命改変プログラム

ファーストなサイコロ

可能性は見逃せない



 僕達は取り合えず下に降りる前に、この場所の建物を回って見ることに。寝てる鍛冶屋とノウイは起こすのが面倒なので、しばらく放っておいて、下に降りる時に強制的に起こすことにしました。
 そんな訳で建物を回るのは、僕とシルクちゃんにテッケンさん、セラにクリエの面々です。アトリエを出た僕達の案内人はリルフィンが担当してくれる様だ。取り合えずは近場からって事で、最初の回廊部分にあるらしい場所へ向かってます。


「やっぱり何度見ても息を呑む光景だね。素晴らしい」


 テッケンさんの言葉に僕らは頷くよ。確かに何度見てもこの場所から見るLROという世界は美しい。きっと同じ条件なら、地球だってそうなんだろうけど、実質不可能だし、目に焼き付けておいて損はないよね。
 僕達は回廊をグルッと進み、多分反対側ら辺に。するとそこには回廊から飛び出した様な場所がある。屋根がついていて、しめ縄でグルッと囲われてる変な場所だ。なんか違和感あるな。飛び降りる場所とか? 
 だけどここの回廊、柵とか一切ないし実際飛び降りようと思えばどこからでも出来るんだよね。だからあの一部分だけを囲うのは意味がない様な。そもそもしめ縄だし、神様的な何かなのかな?


「ここは何なの~?」


 クリエがしめ縄をグイグイしながらそんな事を聞くよ。興味がある質問だな。


「そこは『祈りの場所』と呼ばれてる所だ。世界を作った神は、ここから祈りを捧げて世界を見守ったと言われてる」
「へぇ~」


 僕達はリルフィンの説明を関心しながら聞いた。神様は一体この世界の何を祈ってたんだろう。まあ順当に考えれば、平和とか何だろうけど……神様だしな。


「ねぇねぇ、ここ魔法陣があるよ。発動しないかな?」


 そう言うクリエはいつの間にか、この祈りの場所の中へ入ってる。そして床の魔法陣を足でダンダンと踏みしめてる。なんて奴だ。
 そう思ってると、何故か僕の胸倉を掴んでくるリルフィンさん。


「おい、貴様が保護者だろう。神聖な場所で何してるアレ。今直ぐやめさせろ」
「ラ……ラジャー」


 全く、クリエの無神経さを僕のせいにするなよな。アイツはそう言う奴だっての。取り合えずこっちに戻る様には言うけどね。


「おら、こっちに来いよ。なんだか無断で入ったからリルフィンが怒ってるぞ」
「ええ~、だってだって何か起こるかも知れないから、来たんだよね? それなら色々とやってみないとわかんないよ。もしかしたらこの魔法陣も色々したら反応するかもだし!」


 そう言って今度は手でペチペチし始めたクリエ。まあ言ってる事は案外正しいけど、後ろから感じるプレッシャーが痛いよ。そう思ってると、シルクちゃんがこの魔法陣を見て鋭い意見を言うよ。


「これって転送魔法陣じゃないですか? 下に戻るためには最初の場所がありますよね? じゃあこれはどこに繋がってるんでしょう?」


 そう言ったシルクちゃんは疑問の眼差しでリルフィンを見る。その大きく純粋な瞳が真っ直ぐにリルフィンを捉えてるよ。


「知らんな。その陣がどこに繋がってるのかは誰も知らん。まあもしかしたら主は知ってるのかもしれんが、聞いたことはない」


 ふくれっ面でそう言うリルフィン。たく、随分と役に立たない答えだな。てか、それならこのしめ縄で入るのが規制されてるみたいな理由って、この場所が見守る場所じゃなくて、転送場所だからじゃないか?
 もしかしたら神様はもっと違う場所でこの世界を見守ってるとかさ。考えられるよね。


「結局何も起こらないんなら、次に行くぞ次」
「待って待って! やっぱりここはスオウも入らないとダメだよ。クリエだけじゃわかんない。二人でなら何か起こるかも!」
「そんなバカな」


