命改変プログラム

ファーストなサイコロ

君と鏡



「さて、これからどうする?」


 リルフィンが帰ってくるまで待った方が良いんだよな。僕はみんなの意見を求めるよ。


「そうね、次で勝てると思うなら今直ぐにでも飛び込んでも良いわよ」
「言っとくけどな……僕には勝算なんか一欠けらもない!!」
「そんな堂々と宣言されても……」


 セラの呆れた様な声。だってだってあんなの反則だろ!! こっちは何も出来ずに逃げたんだ。考察の暇さえ無かったっての。
 まあ今度は攻撃のパターンはわかってるし、やりようはあるだろうけど……でもそれでも勝利まで持っていけるかは微妙だよな。
 あのメドゥーサみたいな聖獣の攻撃。あの光に当てられたら終わりだ。HPが幾ら残ってようが、全身石化は戦闘不能と同じ。
 部分石化だって相当厄介……しかも攻撃を跳ね返す盾持ちだぞ。どうしろと言うんだ?


「反則、あれは反則だ」
「あれで反則なら、シクラとかの外側の奴らはどうなるのよ。反則のオンパレードじゃない」


 まあ確かに。セラの言うことはごもっともだな。


「だけどアイツ等は元からLROに居ない奴らだし(サクヤは別として)そこら辺はしょうがないと思ってる。けど、聖獣は違うじゃん。
 ゲームバランスはどうなってるんだ!?」


 僕は声高々に叫ぶ。人数を増やせば勝てるって事じゃないよなアレは? どうすれば良いんだよ。


「ゲームバランスなんて初期時にしか無いわよLROは。慣れてスキルも仲間も増えてくれば、一人一人の力なんて数値化出来ない。それにアンタも頼ってる感情がある。
 火事場のバカ力とか、LROは思いを汲み取ってくれる時があるしね。そんな世界でバランスなんてとってられないわよ。
 それにピンチは理不尽な物。それを乗り越える冒険が、真の冒険でしょ。でもだからこそ、私達はこの世界にのめり込む。
 その理不尽を覆せる瞬間がこの世界にはあるからよ」
「覆す瞬間ね」


 セラがなんか格好良い事言ってる。まあ確かにそんな瞬間は確かにある。セラの言葉に他のみんなもうんうん首を縦に振ってるしね。


「流石セラ様! その通りっすよね!」
「アンタは覆した瞬間なんてないでしょ? 黙ってなさい」
「はいっす……」


 全面的にセラを支持してくれてるノウイをあっさりと両断するセラ。おいおい、別にその位いいじゃん。もう少し優しくしてあげろよな。
 そりゃあノウイは逃げる事と避ける事しか出来ないけど、それでかなり助けられてるよ僕達。そこら辺は認めてあげようよ。
 激しく降る雨の中、数メートルもしたら見えなくなる視界。そんな雨のカーテンの向こうに、突き放されたノウイはフラリと消えていく。
 そしてそんなノウイを気にもとめずに、セラはこっちを再び見る。


「私はねスオウ……まだ全く諦めてないわよ。アンタはどうなのよ? その命惜しくなったらのなら後は私達に任せない。
 誰も責めたりはしないわよ」


 なんか挑発する様な言葉だな。気遣ってるのかもしれないけど、心の内から「腰抜け」と聞こえた。凄い被害妄想だけど、セラならあり得るだろ。
 これは反論せずには居られない。


「何が命が惜しくなったら……だと!? 僕はいつだって命は惜しいぞ! だけど逃げたりはしないんだよ!」
「なんか拳を握りしめてまで言う事じゃないわね」
「スオウ格好悪い~~」


 なんかセラだけじゃなくクリエにまで否定されたぞ。いやいや、命を懸ける事と、命を惜しむ事は反対の様で実は同じなんだぞ。
 僕はその境地に達してるんだ。命は惜しい……それは人として当然だ。だって死にたくなんか無いしな。だけど救いたい、助けたい奴が居る。そのためにはこの命を危険に晒してでも前へ進まないといけない。
 ここの味噌は危険に晒して――って所だよ。別に命を無くす事を明言されてない。このまま進めば確実にお前は死ぬ……とか言われたら、流石に自分でもどうするかわかんないんだけど、今の状況なら絶望だけが待ってる訳じゃないから、僕は自分を信じて、仲間を信じて、この命を晒して冒険出来るんだ。
 死にかけたりは何度もしたけど、実際まだ僕は生きてるしね。それにここまで来たら今更引けるわけもないってのが真実。
 脱落所を逃してる。セツリの事も、クリエの事も、放っとける訳がないんだよ。


