命改変プログラム

ファーストなサイコロ

みんなで寄れば文殊の知恵



 空を見上げると、分厚い雲から激しい雨が絶え間無く落ちてきてる。きっとこのお札の効果がなかったら、目を開けとくのも難しい位の雨の量と勢い。
 許容量を超えた雨は地面にも受け入れられなくて、地面の凹みに溜まり、低い所へ流れている。空から絶え間無く打ちつける雨は地面の水を激しく叩き、地面がなんか白く見える様な状態ににまで成ってる。
 まるで寝て起きたら、世界が水に沈んでそう……そんなメルヘンな想像をしてしまうよ。


「――で、何に気づいたのよ。何かに気づいたんでしょうアンタ?」


 僕が夢のある想像で少しの心の余裕? 的な物を持ってたのを敏感に察知したらしいセラがそんな言葉をかけてくる。
 たく、溜めておいたのに先走るなよな。だけど勿体ぶってる訳にもいかないか。僕達は……と言うか、僕には時間がないんだし、聖獣は出来るだけ早くに倒しておきたい。


「まあな、ミラージュコロイドの代わりに成りそうな物。それに思い当たる節がある」
「ほんとっすか!?」


 僕の言葉にノウイが食いついてきた。自分が役に立てなかったから、攻略方が別に見つかる事に期待してるようだな。ふっふ、その期待にこの僕が答えてやろう。


「ああ勿論本当だ。言ったろ? 僕はあの頭の蛇の一匹を落としてる。ミラージュコロイドに代わりをさせる事なんか無い。奴の攻撃を跳ね返せる物はあのステージに元からある!!」


 僕は拳を握りしめて力強くそう言い切る。そして僕のその言葉で、みんな気付いた様だったよ。


「つまりはあのステージにあった水を利用しようと……そう言う事だね」
「確かに一度跳ね返させてるのなら、出来なくは無いでしょうけど……問題はタイミングじゃないでしょうか? ミスをするともれなく石化。状況はさっきの二の舞に成るような気がします」


 テッケンさんとシルクちゃんが早くも的確な意見をくれる。まあ確かにリスクはあるよ。てか、リスクがない戦闘なんてあり得ない。戦闘で勝つと言うことは、そのリスクさえ乗り越えるって事だろ。やってみる価値はあるはずだ。


「アンタがやってみても良いと思ってるなら、それで戦術を練りましょう。だけど良く考えなさい。私たちだっていつでもアンタを守り庇い切れる訳じゃない。
 一回目は何とか脱出出来たけど、次もそう出来るとは限らないのよ。もしもさっきと同じ状況になったとしたら……そしてもしもその時、外に逃げることが出来なかったら、アンタ一人でも聖獣を倒さないと終わりよ」


 セラの深い色の瞳が僕を捕らえてる。メイド服に身を包み、上品な雰囲気を立ち姿だけでなら醸し出してるこのメイドは、僕とノウイとかだけにはその上品さを与えてくれない。
 だけどそれは、対等なんじゃないかなって最近思うように成ってきたよ。身を包むその衣装通りの対応をする人は羨まれてたりして確かに良いとも思うけど、ありのままのメイドじゃないセラが向けられる僕達も良いものだよ。
 時たま対応と待遇の悪さに辟易するけど……もしかしたら対等じゃなく下に見られてる結果こんな扱いなのかも?
 やばいな考えない様にそこはしとこう。今は聖獣……聖獣だ。メイド服姿のセラに、一度はご奉仕して貰いたいな~とかあり得ない願望を望んでる場合じゃない。
 まあいつかは……この関係を改善して、その内にセラに自分を認めさせる! それも密かな夢だったりする今日この頃、僕はアッサリとこう言うよ。
 僕を心配してくれてるセラに、簡単にそしてはっきりとね。


「大丈夫……次で必ず決める。みんなとなら、やれる。このメンバーだから、僕には不安なんて無い」


 僕はみんなを見てそう紡ぐ。最初はちょっと浅はかに飛び込みすぎたけどさ、今度は違う。やられても絶望的でも、その状況の中でみんなが掴んだ持ち帰れた筈の物があるんだ。
 だからこそ、さっきの二の舞はしないといえる。ここにいるみんなはさ、同じ失敗を二度も犯す人たちじゃない。みんな優秀なんだ。


