命改変プログラム

ファーストなサイコロ

これで満足!!



 目の前の変態が星羅を作ったとか、しかもその時の教皇でもあるとか……なんか安易に信じられない衝撃的事実が満載でついていけないよ。
 この薄暗く狭い通路内でしか存在を保てないとかもどういう事? だし、そもそも一番その変態が教皇まで上り詰めたことに驚愕だよ。
 まずそこまでの軌跡を教えろ――と言いたいけど、話長くなりそうだし、よくよく考えたらどうでも良いことだな。
 重要なのはこの変態がこんな存在になってまで存在し続けてる意味じゃ無かろうか。流石に可愛い女の子目的ってのは嘘だろ。
 何か重要な事があるからこんな所でその存在を保ち続けてるんだろ? 勝手な希望だけど、そうであってほしいよ。
 だってそうでないと、この変態はマジでただの変態。まあ実際、女の子為にそれだけの事をしそうではあるんだけどね。
 今までの行動を見る限り、マジでいつまでも可愛い女の子を愛でたいだけかも知れない。こいつの執念は本当に凄いもん。尊敬できない方向で凄い。きっとこいつが教皇だったのはサン・ジェルクにとって黒歴史として抹消されてるんじゃないだろうか。どう考えても恥だもん。


 僕がそんな考えをしながら、封印された扉の前の二人を見てると、「必要ない」とか言われた変態が、自信満々にこう言うよ。


「むはは、必要ないとは大きく出たなじゃ。儂はまだまだ必要じゃぞ。お前の大事なローレにとってな。儂以来の召還士とお前は言ったが、まだまだこの偉大なる儂には及ぶべくもないのがあの子の現状じゃ。
 それは何故かわかるかお主? あの子は儂の懇切丁寧、手取り足取りで伝授する召還士としての極意を拒否したからじゃ!!
 ローレが全てを受け継いでくれれば、儂は消えるかもしれんが、今のままじゃそれは無いわ。じゃから儂を疎ましく思うのなら、早くまたローレをここにうえっひひひひ」
「そもそも貴様のセクハラが酷すぎたから主は……誰が二度と貴様なんぞに頼るか! 我らはそれを誓ってる」


 踏まれたままの癖に変態はエロい笑いを漏らして、それに腹を立ててるリルフィンが更に強く変態を踏みつける。
 なんか床がミシミシいってるぞ。てか案外ローレの奴も苦労してたんだな。


「まあ誓うのは自由じゃが、本当にそれで良いんじゃろうか? お前にとってもローレにとっても。そしてこの儂にとっても……儂はイヤじゃぞ。ローレともっと修行を通してキャッキャウフフとしたいんじゃ。
『お師匠様……好き』とか言わせたいんじゃ!!」


 そんな発言の直後、床がベコっと砕かれてその中にめり込む変態。おいおい遂にやっちまったよ。
「ふざけるな。そんな夢、今捨てろ。貴様は主に試練を与える存在だけで良いんだ。それ以上でも以下でもありはしない。ふん、やはり主は二度とここに来ることはない。我らだけでも十分だからな」


 そう言いながら足を穴から退けるリルフィン。後ろから覗き込むと、砕かれた床に無理矢理押し込まれた変態の姿が。どうやらまだ死んではない様だけど、動けなくなってるみたいだな。これは丁度良い。


「おいこら! リルフィン貴様、ちょっと儂を引っこ抜け! なんか動けんぞ!」
「ふん、良い様じゃないか。良く似合ってるぞ。まあだが私も鬼ではない。貴様が要求した物を出すのならそこから引っこ抜いてやらんでもない」


 おお、話が変な方向に行ってるな~とか思ってたけど、リルフィンはどうやら目的を忘れてなんか無かったらしい。なるほど、これなら交渉を有利に進められそうだよな。
 それに変態は穴にハマってるから安心だしな。僕はこの事実を怯えてたシルクちゃんと、気を失ってるセラにも教えてやる。セラはガクガク揺さぶったら起きてくれたよ。


「安心なんですね?」
「嘘だったら承知しないわよ」
「大丈夫だって二人とも。リルフィンが上手くやってくれたから」


 疑う二人を穴にハマってる変態の元までつれていく。そしてその姿を見せると「プフッ」と二人とも笑いが漏れた。それだけ見事にハマってるからね。穴にすっぽりとジャストフィットして赤ちゃんみたいになってるよ。
 全然可愛くなくて憎たらしいだけの姿だけどね。