「クリエの為に命を使い果たすんだね。クリエは罪づくりだね!!」
「どこでそんな言葉覚えたんだお前は? それに命を使い果たすなんて言ってねーよ。僕を殺したいのか?」


 使い果たさない為に頑張ってるんだ。僕は死ぬ気はないからな。


「えへへ、クリエが可愛すぎてごめんなさい」


 意味が分からない。僕の言葉に返す返答じゃないよな。それにクリエは可愛いと言うより、愛くるしいだよ。赤ちゃん並みの大きさだからな。


「おいおい、お前等は何の話をしてるんだ? スオウの戦う理由なんてもうMって事で良いだろ。これ以上話す事があるか?」
「オイ待て鍛冶屋。Mって何だよ。話す事ありまくりだろ!」


 そんな性癖で片づけられたくない!! 誰がM気質の為に命を晒して血液を飛び出させてると思ってるんだ? んな訳ねーだろ!!


「まあ確かにスオウはMよね」


 セラの奴、何故そこに便乗する? 新手の嫌がらせか。僕はキツい視線をセラに送り続けてやる。


「それで決定っすね。早く聖獣対策にいきましょうセラ様」
「ええ、Mはきっと無視してても満足出来るでしょうからね」


 このS野郎!! 僕の視線をわかってる癖に、余裕でシカトを決め込むあたり、やっぱりSだよセラは。僕と同じポジションだと思ってたノウイはさっさとセラに付いてるし……何でこんなに僕の戦う理由がMだからで纏まりそうなんだ?
 僕は涙を堪えて頼りになる二人をみるよ。それは勿論、テッケンさんとシルクちゃんだ。二人は僕の事をそんな性癖で命を晒してる変態なんて目で見てないはずだよ。


「あはは、セラちゃんは相変わらずだね~。そんな態度だとその内後悔しちゃうと思うんだけど……大丈夫わかってますよ。
 スオウ君がそんな変態じゃないって事」
「勿論僕だってね。それにセラ君も冗談で言ってるんだよ。スオウ君はわざわざ付き合ってくれるから冗談を言うのが楽しんだよきっと」


 流石はシルクちゃんにテッケンさん。貴重な僕の味方だね。だけどテッケンさんの言葉はちょっと恥ずかしいよ。別に優しさで付き合ってる訳じゃ……アイツは冗談でもこっちは本気だからな。


「シルク様もテッケンさんも、リルフィンが戻るまで、対策を練りましょう。私は同じ相手に二度も三度も負けたくないんです」
「そうだね。早く聖獣を封印しないと、実際スオウ君の命の時間が危ないもんね」


 ニコニコ笑いながらそう言ってシルクちゃんはセラの方へ顔を向ける。するとセラは一瞬大げさに反応したかと思ったら、シルクちゃんに大声でこう言うよ。


「ななな何言ってるんですかシルク様! 私の言葉聞いてましたか? 私は同じ相手に二度も負けるのがイヤなだけです」
「そ……そうだね……」


 もの凄い迫力に気圧されるシルクちゃん。そんなにあの理不尽な負け方が気に入らなかったんだな。


「理不尽か、だけどあれからセラ君は一人でかなり善戦してたよ」
「え? そうなんですか?」


 そう言えば直ぐには出てこなかったもんな。その間は生き続けてたって事だ。ようはたった一人でその時間を戦い抜いていたって事か。


「私はただでは死なないわよ。アンタには出来ない事が私達には出来るのよ。一回切りの戦闘じゃないのなら、私達は次に繋げる行動が出来る。まあ、多少のリスクはあるけど、そこら辺はしょうがないわ」


 そう言いながらセラはウインドウを表す。何かアイテムの確認でもしてるみたいだな。さっきの戦闘で使った分を確認してるのか?
 僕は使う暇も無かったんだけど……


「――で、善戦したセラは何かを掴んだのか? あの聖獣を倒せそうな何かを?」
「それを今から考えるんでしょ。私だけに押しつけないでくれる」


 おい……言ってることおかしくないか。素直に実は何も掴めませんでしたと言えよ。てか、それじゃあどうやって善戦したんだよ?