「…………バカ何じゃないのアンタ。私達がいればどんな敵にも勝てる保証なんて無いわよ。私達だってまだまだこの世界には知らないことが沢山ある。
 私達よりも強い人たちだって沢山いるわ。このメンバーだから……そう思って行ってさっき惨敗したんでしょ。安易に言うな!」


 怒られた。普通はそこはちょっとした感動と共に、まとまるべきじゃなかろうか? セラのせいでそんな雰囲気どこへやらだよ。何してくれてるんだこの性悪メイド。


「あははは、スオウ怒れてる~!」


 クリエが僕を指さしてケラケラ笑ってるよ。お前な、実際笑い事じゃないから。早く聖獣倒さないとここも大変な事になるからな。


「安易に言ってるわけじゃない。ちゃんと今は攻略方だって見つけたじゃないか。最初とは違う。奴の攻撃手段だってわかってる。
 最初から警戒してれば、いきなり石化されるリスクは減るだろ。さっきとは違う戦闘がきっと出来ると僕は思ってる」
「確かに最初よりも情報も多いし、敵の手の内もある程度は見えてる。だけど今の情報だけで攻略方なんていえないわ。まだ水を鏡代わりに使えるって気付いただけじゃない。戦術というのなら、もっとしっかり詰めなさいよ。
 見切り発車で首を絞めるのはアンタなのよ。何度でもやり直しが出来る私達とは違う。アンタの命は有限でしょ」


 なんだかんだ言ってセラは僕の事を気遣ってくれてる――って事だろうか。僕の為に確実性をセラは求めるてる? いや、それはちょっと期待しすぎだよな。
 僕とセラはまだまだそんな関係じゃない。そこまで仲良く成った気しないもん。ただ単に知り合いが死ぬのは見たくない。というか、誰だって人が死ぬのは見たくはない物だろう。


「確かに僕の命はここでも有限だけど、だからって怖じ気付いてる訳には行かない。慎重はきすさ。だからこそみんなで得た情報を有効に使う術を考えようって言ってんだろ。
 何も今直ぐ飛び込む訳じゃない。そりゃあ急いでるけど、僕だって死ぬ気はないからな。勝てなきゃ意味がないし、このメンバーなら、次こそは行けると……そう思ってるってことだ」
「それなら……そうとさっさと言いなさいよ!」


 やっぱり何故か怒られた。なんだよなんだよ。ちょっとした言葉のズレだろ。僕にだけ責任を押しつけるなよな。そっちだって勘違いしてた癖に……セラには僕が命を粗末にしてる様に見えるらしいけど、僕は全然そんな気ない。だって誰だって死ぬのはイヤじゃん。そんなのは僕だって当然そうだ。
 まだ高校生だぞ、死ぬなんて考えたくもないっての。だけど逃げることもしたくない年頃なんだよ。反抗期みたいなものだからさ。
 人生や世界、運命……そんな壮大な物に反抗してみたいじゃないか。ゲームの中でも死ぬことが出来る。それこそ壮大に輝いて散る事が出来るかも知れない。
 ゲームやマンガの主人公みたいにさ。だけどそんな死ぬことが出来る様になった世界だからこそ、死にたくないって思える。他のプレイヤーのみんなはLROでの死はちょっとしたリスク程度の物だから、勝つ見込みがないとわかれば、武器を下ろすのかも知れない。
 でもそれは次があるとわかってるから出来る事だ。僕にはいつ、その次が無くなるかわからない。そんな恐怖心は常に心にあるんだよ。戦闘中、いつも「死んでたまるか!」と思ってやってる。
 僕が一番好きな物語は、ハッピーエンドだから。周りの誰もが傷や痛みを伴っても最後には笑える……そんな物語の為には僕自身死ぬことを許す事は出来ないんだよ。


 僕達は土砂降りの雨の中、聖獣を倒す術を話し合う。どういう戦術で行くか、ここからは具体的な内容だったよ。本当なら、僕達も街にでも戻って……でも良かったんだと思うけど、誰もそれを提案するする人はいなかった。
 みんなも早く聖獣を倒すべきと思ってるのは同じだからだろう。そして大体決まってきた所で、どっかに行ってたリルフィンが戻ってきたよ。一杯の僧兵を引き連れて。


