命改変プログラム

ファーストなサイコロ

追跡開始



「さて、じゃあ早速思い出して貰おっか? ヒマ」


 そんな事を言って、私の服の裾を握りしめるヒマワリを睨むシクラ。もうそろそろ普通に接してあげようよって思うけど……シクラはまだ許してないもんね。
 てか、あの本が見つからなかったときが怖いよ。きっとその時にはヒマワリの命は……考えないようにしとこう。
 さてさて、とりあえず見つからなかった時の事を考えるよりも、見つかることを願う方が有意義だよね。ってな訳で、私たちは再び朝市の開かれてる場所までやってきました。


 再びお腹を擽る臭いが漂って来てる。そう言えばさっき私アイス食べてないよ。だけど今の状況じゃ言い出せないよね。はぁ……


「分かってるよ。ちゃんと今思い出してる所なんだ。えっと確か……僕は本を抱えてここに来た。うん臭いに釣られたんだ。
 だから早速そこのお店の前で焼かれてるイカを凝視してた!」


 そう言ってヒマワリはとてとてと歩いてその店の前に。てか私がイカ焼き買った所だし。港町らしい屈強で浅黒い肌の青年風のNPCがニコニコ顔で決まった台詞を言い続けてる。


「ヒマは凝視してただけのなの? お金あるんでしょ? 買わなかったの?」


 確か最初見つけたときは、腕いっぱいに食べ物抱えてたよね? どうやって手に入れた訳?


「僕たちもお金なんて持ってないよ。シクラがなかなかくれないし。お姉ちゃんたちにはそれなりに渡してるようだけど……僕にはくれた事無い!」
「ヒマだけね。ヒイちゃんにはやってるわよ」
「なんでヒイラギに渡して僕に無し!? お姉ちゃんだよ!」


 立場も忘れて思わずシクラに詰め寄るヒマワリ。だけどその理由は私にも分かるかも。


「だってヒマはアホじゃない。年齢的には下だけど、ヒイちゃんの方がよっぽど賢いでしょ」
「ヒド! 僕だってお金の計算位出来るよ!」


 ポニテを振り回して猛然と抗議するヒマワリ。だけどシクラは意に返さずにこう言います。


「計算できても、ヒマには計画性って物が欠如してるじゃない。アンタ足し算と引き算でしか物事を考えられない残念な頭なんだから、潔く飼われてなさいよ」
「フヌア!?」


 変な声を出してフラリと私に向かって倒れ込んでくるヒマワリ。もう本当に忙しい子だね。てかこれは、さっきのシクラの言葉がかなり効いたって事かな?


「酷い……酷いよシクラ。ねえセツリ様もそう思うよね!?」
「う~ん私に同意を求められても……それよりもお金が無いのにどうやってあんな大量の食べ物持ってたの?」


 私は無駄な話題を流して、本題へ舵を切る。もう寄り道してるのも面倒だからね。それに海に行くためにも、この問題はさっさと解決したい。


「え~とそれは……確か親切な人が声を掛けてくれて、いっぱい食べ物を買ってくれたの」
「親切な人?」


 ふ~ん無条件でそんな事をしてくれるなんて、確かに親切な人だね。それともよっぽど可愛そうな子にでも見えたのか? ヒマワリは純真無垢だから庇護欲をそそられたのかもね。
 私もこの子と居るとそんな感じになっちゃうし、まあ分かるかな。だけど私の場合は買ってあげるとかできないけど。


「物好きも居たものね。幾らファーストフードでも、あれだけ買えばそれなりの額でしょうに。てか、アンタの図々しさに驚きね」


 確かにあんな腕いっぱいの量を見ず知らずの親切な人に買って貰うとか流石はヒマワリ。シクラの言うとおりその無邪気さはある意味図々しいよ。


「てかヒマ、そんな親切にされたことを忘れてたの? ちょっとそれはどうかと思うよ。正直アホ言われても反論できないかも」


 人として心配だよね。まあ厳密には人って訳でもないけど、同じ様な感情は持ってる筈なのに……恩をあっさり忘れちゃうの? ――って、私もそこら辺はあんまり言えないのかな。


