が苦しげにでもなんとか「クックック」とか笑いながらそんなことを言うよ。気持ち悪い奴。だけど絶望という状況の中、鍛冶屋の言った言葉で気づいた事もあった。


「歌……そうか! クリエの歌をアイツ等が歌ってたのは、言葉を会得したアピールなんかじゃなくて、アイツ等を呼ぶためだったんじゃないのか? 
 別に自分達の復活を示せればなんでも良くて、都合良くそれを示せる手段が歌だと思った……とかじゃないのかな?」


 そう、ただ単に自分達の頭にあった歌が効率的だったという事なんだ。聖獣に感性が有るとも思えないし、意味はあったけど、奴らの歌は伝達手段みたいな物でしかなかった。きっとそう言う事だ。
 あの歌を歌った事に意味が有ったんじゃない。あの歌で自分達の存在を森中に知らせる事に意味があったんだ。そしてそれは効率良く届いた。だからこそ、あんな強力そうなモンスター共があっと言う間に集まったんだろう。


「確かに、そもそも強力になれば……なるほど……モンスターは孤立していくもの。だけどこの場所と、そして聖獣と言うこの地の最上位種が居れば……違う。
 この地のモンスターは、何の因果か……世界樹を取り戻そうと一つになろうとしてたのよね……それがこんな連携と協力を生んでる。
 きっと……ずっと前から、いつかこの日の為の準備をしてたんじゃないかしら……」


 セラが途切れ途切れにそんな言葉を紡いでる。みんなHPが微妙に減り続けてる。回復も出来ないし、みんなはただ、死を待つしかできない状態だ。
 そんな中で、なんでセラはちょっとでも奴らを認める様な事を言うんだ? わけわかんねーよ。


「別に……認めてる訳じゃない……訳じゃないけど……もしもそうだとしたら、自分達の負けって事よ。本当に……もうこれはどうしようもないわ」
「セラ……お前がそんな事を言うなよ! 全然似合わないぞ!!」


 そんなのセラじゃない! こいつはいつだって不遜で傲慢で手が早くて、良く絡んでくるみたいな感じじゃないといけない。
 負けを認めるなんてそんなの絶対にやらないだろ。負けを認める事も成長とか……そんなタマじゃない。負けた相手を後ろから暗殺してその事実を消してしまう……それがセラの筈だ。


「あんたね……私だっていっぱい負けて来てるわよ。いつでも勝てる……なんて無い。だけど……アンタは負けられない。もう……いいでしょうリルフィン。
 アンタから言いなさい。アンタのせいでこのバカはまだこんな所に居るんだから……」


 どういう事だ? なんかセラが僕に優しくしてないか? いや、ついさっきも僕の事を思って泣いてくれた。でも今回は毒を吐かないから、いやそんな余裕もないから、なんかいつもよりも、こう……想われてる気がする。
 なんだか今と言う状況を受け入れられつつある僕は、大量に迫るモンスター共を直視出来る精神状態になったかもしれない。
 だけど、セラはリルフィンに何を言わせたいのだろうか? 僕は余裕を持って迫って来る聖獣軍団を一瞥して、リルフィンへと視線を向ける。
 するとリルフィンは、なけ無しの力で俯きから仰向きへと体位を変える。リア・レーゼ側が明るく、森側が暗い。世界樹の光が、まるで二つの世界を表してるようだ。
 僕たちが居る女神シスカの加護の光の世界と、邪神テトラが作りし闇の世界。それが拮抗しだしてるかの様な……まあ僕たちは世界樹の光ほど、輝いてはいないけどね。
 僕達は言うなれば、燃え尽きる寸前の蝋燭みたいな物だろう。僕達はそもそもここで燃え尽きるのを覚悟したはずだ。最後に一際輝いてって感じでさ。まあ僕は実際、燃え尽きる前に増援を期待してた訳だけど……それはもう意味がないのかもしれない。