「おーおー、めんこい娘っ子達は儂を助けてくれるじゃろ?」


 そう言って短い手をブラブラさせる変態。その姿は赤ちゃんが母親に抱っこをせがむ姿その物だけど、この変態がやると殴りたくなる不思議。てか、髭と白髪で覆われた顔面年輩のこいつがやってもね……介護だよ。
 そしてそんな願いを、この二人が叶えてくれるとどうして思える? シルクちゃんは立ち上がり背を向けて、セラは冷たい目を向けてこう言うよ。


「助ける? 例えこの世界が滅びる寸前でも、アンタは私が殺してあげるわ」


 凄い執念だな。ここにも凄く深く執念深い奴が居た。後少しで世界が滅びて、コイツも死ぬのがわかってても、自分の手で殺さないと気が済まないか……まあセラなら納得の行動だな。


「そんな熱い瞳で見つめられると……儂、逝ってしまいそうじゃ」


 完全に汚物を見るような軽蔑的な視線なんだけど……凄い補正が変態の目にはかかってるようだ。


「逝っていいから、その前に鍵を渡せ」


 割り込んでそんな言葉を上からかけるリルフィン。するとあからさまにイヤ~な顔になる変態。


「貴様の顔など求めてないわ。さっさと去れ」


 完璧にリルフィンの額に怒りマークが浮かぶのが僕には見えた。だけどリルフィンは無闇やたらに手を出したりはしないらしい。そこら辺はセラよりも大人だね。
 たく、それにしても男と女に対する差が激しすぎるよこの変態。神様は「平等に愛せよ」とか言ってるんじゃないのか?
 これで良く教皇までいけたな。その時はまだ、この性格を隠したのかも知れないな。偉くなってハーレムを作るために。だけど実際、偉くは成れたけどハーレムは作れなかったから聖院を見限って自分のハーレムの為に星羅を作ったとかかな?
 星羅はだとしたら、その事実は未来永劫封印した方が良いよ。割とマジで信者が離れて行きそうじゃん。そんな感じで星羅を哀れんでると、ふと思いついたぞ。
 これだけ男と女で態度が違うんだ、もしかして女子がちょっとお願いすれば簡単に鍵とやらをくれるんではないか?


「おいセラ、ここはお前の出番だ。お前が要求すればコロッと出すんじゃないか」
「女好きだからって事ね。確かにあり得るわね」


 僕たちはこそこそと耳打ちをして、行動に移るよ。


「こら変態。リルフィンじゃなく、私に渡しなさい。その鍵とやらを」


 セラの奴、もっと下手で行くかと思ったけど、全然そんな事無かったな。コイツに下手で行くのがよっぽどの屈辱なんだろう。
 だからあえて上から目線。さて、幾ら大好きな女からの言葉でもこれはどうなんだろうか?


「うんふふうふふふ、お主も鍵を求めよるのかのう。うふふふうふふふふふふふ……」


 何だろう、今すぐブン殴りたい衝動に狩られそうだ。腕が自然と握り拳を作っちゃうぜ。セラも実際殴りたくて仕方ないだろうけど、グッと我慢して言葉を続ける。


「どうなのよ。アンタが大好きな女の子が頼んでるのよ。そのキモい笑いをやめてさっさと渡しなさい」
「そうじゃな~そうじゃな~、儂はめんこいお主は大好きじゃから渡しても構わんが、ただと言う訳にはいかぬな~」


 ちっ、やっぱり足下見てきやがったよあの変態。どうせ変態的要求をするんだろう。見え見えなんだよ。事によってはセラの堪忍袋の緒が切れて舜殺するかも知れない。
 そうなったらまたコイツを捕獲するのは面倒過ぎる。どうにか上手く交渉しないと。


「ちょっと待て! これは本当に重要な事なんだよ。その鍵がないと聖獣の場所まで行けないんだ。そうなったらリア・レーゼ事態がピンチなんだぞ。
 それでもいいのかよ?」
「男の言葉は信用には値しないな」


 僕の必死に言葉はあっさりと捨てられた。マジでブン殴りたい。


(この変態が……)


