命改変プログラム

ファーストなサイコロ

彼女達の今



 駕籠に入った小さな鳥のさえずりが頭の奥で心地良い目覚ましを鳴らしてる。ピヨピヨピーピーチチチチチ、少しずつそんな声に意識を表層へと表して行くと、日差しの温もりや、頬を撫でる風の優しさを感じる事が出来る。
 うっすらと目を開けると、真っ白なシーツの上に居るのが自分だけじゃないってのがわかった。私と違う、真っ黒な髪がサラサラってこの白いシーツに流れてる。
 今は何でも言うことを聞いてくれるから、着せちゃったとってもセクシーなピンクのベビードールがとってもなんだか背徳的で良い感じ。
 うん……だけど、ちょっと私的には嫉妬を覚えちゃう体かも。サクヤって普段は巫女服着てたからあんまり気付かれてなかったけど……普通以上に胸大きいし。これはまさかお兄ちゃんの趣味なのかな?
 どうせ私はペッタンコだよ。だけど昔よりはちゃんと成長してると思うんだけどな。私はペンギン柄のパジャマの上から自分の胸をサワサワしてみる。


「Bはあるよね。ううん、寄せて上げれば私だってC位は……」


 そんな風な事を口ずさんで居るときにふと気付いた。


「あれ? 私たちっていつベットに入ったっけ? 確かサクヤにウキウキでこれを着せてる所までは覚えてるけど、その後なんだかフッと暗くなったような……」


 まさかこの年で認知症? やっぱり実際は頭しか動かしてないのが悪いのかな? でも既にリアルでは数年経ってるらしいし、どんな影響が出てもしょうがないのかな。
 ちょっと鬱に入るかも。まあそれも既に何回目かもわかんない症状だよね。向こうでは常にそんな状態だったし、その頃に比べれば、今はとっても綺麗に世界を見れてる。そうそれは、きっとここが私の居場所だからだよね。


「うん……そうだよ。きっとそう……」


 私は小さくそんな声を出す。隣に寝てるサクヤのサラサラの髪を一掴みして撫で撫でする。指通りがとっても良いサクヤの髪。真っ直ぐな黒髪が綺麗だなって思う。私のは癖毛だし色も抜けてるし、こういう真っ直ぐで日本人らしい髪って憧れちゃうな。


「ちょっと! ヒ~マ! 返しなさいよ! それは私達のこれからに、とっても大事な物なのよ!!」
「や~だよ! シクラばっかりズルいんだ! 僕だって僕だって、もっともっと外に出たいんだもん!!」


 なんだか騒がしい声が聞こえる。その方向を見ると、外を駆けてる二人が見える。お花一杯のこの場所の庭を楽しそうに……まあシクラは怒ってるみたいだけど。ヒマワリも一体何をやらかしたのか、あの持ってる本が原因かな?


「ねぇ! 何してるの二人とも?」


 私はベットの上からそう呼びかけてみる。するとヒマワリはパァァっとまさに太陽みたいに輝く笑顔を見せてこちらに猛スピードで駆けて来る。
 ここは空中庭園『ラフェラスの寝床』中央の城と周りに浮く小島で成り立つ空に浮かぶ隠れ家です。そして今私が居るベットは一番小さくて、城に近い小島にたった一つ置かれた物。ベットの周りは色とりどりの花で飾れててお気に入りの場所です。島と島を繋ぐ お花の道。そこをヒマワリが荒々しく駆けてきて一杯花びらを散らしてる。
 確かに直ぐに元に戻るんだけど、もうちょっとあの子には女の子らしさを身につけて欲しいかな。


「セツリ様! セツリ様!」
「はいはい、何してるの? その本は何?」


 ベットに飛び乗って来て、私の後ろに隠れる様にするヒマワリ。その名前同様の活発なこの子は、ヒマワリ色の髪を後ろに束ねたショートのポニーテールで、その束ねるゴムは私があげたヒマワリの装飾が付けられてる奴なのです。
 ヒマワリもとっても気に入ってくれて最近は、いつも付けてる状態だね。そして行動的にスパッツとTシャツだけの格好もいつもの事。もっともっとお洒落すればとっても可愛く成るのに、私は常日頃からもったいないと思ってます。