 リルフィンはクリエの言葉を小馬鹿にしてるよ。だけどその可能性もゼロじゃないよな。僕達が揃うことで何かが起こる――かも知れない。


「まぁまぁ、入るだけだしやってみようぜ。もしかしたらあの時に~なんて考えを引きずりたくないし、良いだろ?」


 僕の提案にリルフィンは答えない。たく、何でそんなに不機嫌なのか謎だな。やっぱり鍛冶屋に絡まれてたのがイヤだったのか。
 でもそれは鍛冶屋の印象下げるだけだよな……僕達にまで向くのはおかしいと思う。まあ何も言わないし、いいよな。僕は締め縄を潜って中へ。まあ勿論、何も起こらない。シ~~~ンって感じになってる。


「やっぱりスオウに期待したクリエがバカだったよ」
「何で僕が期待外れみたいな感じになってるんだよ!!」


 納得いかねーー!! そもそも一応だったろ。一応念の為! それなのに何も起きない事を僕に擦り付けるなよ。とんでもないガキだな。


「きゃははーー、スオウの役立たずーー!」


 そう言ってクリエはしめ縄の向こう側に逃げる。ハシャぎながら小馬鹿にしくさったクソガキを僕も追うように外へ――


【悲しい子……】
「ん?」


 ――今、何か聞こえたような? しめ縄に手をかけた時、頭の隅にか細い声が響いたような気がしたけど……どうだろう気のせいか?


「どうしたの?」
「セラ……いや、今何か聞こえたような? てかなんか言ったかお前?」


 僕は目の前に居るセラにそんな質問を投げかける。だけど答えは「言ってない」だそうだ。だろうね。セラの声とは違った感じだよ。
 他のみんなは走り回ってるクリエに気を取られてるみたいだし……リルフィンは興味なさげだけど、今の声は女の人みたいだったからな。


「やっぱり何かが起きたの?」


 セラが僕を見下しながらそう言うよ。しめ縄を潜り終えた僕は、立ち上がり今度は見下されようにして首を振る。


「分かんないな。何か起きたのかも知れないし、何かが起きた程じゃないのかも知れない。今は気のせい位にしか思えないよ」
「まあ、そうね。気のせいである方が楽そうで良いわよね」


 そう言ってセラはチョロチョロ走ってたクリエが自身の近くまできた瞬間に、足を引っかけた。そしてドッシャってな感じで転ぶクリエ。僕は「うわっ、えげつな!」って思った。


「ウエェェェェン! 転んじゃった!」


 そう言って泣いてるクリエにセラは素知らぬ顔で近づきこう言うよ。


「大丈夫? 走り回るからそうなるのよ」


 そう言ってクリエを起こして、埃を払い落としてる。おいおい、アイツ自分がやったこと棚に上げてお姉さん面してるぞ。なんて恐ろしい奴。
 クリエはクリエで自分で転んだと思ってるのか、セラに感謝してるし……言っとくけど原因そいつだからな。


「うう~~セラちゃんありがとう」
「いえいえ、いいのよ。嫌いな者同士なんだから」
「うん!」


 なんかやっぱりこの二人はズレてるよな。まあクリエは純粋に好きに成りかけてるんだろうけど、セラは絶対にそうじゃないもん。
 自分で足かけて、その後に良い人ぶるなんて……一体何を考えてるんだか、僕には理解できないよ。


「結局何も成らなかっただろう。次に行くぞ」


 クリエも捕まった事を確認すると、リルフィンがぶっきらぼうにそう言って歩き出す。それも結構な早歩き。本当に面倒なんだね。早く終わらせたいって感情が行動に出てるぞ。
 まあ僕達も早く事態の進展……というより、好転を期待してるから良いんだけどさ。


「ほら、アンタが運びなさいよね。保護者でしょ」


 リルフィンの後に付いて行こうとしたら、無造作にクリエを押しつけられた。セラの奴そのまま自分で運べよ。折角懐きだしたんだからな。クリエだって嬉しがってたのに……子供に耐性をつけておくと、将来役に立つかもしれないだろ。