「ぐはぁ……はぁ……」


 たったそれだけの動きで激しく息を切らしつつ、リルフィンはその言葉をくれる。


「確かに……もう……どうにもならんか。今日は月も出てないからな。意地はここまでにしよう。行けスオウ。援軍は間に合わなかった。
 こうなったら外に出てはダメだ。リア・レーゼを拠点に奴らを叩くしかあるまい。だが先に行った奴らは変わったこの状況を知らない。伝えなければ……我らを助けようとして無駄な犠牲者が増えてしまう。
 リア・レーゼ事態が戦場になるのは避けたかったが……我らだけで足止めはもう無理だ。それなら、切り替えねばならん。もう、ここで出来る事は何もない……それなら……最後の頼みだ。貴様は生きて、この事をローレ様に伝えろ。結局……無駄な事に付き合わせてしまっただけになったな……済まなかった」


 リルフィンが曇天の空を仰ぎ見ながら、軽く目を閉じる。この空の向こうに居るであろう、ローレの顔でも思い浮かべてるのだろうか? 死ぬ覚悟。それを決めてる。
 リルフィンの野郎……何勝手な事を言って屋やがる。それがセラが言わせたかった事なのか?


「さっさといきなさい……これでもう、心残りなんて無く撤退出来るでしょう? 誰も反対しない。いいえ、寧ろ早く……一刻も早くこの場から逃げるのよ」
「また……僕だけ逃げろってかよセラ? それは断った筈だ」


 僕は想わずそんな事を口ずさんでた。だけど実際、セラやみんながそう言うしかない事を僕はわかってる。それにここに残って戦う……それのメリットはきっともう一ミリも無い。だって僕が一人で突っ込んで何が出来る? イクシード3を使えば少しは持つかも知れないけど、だけど勝てるなんて思えない。
 だってイクシード3は確かに強力だけど、諸刃の剣。それにそれだけで戦闘が決まるほど、単純なものじゃない。
 聖獣だけじゃない軍団……動けない仲間達。結果は火を見るよりも明らかだろ。


「何……バカな意地を張ってるのよ。もう守れないって言ってるの。それにここでアンタが出来ることは……もう無いのよ。
 頭を切り替えなさい。今ここで無駄死にしてどうするのよ。今こそ、戦略的撤退の時でしょ」


 戦略的撤退……ていの良い逃げ口上だろそんなのは。ちゃんと知ってるんだぞ。


「スオウ君……行ってください。私達の気にしないで良いんですよ。私達はこんな状況でも笑顔でいえます。リア・レーゼのゲートクリスタルで会いましょう――と。
 だから行ってください。一度否定されたその行為……だけど、私はそうは思いません。逃げる事が悪い事じゃない。
 私からみたら、どんな状況でも命を粗末に扱う事の方が悪く格好悪い事です。ゲームだから……その思いで命を軽く見る人がここには居ます。
 そんな人には私だって……回復してあげませんって言いたく成ります。スオウ君……逃げる事も勇気です。私達は、君に生きてほしいって願ってます」


 シルクちゃんがその可愛い顔に泥を付けたまま、顔だけをこちらに向けてそう言うよ。激しく打ちつける雨が痛い。本当にさ……痛いんだ。僕はセラ・シルフィングの柄を力を込めて握る。歯もおもいっきり噛みしめる。わかってるんだ。みんなの想い、ちゃんとわかってる。
 だけどその想いに甘えるれば甘えるほど……大切な筈のみんなを犠牲にしてる気がする。本当はさ、みんなにだってやりたい事とかあるんじゃないのか?
 それなのにこんな危険な事に付き合わせて、毎回毎回とんでもリスクを実は背負ってる。僕と一緒に居て、スキル値があがってるのか謎だよ。何か返せれば良いけど、僕には何もないしさ。


「みんなの想い……ありがたいよ。本当にみんなには感謝してもしたりない。逃げることも勇気……無謀な戦いが自殺行為だってわかってる。
 それをやって意味があるときもあったけど、今はそうじゃない……それもわかってる」
「じゃあ……」