「あのねーあのねー、シクラばっかりズルいんだよ。僕達が眠っちゃってる間に、どっか行ってたッポイの! 僕だって色々と外を見てみたいのに……うう~だから帰ってきたときに持ってたこの本を盗んだのだ!」


 なんだか胸を張って犯罪宣言をしちゃうこの子が心配です。なんて純真無垢な顔して言っちゃってるのよ。あ~もう! なんだか憎めないな!
 私はギュウ~~とヒマワリを抱きしめます。その名前通り、太陽の匂いがする子です、


「わわっ! セツリ様苦しいよ」
「当然です。苦しくしてるんだもん。まあヒマの気持ちも分かるよ。だって私もずっと同じ場所に居たからね。だけど人の物を取るのはいけない事なんだよ。
 外には今度ちゃんと連れてってあげるから、ほらシクラに返そうね」


 私はそう言って追いかけて来てたシクラの前にヒマワリを引っ張り出す。シクラは途中から走るのを止めて、優雅に歩いてきてたよ。
 きっとここが行き止まりだから、ジワジワと追い込もうとか考えてたのかな。シクラは私の前まで来ると、一礼の後にいつもの笑顔を見せてくれる。


「おはようセッチャン。――で、そこのいたずらっ子はどうして欲しいのかな?」
「ひっ!? 返すよ! 返すよ! これで良いんだろ?」
「ふふ、謝りたいのなら、誠意と態度で示そうか? ヒ~マ」


 盗んだ本の差し出され方が気に入らなかったのか、シクラは教育に移ろうとしてる。というかお仕置き? 一応差し出された本を取ろうとするシクラ。
 だけど危機感を感じたヒマワリは、その本をサッと胸元に引き寄せた。きっとこの本を渡しても怒られる事を悟ったんだね。


「ちょっとヒマ。どういうつもりなのかな☆」


 ☆を散らせながらもシクラが怒ってるのが私にもわかるよ。てか笑顔の裏に般若が見えてるよシクラ。私はヒマワリにこう囁きかける。


「何やってるのヒマ。早く返さないとほら、シクラのお仕置きが増すだけよ」
「だってだって……」


 ガタガタと震えてるヒマワリ。一体どれだけ恐れられてるのよ。どんなお仕置きを普段やってるんだろう。シクラって軽い態度の割にはやることがエグいからなぁ。きっと想像を絶するお仕置きをされてるんだろう。


「ほら早く渡しなさいヒマ。あと五秒以内に返さなかったらお仕置き十倍よ☆」
「十っ!?」


 吹きかけるヒマワリ。一体どんなお仕置きが十倍に成るんだろう? 良くわからない。だけど相当の事なんだろう事は、ヒマワリの震えで大体わかる。


「はいイ~チ」


 既にシクラの声を聞く度にビクビク体が震え上がっちゃってるんだけど……目に涙をいっぱい溜めて、口をあわあわしちゃってる。
 流石に可愛そうに成ってきたよ。私はヒマワリをフォローする事に。


「あのねシクラ。ヒマちゃんも悪気があったわけじゃないんだよ。ちょっと……ちょっとだけ魔が差しただけなの。だから許してあげようよ。ね?」


 私は両手を併せてシクラにそう頼んでみる。


「せっちゃんがそう言うのなら……だけど反省はして貰いたいかな? そこはホラ、お姉ちゃんとしての教育だからね☆」


 ほっ、良かった。やっぱりシクラは物わかり良いよね。まあ私に対して甘いだけってのもありそうだけど、だけどいいのシクラは一番私と対等に接してくれるから、お互いを分かり会ってるって事だもん。


「ほら、シクラが許してくれるって。良かったねヒマ……ヒマ?」


 何故かまだガクブルなヒマワリ。頭が混乱してるのを表現してるのか、さっきから頭のポニーがクルクル回ってるのは何だろう?
 てか、聞いてなかった? 