「待たせたな」
「何? その僧兵の人達も戦ってくれるのか?」
「勿論だ。やはり強力なモンスターに挑むのなら物量で勝負をかけないとな。気が気ではなかったが、今更そんな事を言ってる場合でも無かろう。
 事情を話したら、皆快く協力してくれると言ってくれた」


 僕達は、小さなモブリの軍団をみる。みなさん礼儀正しく頭を下げてる。「宜しくお願いします」的な感じだな。まあありがたいけど、今僕達が話し合って組んだ戦術にはぶっちゃけ、この僧兵さんたちは必要ない。
 けど……必要ないからって本当にいらないかは実際わかんないんだよね。僕達は結局、あの聖獣の表層しか見てなんじゃないかと思ってるんだ。
 だって戦ったのたったの五分程度だしな。あのクラスのモンスターは経験豊富なみんなの意見では、HPが減っていくと一気に能力を向上させたり、やっかいな攻撃をしてきたりって事があるらしい。
 攻撃と防御のワンパターンしか無い――なんて事は実際考えられないのだ。肝に銘じておかなくちゃ成らない。「まだ何かある……」その覚悟を持ってなくちゃ足下すくわれかねない。
 てか、まあ既に一回足下すくわれてるからな。二度もそんな事あっちゃただの僕らは間抜けだよ。


「戦力も整ったし、行こうかみんな!」


 モブリの国だから、テッケンさんが代表してそんな声を出す。みんな気合い十分。リベンジに燃える心意気は最高潮だ。そう思ってると、リルフィンが連れてきた人達が何か装備を付け足した。


「えっと……それは?」
「サングラスだ。聖獣の光線対策に良いと思ってな。お前達の分も用意してやった。ありがたく思えよ」


 そう言ってサングラスを装着した小さなモブリ達が僕達の前に来て、サングラスを差し出してくれる。どういうチョイスなのかわかんないけど、それぞれ形も大きさも違う。
 似合うとかで決め手なさそう。完全に目に付いたのを買ってきました的な感じだな。


「意味あるのかこれ?」


 僕は一応受け取って疑問の言葉を投げかける。だってねぇ……「ぶっ!?」


「ちょっと何よ。人の顔見て笑わないでくれる」


 思わず吹き出してしまった。だってセラの奴、何の躊躇いもなく付けてるんだもん。しかもハリウッドスターばりのデカいサングラスを。
 顔の半分隠れてるじゃん。


「しょうがないでしょ。私のはこれだったのよ。アンタのなんて鋭利な直角三角形じゃない! さっさと付けて私を笑わせないよ」


 自分が笑われたからってとんでもない事を言ってくる奴だな。てかマジ必要なの? つけたくないんだけど……直角三角形ってのもあるけど、だから必要性を……


「必要性ならある、奴の最初の光は実際フェイクだ。最初の強烈な光に紛らせて石化の攻撃を仕掛けてる。だからこのサングラスで最初の光をガードするんだ。
 石化したくなかったら付けておけ」


 そう言うリルフィンもローブに隠れてる顔からサングラスだけが見えてる。くっそ……こいつも笑えるな。何で真面目な事を言ってるのに、お前は真ん丸サングラスなんだよ。
 だけどフェイクね。そうだったっけ? 確かに光と石化は数瞬ズレてたかも知れない。だけどどっちも光はなってるし、気付かなかった。リルフィンも何もしてなかった訳じゃないのか。


「うう……」


 だけどこのサングラスは……せめて普通のを買って来いよ。


「我慢しましょうスオウ君。きっと役に立ちますよコレ」


 そう言ってシルクちゃんもサングラスを装着。シルクちゃんのは正三角形だね。一体どこで買ってきたんだよ。
 ここは諦めるしかないか。みんなが付けるならなんとやらってね。
 僕は直角三角形のサングラスをかける。世界にフィルターが掛かって見えるな。当然だけど。なんか新鮮、メガネとか掛けた事無い僕にはちょっと煩わしい感じがするけどね。


