命改変プログラム

ファーストなサイコロ

牢獄の語り



 苦労をしてやっとで僕たちは『リア・レーゼ』にまでたどり着いた。それはとても長かったと感じる事が出来る道のりだ。
 いやいや、ホント全く苦労したよ。特にあのバトルシップとかは反則だった。だってまさか飛空挺とバトルシップがああも違うとか思わないじゃん。
 技術がなんか別世界の物――みたいな感じだろ。それか時代が数十年は違うみたいな。
 まあだけど、そんなのに追いかけられても、何はともあれ僕たちは無事にリア・レーゼへと至る事が出来たんだ。そうそう、取り合えずはこれで一安心……となる予定だったんだけど、何故か今僕たちは鉄格子で区切られた薄暗い部屋へ閉じこめられてるのであった。


「どう言うことっすか!? これはああああああああ!? 納得いかないっす!」


 そんな事を叫びながら隣の隣位で鉄格子相手にガンガンやってるノウイ。僕たちはそれぞれ別々に牢に収容されてるんだ。


「たく、うるさいわねノウイ。少し落ち着いたらどう? てかその口閉じろ」
「うう……だってだってっすセラ様。納得いかないっすよ。ようやくここまで来たのにこの扱い。あの時の安心感はなんだったんっすか!? うがあああああ!」


 珍しくノウイがセラに意見してる。まあそれだけこの対応には我慢成らないんだろう。僕だって実際はそうだよ。結局クリエとミセス・アンダーソンはリア・レーゼの兵隊達に連れ去られたしな。
 こんな所でジッとしてて大丈夫なのかスッゴく不安だ。


「教皇からの密書は見せたんでしょ?」
「当然だろ。ちゃんと見せたさ。それに目も通してた。そしてそのまま持ってったよ」


 現場を指揮ってそうなモブリにこっそりと渡したらそのままにされた感じ? あのモブリはちゃんとこの街の姫御子様の所まであれを持ってってくれたのだろうか?


「あれを見せたのにこの扱いって……取り合えずトップまで通すのが筋でしょう。サン・ジェルクのトップの手紙なんだから、私達を使者と扱いなさいよね」


 セラもやっぱり腹立ってるのか、隣の壁をゲシゲシ蹴ってる音が聞こえる。


「くっそ、どうにか出来ないんですかテッケンさん? やっぱりなんとかして脱出をして直談判に行くとべきじゃないですか?」


 物騒だけど、それが確実だよな。もう、じっとしとくのが気が気じゃないんだ。落ち着かないよ。


「みんないきなり牢に入れられたからって早計だよ。これが悪意あって入れられたかどうかはまだわからない。元々僕たちは犯罪者とされてるんだ。サン・ジェルクもリア・レーゼも同じ国。
 手配書が回っててもおかしくなんて無い。今は対外上僕たちを捕まえたと言う体を取ってるだけかも知れないよ。それに幾らLROだからって何でもかんでも暴力はダメだよスオウ君」
「うう……それはそうかも知れないですけど……もしも体裁を取ってるだけなら、一声かけても良いんじゃないですか?
 だってここにはサン・ジェルク側の人間なんていないんでしょう。居たとしても、気づかれない様にするのなんて簡単な筈です。そうしてくれれば安心しますよ。
 ソレなのになんにもないんじゃ、本当に疑われたりしてるんじゃないかって思うのは当然です」


 僕は備え付けのボロいベットに腰を下ろして、床をダンダンと踏みしめながらそう言う。結局、こんなに気が気じゃないのって、僕はまだこの街の人達を信用して良いのかわかってないからだ。
 速攻でクリエを連れ去ったのも気に入らないし……まだまだ全然このリア・レーゼと言う町がどんなか見えないから不安が募る。幾ら元老院側じゃないからと言って、初めて来た街だし、どう構えても気楽にとはいけないよな。
 ああ、こんな鉄格子で薄暗い部屋に居たらどうやっても思考が落ち込むよ。幾らテッケンさんの話も分かるとはいえ……本当に一声ほしい。