「ヒマ! ヒマ! もう怯えなくて良いんだよ」


 私がそう言っても聞く耳を持ってくれないヒマワリ。胸に抱えた本を握りしめる腕に力を込めると、その腕と脚に模様が浮かび上がってくる。これは……


「ちょっとヒマ! アンタ何する気――」


 シクラがそう言って腕を伸ばしたとき、ヒマワリが叫んで飛び出した。


「僕はまだ死にたくなあああああああい!!」


 そんな言葉と共に一足で大きく空に飛び出したヒマワリ。そして空中を更に蹴って下界へと消えていった。


「あのバカ!」


 島の端に寄って下を見下ろすシクラ。私も急いでその隣に行って下をのぞき込む。だけど既にヒマワリの姿は見えなくなってた。


「あ~あ、シクラ普段どんな事をしてるの? なんでもやりすぎは良くないよ」


 私は横に居るシクラそんな忠告をしてあげる。だってあの反応は相当だよ。死にたくないって言ってたし……ちょっと流石に引いちゃうな。


「ちっ……違います! あの子が言ったような事はしてないからね! それにしても下に逃げるなんて面倒な事を。あれはとっても大切なのに、私がどれだけ苦労して取ってきたと思ってるのよ。
 大変だったんだからね」
「まあ一応そう言う事にしておくけど……そう言えばあの本って何だったの? そんなに大切な物?」


 私がそう訪ねると、明らかにシクラはビクッと肩を上げた――かと思うと結構平静にこう言った。


「別にちょっと必要なだけよ」
「だけど苦労したとか言ったよね? シクラがそんな言葉を使うなんて珍しい気がするけど」
「私は最強だけど、力だけに頼ったりしないもん。だからまあ人並みに頭を使ったってだけ。だけどそっちの方が私的には楽しくもあったりだからいいの」
「ふ~ん」


 なんだか怪しいな。私に伝えたくない事でもあるのかな? シクラは姉妹の中じゃ一番私と対等だからこそ、言わない事も多い気がするのよね。いっつも自分で考えて自分で行動して、いつの間にか私達の為に成ることをやってるような。
 適当そうに見えて、実は一番面倒見が良かったり、やっぱり一番最初に目覚めたのが大きいのかな? 
「で、どうするの?」
「勿論追いかけてとっちめて――じゃなくて、連れ戻そうかな。あはは」


 私のジトーとした目を見て急遽そう言い換えたシクラ。もう本当に姉妹には手が早いんだから。いくら姉妹揃って普通より頑丈だからって、女の子って部分は忘れないで欲しいよね。


「どうせ傷も跡も残らないじゃない」
「そう言うことじゃないの! 傷も跡も残らなくたって、心は痛いんだよ。シクラ達にだって心はあるでしょ?」
「まあ私は最先端の先を行く女だからね☆」


 ニッコリと☆をちらつかせるシクラ。シクラだけじゃなく姉妹みんながそうじゃないの? もう全く、直ぐにおどけてめんどそうな話は流しにかかるんだから。


「ちょっとシクラ!」
「はいはい、心の問題ですよね。よくよく理解しときま~す☆ 取り合えず私はヒマを追うから、せっちゃんはここで大人しくしててね」


 そう言ってシクラは下を見下ろして、その自身の背中の中空に筆で描いた様な模様の翼を表す。そしてそのままジャンプして下界へと降りようとしてるんだろうけど、私はそこでハッとしてその裾を掴んだ。
 てか、シクラはシクラでいつもラフな格好してる。まあヒマワリよりはずっとお洒落さんだけどね。ホットパンツに上は透明な長い布を体に合わせて巻いてるような感じ? かなり薄くて透明感のある布を端はそのままで、体部分を何十かにしてるんだけど、シクラの肌色が透けてるのがなんだかとっても危なげだ。
 一応胸に目をやっても見えてはいないけど、これはかなり大胆なファッションセンス。男の子には悪そうだよ。スオウには絶対に見せられないな。おへそとかモロ出ししてるし。なんて良いくびれを見せつけてるのシクラの奴。


「何? お腹が減ってるのならユリ姉が用意してると思うから、そっちでお願い」
「違うわよ。えっとね……シクラは反対するだろうけど、私も探しに行く!」
「ダメ。はい、話終了。さっさと放して」


 えええええ!? だよ! 分かってたけどその対応はあんまりだ。速攻拒否って……ちょっとは私のお願いを聞いてくれても良いんじゃないかな? かな?