「何の事よ?」
「だからこの先、いつかお前だってリアルでは子持ちに成るんだろうし。子供の扱いを覚えてて損はないだろ」


 僕がそう言うと、セラは何故か歩みを止めたよ。


「ななななな、子持ちって……何、アンタ私に子供を産ませたいわけ? その……私と……アンタの……」
「はぁ!? 何とんでもない想像してんだよ! そうじゃなくてごく一般的な話としてだよ! 相手が誰とかじゃなく、セラだって女なんだからいつかは子供を産むだろ。その時の為にって事だ」


 なんていう想像してくれてるんだ。スッゲー焦ったじゃないか。そんな未来あり得ないから。そもそもリアルで会ったこともないしな。


「……ああそうよね。紛らわしい言い方しないでよ!」


 なんだか冷静に成ろうとして成りきれなかったセラが、逆ギレ気味にそう言ってきた。なんて奴だ、迷惑被ったのは僕の方だぞ。
 精神的ダメージがデカかったっての。


「二人して子供子供って、クリエはもう生まれてるんだけど!」


 なんか腕の中から的外れな事を言ってくるクリエ。まあだけどこのアホな発言のおかげでこの変な話題は流れたよ。
 僕たちは後ろの方で沈黙のままリルフィンの後にただついていく。どうやら反対側からも登る用の道があるみたいだな。
 再び階段をテクテク登ってると、途中で池みたいなのを見つけた。まあ小池クラスの小さな物だけど、えっと……ここって確か木の上だったよな? どう言うことだよ。
 多分、枝の太さとかここまで来ると尋常じゃないから、その凹み部分にでも水が溜まってるのかな? まあそもそもこの水はどうやって溜まったんだって謎は残ったままだけど。だってここ、絶対に雨とか降らないだろ。溜まりようがないと思うんだけど……


「うわあ~! 凄い! なんか水がキラキラしてるよ。透明って言うかなんか鏡みたい!」


 クリエが興奮しながら人の腕の中で叫ぶよ。まあ確かにそれもわかる。確かに見たことない水だな。クリエは僕の腕から飛び降りて、道を外れてその小池みたいな場所へと近づく。そして水面に映る――というか、鏡に映された様な自分の姿を見て、おもむろに池の水を掬って口に運ぼうとしてた。


「うおおおおい! ちょっと待て!!」


 僕は慌ててクリエの手を叩いて手のひらに掬ってあった水を落とす。いやいやいや、仰天の行動なんですけど!! だけどクリエは不満たらたらにこう言うよ。


「何するのスオウ! 折角味見しようと思ってたのに!!」
「お前がバカって事は知ってたけど、まさかここまでとは思わなかったよ。お前よくそんな鏡クラスに姿が映る水を飲む気になるな。
 体に悪そうとか思えよ!」


 だって透明度がハンパない……とかじゃないよ。もう鏡だもん。変な物質でも混じってたらどうするんだ。僕達の体は結局仮初めだから良いけど、一応LROに生きてるクリエとかマジで病気になったりしたら困るっての。


「綺麗だったのに。きっと大丈夫だと思うよスオウ。だって【飲んでみて】って言ってるもん」
「またどこぞやのお友達がか?」
「うん! だから大丈夫! 綺麗な水には栄養一杯だよ!」


 う~ん流石にここまで来ると、綺麗を通り越して毒々しく見えるのは僕だけなのか? まあクリエのお友達が直接そう言ってるんなら、大丈夫なんだろうけどね。
 こいつは世界の声を聞くことができるみたいだし……大袈裟に言ったけど、まあ様は植物でも動物でも何でもの声を聞ける? みたいな。それがクリエの基本的な力らしい。
 だからきっとクリエはこの水の声を聞いたんだろう。その水に騙されてる可能性も考えるけど、基本クリエって好かれてるみたいだし、世界って奴にね。だからそれも薄いかなっては思うんだけど……飲む勇気はなかなか持てないよな。
 僕はリルフィンに確認とってみることに。てか、最初からそうすればよかったんだよね。でもアイツ興味なさそうだし、道を外れた僕達の方を無言で見つめてるしで声かけ辛いんだよね。
 僕達には顔がばれてるのに、何故かフードで顔を隠すしさ、良くわからん奴だよ。


