命改変プログラム
乱れ風の先
「おいおいおいおいおいおいおいおい、これからどうしろって言うんだよ!!」
眼前で輝くバトルシップを見て、僕はそう言わざる得ない。だって一刻も早くリア・レーゼへ! それが僕達の意志なんだぞ。なんで向かい合ってお見合い体制に成らなきゃいけないんだよ。逆方向じゃねーか!
「ふっふ……散々私の船を傷つけた礼をしないと収まらないじゃないか。今なら君達のせいに出来る訳だし、それにこのままでたどり着けるとも思えないだろう。
僅かばかりの牽制は必要だ」
なんてこった。この艦長さん、人質って立場を利用しだしたぞ。結構図太いじゃないか。しかもバトルシップに一矢報いるとか一体何を?
そんな風に思ってると、艦長さんからご命令が。
「さあ、君の握りしめてるその舵の中央部分を押し込みたまえ! 握るんじゃなく手の堅いとこでぐぐっとね」
「こうですか?」
ぼくは手のひらの比較的堅い部分――手首に近い部分で握りしめてた黒い玉を押してみる。するとなんだか奥でカチッと言ったような?
「うお、なんだ?」
突然に軋むような音と共に、壊れてた船首部分が持ち上がってる? そしてそこから仰々しい砲芯が姿を現した。
「これってまさか……」
「ああ、このタイプの飛空挺に唯一搭載されてる武器だ。バトルシップの砲には及ばないが、それでも十分な威力はある。
よし、黒い球体が開いてるだろ。その中の赤い鉱石をおもいっきり引っ張って再び押し込むんだ! 奴らに一泡吹かせてやりたまえ!!」
ノリノリ過ぎだろこの艦長。この会話が漏れ出したら、絶対に売国奴とかにされるぞ。だけど確かに言われた場所を見てみると、黒い球体が渦を巻く様に穴を開けてて、そこには赤い鉱石と言うか宝石みたいな物がある。これを引っ張って押し込めば発射できるのか。
実際向かい合った時点でヤバいんだし、これはやるしかないだろ! 確かにもしも当たればラッキーだしな! 僕は球体に手を突っ込み、その鉱石をつかみ取る。すると腕の周りに何十もの魔法陣が現れた。
自分の腕を発射装置にしてるとかなのかな? わかんないけど、取り合えず気合い入れてこの一発に賭けてみる。
「いっくぞおおおおおおおおおおおおおお!!」
おもいっきり腕を引いて鉱石を引っ張り出す。それと同時にエネルギー供給が開始されたのか前方に集まる青い光。その光の紙吹雪が破損した所とかからも一杯出てて、この飛空挺を包み込む勢い。
「くっ、エネルギーの圧縮が上手くいかないか。仕方がない! 押し込むんだ!!」
そんな声を受ける前から僕は実際押し込もうと思ってたよ。だってエネルギーの圧縮率とか聞いてないし、引いて押し込むだったろ。
だけど想像以上に押し込むのには力が行った訳。これは実際モブリの力でどうにか出来るのか? って位。だけどモブリの気遣いをしてる場合じゃないか。さっさと打ち込まないと目の前から逃げられかもしれないからな――って、なんだか向こうも再び赤紫した光が収束してるような。ヤバくないかアレ?