 僕は立ち上がる。そして無言で歩を進める。だけどそれはリア・レーゼの方にじゃない。聖獣共の方へ……みんなを庇う様に前へ。


「な……にを? なんで……逃げないのよ」
「スオウ君……わかったって……言ってくれたじゃないですか」
「そうだ! 考え直せ……そんな事しても意味なんてない」
「スオウ君、君の気持ちは分かる……だけどここは僕達の思いを受け取ってくれ……死に急ぐ事をしちゃダメだ」


 みんなの声が僕を止めようとしてくれてる。当然だな。みんなはやられたって復活出来る。ゲームだからな。だけど僕は、どうなるかわかんない。死ぬのか……入院か……実際そろそろヤバいってのが感覚的にもわかってる。
 だからこそ、みんなは僕を守ってくれてる。付き合ってくれてる。最悪の結果が訪れる事を、みんな怖がってる。まあそれは僕も同じだけど……


「ごめんみんな。だけどなんかさ、メリットとか先の事とか、いちいち考えて行動するのも面倒に成ってきたよ。僕はみんなに守られて……支えられてここまできた。
 それを誰よりもわかってるのは僕だよ。てか、そうじゃなきゃいけない」


 僕は空を仰ぐ。曇天の色……激しい雨が顔に打ちつける。ちょっとキメようかなと思ったけど、この雨じゃ無理だな。息できなくなる。
 今更お札を使うのもなんだし、このまま最後まで突っ走ろうと思う。気持ちを切り替えて最後まで台詞を発しよう。


「でも……なんかさ、なんかこう……イヤなんだ。ただみんなの優しさに甘える自分も……いつまで経っても命って奴に怯える事も……そして何より、奴等のあの余裕の行軍の様が嫌みったらしく見えてイヤだ」
「意味が分からない理由だよ! 特に最後のは! 頭を冷やすんだスオウ君!!」


 小さな体を引きずりながら、必死に僕に声を掛けるテッケンさん。まあ実際、僕も最後の理由はよくわからない。でも気持ちそのままに言っただけだよ。


「頭は冷えてますよテッケンさん。だってほら、アイツ等のあの行進、既に勝ったような雰囲気じゃないですか? 僕達なんて、そこらに居る蟻みたいな感じで、全然気にしてない感じがここからでも伝わってきます。
 『さっさと逃げろゴミ。どのみち街事踏みつぶすがな』っていう声が聞こえてくる気さえする。どうせ何も出来ないし、してこないだろうからって、たかを括ったあの態度。ひっくり返してやりたいでしょう?」
「アンタね……完全に考えがおかしく成ってるわよ。何を思われようとアンタ一人じゃ天と地がひっくり返っても勝てないのよ。その事実は分かるでしょう。
 なら逃げるのよスオウ!!」


 立てない体を必死に上半身だけ上げて、そう紡ぐセラ。ほんと何やってるんだろうな僕は……全てを投げ出そうとしてるのだろうか?
 なんだか自分でも自分の行動がイマイチ良くわかってない。みんなの言葉、思い……全部ちゃんと伝わってるし、自分でも理解できてるんだ。僕だけじゃ、聖獣達には勝てない。
 ここで命を投げ出す事が誰の為にもよくない事だってわかってる。でも……どうしてだろう? 逃げ出せない自分が居るんだ。
 みんなが目の前で死を受け入れてる事がイヤなのかな? みんなは僕とは違うんだから、それが当然で当たり前なのに何を今更だろう。
 やっぱり口にしたとおり、あの聖獣達が気に食わないってのが正解か? でもそれで命をマジで投げ出すなら、シルクちゃんには愛想を尽かされそうだ。激しい雨に打ちつけられ過ぎて、考えるのが億劫に成ってるのかも……ほんとここで逃げなきゃ明日はきっと無いのに……僕は何をやってるんだろうか?