「お~いリルフィン。この水って飲めるのか?」


 僕がそう言ってる間に、恐ろしい行動を取る奴がもう一人居た。


「ズズズ……うん、普通の水ね。ちょっとしょっぱいかもだけど、異様に冷たくて美味しいわよ」
「セラ……お前やっぱり恐ろしいな」


 いろんな意味で。何なに気に、味見してるんだよ。ビックリだっつーの。


「私たちプレイヤーはお腹を壊す事もないんだし、別に良いでしょ。てか、回復薬がないときって、薬草をそのまま口に入れる時があるじゃない。それと同じよ」
「んな場面僕はまだ遭遇してないけどな」


 まあ確かに緊急時はしそうだけど、調合とか出来ない僕は原料から持ち歩く事はないんだよ。


「やったことないんだ。それを聞くとスオウもなんだか箱入りって感じよね。まあ経験豊富なプレイヤー達に助けられて来たってのが原因でしょうけど。
 ホントの緊急時には良くやる事よ。薬草事態はLRO中に生えてるから、逃げる途中に毟って口に入れるの」


 箱入りとか言われたらちょっとムスッと来るけど、話を聞いてると確かに僕は箱入りかも知れないなと思った。だって草を毟って食べるとか……リアルだとホームレスだろ。悲しく成るわ。


「悲しくって……ホントサバイバルって言うか、冒険が足りないわねスオウは。アンタは最初から恵まれてたのね。
 まあアギト様が居たし、その人脈でテッケンさんにシルク様まで初期の頃から揃ってたのなら無理もないか」


 名前を突然出されて、ちょっと照れた様な二人。まあ良い評価だし、それはわかるけど僕は複雑な気分だな。冒険が足りないって、僕はかなりの冒険してると思ってるんだけど。


「時間的には私達の数十分の一よ。密度を考えれば半分位には成るかもだけど……まあ言う成れば、スオウには自分だけでどこまでやれるかの挑戦が足りないのよ。
 だって普通最初は一人。このLROの世界に降り立ったときは孤独なのよ。チュートリアルに従って、一人で行動をして一人で初めての戦闘。
 当然お金もないし、回復薬とか買える訳ないじゃない。だけど慣れてない戦闘で早々勝てる筈もない。そんな時に、ふと目に留まる雑草があるのよ」
「それが薬草だと?」
「その通り。だって命には変えられないでしょう? それに少しずつでも溜まってたスキルポイントが減るのはイヤだし、そうなったら草だって食べるしかないのよ」


 壮絶だね。まあわからなくもは無いけど。普通は確かにそうなんだろう。だけど僕の境遇と今の話……どっちが良いって言ったらそっちを取るんじゃね? と思う。
 だって命には代えられないって、本当に死ぬ訳じゃないじゃん。こっちはお前達が薬草を貪ってた時から、あり得ないクラスのボス戦やってたんですけど! やっぱり冒険って意味では僕の方が色々とすっ飛ばしてやってるよな。
 サバイバルが足りないのはまあ認めるけど。


「アンタに毟った草を食べる無念さと心から沸き上がる焦燥がわかる? かなり空しいわよ。涙が出そうに成るくらいね」


 そう言いながら拳を握りしめて、僅かに震えてるセラ。こんなセラは珍しいな。トラウマにでも成ってるのかな? まあプライド高そうな今のコイツからしたら、消し去りたい過去なのかもね。


「シルクちゃん達も最初はそんな感じだったの?」


 どうせだから、誰でもそうなのか聞いてみたくなった。みんなしてることなら、黒歴史にしなくて済むだろうしな。


「そうですね。食べた事もあったと思いますけど、いつも通りがかりの人達が回復薬を分けてくれてた気がします。だから私はなんて素晴らしい世界なんだろうって思ったんです。
 それに受け取ったアイテムとかは暖かくて、それでいて命も繋げてくれる物。私もこんな風に誰かの役に立ちたいなって思ってヒーラーを目指したんです」


 そう言ってニッコリ微笑んだシルクちゃんからは後光が見えるようだ。流石はシルクちゃん。何か持ってるよね。無自覚に男共に貢がせる何かを持ってる!
 まあただ放っとけないオーラを放ってるんだと思うけど。ついつい守ってあげたく成っちゃう感じ。