「逃げて避けて時々攻撃、これしか出来なかったわよ!」
「…………」


 まあ一人でやれれば善戦じゃないかな? 恥じる事じゃないよね。精一杯セラはやったと思うよ。


「てか、それだけで終わった訳じゃないだろ。お前なりの分析を聞かせろよ」


 それが重要なんだ。別に倒せるなんて誰も思ってなかったんだからな。セラの功績は一秒でも長く、あのモンスターと戦えた事。それが他のみんなへも情報をもたらした筈だ。


「そうね。私が一番が長く戦った訳だし、聖典を使って複数戦の想定もある程度は出来た。結論から言うと、あの聖獣に死角は無い。どこから攻撃しようが、あの盾が攻撃を吸収する。
 攻撃にも防御にも死角がないってどういう事よ」


 セラはふてくされながらそう言った。まあその気持ちはよくわかる。


「結局誰も一撃も入れれ無かったんすね。どう考えても最強クラスのモンスターっすよ。これが後五体って……どうするんすか?」


 ノウイの言葉に返す言葉を誰も持ち合わせてないよ。どうするって……それをみんなで相談してるんだ。絶望的な事の再確認なんかいらない。何かアイディア出せ。


「アイディアっていってもっすね……自分も直ぐにやられたっすからね……」
「そう言えばそうだったな。アレって、ミラージュコロイドの鏡を伝って光がお前まで届いたって事だよな?」
「そうっすね。きっとそうだと思うっす」


 僕を助けてくれた時に運悪く反射して来ちゃったんだよね。ノウイはその一撃で完全石化しちゃって戦線離脱になったんだ。


「なるほど……」


 僕達がそんな会話をしてると、テッケンさんが不意にそんな言葉を漏らす。成る程……とは一体何が?


「いや、あの光は反射が出来るって事だと思ってね。ミラージュコロイドがそれだけ反射に適した鏡だったからかも知れないけど、それは重要な事かも知れない。
 だって反射出来ると言うことは、その鏡事態は石化しなかった筈だよ。そこら辺はどうなんだいスオウ君?」


 僕はテッケンさんに振られて、急いであの時の事を思い出してみる。どうだっただろうか? 実際ノウイばっかり見てたから、鏡にまで気を向けなかったんだよな。
 だけど確か……一番側の僕達が出てきた鏡、それは――


「そうですね。多分石化はしてませんでした。術者であるノウイが石化したから、ミラージュコロイド事態が消えていったって感じでしたから」
「うん、やはりそれは重要な情報だよ。ミラージュコロイドを使えば、あの攻撃を跳ね返せるかも知れない!」


 おお!! 確かにそれは凄い事だ。この場だけじゃなく、雰囲気まで湿ってた僕達の周りに、乾いた風が吹いた気がするよ。今回の戦闘の鍵はノウイが握ってると言うわけか。


「頼むぜノウイ。お前が頼りだ」
「ええ!? ちょっと待つっすよ。実際あの光を跳ね返したからって、倒せる物っすか? そこら辺は自分の攻撃は無効に出来たりするんじゃないっすか?」


 大役を担うのが気が気じゃないのか、ノウイはなんか言い出したぞ。まあだけど重要な部分ではあるよな。自分の攻撃が自分に返ってきたら無効とする……確かにあってもおかしくはない。
 現にパーティーの仲間からの攻撃でプレイヤーはHPを削られる事はないしな。だけど自分達の攻撃が跳ね返されればダメージを受けるんだよな。
 それを考えると、敵側にもそれは適応されてる筈だとは思えるけど……ノウイは確証が欲しいわけだよね。自分が役に立てるかどうかのさ。