「良く似合ってるわよスオウ」


 プルプルと震えながらそんな嫌みを言ってくるセラ。ふんお互い様だ。


「ねーねークリエも見て見て!!」


 そう言ってくるクリエを見ると、何故かこいつのサングラスは星形してた。


「いや、お前には必要ないだろ」
「スオウが心配だからクリエも行く!!」
「ダメ」


 僕はクリエの顔からサングラスを取ってそう言うよ。全く、連れてける訳ないだろ。


「どうして? クリエだって何か出来る事あるかも! 大丈夫、このサングラスで石になる攻撃は避けるから!」
「サングラスしてたって確実に避けられる訳じゃないぞ。しかも聖獣は狙って撃ってるだけじゃない。常にいろんな方向にも光線は放ってる。それを全部ちゃんと避けれるのか? お前には無理。
 今回もお留守番しとけ」


 実際、守る余裕があるとは思えないんだよな。どこを向くかわからないあの頭の蛇ども。あの数には早々対応なんて出来ない。それぞれが個別で判断するかないんだ。
 それが出来ないクリエは連れていける訳がない。


「むむ~~、クリエはクリエは心配だよ……」


 クリエはしょんぼりと肩を落とす。さっき僕達は負けてるからな。だからこそ不安が増大してるんだよな。だけどここはもう一度信じて貰うしかない。僕はクリエの頭に手を置くよ。


「大丈夫。今度こそ絶対に勝って帰る。だからもう一度待っててくれ」
「絶対……絶対だよ!!」
「おう!」


 そう言って僕達は再び鍵を使い封印の祠の中へ。負けられない……次なんて無い。ここの聖獣はこれで絶対に倒す。それが絶対だ!!




 目の前で輝く強烈な光。だけど今度の僕達はそれに惑わされる事はない。足下に溜まってる薄緑色の水を蹴って数瞬遅れて繰り出される石化の光を避ける。
 悔しいけど、このサングラスはかなり役に立ってるよ。光で視界が遮られなくなって、聖獣の動きがよく見える。確かに最初の強烈な光の方はフェイクだったらしい。光にあわせて、一斉に蛇が動いてその瞳から石化の光線を出してる。
 僕達はまだ一度も攻撃出来てない。だけど、まだそれでいいんだ。今この場に居るのは僕達だけ。リルフィンと僧兵の人達には入り口付近で待機して貰ってる。
 僕達は僕達の考えた戦術を実行する。そのためだ。実際このサングラスで成功の確率は上がったかも……やりやすく成ったのは間違いない。


「どうだノウイ?」
「やれるっすよ! みんなの位置はちゃんと把握してるっす!」


 よし、そろそろ頃合いだろう。いつまでも避け続けられる物でもないし、善は急げとも言う。僕達、ノウイを覗いた四人はそれぞれ、聖獣の四方に行くことが出来た。
 奴に死角はない……だけどそれが僕達にチャンスをくれる。石化の攻撃を避けながら、僕達はそれぞれの一撃の為に準備をしてる。
 僕はセラ・シルフィングに電撃を帯電させ、セラはご自慢の可変式武器を弓の形に組み上げてる。鍛冶屋はその大鎚を構えて、テッケンさんは三人くらいに増えてるよ。
 だけど四方に散って、距離も位置も実際まだバラバラで、息付く暇もない。完全に手も足も出てない状況だけど、僕達はある瞬間を狙ってる。
 サングラスをしてるからよくわかるけど、最初のフェイクの後に来る石化の攻撃のタイミングは、蛇ごとにバラバラだ。
 僕達はそれを限りなく同じにしたい。その方が僕達がやろうとしてる事にとっては、都合が良いから。だけど実際そこら辺はあの頭の蛇のさじ加減なんだよね。
 まともに狙わないで攻撃してる奴もいるし……実際そんなのの方が避けるのが難しかったりするんだよね。自分を狙ってる攻撃を避けた場所とかにそのなんとなくが来たりするのが一番怖い。
 まあ今の所は誰も石化の被害に遭ってないけど、いつかそれが起きる可能性はゼロにはならない。どうにかして一瞬アクションを起こした方が良いのかも知れない。
 その意見はあったけど、どうせ防がれて反射される攻撃なんて……って思って拒否してた。でもこれじゃいつまで経ってもこの状況は変わりそうにない。
 あの蛇に狙いを付けさせてやることも大事だしな。僕は三人になってるテッケンさんへと視線を送る。一体どれを見れば良いのかわからんな。とりあえず全員に視線を送っとくよ。
 するとテッケンさんもこの状況をどうにか変えたいと思っててくれたのか、すぐさまコクリと頷いてくれた。良し、なら早速――――僕は上空へ向けて雷撃を放つ。青白い光が天井にぶつかり消えていく。
 だけど別に攻撃目的じゃないから良いんだ。これは合図。みんなで一斉攻撃のその合図だ!!
 聖獣の視線もお誂え向きに上方へ向いてる。上手く僕の攻撃に反応してくれた。