「そんなこと無い! ちゃんとその人たちの事は覚えてるもん! 僕はそんなアホじゃない! ただ、なんで本が無くなってるのか分からないだけ!」
「そ……そうなんだ……ごめんヒマ」


 顔がくっつきそうな勢いで迫られた。思わず謝っちゃった私。取り合えず私達はヒマが奢って貰ったお店を全部回る事に。どこかに手がかりがあるかもだし、実際置き忘れてるとか、この子の場合考えられる。
 だけど一回りしたところで本は無かった。無駄にお腹の虫が活性化されただけだよ。てか……幾ら何でも朝市の出店オールクリアとか、それはもう図々しいとかのレベルじゃないよね。私はこの子の将来が心配です。


「これだけ回って本当になんの見返りもなくその人達は奢ってくれたの? イヤな顔一つせず?」


 どんな聖人君子よその人達。実際信じられなくなったんだけど。だけどヒマワリは「うん」と気持ちの良い返事を返すだけ。
 けれどそこで何かを考え込んでたシクラがこんな事を聞いた。


「ヒマ、あんたいつ本をアイテム欄に納めたのよ? 最初ここに来たとき抱えてたって言ったわよね。それから食べ物に夢中になって、その時その人達に奢って貰って朝市巡り。その時点で両手を使わないといけないわ。
 途中からプッツリと本の存在が消えてるじゃない」
「あれれ、そうだね? 本はどうしたのヒマ?」


 そう言えばそうだった。私達はただヒマワリの行動を復習してる訳じゃない。目的はそっちだよ。だけど最初以外本はいつの間にか退場してた。けれどそれもこれからだよね。ここまで良く覚えてたんだし(行った店の道順まで)きっとかなり記憶は鮮明になってる筈。


「えっとね! その人達が持っててくれるって言ってくれてね――」
「「え!?」」


 ヒマはとっても軽く言ったけど、私達は二人してそんな声を出したよ。そして自分の記憶の良さに得意気になって少し先を歩いてるヒマワリの肩を私とシクラ、同時にガシっと掴んだ。


「「ヒ~~~~マ~~~~~!!」」
「あれれ~どうしたのかな二人とも? なんだかとっても怖いよ。セツリ様まで……なんだかおっかないかも……」


 私達の殺気でも察知したのか、微妙に肩が震えだしてるヒマワリ。てか、今の自分の発言で気付きなさいアホ。


「今なんて言った? 持っててくれるって言ったわよね? 預けたの? ねぇ!? それからどうしたのよ」


 シクラの力が私の十倍位強いのか、ヒマワリの体がそっち側にくの時に曲がってきた。


「え? え? ちょっ……肩がイカレちゃいそう。あ……預けたよ。だってそうしないと食べ物持てなかったし――――――――――って、あっそっか、返して貰ってないんだっけ? アハハハ忘れてた。テハ☆」


 シクラみたいな☆を出したかと思うと、その瞬間ヒマワリの肩がゴキッと凄い音を立てた。そして絶叫と共にその場で悶絶しまくる。あらら、今のはシクラの逆鱗に触れちゃったな。
 たく、そろそろ学習しないと本当に死んじゃうよ。てか、殺されちゃうよ。


「うう……何も肩を本当に砕かなくてもいいじゃん」


 地面に突っ伏しながら涙流してこちらを見上げてくるヒマワリ。本当に今日は泣いてばっかりだね。全部自業自得だけど……本当にここまで自らの行いで身を滅ぼしちゃう子も珍しいかも。
 やっぱりアホだからかな?


「うるさいわね。良いからその連中を見つけなさい。まさか顔を忘れたなんて言わないわよね? そんな事を言うアホな子には……もう片方の肩も逝かせるわよ」


 そういってコキコキと指を鳴らすシクラ。そのおぞましさに恐怖を感じずには居られないヒマワリは「大丈夫! まかせて!」と言い、もの凄い勢いでこの街を駆けだした。
 あの子のスピードは異常だから、通った場所にはもの凄い土埃が立つ。だから食べ物があるここも土埃が蔓延。そこかしこからケホケホ聞こえる。