「納得できない!」


 取り合えず抗議の声を上げることに。


「納得できなくてもダ~メ。そもそもせっちゃんがLROを変えるまでは外に出たくないって言ったんだよ。忘れたの? ワガママは認めません」
「うむむ……それはそうだけど、流石につまらなく成ってきたって言うか……そもそもずっと眠り続けてようやく動ける様になったのに、こんな狭い場所にしか居られないなんてお断りだよ!」


 世界はこんなに広いのに!


「それもLROを完全に私達が掌握すれば解決する問題で~す。せっちゃんはこれ以上、人と関わり逢いたくないから、それまでは外に出ないって決めたんでしょう? 
 ならその方がきっと良いと思うな☆ 大丈夫、そんなに待たせるつもりはないから。全ての憂いを取り去って、ちゃんとせっちゃんの理想の世界を作ってあげる」


 そう言ってニッコリ笑って私の手に自身の手を重ねるシクラ。放して欲しいんだろうけど、私は俯きかげんでそれを拒否。
 だけど分かってるよ。言ったのは確かに私だし、シクラの言ったことは正しい。私色々と影響受けやすいからそこら辺もきっと心配してる。
 まあ後少し、後少しと思って我慢してきた訳だけど、実際退屈なんだもん。みんなが遊んでくれるのは良いけど、やっぱり外で起きる予想外な事とか、見たことない景色とかに憧れが私は強い。
 最初はこの場所だって良かったけど、ここにしか居られないと、流石にね……言っちゃ悪いけど飽きてくるよ! 折角LROって言うゲーム世界なのに、私はやることないんだもん。
 なんだか今の状況じゃここにただ閉じこめられてるだけみたいで、本末転倒気味だと思う。ワガママだけど……退屈はイヤなの!


「そこら辺は勿論シクラ達の事信頼してるよ。だけどお願い! 私もちょっとは外に出たいの。ヒマの事だって心配だし……ねっ。ちょっとだけお願いシクラ。
 後でなんだって一つだけ言うこと聞いてあげるから」
「何でも一つだけ言うことを!? それは本当せっちゃん?」


 おっ、シクラが食いついてくれた。私はここぞとばかりに攻めきるよ。


「うん! 本当だよ! シクラの為にどんな事でもしてあげる。一日メイドさんとかになってご主人様って呼んでもいいよ」
「メイッ――ブッ……そうね。まあ少しなら別にいいかな。でもくれぐれも私から離れないでね」


 なんだかシクラの鼻から赤い物が垂れてるような。そんな刺激の強い事を言った覚えはないんだけどな。でも良かったよ。シクラの許しも出たし、これで堂々と外に出れる。


「は~い」
「じゃあ早速って、せっちゃんはその格好で下に降りるの? それは女の子としてどうだろう?」


 そんな指摘を受けて自分の格好を見下ろす。ペンギン柄のパジャマのままだ。確かにこの格好じゃお出かけなんて出来る筈もない。女の子として!
 髪だってボサボサだし、顔も洗って歯磨きもしないと、お洋服はお出かけ用を用意してしっかり吟味しないと。


「ちょっと待ってて!」


 私はそう言うと急いで城の中へと駆ける。久しぶりの外出だから、目一杯のお洒落をしたいところだけど、流石にそこまで時間を掛ける訳には行かないから、取り合えずシャワーを浴びて、髪をとかして乾かして、お肌のお手入れを済ませて服を着替えて、準備完了。
 ここまで二十分位。これでもかなり急いだ方だよ。パジャマから自分が可愛いと思う服にぱぱっとね。今日は赤と白のチェック柄のワンピースに同色のブーツで合わせてみました。長い髪は左側でゴムでまとめて肩から前に流してます。後は最近シクラから貰ったアクセサリーで装飾ね。
 金の腕輪みたいなの。手首から腕の関節部分までを飾ってくれるタイプの物です。その模様がとってもきめ細やかで綺麗なんだよ。お気に入りです。
 そんな感じで準備は万端。私は元のベットのある浮き島に戻ります。