「そもそも攻撃を吸収する盾もあるっすし……そんな単純にやれるとも……」
「いや、待てよ」


 僕はここで重大な事を思い出した。そう言えばあの時、確か聖獣の頭の蛇を僕は一匹倒さなかったか? そうだよ、確かアレは……


「やれる……いけるよきっと! 僕がミスって水面を大きく弾けさせたとき、きっとその水に光が反射して聖獣へと戻ったんだ。
 その後で、聖獣の頭の蛇は一匹だけだったけど、確かに落ちたんだよ。崩れ落ちたんだ! それはつまり自分の攻撃が跳ね返って来て、頭の蛇が石化したって事じゃないのか?」
「ええ、それはきっとそうですよスオウ君!!」


 僕の興奮気味な言葉に、シルクちゃんも賛同してくれる。他のみんなはどうだろうか? この見解が間違ってるなら、教えてくれ。


「確かに、その話通りなら聖獣は自身の攻撃を反射する事は出来ないと言うことになる。それならば、奴が無闇やたらに出すあの石化の光を利用するのは有効な手段だよ」
「確証って程じゃない……だけど試す価値はあるわね」


 テッケンさんもセラも前向きな言葉。これは行けるはずだ。というか、攻略手段は今の所これしか無いもんな。これに賭けるしか無いのが現状。


「というわけで、頼むぜノウイ」
「頼むぜノウイ!!」


 僕の後に、僕を真似してクリエがそんな風に声を出す。だけどノウイはそんな期待がイヤなのか、頭を振ってこんな事を言い出した。


「ちょっと待ってっす! 確かにミラージュコロイドで聖獣の光は反射出来るかも知れないし、それであの聖獣を倒せるかもしれないっす。
 だけど、それはリスク高く無いっすか? 聖獣の頭の蛇は三十匹位ウネウネしてたっす。その蛇、一匹一匹が石化の光を出してるっす。
 それに対して自分が展開出来る鏡の数は十二・三が限界っす。どう考えても足りないっすよ!!」
「うう……確かに」


 数の問題か……ノウイの奴、マトモな事を言うじゃないか。確かにそれは重要だな。半分以上も向こうが勝ってるんじゃ、強引に押しつぶされるかも知れない。


「それにそもそも聖獣の蛇は自由にその視点を変えられっるっす。そして光は一瞬……それを把握して跳ね返すなんて、せいぜい自分に来るとわかってる時しか無理っすよ」


 言われてみれば確かにそうだな。しかもあの光自体のせいで視界も奪われるしな。それを考えると、かなり難しいかも知れない。
 ミラージュコロイドの鏡は背景に溶ける、二メートル越えの大きな鏡だけど、一枚板なのは当然だ。完璧に跳ね返せる物じゃない。それこそノウイの腕にかかる部分が大きく、そもそも数が足りてない。
 これは痛い事だな。


「鑑の数を増やすこととか出来ないのか?」


 せめて蛇の数と同じに出来れば……だけどノウイの答えは「NO」だ。


「それは無理っす。てか、自分でもいつの間にかこの数になったかわかんないっす。それに幾ら数が増えても大前提として無理っすよ」
「どう言うことだ?」


 さっきから無理とか無理とか無理とか……ミラージュコロイドはノウイしか持ってない特殊なスキルだろ? もっと自身持てよな。


「ミラージュコロイドは基本一度展開したら据え置きっす。だからこそ敵にバレにくくするために背景に溶け込む仕様なんすよ。簡単に移動できるのは、自分が始めに飛び込む用の鏡っす。
 後のも操作はある程度出来るっすけど、それはセラ様の聖典には及ばないっす。どこにだって任意の位置に出せるっすけど、それを自由に動かせる訳じゃないって事を覚えてて欲しいっすよ」


 そう言ってノウイはその豆みたいな目を糸みたいに細めた。その表情は苦笑い……か? ミラージュコロイドが聖典程、自由効かなくてゴメン的な? 
 確かにこれはちょっと所じゃない痛さかも知れない。僕達が頼ろうとしてたミラージュコロイド……でも自由自在に出来るものじゃないのなら……命を預けるには頼りないかも知れないな。