 僕は拳に力を込めて、歯を噛みしめる。コイツが重要な奴じゃなかったらサンドバックにしてやるのに。


「しょうがないわね、私が肯定してあげる。今のスオウの言葉は全部本当よ。リア・レーゼを守ってた結界は無くなってる。
 聖獣ももうすぐ復活するわ。それを私達は止めたいのよ。だからこんな所で変態の相手してる場合じゃないの。わかったなら鍵とやらをさっさと、後一秒で出しなさい」
「ぬぬ~実はその話はリルフィンから既に聞いてしってるぞよ」


 死ね!! マジで死ね!! 僕は心の底から思った。てか考えてみれば当然だ。最初にリルフィンが一人で行った時に事情は話してる筈だもん。それなのに女の子と会話したいが為にあんな態度をとり続けてるんだろ。
 ようは女の子を同伴させとかないとここら辺は進めないって事か? まあ女子ならなんの問題も無い……訳ないか。女子はこの変態のセクハラに耐えないといけないという試練がある。
 僕達男はそもそも無視されるという試練だな。


「だがしかしじゃ、儂の要求は変わりはしないぞ。鍵ば欲しくば、儂の言うことを聞いてもらおうかの」


 そう言って地面にハマった変態は嫌らしい笑みを浮かべてる。こいつはこんな状態でもマジ変態。リア・レーゼの危機を理解してるのなら、さっさと鍵を渡すものだろ。
 それでもこの星羅の街の支配者だった奴か? 自分が作り上げた場所だろ? 愛着とか無いのかよ。


「ふふふ、勘違いして貰っては困るんじゃが。この街事態は古くからあるんじゃよ。世界樹もあるし丁度良いと思って儂が星羅の拠点にしただけじゃ。
 やっぱりサン・ジェルクに対抗する威厳を手にするには世界樹という象徴は都合が良かったんじゃよ」


 うお、変態の癖にそう言う所は頭が回るのな。まあただハーレム作りたいんじゃ! で作った街ではないんだな。それはちょっと安心かも。


「そんな事よりもどうするんじゃ? 鍵欲しいんじゃろ? それならばこの儂と熱い夜を――」
「どっせい!!」
「――ぶぎゃっ!!」
 僕はセラが強力な攻撃をする前に、殴り飛ばしてやった。また数ミリ位は埋まったかもね。だってこいつ何要求しようとした? 熱い夜って……その……エッチィ事だろ? 幾らセラでもさせられるかそんな事!!


「なんでアンタが手を出すのよスオウ。私が殺そうと思ってたのに」
「それをさせない為に手を出したんだ。お前じゃマジでまた殺しかねないし。それだけの事をこの変態言ったしな。
 だけど考えてもみろよセラ。こんな変態がまた自由になって良いのかよ?」
「う……それは……」


 僕の言葉に明らかにイヤそうな顔をするセラ。シルクちゃんなんてもの凄い勢いで首を振ってるよ。「絶対ダメダメ」と言ってるみたいだ。


「しょうがないわね。許してあげる」
「そりゃあどうも。おい変態。アンタ今リア・レーゼの事をそんな事って言ったよな? 本当にアンタにとってこの街はその程度なのかよ?」


 僕は顔面のパーツが中央に寄った変態に話しかける。だってそんな思い入れが無いわけないだろ。苦労とか一杯乗り越えてきたんじゃないのか? だけど僕のそんな思いは一瞬で蹴り飛ばされたよ。


「ふん、今の儂の楽しみはめんこい若い娘っ子とイチャイチャすることじゃ! それ以外はハッキリ言ってどうでもよい!!」


 僕達の目が白くなってる事に変態は気付いてない。マジでこいつ最低だよ。リルフィンは星羅の恥に呆れる様にため息を漏らしてる。
 そりゃあため息も漏らしたくなるよね。リルフィンに同情しちゃう。


「アンタまがいなりにも教皇にまでなっといて良くそんな事がいえるわね。全ての信者に土下座しなさいよ」
「イヤじゃイヤじゃ、儂はもう十分すぎる位がんばったから、後はいつか消えるその時まで儂は可愛い子とキャッキャウフフとやるんじゃい!」