「お待たせ!」


 そう言った私は目の前に光景にちょっと唖然としちゃったよ。シクラといつの間にか起きてるサクヤが揃って朝食取ってるじゃん。隣に置いてあった白い丸形のテーブルにはお菓子がお洒落に積まれてる三段重ねみたいな台があって、ティーセットに朝食のパンにハムエッグって、なんだか羨ましいよ!
 思わずお腹が鳴り出しそう。


「案外早かったわね。じゃあ早速行きましょうか? お姉さまはみんなと一緒にお留守番を頼みます」
「はい……」


 サクヤはそんなシクラの言葉にただ無表情で頷くだけ。だけど別にシクラは気にしてなさそうで、上品に口元を拭うと椅子から立ち上がった。


「せっちゃん?」


 シクラには悪いけど、私の視線は朝食とお菓子に釘付けだ。


「食べたいの? だけどそうなると更に時間掛かるよね? 流石にこれ以上ヒマを野放しにしておくのも不安だし、せっちゃんが朝食を取るのなら、私は先に行っちゃうよ☆」
「そんな! ちょっと位待っててくれても良いじゃない、シクラの意地悪!」


 お腹の虫が盛大に鳴り出しそう何だよ。町中で恥ずかしい思いしちゃってもいいの? 笑われちゃうよ。


「大丈夫よ。お腹の音なんて自分が感じる程、大きくないから他人は聞こえない。町の喧噪の中なら尚更ね。それにちょっと位ってもうあれから二十分以上たってるし、ヒマのスペックをフルに考えたら、今頃数百キロ先に行っててもおかしくないわ。
 まあ無いだろうけど、あの子は色々と心配じゃない。そのちょっとアホだから」
「うぅ……それはそうだけど……」


 アホの所に全面同意してゴメンヒマワリ。だけど私には反論出来る物を持ってないの。アレだよね。ヒマワリと柊は同い年位に見えるけど、ヒイちゃんは年寄りも大人びた感じで知的だから、そっちにもって行かれたのかなって個人的には思うんだ。
 だけどその分、ヒマはとっても元気でポジィテブで良いと思うけど。


「言っとくけど、一番年下はヒイちゃんだよ。その上がヒマ。まあ精神上は逆転して見えても仕方ないけどね☆」
「そうなんだ……」


 ご愁傷様だよヒマワリ。同い年じゃなくヒマがお姉さんだったんだね。なんだか残念なような……ある意味納得できる様な……そんな感じ。


「所でどうするの? 行くの? それともご飯食べるの?」
「うにゅにゅにゅ~~! 行きます! 行くよ! 折角お洒落したんだもん。外に行かないと損だよ!」
「はいはい。そう言えばその腕輪ちゃんとしてくれてるのね。良かった☆」


 腕輪? ああこれね。


「勿論。お気に入りだもん」
「それは良かった。私も鼻高々ね。じゃあはい。お手をどうぞお嬢様」
「う……」


 なんだかちょっと胸の奥がドキンとしちゃったよ。格好いいと言うか、そのシクラの綺麗さにドキッとね。うう、なんだかシクラといると私が劣等感感じちゃうかも。


「そんな事無いと思うけど? せっちゃんはとっても可愛いよ☆ ほんと食べちゃいたい位に!」


 そう言って掴んだ腕を引っ張れた。そしてギュムーと抱きしめられたまま、シクラは島から飛び出す。私たちは一気に重力に従って急降下。もの凄い風が折角セットした髪を煽りまくってるよ。


「きゃわわあああああああああ!!」


 そんな声を上げながら私はシクラにしがみつく。すると不意に激しかった風が優しくなって「大丈夫だよせっちゃん」と言う声と共に、私は恐る恐る目を開けた。
 するとそこには、真っ青な空に流れていく雲。そしてキラキラと日差しを反射する大きな海に――って海だ!


「海だよね! アレは海だよね!? 行ってみたいなシクラ!」
「目的を忘れないでよ。だけどまあヒマワリを見つけた後にちょっとだけならいいかな? 時期だしね」
「ホント!?」


 ダメもとだったんだけど、言ってみる物だね。やる気がもっともっとあがったよ。この世界が私の為にある。それってやっぱり最高だよ!

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