「僕はそうだね。最近でも良くやるよ。だってそこら辺から毟って食べて回復なんて便利だよ。まあLROでは食べた分だけ腹が満たされるのがネックだよね。
 満腹感が襲ってこなかったら、大量に食べれるのに……」
「テッケンさん……まさか今までの戦闘でも?」
「ああ、節約にもなるしね」


 涙ぐましい事をやってたんだね。テッケンさんクラスのプレイヤーなら、大量に回復役を買うことくらい出来るだろうに。てか、スキル豊富なんだし魔法系も当然拾得してるんじゃなかろうか? みたことないけど。ソロの時はスキルを切り替えて使ってるとか?
 僕には当分出来そうもないことだね。てか今現在もしてる人も居たし、良かったじゃんなセラ。


「別に私は恥だなんて思ってないわよ。惨めだったってだけ。そしてそんな経験してないアンタにムカつくだけよ」
「なんでそこで矛先が僕に向くんだよ」


 マジで何かと突っかかって来るよな。それしかスキンシップの取り方をこいつは知らないのかって位。まあ一番緊張は確かにしないんだけど……でもそれじゃあ僕達の関係は変わらないよ。


「私はねスオウ。今の自分があるのはその時の事もあるからって思ってる。惨めな思いも糧にしてここまできたの。だから恥じる事なんて私には一つもないわ」
「……あっそ」


 それは良かったね。そう思ってると、僕達はセラの異変に気づいたよ。


「あれ? ねえセラちゃん……何か眩しいよ」
「どういう事ですかシルク様? 太陽を直接見るのは止めた方が良いですよ」
「ううん、そうじゃなくてね……」


 シルクちゃんの言葉がなかなか要領を得ない。いや……まあわかるよ。これはなんと言って良いのか。けどやっぱり言えることは一つしかないというかだな。クリエが「わわぁーー!!」と目を輝かせてるから口を滑らせる前に、僕が言ってやろう。


「セラ、お前光ってるぞ。なんか体全体が」
「ええ!!? ――ってマジじゃない!!」


 僕の言葉に驚愕して自身の体を見回すセラ。てかメッチャ光ってるぞ。何これ?


「その水を直接飲むからだ。それは世界樹が吸い上げてる水が溜まったものだ。世界樹の体を巡り浄化された神聖な水は光輝く。
 その一滴一滴がな。それが体内を巡ると、体が発光するんだ」


 いやいやいや、体を巡ったって光る物なのか? それなら人は血の色が滲んでそうな物だけど……何かあるんじゃないの? 実は隠された才能を開花される奇跡の水だからその才能が輝いてる! とか。


「さあ、そんな話はきかんが、この水はどんな傷や病にも効く妙薬だとは言われてるな。不老不死の原料とも……」


 おいおい最後の一言はなんか物騒だぞ。これを巡ってかつては争いが起きててもおかしくないな。


「何ともないのかセラ?」


 僕は一応気遣う言葉を投げかける。本心ではクリエが飲まなくて良かったって思ってるよ。
「ゴクゴク――プハァ! 見てみてスオウ! 人間太陽!」


 バカなクソガキは面白がってそんな事をやってる。頭を抱えたくなった。折角セラが犠牲に成ったのに意味ないじゃないか。


「お前な、完全に大丈夫って訳じゃないんだぞ。不老不死の原料なんて危ない副作用があったらどうするんだ?」
「大丈夫だよ! なんだか強く成った気がするもん!」


 それはきっと錯覚だろ。光輝いてるから、そう思えるだけだ。


「そんなことないよ。なんだか一杯声が聞こえるよ!」
「一杯って、どんな風にだよ?」
「え~とねえ~とね。なんだかそこら中一杯から!」


 うん、全然わからん。大きく両手を広げて一杯を表現してるんだけど……クリエの体じゃ犬小屋くらいしか表現出来ないよ。まあなんか微笑ましいけどね。そんな風に思ってると、リルフィンがとんでもない暴露をした。


「言っておくがさっき貴様達に出した料理はこの水が使ってあるぞ」
「なんだってええええええ!?」


 衝撃の事実。だけどよくよく考えたら僕達食事の後に光ったっけ? 覚えがないぞ。二人が眩しく光る現状を、僕達はどうしていいかわからない。

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