「大丈夫だ。向こうは撃ったばかりでエネルギーのチャージはまだ間に合わない筈だ! それにもし打てたとしても、完全じゃないのなら、威力で負けはしないさ!」
「その言葉ぁ信じるからなあああああああああ!! いっけぇえええええええええ!!」
右回りで回ってた腕に現れた魔法陣が、一斉に左周りに変わったかと思った瞬間、引っかかりが外れた様に腕が進む。そして形が戻ってた黒い球体にめり込ませた鉱石。それに腕に現れてた魔法陣が集まって行き、そこからも青い光の紙吹雪が。
そして次の瞬間、船首部分から弾き出される大きな青い光。その勢いが強力過ぎたのか、前に進んでた筈の飛空挺が後ろに下がった。
だけどそんな事は僅かな問題。僕は必死に光の行く先を見つめてた。この光がたどり着く場所であってほしいバトルシップを。
向こうはプライドか何か知らないけど、どうやら避ける気は無いらしい。まあそれは向こうも直ぐに光を収束しだした時から分かってた事。
向かう青い光に対して、奴らはさっきのよりも明らかに細い赤紫の収束砲をぶつけてくる。二つの攻撃は間でぶつかりそして拮抗する。
「くっそ、向こうはエネルギー不足してる筈なのに、拮抗出来るのかよ!?」
「向こうのはこの船の改良版だからな。こちらのよりも性能がいいのは仕方ない。寧ろこの状態で拮抗出来るてるだけ上出来だろう」
まあ確かにそうなんだけど……こっちは損傷が激しいからエネルギーの減りが早い。向こうも満タンの収束砲じゃないから、さっきのよりも長く放出出来るとは思えないけど、これはどっちが長く出し続けられるかの勝負に成りそうだ。
「くっ……」
さっきから妙に舵がガタツく。拮抗してるから船自体が不安定に成ってるみたい。それにエネルギーのぶつかり合いだから、単純に同じ位置で攻めぎ合いってふうにも行かない。
すこしずつだけど位置がズレて収束砲同士がズレていく。だけどこの重なり合いが外れたら、再び船のどこかを持って行かれる訳だから、そんな事させられない。
僕は舵を握る腕に力を込めて、向こうの動きにあわせる様に舵を回す。きっと向こうもそうしてる。
だから僕達は拮抗したまま空を回る。空と同じ青の紙吹雪とまがまがしい赤紫の光。どっちがこの勝負を征するのか……僕達はただ祈るしか出来ない。
だけどその時、向こうが反則行為をしてきた。
「なっ! ミサイルって……」
『くはははは、我らの船はそちらとは違うんだよ。攻撃手段の数がな!!』
得意気にそんな声が通信装置から聞こえてくる。別に正々堂々を願ってた訳じゃないけど、雰囲気を察しろよな。まあそれはただのこっちの願望だろうけど……当たり前か、出来る限りの攻撃手段を使って潰しに来るのは。
僕達はルールに則った勝負をしてるわけじゃない。卑怯なんて言葉は存在しないんだよな。そもそも実力が拮抗してたり、有利な状況で戦闘に入れる方が希なんだよ。僕の場合は……かも知れないけど、でもだからって諦めれる訳もないからここまできちゃってるんだよな。
迫り来るミサイル。既に鉱石を使いきった鍛冶屋を頼る事は出来ないだろう。ならシルクちゃんやピク、セラを信じるしかない。収束砲の拮抗で動けないしな。
既に聖典は動いてる。そしてピクもシルクちゃんもまだまだ頑張ってくれてる。大丈夫……まだ行ける! 直前でのミサイルの爆発で機体が揺れる。だけどバトルシップの方はここぞとばかりにミサイルを撃ちまくり。これってまさか……
「誘われたんじゃないか?」
そんな疑問が沸いてくるな。まあそんな事しなくても打ち落とせるだろうけど、目の前に常にいてくれた方が楽なのは確かだろ。
(くっそ……どうする? 収束砲をズラして、この状態を解いた方がいいのか? だけどこれを逃したら、きっともう二度と向かい合う事は出来なくなる。こっちのエネルギーも微妙だけど、向こうもそろそろ限界の筈。
少しだけ長くこちらが持てば、バトルシップに攻撃を当てられる……それは大きい)
心の中でそんな考えに悩む。だって逃げ続けるのはとても大変だ。でも向こうにもダメージを追わせられれば、少しは状況が変わるかも知れない。
そしてそのチャンスは今しかないんだ。この次があるとは絶対に思えない。ここでやらないと、ただ必死に逃げるしか道はなくなる。まあ結局それをやるしかないとは思うんだけど、少しでも良いんだ。バトルシップの機動性を落としたい。