「ゴメンっす。本当に……ゴメンっす。自分はいつもこうなんす。肝心な所では何も出来ないっす」


 ノウイは笑い話にしようとしてるのか、必死に笑おうとしてるけどさ、実際笑えないよ。ノウイだって本当は役に立ちたい……そう思ってくれてるのはわかってる。
 それにこれまでは何度もその力に助けて貰った訳だし、何も出来ないなんて、そんな訳ないよ。


「だけど! ミラージュコロイドがもっと強力なら! もっともっと自由に扱えて鏡の数も増やせたら……聖獣を倒せたかも知れないっす……これだけが今唯一の希望だったのに……」


 ノウイは打ち震えてるよ。よっぽど悔しいだろうね。差して乗り気になってなかったのは、結局こうなるってノウイはわかってたからか。
 安易な希望を持たせたくないし、自分にはその期待に応える事も出来ないんだと言う苦悩がノウイを苦しめてる。


「顔を上げなさいノウイ」


 僕達がどう声をかけて良いのかわからない中、力強くそう言ったのは納得のセラだった。俯いてたノウイはそれだけで顔を上げるよ。


「セラ様……」
「別にアンタが悔しがる事なんか別に無いわよ。ミラージュコロイドはその仕事をちゃんとやっててくれてるわ。まあ改良の余地があるのは良いけど、別に無理をする必要はないわよ」


 何故かノウイに優しく接してるセラが気持ち悪く見える。だけどノウイは普段聞けないセラの言葉に、感動すら感じてるようで、なんか涙を流しそうな雰囲気。
 実はずっと認められたかったんだよなノウイはセラにさ。だけど実はもうとっくにセラはノウイの事を認めてたのだ。うんうん、結局なんの解決にもなってないけど、良かったんじゃないかな?
 そう思ってたんだけど、ただでは持ち上げないのがセラという女だった。


「そもそも、戦闘関連ではアンタには期待してないわ。バックアップに専念しときなさい」
「…………はいっす」


 ノウイ瞳から一粒の涙がコボレた。結局期待してないとかズバリと言うあたり、セラは流石だよ。持ち上げといて落とすんだね。その方がダメージ大きいと本能でわかってるんだな。
 まあ本人は別に、落とした気なんかないんだろうけど、ノウイは今の言葉で崩れかけてるよ。まあ無理もないね、セラに言われちゃね。偵察とかでは勿論認められてるんだろうけど、もっと他の事で役に立ちたいってノウイは普段から思ってそうだもん。
 幾ら手厳しく当たられたって、ノウイはセラにべったりだもん。でもだからこそ、重要な時に力になれなくて、仕方ないと言われるのが悔しいんだろうね。


「カガミ……足りない……わかった!!」


 いきなりこの場にクリエの元気な声が響く。一体何がわかって言うんだ?


「あのねあのね、カガミが足りないんだったら買えば良いんだよ! 街にだってきっとカガミ売ってあるよ。それをいっぱい買って、敵を囲むの! そしたら勝手に死んじゃうよ!!」


 名案を思いついた感じでそんな事を提案するクリエ。まあ子供の思いつきレベルだな。悪くはないけど、それじゃあ鏡を積んでる間に僕たちはやられるよ。


「いいと、思ったんだけどな~」
「まあ確かに……クリエの言った事が一瞬で出来ればそれが一番なんだけどな……いかんせん手段がない」


 一瞬で鏡を展開できるのはミラージュコロイド位だったわけだけど……それも今や欠点が見えて実用的じゃない。それにあの聖獣を囲むのは今の鏡の数じゃ全然たりないしな。
 土砂降りの雨の中、再び僕たちは行き詰まる。やっとで見つけた希望だったけど、あと一歩足りなかった。でも足がかりには成るはず……別の方法がきっとある。ダダダダダダダダダダダダダダと地面を打つ雨の音が永遠にでも続きそうな程に響いてる。
 地面には吸い切れなくなった雨が低い所へと流れてる……その流れをただジッと見つめて考える。何か……何か鏡の代わりに成るものがあるはずだ。そしてその流れの中に僕は一つの可能性を見つける。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品