「ふん、本当に疑っては居るだろう。向こうだって俺たちの事は知らないんだ。それに街を背負ってるともなれば慎重にもなるさ。
 向こうにだって守りたいものがあるんだからな。今下手に暴れる事は、それこそ自分達でこの街の敵に成りに行くような物だと俺は思うがな。
 そもそもこの牢はスキル発動出来ない様に成ってるみたいでもあるが……諦めて大人しくしてろスオウ」
「そこまでしてあるのかよ」


 わからなかった。だって武器も取り上げられてるし……僕のスキルは大体、セラ・シルフィング無くちゃ発動出来ないしな。鍛冶屋の奴随分とどっしり構えてるな。守りたい物とか、こいつの口から出るなんて予想外。
 最初に会ったときから、武器一筋で人間関係とか適当に感じてたけど、僕たちに振り回されて少しは変わったのかな?
 てか、武器まで取りあえげてるのに、更にスキル封じまでって……徹底した対策してるな。


「テッケンさんならこの状況でも抜けれますよね? だけど私もそれはどうかなって思うけど……」
「シルクちゃんまで……クリエとかは連れ去られてるんだよ」
「そうだね。それは心配ですけど、感情に任せて行動するだけじゃ、事態は好転しないものです。私達は今の所ずっと起こる事態を必死に追いかけてる状態です。だけどそれじゃ、私達に有利には成りません。
 いつも後手に回るんじゃ勝利という一番前に居ないと手に入らない物が取られちゃいますからね。それを手にするためにも、どこかで追いついて追い越さないといけない。サン・ジェルクと言う大きな街と信仰に対抗するには同等の力を持つリア・レーゼしかありません。
 この街まで敵に回したら、それこそ私達には逆転の目はなくなります。もう少し様子を見てましょう。これからの為に、今は我慢の時です」


 シルクちゃんの優しくも力強い言葉が、この牢獄の中に伝わった。確かにここまで敵に回したら、僕たちは詰んじゃうだろうな。
 サン・ジェルクに対抗するためにも……って言うか、本当は別にサン・ジェルクに対抗しようなんて気は無かった筈なんだけど……向こうがクリエに酷いことをするつもりだから、関わった僕たちとしては放っておけなくなったんだ。
 まあ引けなかったってのもあるけどね。忘れかけるけど、自分に掛けられた呪いの件ともきっと無関係じゃない。そう思ってやってきたんだもんな。
 我慢は確かに必要だとは思う。どこかで反撃しないといけない。そのチャンスはきっとここなんだよな。だからこそシルクちゃんは無闇に、ここの敵に成らない方が良いって言ってるんだし、それはわかるよ。


「シルクちゃんの言葉は尤もだと思う。僕達は今のままじゃきっと何も守れないし、僕だってこのままじゃどうなるかわかんない。だけど拭えない不安には行動しかないじゃないか。
 そうやってずっと来たんだし、それに僕はここを知らない。ここのトップの姫御子様は、信用出来る人なのかな?」


 実際それが一番不安じゃん。プレイヤーらしいけどさ、誰もがアイリみたいな感じじゃないだろ。てか、アイリはアイリで最初会ったときは問題あったしな。まあ向こうは国で、こっちは一つの街って言う違いはあるけどね。どんな奴なのかは知っておきたい。


「う~んそうだね。良い人だと思いますよ。私は数回しか会ったこと無いですけど、ちゃんとしてます。常識も見識も備えてる人です。
 でも何故か私は嫌われてるみたいなんですけど……」


 シルクちゃんを嫌いとかそれだけで僕の好感度は急降下だよ。こんな良い子他に居ないだろうに、どこを嫌うんだ? 見たこともないのにその姫御子様にイライラするな。


「はは、シルクはほら、同じ系統だからだよ。僕が知ってる限り、あの人が認めてる魔法使いはシルク以外居ないと思うけど」
「そうなのかな? それに私はそんなに大層なものじゃないですよ。私は何か粗相をしたのかなって思ってたましたけど……」


 テッケンさんの言葉に相変わらずな謙遜を見せるシルクちゃん。本当に腰が低い子です。実際かなりのものを持ってるだろうに、もっと鼻を高くしても良いよ。まあそれじゃシルクちゃんじゃないんだけど。
 でもちょっとは「エッヘン」てな感じに成ってもいいと思う。きっと姫御子様が認めてるってのは本当だと思うな。それだけスゴい筈だもんシルクちゃんは。