 これは幾ら言ってもダメだな。そう思った。コイツは過去をというか、生きてる時の事は全て捨てたんだろう。しがらみを全部とっぱってここで自由奔放に墓守をやってる。そんな感じ。
 星羅を作っても結局生きてる時は自由なんてなかったんだろうか? まあそこまで配慮する気にもなれないけど。コイツの傍若無人度は目に余るもん。同情の余地なんてない。


「きゃっきゃウフフをやれれば鍵はくれるんだな?」
「当然じゃろ」
「ちょっとスオウ! アンタ私に……その……コイツと……その……」


 セラが真っ赤になって変態を指さし声を荒げようとしてできない。どうやらその単語は口にできない様だ。やっぱり案外セラは純情だよ。てかそんな訳ないだろ。


「落ち着けよセラ。キャッキャウフフと言ってもそれは流石にダメだ。幾らお前でもそんなの可哀想過ぎる。だからもっとランク落とせよ変態。手を繋ぐ位で妥協してろ」


 僕はもっとも何気にできる事を提案してやった。これならセラだって我慢できるだろうしね。だけど何故か地面に埋まった変態は死後硬直したみたいに微動打にしない感じになってる。えっ何?


「貴様はアホかあああああああああああ!? 小学生か? 貴様は小学生なのか!? そんなんで儂が妥協できる筈無かろうもん! そんなの絶対にイヤじゃイヤじゃ! せめてベロチューじゃなきゃ爺はいやじゃあああ!」
「ベロッ……」


 それって……大人のキスの事か? 唇を触れ合わせるだけじゃなく舌と舌をイヤらしく絡ませあうとか言うAVでみるようなアレだよな?
 僕はチラリとセラをみる。すると既に爆発寸前みたいに、目玉がグルグル回ってる。セラはホント実はまっさらなんだな。
 てか、こんな状態のセラにベロチューをお願い出来る訳ない。きっと泣くぞ。絶対にファーストキスをとっておくタイプだもん。キスも涙も女の武器にしてそうなセラだけど、実はそんな事全然無かった。
 普通の一人の女の子。僕達と同じ年頃の……みたいに見える。実際はどうか知らないけど。


「ダメだダメだ。キスなんて重いじゃんか! お前の乾ききった唇とあわせると、生気が吸われそうだろ。せめて間接キスにしろ! 瓶はここにあるから!」


 僕はアイテム欄から空の瓶を取り出した。これで間接キス出来るだろ。ふっふ凄いアイディア。小学生は越えたな。


「アホカアアアアアアアアア!!! 儂のこの溢れ出すリビドーは間接キス程度じゃ満足出来ないんじゃあああ! それに言っとくがな、さっきとあんまりレベル変わっとらんからな!!
 間接キスなど、まだまだ小学生じゃ! 甘酸っぱさも良いが、儂が求めてるのは濃厚なLOVEなのじゃ!!」


 何が濃厚なLOVEだよ。変態の癖に高望みしてるんじゃない。実際さっきのハンカチでいっぱいいっぱいだっての。


「ふん、同じ男とはおもえんヘタレじゃな。男とは常に女の尻を追いかける存在よ」
「なんだその全然格好良くない名言。一生使いたくねぇよ」


 全ての男を変態基準にするんじゃない。そりゃあ誰しも多少変態だろうけど、貴様は度し難い変態なんだよ。それにコイツにヘタレ言われると超腹立つな。


「しょうがないから儂がそのめんこい子もやれるのを提案してやろう。キス系もそれ以上も無理となると、後儂のリビドーを満たせる行為は難しいぞ」
「もうあれじゃね? 美少女にボコられればいいんじゃね? 変態らしくて素敵だぞ」


 僕はやけくそ気味にそんな事を言ってみる。だってこれならセラもノリノリで出来るだろし、良いと思うんだ。
「あんた偶には冴えたこと言えるじゃない」


 ほら、セラもいい感じでノリノリだぞ。


「儂へのメリットが一つも無いじゃろうが!」
「いやいや、美少女が汗だくに成りながら自分だけを見て殴ったり蹴ったり罵ったりしてくれるんだぞ。変態には最高だろ?」


 僕がそう言うと変態はセラを見て何か考えてるみたい。もしかしたらその場面を想像してるのかも知れないな。そしてポツリと「いいかも」と言い出した。
 よし、このまま押せば万事解決するんじゃないか? 僕達は示し合わせたように動き出すよ。