欲を言えばそれが望みなんだ。だけどこのままじゃその前に落ちそうな雰囲気なのも否め無い。今はまだシルクちゃんの強力な障壁とセラの聖典でどうにか成ってるけど……なりふり構わず撃ってきてるバトルシップのミサイルの量は半端ない。
殆ど止まってる様な状況だからって奮発しすぎだろ。流石に空にミサイルの軌道の後が板みたいに成るほどの数じゃ、シルクちゃんの障壁もいつか破られるだろう。セラの聖典だって全然追いついてない。
目が痛くなる閃光と、耳をおかしくする爆発音の連続だ。やっぱり欲を出しすぎるのはよくないかな……とか思い出してきた。だってここで一矢報いるのに賭けるよりも、エンジンが復活して元に戻った機動力に賭けた方が……ってそれがアテに出来ないからこんな無茶をしてるんだった。くっそ……だけどこのままじゃ……
「ガガ……ガガ――ちょっ――と、後少し……このままで居なさい!」
「セラ……か?」
多分この声はそうだろう。だけど随分ノイズが混じってるな。でもお札から通信が来てるって事は、ノウイがそれを届けたって事か。でも後少しこのままってどうする気だよ。
それにそんな事を言われなくても、この状態は後少ししか持ちそうにない。そろそろお互いの収束砲が限界っぽいからな。
だんだんと細くなって行ってる互いの光。この様子だと殆ど同じタイミングで消えると思う。だけどそれじゃあ困る。僕はセラと繋がってるお札へと声を出す。
「どうするんだ? もうこっちの攻撃は持ちそうに無いぞ」
「いい――から、ガガガ、アンタはそのまま! ノウイ!」
そんな声と共に、一方的に通信切られた。そのままって、この撃ち合いが終わったら全力で逃げるしかないんだけど……せめて何をやるのかだけでも言えよな。
そんな風に思ってると、甲板に三つの陰が現れた。それはセラとノウイとテッケンさん。どうやらミラージュコロイドで側面を一気に上がって来たみたいだな。
遠目だけどセラの奴は、案外大丈夫そうにしてる。みんなの姿も見えるから、少しだけ安心感が増すな。そんな中次々と障壁に衝突しては爆発していくミサイル群。マジでシルクちゃんがいなかったら、今頃この船は木っ端微塵に成ってる事だよ。
そんな中、なにやらシルクちゃんに言ってるセラ。そしてこちらを見てる? だけどセラは何も言わずに前を向く。一体何をやる気なんだ? 聖典はミサイル迎撃に回ってない様にも見えるし、何かを狙ってるのは分かる。
まっ、もう既にこの船の攻撃でバトルシップに傷を付けるのが絶望的な今、頼りに成るのはセラの聖典だけ。仲間を信じることは基本だし、やってくれる事を願うさ。
セラが期待を裏切った事ないしな。
次々と空で弾けて青い色を黒へと塗り変えて行くミサイルの攻撃。それらを一切引き受けてるのがシルクちゃんで、ここの突破の鍵を握ってるのがセラ。男性陣は女の子を後ろから応援する立場になってる。
ちょっと情けないかも知れないけど、こればっかりは仕方ない。たまたまその役割を担う事が出来たのが女の子達だけだったって事だ。
空に立ち込める黒煙のせいで、バトルシップの見える範囲が奇しくも攻撃で繋がってる部分だけになった。ゆっくりと回る互いの船。黒煙から出てはまた入る。そんな事を交互に繰り返す羽目に成ってるよ。
だけどその時、空の高い位置に何か光るものが見える様な。輝く黄金色の光……あれは聖典か? ミサイルを打ち落としてないと思ったら、この隙に乗じての収束砲を準備してたのか。
そういえば、別にセラの手元から撃つ必要は無かったんだっけ? こちらに気を取られてる間に、全く別方向からの収束砲での攻撃。これは効く筈だ。
一機ずつじゃダメでも、力を合わせれば貫けない物はきっとない。そう思える程のエネルギーの増幅量だからな。唯一の不安点は、最初にバトルシップを落とした時よりも、聖典の数が減ってる点だ。
収束砲は確か、四の倍数の聖典が必要で、四・八・十二・十六・二十で威力も比較的に変わるとか聞いた様な気がする。
確か六機位は落とされてた筈だから、十二機での収束砲しか撃てない今の状況で、バトルシップの障壁を抜けるのか?
きっと二十機で撃ってた最初の不意打ちとは多分相当威力が変わるんじゃないかと思う。だって二十機全部を使っての収束砲なんて、僕も間近で見たことない。
それだけ使う場面を選ぶ程――って事なんだろう。だけど十二機だって相当なのは知ってるし、願うしかないよな。セラを……聖典を!!