「シルク様はもう少し自分の貴重さに気づいても良いと思います。それだけの魔法の技術があるじゃないですか」
「だけどそれはピクのおかげだよ。私だけじゃ、他の人と全然変わらない。その他大勢と一緒です。ピクと出会う前は飛び抜けて凄い事なんか出来なかったし……」


 もう、声を聞いてるだけで悶えそうだよ僕は。なんて謙虚! 僕の周りの我が強い女共に聞かせてやりたいな。まあ一人に聞かせてるけど、出来るなら日鞠の奴にもね!
「確かにピクの存在は大きいと思うが、それ以前からテッケンとかは一緒に居たんだろ? それにここの姫御子にも認められてたのなら、きっとシルクにはそれだけの価値があったんだよ」


 うお! 横から鍛冶屋の奴が良いこと言ってるぞ。おいおいどういう風の吹き回しだ? もしかしてこいつ、シルクちゃんを狙ってるんじゃ……そんなの許さない! シルクちゃんはみんなのシルクちゃんなんだ!
 僕は斜め右前方の牢屋えと埃をまき散らす用に床を蹴る。


「そう……なのかな? 私に何かあるのテッケンさん? 私はただ単に、ヒーラーを見つける手間が省けるからだと思ってました。
 やっぱりLRO内でヒーラーって数が少ないですからね」


 ある意味一緒に居る理由がそれって酷くない? それで納得しての他のシルクちゃんと言いたい。まあ考えて見れば当然かも知れないけど……みんなが主役とか目指すなら、ヒーラーは確かに少なそう。夢でくらいヒーローに成りたいって思う人は多いだろうけど、夢だからこそ誰かの脇役でも良いと思う人は少ないよな。
 ヒーラーってどう考えても脇役……とは言わないけど、縁の下の力持ち的な感じだよね。目立つ事は早々ないけどパーティーでは居ないと困る。そんなヒーラーだから縁の下の力持ち。
 積極的にヒーラーを目指す……そういう人はきっと少ないんだろう。


「まあ数が少ないってのは確かにそうだよね。シルクちゃんが居たら、簡単にパーティーメンバーを集められるって利点も確かにあったよ」
「ほら、やっぱりそんな所ですよね。私はスオウ君の様に激しい生活も、アギト君の様な大変な事も経験してないし、セラちゃんみたいな誰よりも誇れる力を持ってた訳じゃないです。
 ノウイ君だって、貴重なスキルはきっとどこからでも必要とされるだろうし、鍛冶屋くんの武器は言わなくてもきっと多くのプレイヤーに使われてます。
 それに比べると、私は実に平々凡々なLROライフを送ってたと思うんです。そんな私が、誰かから認められるかと、それはやっぱり過大評価ですよ。
 今の私の全ては結局、ピクのおかげです」


 そんな風に言われたからか、牢獄内にピクの上機嫌な声が木霊する。う~ん、まあ僕には確かにピクの恩恵は大きいと思える訳だけど……ここら辺は付き合いの長いテッケンさんにシルクちゃんの本当の価値を説いてもらいたいね。さっき既にパーティーメンバーどうとか言ってたのは一部だと信じてます。


「だけどさ、それだけじゃないってのも勿論あるよ。僕がシルクちゃんと良く一緒に居たのはパーティーメンバーを集めやすかっただけじゃない」
「え?」


 目の前の牢獄のテッケンさんがなんだかちょっと照れ気味にそう言ってる。そしてその左隣の牢に居るシルクちゃんは鉄格子に寄って隣のテッケンさんを見ようとしてる。だけどテッケンさんはその視線から逃れる様に奥へ。
 何々、まさかテッケンさんもシルクちゃんを!? まさか一緒に居た理由ってそういう事か? 僕がそんな憶測の元、テッケンさんをジトーと見てると、向かいのテッケンさんが何を観念したのか、ちょこんとベットに座り、溜息一つこう言った。