「大丈夫かな?」
「大丈夫とかじゃないわ。ヒマには何が何でも見つけて貰う。それがヒマの贖罪よ」
「それはそうだけど、私はあの子一人で大丈夫かなって……だってヒマはアホだよ」


 なんだかすっかりバカかアホが定着しつつあるよ。でもバカは一度泣かれてるからね。だからもう一方のほうで。ヒマワリには悪いけど、それなしでは既に見れないかもしれない領域かも。まあだから一人で走らせて大丈夫かなって事だよ。


「大丈夫でしょ。そもそもあんなにあの子の中で好印象なら忘れてなんか無いはず。それをわかんないなんて言ったらマジで殺す。殺しちゃうから。
 それに町中を速攻でくまなく探すのなら、ヒマ一人が効率いいわ」


 やばいよ……死ぬ気で見つけないと本当に殺されかねないよ。だけどヒマワリの事だからヘラヘラとしながらこんな風に――


「ごめ~んわかんなかった」


 ――そうそうそんな風に戻ってきそう……って戻って来ちゃったよ!!


「あっそ……何か言い残す事はあるかしら?」


 ヤバい、シクラの周りの空間さえ歪んでる様に見えるかも。てかさっきのヒマワリの言葉で、シクラの何かが切れる音が私には聞こえたよ。
 ヒマワリは今の言葉をあんまり深くとらえずに「え~とね~」とか言ってるけど、私は必死に「逃げて逃げて」と念を送るよ。だけど残念な事に、私にはそんな特殊能力はないのだ。
 そしてヒマワリがその最後に成ろう言葉を口にする。


「えっへへ~だって良く考えたらその人達カッコいい仮面を被ってたからわかんないだ。あの仮面のままなら速攻で簡単だと思ったんだけど、それらしい人は居なかったよ。
 それに幾ら僕でも、宿屋とかの個室には入れないしね」


 こりゃまいったね~とか言うノリなヒマワリ。だけどまたまた自分の言った言葉に違和感を覚えようよ! 既にシクラは食い付いてるよ。


「ヒマ! 今アンタ仮面って言った? その人達は顔を隠してたって事?」
「うん、そだよー。みんな格好良い仮面被ってたな~。僕も欲しかった位だよ」


 シクラの質問にキラキラお星様をチラツかせながらそう話すヒマワリ。もう本当にこの子は……


「こんのバ――アホ! アホ! アホオオオオオ!! どう考えても怪しいでしょそれ! もしかして最初から法の書を狙ってたんじゃない?」
「ええ~だけど、あれがそんな貴重な物で、僕たちがあそこに現れるなんて誰にもわからなかったと思うけど?」


 なんと今までで一番まともな事をヒマワリが言った。超ビックリだけど、確かにその通りだよね。あれが貴重な物だと予め知っててそれを狙ってこの街に居たなんて流石にあり得ないと思う。


「うぬぬ、アンタにしては鋭いじゃない。確かに法の書をそもそも私が持ってるなんてスオウしか知らない筈だし、それを狙うなんて不可能ね」
「え?」


 今、なんだか聞き逃せない名前が出たような……?


「シクラ……今スオウって言った? どう言うことなの? 会ったの?」


 私の言葉に、明らかに「しまった!」みたいなリアクションを取るシクラ。誤魔化そうとしてもダメだよ。その反応を見る限り、真相を確かめるまで食い下がる覚悟だよ。


「シクラシクラシクラ! 私に隠し事は許しません。どうやってあの本を手に入れたか教えなさい!」


 私は私の権限を利用しちゃうよ。シクラ達は、基本私に絶対服従。普段はそんな風にしないけど、私の知らない所でシクラがスオウと接触してたなんて気になるよ。


「それが命令なら私には拒否できないから、正直に話しましょう。まあ、実際スオウには会ったよ☆」
「何で? どうして?」


 私は何故か自分が思ってる以上に動揺してる。なんでこんなに胸の所がズキズキするのかわかんない。なんだかちょっと裏切られた気分? それもおかしいけど……うう~良くわかんない。


「どうしてと言うなら、勿論せっちゃんの為だよ。言ったよねあの本は私達の世界を造る為に必要な物だって。それが外部のイベントでしか手に入らなかったからちょっと出張したの☆」
「出張って……私が寝てる間? 全然気づかなかったよ」