「だけどやっぱりこの年で痛いのわちょっときついんじゃ無かろうかな~」
「そんな事無いっす! 逆に刺激になって普段の体のきしみとかがなくなるっすよ!」


 ノウイの奴、それは痛みで上塗りされてるだけだよね。まあ良いけど。変態をその気にさせるのが目的だからな。


「う~んじゃがな~」
「何を迷う必要がある? お前の大好きな女と激しい行為が出来ることに代わりはないだろう」
「おおそうじゃな!」


 鍛冶屋の奴のなげっぱな言葉にも簡単に乗ってくる変態。やっぱアホだなコイツ。この調子だ。


「だけど何かが足りない気がするんじゃ? こう儂のリビドーを刺激する何かが」
「ふっ……何かとは意外な言葉ですね。気づいてくださいよ。その何かは既にあります。セラ君の足に何が装備されてるのか……貴方はおわかりに成るでしょう?」
「脚……あれは! 黒タイツ! パンチィストッキングじゃな! あの脚で蹴られたり踏みつけられたすると思うと胸熱じゃな!! 
 よっしゃああああああ!!! バチコオオオオオオイ!!!」


 アホは完全に乗せられました。まあテッケンさんのストッキング発言は意外だったけど、人の趣味はそれぞれだし、深く追求はしないよ。
 それにセラの細長い脚にあの黒タイツは映えるしね。ロングスカートに普段は隠れててあまり見えないのも良いのかも。


「本当に痛めつけて良いのよね?」
「おう! その黒タイツで儂を蹴ったり踏んだりしてくださいじゃ!! 間接技を決める為に胸を密着させたりも大歓迎です!!」


 もうこの変態は自分が何を言ってるのか理解出来てないと思う。セラは指の骨をポキパキ鳴らして変態の前に立つ。


「それじゃあ遠慮無く」


 その後、この通路には断末魔の叫びが五分ぐらい響き続けた。だけど変態の執念はすさまじくその叫びの中でも、不気味な笑いが漏れ聞こえてた。




「はぁはぁ……もう十分かしら? それともまだやってほしい?」


 膝に手をおいて荒く息を吐いてるセラが、床にボッロボロの格好で倒れてる変態に声をかける。まだ生きてるけど、完全に虫の息状態。さてなんと言うのだろうか?


「もう勘弁して欲しいのじゃ……」


 流石の変態もギブアップ宣言。これで僕達はようやく例の鍵を貰う事が出来る訳だ。良かった良かった。


「それじゃあさっさと鍵を渡しなさい。これ以上アンタにつきあってる暇はないのよ」


 確かにテトラに変態にとかなり時間が掛かっちゃったよ。今まさに聖獣が祠から出ようとしてるのに不味いっての。


「うう……なんか儂、騙された様な気がするのじゃ」


 今更気づいたか。だけど約束は約束だ。こっちはただ変態の望みを叶えただけだからな。十分満足だろ。


「満足は満足じゃが……なんか納得できん」
「おい、今更無しとかはダメだぞ。こっちはお前の変態行為に付き合ったんだからな。感謝して鍵渡せ」
「付き合ったのは私だけどね。鍵渡さないと、聖典で入り口壊して誰もここに来れなくするわよ」


 セラはとんでもない事を平気で言うね。入り口壊すとかダメだろ。ここへの入り口の場所の上にはあの神壇があるんだぞ。
 入り口壊した衝撃で、上の神壇まで崩れたらどうするんだ。責任なんて取れないよアレは。まっ、ただの脅しだし、口は噤んどくけど。


「むむむ……予想外のやり方じゃが、まあ良いか。誰もここに来れなくなるとかそんなの地獄じゃしな。儂は定期的にきてくれる巫女さん達を楽しみにしてるんじゃ。
 じゃからここは妥協して聖獣討伐の指令をお主等には与えるのじゃ。鍵はそれぞれの祠に対応したお札を渡してやる。これは特殊ミッションならぬ、特務ミッションじゃ。くれぐれも油断せぬ事じゃな」


 そして僕達はようやく目的の物を手に入れる事が出来た。これでいよいよ聖獣戦へと入れる訳だ。

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