「シルクちゃんは普通だったけど、普通に腕が良くて評判だったよ。だからピクが居なかったときでも沢山の人に認められてた筈さ。
 実際シルクちゃんは他のやっつけヒーラーとは手際が違うしね。回復スキルもほしいから、一時的にやってた人達とは一線を隔てる実力だよ。
 それに不思議だけど、シルクちゃんの魔法の方が効いてる気がするって話もあったくらいだしね。十分凄いよ」
「えっと……ありがとうございます」


 なんだか斜め前方のシルクちゃんも照れて奥に引っ込んじゃったよ。だけど僕が見つめてた理由はそれじゃない。何に一体観念して話始めたの? 僕はもっとテッケンさんの内面を吐露して欲しかった!
 まあ、シルクちゃんの回復魔法がほかの人のよりも効く気がするってのは同意するけどね。そう思ってるとセラがさらっとテッケンさんに突っ込む。


「いえいえ、それじゃあテッケンさんの理由に成ってないですよ。貴方は何でシルク様に付きまとってるんですか?」
「付きまとうって……それは表現がおかしいだろセラ」


 どう考えてもテッケンさんに失礼だ。彼は別に付きまとってたって訳じゃないだろ。なんで口調は丁寧だったのにそんな事を言うんだよ。ある意味、口汚い言葉で罵られるよりも、丁寧にそして冷静に言われた方がグサッとくることもあるんだぞ。


「うるさいわね。アンタだって気になるでしょ? 二人の関係?」


 そう言って鉄格子越しにこちらに怪しげな微笑みを見せるセラ。ホント良い性格してるよこいつ。だけどまあ……興味は僕にもある。シルクちゃんは友情(?)以外の何者でも無さそうだけど、テッケンさんもそうなのだろうか? 二人ともとっても良い人だから、そこら辺で気が合うのはわかるんだけど……実際の所を知りたい。テッケンさんのさっきの反応も気になる所だしね。


「……たく、程々にしとけよ」


 僕はそう言ってベットに居るテッケンさんに視線を送る。好奇心は外側に出さない様にしてるけど、どうだろう勘の鋭い彼は気づいてるかな。


「うう、スオウ君まで……別に特別な理由がある訳じゃないよ。強いて言うなら、シルクちゃんは一人では危ないと言うか……誰の事も取り合えず信じるからね。そこら辺が心配で良く面倒を見てたら、いつの間にか一緒に冒険をするように成ってたと言う、平凡な理由だよ」


 へぇ~なんだか想像できるな。まあ誰のことも取り合えず信じそうなのはテッケンさんも同じ感じだけど、お人好し二人で大丈夫だったのかな?


「そう言えば最初にテッケンさんとアギト君に出会ったのも私が騙されてた時でしたね。あの時の私は本当に無知でした」
「騙されてた?」


 僕が疑問符を浮かべて聞くとあっさりと衝撃の発言が帰ってきたよ。


「私最初、犯罪者ギルドに所属してたんです」
「「「ええええええ!?」」」


 ノウイも加わってセラと三人でそんな声を上げた。シルクちゃんが犯罪者集団の一人? このホンワカ良い子が? それは想像出来ないな。


「当時私はそう言う悪いことをする人が居るって風の噂で知ってたんですけど、私が居たギルドはそんな悪い人達を取りしまる集団だって言われてました。
 そう言ってプレイヤーを襲ってはアイテムを強奪してた訳です。いわゆるPKプレイヤーキラーですね。だけど少し考えれば、おかしいことに気づきそうですよね。
 天誅とか言って身ぐるみ全部剥がしてたし、そこまでする必要なんて全然無かった。まあ当時の私は口封じの時の要因でPKされた人の回復役だったから、どうやってもう犯罪をしないと誓わされてたのかは知らなかったんですけど……それじゃあすみません。私も酷い事をしてた一味にも変わりないもん」


 そう言って奥で拳を握りしめるシルクちゃん。そんな事が……今すぐにでもそいつ等をぶっ飛ばしたいな。


「それには及ばないよスオウ君。シルクちゃんを騙してた奴らは僕とアギトが潰したからね。奴らは当時手当たり次第にPKやってたから、たまたま通りかかった僕らも標的にされたんだ」
「なるほど、それが出会いなんですね。そこでシルクちゃんはギルドの真実を知った!」