 てか、一声掛けてくれても良いのに。


「一声掛けて、せっちゃんはどうするつもりだったの? 今更せっちゃんから会いに行く事はない筈だと思うけど?」
「うう……」


 確かにそうだね。私が彼を拒絶した。選んだのはシクラ達との夢。それなのに、今更スオウに会ってどうするのよって事だよね。
 そんなのある意味、シクラ達を裏切るような事だよ。だけどこう……頭で理解しててもモヤモヤしちゃう何かがあるの。言い表せないけど、私の知らない所で彼に会って欲しくないって言うか……


「本当はせっちゃんを不快にさせる気なんか無かったから、そこはこれから気をつけます。あ~あ、本当なら気づかれなくて済んだはずなのに……どっかのアホのせいで。気づかなくて当然だよ。だってLRO事態が一回落ちて、しばらくスタンバイモードみたいな状態だったからね。
 そのさきっぽの方で行われたイベントをやってきたの」


 私に対してはとても真摯なシクラ。ヒマワリに対してはもう姉妹の契りを破棄しそうな位だね。てか、落ちたって……まさか昨日位の夜の記憶が曖昧なのってそういうことなの?


「ええ。厳密にリアルタイムで言えば、昨日じゃなく一昨日だけどね☆ 一日程度、本格稼働をしてなかったの」
「ええ!? それ本当? 全然気づかなかったよ」


 私の記憶ではつい昨日の夜のことが、既に一昨日って……ある意味タイムスリップしたみたいだね。寝てたからもの凄く意味ない感じだけど……てか、なかなか信じれない。
 でも今のシクラは私に嘘なんてつけないから、やっぱり全部真実なんだよね。


「だから気づかなくて当然。せっちゃんはまだ、LROに縛られてるからね」
「ええ!? 僕も気づかなかったんだけど!」


 シクラの言葉にヒマワリが納得いかない体で割り込んできた。気づいてないって、ヒマワリも寝てた状態になってたって事かな? シクラは大丈夫だったのに?


「それはアンタがアホだからでしょ。寝て食べて遊んでしかしてないヒマには今日も昨日も一昨日も変わらない一日なのよ」
「なっ! なんだとおお~~~~!!」


 頬を膨らませてポニーテールを振り振り回すヒマワリ。幾らヒマワリでも昨日を忘れるなんてあり得ないと思うけど……


「せっちゃん。取り合えずこの話はこの位でいいかな? 早く法の書を奪った奴らを見つけないと。一筋縄で使える物じゃないけど、あの価値に気づかれるのが問題だから」


 そういってシクラは話題を脇道から本筋に戻そうとする。うん、まあ確かにそうだよね。まずは本を取り返すことが先決。それはこれからの私達の為だもんね。だけど一つだけ、これだけは教えて。
 私は胸の前に持ってきた手を合わせたり離したりしながらゴニョゴニョというよ。


「うん、そうだよね。わかるよ。わかってる。法の書は大切。勿論取り替えないといけない。だけど……ね……シクラ。
 スオウは……私の事……気にしてたりしてたかな?」


 何言ってるのこの女って思われても仕方ないとわかってます。だけど、しょうがないじゃん。気にしちゃうの!


「気にしてたってのがどのレベルなのかは良くわかんないけど、私が感じか限り……そうでもなかったかも☆」
「そ……そうなんだ」


 なんだか気持ちが落ち込みだしたかも。ここだけは嘘を付いてほしかったな。自分の権限が思わぬ形で私に牙をむいたよ。


「まああれだよせっちゃん。ほら、スオウって目の前の事しか考えないタイプでしょ? しかも決まって色々と大変だから、必然的にそうなっちゃう。
 だからあんな奴の事は早々に忘れちゃった方がいいよ☆
 こっちだけが思っとくのって癪じゃない」


 うう……それはシクラなりのフォローなのかな? まあ言いたい事はわかるよ。確かにスオウはいつだって大変な事に巻き込まれてる。
 だから目の前最優先……それはしょうがないって事でしょ? でもだからってシクラが居て、私の事を尋ねないなんて、確かに癪かも。


「いっぱいいっぱい……スオウには後悔させてやるわ」


 私はそんな決意を口に出す。いろんな事を後悔させてやるんだから!