目映い光を弾けさせて真っ直ぐに降り注ぐ黄金色の光。次の瞬間、収束砲がバトルシップを大きく揺らした。そして片翼から上がる炎と煙。セラが全身全霊を込めて放った収束砲は、バトルシップの体を貫いてる。
『なっ……に!? そんなバカな!!』
そんな声が通信機から漏れ聞こえてくる。流石に予想外だったんだろう。常に自分たちが有利だとか高をくくってるからそうなるんだ。機体性能だけで勝負は決まる訳じゃないんだよ。
片翼がもげて大きく左側に蛇行しだすバトルシップ。そのせいで重なりあってた二つの攻撃もズレて、それぞれの機体に僅かに傷を刻んだ。
けどそれは微々たる物、すぐさま頭が切り替わってこう思った。
(今しかない!)
ってね。僕は大きく舵を切って、もう一度反転させて、リア・レーゼの方向を向いた。そして球体に圧力をかけてスピードアップ! ……アップ……アップ? しようとしてる筈何だけど、あんまりスピードが変わらない様な。
「あの一撃は大量のエネルギーを使うからな。撃った後はしばらく加速が制限されるんだ。再びエネルギーを生成する僅かな間だがな」
そんな説明を椅子に座ってる艦長がしてくれる。だけどその僅かな間が貴重なんだよ。いやまあ、あれだけの攻撃だ。リスクがないなんて思っては無かったけど……すぐさま加速できないのは痛い。
後ろをチラリと見ると、高度がどんどん下がってるバトルシップが見える。どっからあの強力な攻撃を出してるのかと思ったら、どうやらこの船と同じ構造の砲が内部に収納されてたみたいだ。
そこら辺は後継機って事何だろう。この飛空挺の唯一の武器は受け継がれてた訳だ。砲芯は二本とも壊したとか思ってたけど、その内にもう一本とっておきを隠し持ってた訳だ。
僕は横目でバトルシップを見ながら、ずっと手に力を込めてる。直ぐに加速出来るようだ。だってあれで終わったなんてなんだか思えなくて。だから(早く早く)と念じてる。
すると通信用のお札からこんな声が聞こえてきた。
「ちょっと、もっと急ぎなさい――っつ……」
セラのそんな激。だけどやっぱり頭痛を併発してるのか、ちょっと辛そうなご様子。なんだか雑音が混じってないな。双方のエネルギー砲の影響だったのか? てか、急ぎたいのはこっちもだってそうなんだよ。ただ急げない理由があるだけだ。
「そんな言い訳いらないわよ。死ぬ気で急ぎなさい。こっちは流石に……限界なんだから……後は任せるわよ」
そんな声に操舵室の外を見てみるとセラはペタンと床に腰を下ろしてる。世に言い女の子座りと言う奴だ。気が抜けた様なご様子なのかどうか……ちょっと心配気に見てると、横にフラッとセラは倒れた。
「なっ!?」
僕は割れた窓の部分から身を乗り出しそうに成ったよ。だけど僕がそんな事をしなくても、周りのみんながセラに駆け寄ってる。
流石に二十機の聖典の操作に、二回の収束砲は負担が大きかった様だ。周りを飛んでた聖典は、セラが倒れたと同時に、その姿を元の鏃に戻して、セラの元へと消えていった。
これで僕達にはバトルシップへの攻撃手段が実質消えた事になる。本当にもう、逃げる事しか出来ないな。セラの姿はノウイやテッケンさん、鍛冶屋やシルクちゃんの陰で見えない。
だけどか弱い声が通信用のお札から漏れ聞こえてきた。
「ここまで……したのよ……着けなかったら……バッキンバッキンガムだからね」
バッキンバッキンガムって――ちょっと吹きかけたじゃないか。でもなんだかか弱いってか、寝言みたいな感じ。気を失ってるのか? 結構激しく頭部をぶつけてたし、意識が飛んでるのかも知れないな。
どうせ聞いてないだろうけど、僕はセラにむかってこういってやる。
「分かったよ。後は任せとけ。目を覚ましたときには、リア・レーゼだ!!」
僕は手に力を込める。するとようやく青い光の紙吹雪が溢れて来て加速出来た。スピード感ある風が肌を撫でる。このまま一気にリア・レーゼへ!