「スオウ君……ダメです。ムカついても、バカにされても、今じゃなくても反撃は出来ます。みんなでリア・レーゼで迎い討ちましょう。それが……最善なんです!」
「わかってる……それもちゃんとわかってるんだよシルクちゃん。でも……どうやら時間切れだ」


 僕の数メートル先に迫った聖獣とその配下のモンスターども。まるで壁みたいな感じだな、近くに来ると更にわかる。デカいモンスター共も惜しげもなく居るから、プレッシャー感がハンパない。
 だけどやっぱり……一番まがまがしい雰囲気を醸し出してるのはおかしな仮面を付けてる聖獣共だな。まあ僕達はアレが聖獣とわかってるから……かも知れないけど。
 普通に知らない人たちは、デカい方に恐怖を抱くのかも。


「退いて貰おうか。それとも我らとやり合うか?」
「しゃべっ――」


 ってそう言えば歌ってたな。でも余りにも普通に喋る物だからビックリだよ。


「何を驚く事がある? 我らは変わった。神の力を取り込んでその存在を完成させたのだ。見るがいい、世界樹が祝福してくれてるだろう?」
「祝福だと?」


 この世界樹の輝きが聖獣を祝福してる物だと言いたいのか? 流暢に喋れる様になったからって好き放題に言ってくれるな。そんなに言葉を得たことが嬉しいのか?


「その通り祝福だ。お前達には、あの世界樹の光の意味など分かるまい。ちっちゃくてよわよわな貴様等などは、地を這う虫だ。
 それが世界樹を我が物顔で独り占めしてる……許されない事だ。だから世界樹は我らを祝福して待ってるのだ。自分を解放してくれる我らを」


 背が高いエルフベースの聖獣が饒舌に喋りやがる。だけどなんかちょっとイメージと合わない部分があるような気がするな。
 語句が貧弱と言うか……もしかしてクリエから頂いた言葉だから語句もアイツ並なのか? 勉強する猶予をやるから一度森まで引いてくれないかな。


「それはそれは、迷惑掛けてるみたいだな。だけどお前等にだって世界樹の声が聞こえる訳じゃないんだろ? てか、どうして貴様達は世界樹を狙う。お前達はモンスターだろ。言うなら悪。世界樹はこの世界を支える光だって聞いてるぞ」


 丁度言葉も話せる様になってることだし、そこら辺を確認するのも良いかなと思う。時間稼ぎにもなるしね。すると僕の言葉を聞いて聖獣どもは、一斉に笑いだしやがったよ。
 そして笑い終えるとこう言われた。


「傲慢だな人間!! お前達は自分達を正義だと、我らを悪だと決めつける。だがそれはお前達の勝手なこじつけだ。
 何が正義を証明する? 何が悪と決めつける? お前達は私達を殺すことを躊躇ったりしない。それは正義なのか?」
「それは……お前達がこっちを襲うからだろ」
「なら言おう、我らからしたら今は貴様等から襲う方が多い。昔とは違うのに、変わらずに貴様等はみつける度に、多数で襲い来る……それが貴様達の正義か?」


 むむ……そんな事一ゲームのモンスターが言うなよな。前提が崩れるだろうが。


「まあ正義も悪も我らにはどうでも良いことだ。ただ我らは自分達の思いを通す。使命を果たす。退かぬなら、ここで死ぬが良い、人間よ」


 そう紡いで手を掲げる聖獣。すると周りのモンスター共が一斉にいきり立った。


「逃げてスオウ君!!」
「逃げなさいスオウ!!」


 女の子二人の叫び。でももう遅い。僕はセラ・シルフィングに力を込める。そして僕はたった一人で、聖獣達へと向かう。でもその時、僕達の間をキラキラする風が吹き抜ける。そしてくり貫かれた雲から現れたのは輝く鳥だ。それは敵か味方か、まだわからない……だけどその姿はこの場の誰もの視線を奪う程に美しい。

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