「食らええええ!!」


 僕は一気にもう片方の剣から雷撃を放つ。青白い光がスパークしながら今度はちゃんと聖獣の方へと進む。だけどそれだけじゃない。
 シルクちゃんはピクが用意してた炎を放ち、鍛冶屋はあの大鎚のスキルなのか、叩いた地面から沢山の刺を出した。
 そしてセラは弓矢を放ち、テッケンさんは実際どうするのかと思いきや、三人居る内の一体がなんとその腕から巨大な氷柱を放った。
 流石テッケンさん。何でも出来るな。てか、あの分列したのは幻影とかじゃないのか。


 そんなわけで、僕たちの攻撃が四方から聖獣へ向かって行く。上を向いてる奴に避ける暇はない。というか、元から避ける気なんかないんだろう。
 水が弾けて、激しい音と、爆風が聖獣を中心に巻き起こった。


「やった……っつ!!」


 訳が無かった。煙の中心核が僅かに光るのが見えた。その瞬間に、辺りを包んでた煙を吹き飛ばして同じ攻撃が僕たちへと襲い来る。
 だけど僕たちはそれを避けようとはしない。それぞれが自分達の攻撃を自力で受け止める。シルクちゃんは障壁を張り、セラはドデカい手裏剣に変えた武器で受け止める。鍛冶屋は足下から出てきた刺を大鎚で砕き、テッケンさんは攻撃を出した方と違うテッケンさんが今度は障壁を出して防いでた。
 そして僕は真っ正面からセラ・シルフィングで受け止める。僕はみんなの用に出来る事多くないし、このくらいしかないんだ。だけど……自分自身の攻撃に負ける気はない!!


「うおらああ!!」


 僕は二対の剣で雷撃を斬って捨てる。みんなも上手くいなしたみたいだな。そしてその時、上の方から、ノウイの声が響く。


「みんな来るっすよ!!」


 そんなノウイの声と共に、活動開始の合図みたいに閃光が辺りに放たれる。だけどその時、僕たちは冷静に次の行動に移ってた。ノウイの言葉と共に、僕たちの側にはミラージュコロイドの鏡が現れる。僕たちはその閃光と同時にそれに飛び込んだんだ。
 だけどそれは逃げる為じゃない。僕達が狙ってたタイミングがまさにこの時。聖獣は僕達の位置を完璧に把握してただろう。
 そして僕達の一斉攻撃の後から、休止してた石化攻撃。それを初めに撃つとなれば、そのタイミングは自然と同じに成るはずだ。そして狙いだって、当然僕達それぞれに完璧あわせてるだろう。
 条件は全て整った。後はこの一瞬の――刹那の間合いの勇気の勝負!!
 だから僕達が現れたのは聖獣から距離を取った場所じゃない。僕達はそれぞれの鏡に対応させてた鏡から、聖獣の近くの二メートル位の高さの位置に現れる。
 バラバラだった聖獣との距離も、鏡は全部同じ感覚を空けてあるから僕達は同じ位の距離で聖獣を囲む形に成ってる。
 そして瞬きする暇もなく僕達はそれぞれの落ちるべき足下へと向かって攻撃を繰り出す。叫び唸り、それぞれのありったけの力を込めて、僕達は地面を覆ってる薄緑色の水を大きく弾き上げるんだ。
 そうそれは、さながら聖獣を囲む大きな鏡の様に。光は水の中で反射して、逃げ場を求めて上方へと立ち上った。

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