 僕はなんだか熱くなってそう言った。だって燃える展開だろ? アギトの奴もおいしいことをやってるじゃないか。その時ってあれだろ、アルテミナスから逃げて傷心の旅やってる頃だろ?
 隅に置けない奴だなおい。


「まあ大体スオウ君の言ったとおりです。二人と出会った日もいつも通りギルドの人達は『犯罪者に天誅を!』を合い言葉に出発しました。だけどなかなか連絡が来なくて、見に行ったんです。苦戦してたら、ヒーラー一人じゃ大変だろうと思って」
「たった二人に苦戦する集団って――プフ。まあアギト様達じゃしょうがないわよね」


 何故かセラが得意気にそんな風に言ってる。誰もお前を誉めてはないぞ。まだアギトの事は尊敬してるんだな。その尊敬の半分でも僕に回してくれたら、色々と遣りやすくなるのに……


「いや、僕達は苦戦してたよ。なんたって向こうは十人位で、こっちは二人。色々と限界って物はある。まあそれでもしぶとくやり合ってた訳だけどね」


 当時を振り返りながらそう言うテッケンさん。まあ確かに幾らアギトとテッケンさんの二人でも無理は状況はあるよな。
 十対二って……寧ろ良く粘ってるって感じだったんだろうな。


「そうですね。私が行ったとき、二人はボロボロでした。だけどそれよりも衝撃を受けたのは、今まで信じてた人達がこれまでまで見たことも無い顔で二人をいたぶってた事です。
 満身創痍の二人を罵倒して汚い言葉で責め立ててました。それを見たら、どっちが犯罪者なのかわからなくなって、私は『何やってるんですか?』って聞いたんです。
 そしたら、一瞬驚いた顔をしたけど、直ぐに私にも加わる様に言ってきました。やっぱり回復が追いついて無かったんです。だけど私は納得できなくて『こんなのおかしいです! やりすぎです!』って言ったら殴られちゃいました」


 マジでそいつを殺そうと僕は誓ったね。テッケンさんとアギトに既に制裁を受けてるとしても関係ない。僕はそいつ等を許せそうも無いよ。
 そんな怒りに沸き立つ中、シルクちゃんの話は続きます。


「そして武器を向けられて脅されました。私はその時の恐怖を今でも覚えてます。この世で一番怖いの人です。そう思う程にショックだったんです。
 信じてたのに……そう言ったけど笑われましたよ。どうやら、私は都合の良い予備の部品みたいな物だったんです。彼らは私を攻撃する事を躊躇わなかったです。人の良さそうな私は対外的には都合が良かったっみたいです。
 だけどその時、二人は私を助けてくれました。敵である筈の私を。この時、どっちに付くのかは決まったんです。私は二人に回復魔法を掛けて、三人でなんとか勝ったんです。それが出会いでしたね」
「はは……そうだね。今思うとなんだか随分懐かしく感じる。そんな何年も経ってないのにさ」


 二人が牢屋越しになんだかいい感じ。共通の思い出ってのはいいよね。それが印象深い物なら尚更だよ。


「そうですね。なんだかもう随分遠い日の記憶みたいな感じです。だけどあれから、良く二人は私の面倒を見てくれる様になりました。途中でアギト君とは分かれたけど、テッケンさんとは不思議と一緒でしたね。
 私も別れずらかったのかな? 安心って物があったし」
「そ……それは……よかったな。そう言って貰えるとありがたいよ。はは、僕も一緒に居るのが普通だから、理由はやっぱりこれと言ってはないよね」


 そう言って二人して壁を隔てて笑いあう。僕とセラは互いに鉄格子に息を吐いちゃったよ。この二人は全く全然、男女のそう言うのはないんだね。実際テッケンさんがモブリじゃなかったら違ったのかな?
 モブリって友達にはしやすいフレンドリーな姿だけど、そう言うのには極端に成りにくいと思うんだ。エイルとリルレットを見てても思ったよ。そんな風に見てると、重い扉が開く音が……どうやら待ちに待ったお迎えが来たようだ。

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