「その意気よせっちゃん。じゃあまっ、取り合えず法の書の奪還を再開しましょう。取り合えず探すべきはその仮面の奴らよ」


 そう呟くとシクラは黙り込む。きっとどうやってその仮面の人たちをあぶり出すかを考えてるんだろう。


「ヒマ、ちょっと特徴を……ってあんたのお粗末な記憶力なんか宛にならないわよね」
「なっ!? 失礼な!」


 激高するヒマワリを余所に、シクラは私に視線を移して、こう言ってきました。


「ここはせっちゃんに頼んで良いかな? 取り合えずヒマ、最後にその仮面と別れた場所へ案内しなさい」


 何をやる気だろうか? 具体的な事を言われないまま、ヒマワリは言われた通りに、最後に仮面の人たちに奢って貰った場所へと到着。
 そこはたこ焼き屋を売ってる所でした。隣にはグロくてウネウネした大きいタコが蛸壺から足やら顔を覗かせてます。これは蛸壺ごとタコが買えます的な? 普通なのかな? 私には良くわからない。


「ここでその仮面とは別れたのね?」
「うん、ありがとおーって言ってね」
「どっちに行ったかとか覚えてる?」
「え~と確か……あっちかな? でも向こうだった気も……」


 ヒマワリの指は定まらずにフラフラしてる。まあきっと食べ物に夢中だったんだよね。だから用が済んだ仮面がどっちに行ったかなんて気にしてなかったって所だろう。
 純真だし良い子だけど、基本他のプレイヤーに興味ないからね、この姉妹は。例外がスオウだけど、それはきっと私と一番深く関わってるからだろう。


「まあ良いわ、じゃあせっちゃん早速お願い。せっちゃんの権限を利用して、NPCの視覚情報を覗き見ましょう。それで敵の姿と追跡が出来るわ。
 なんたってLROの街には至る所にNPCが居るんだからね☆」


 なるほど、私にして欲しい事ってそういう事。役に立てるのなら私がんばってみます! さっきも上手く行ったし、これも練習練習だよ。


「わかった。やってみるね」


 私は再びウインドウを表示させて同じ手順を踏む。だけど今度はさっきよりも結構簡単だった。だってNPCの名前はわかってるし、それで検索をかけて後はその一体の情報を絞って抽出するだけ。
 簡単に別のウインドウに、過去に目の前のたこ焼き屋のNPCの見てた映像が再生される。


「こいつね」


 シクラのそんな言葉を向けられたのは、映像の中で暢気に涎垂らしてはしゃいでるヒマワリの後ろにいる仮面姿の人たち二人。
 顔全体を覆う感じじゃなく、目の部分を隠す感じの安易な仮面です。だけどデザインは凝っててきらびやか。昔テレビで見たヴェネチアの街のお祭りで売ってる感じのです。
 てかどう考えてもその二人周囲から浮いてるじゃん。あれを疑わないのはヒマワリ位だよ。普通は即警戒ものだよ。
 声は背の高い男の方は低くて良い声してて、女の人の方は残念な酒やけ声してた。そんな二人がヒマワリにたこ焼きを買ってあげて……「ありがとー」言って手を振り別れ――って、この二人それぞれ別の方向に姿を消した。
 なるほど、あながちヒマワリの記憶も間違って無かったって事だね。でも別方向にいくなんて……赤の他人だったとか?


「まさか、それは無いわ。この時点から万が一を警戒してたとしか思えないわ。こいつら……かなり手慣れるって事よ。
 ふふふ、だけど残念。普通のプレイヤー程度なら容易に撒けるのでしょうけど……喧嘩を売る相手を間違えたわね」


 なんだかシクラの目が輝いて来た気がするよ。懲らしめる相手が居るって状況が、シクラのテンションを高めてるみたい。


「で、どうしよっか? どっちを追う?」
「どっちでも良いわ。きっとどこかで合流するだろうしね」
 

 青い空の下、私達は仮面追跡のミッションに移るのでした。

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