グングンと進み、前方に見えてくるのは大きな傘を差したかのような強大な影。その周りにも山みたいな傘が幾つも見える。
レーダーでは大体あそこ等へんっぽいけど、どうなんだ? 僕は艦長に視線を投げかける。
「あそこがそうだ。あの一番大きな傘こそ、世界樹とも神樹とも呼ばれてる木。そしてその木の麓から、リア・レーゼが広がってる。
まあだが、影が見えてもまだ遠いがな。木が大きすぎるから、既に見えてるだけだ」
マジかよ……確かに大体世界樹とか言う木はドデカく言われてるけど、やっぱりLROでもそうなんだな。一番デカいのは上の方が雲を突き抜けてる様に見えるぞ。
どこまで行ってるんだ? 案外この木を登れば月まで行けそう……とか思えるかも知れない。僕が上を仰ぎ見てると、後方で爆発が起きた。
「何だ!?」
声を出して振り返ると、そこには猛スピードで追いかけて来るバトルシップの姿はあった。あれで終わったとは思ってなかったけど、追いついてくるの早いよ!
モゲた筈の翼も戻ってるじゃないか。一体どういう事だ?
「くっそ! みんな捕まっててくれ!」
僕は通信用のお札に向かってそう言って、おもいっきり右に舵を切る。その瞬間飛空挺を追い越してバトルシップが前方に。だけど直ぐに上昇して僕達の飛空挺に影を作る様に飛び始めた。
今度は何をやる気だ?
『勝ったと思ったか? 甘いわ! バトルシップはそこいらの材料で出来てはいない。私もよくわからんが、この船の外装を覆うのは全く新しい材料だ。
そしてそれは我らモブリに宿りし魔力で復元可能。自己再生機能を有した材質なのだ! 下手に外装の羽を狙わずに、最初の時と同様に動力炉を狙っていれば止められたものを。これが貴様等の敗因だ!』
自己再生だと? 今そう言ったかこいつ? なんて反則的な材質だ。魔力が居るらしいけど、実際MPが無いLROなら、直し放題じゃないか!
いやでも外装だけなのか……だからエンジンを打ち抜かれたもう一機のバトルシップは復帰してこないし、外付けの砲芯二つは、元に戻せてない。あくまでもバトルシップを形作ってる外装だけが修復可能って事なんだろう。
でもそれでも大概だな。障壁だって張ってあるのに、その上自己再生って……本当に一撃で動力炉を破壊しないと止められないじゃないか。
そんな事を思ってると、上から何か投下されてくる。小さな黒光りする物体。それが強烈な音を出して飛空挺の外装を凹まして行く。超音波爆撃か何かか? するとその音のせいでプロペラがもげてしまったり、なんだか動力の様子がおかしくなったりで推進力が落ちてきた。
くっそ……もう見えてるのに!
「頼む頑張ってくれ飛空挺!」
シルクちゃんもさすがに音までは防げないみたいだし、ここは僕の操縦技術にかかってる。舵を切り、上昇下降と様々やってみる。だけど無理だった。それどころか動力炉部分から火の手が! マジで不味い……そう思ったとき、クリスタルに封印されてる奴が突然こう言った。
「高き世界樹の姿が見える。まさかここまで持つとはな……願ってはいたが期待はしてなかった。これはお前たちの絆の証か……神の意志か……だが既に黙っては居られないな。
我らが神子の御前、神の地での暴挙は許せん」
何を言ってるんだ? そう思ってると、奴のローブの模様が輝きだした。そしてローブだけを残して中身が消えた!?
次の瞬間、奴は甲板に立ってた。
眼前で輝くバトルシップを見て、僕はそう言わざる得ない。だって一刻も早くリア・レーゼへ! それが僕達の意志なんだぞ。なんで向かい合ってお見合い体制に成らなきゃいけないんだよ。逆方向じゃねーか!
「ふっふ……散々私の船を傷つけた礼をしないと収まらないじゃないか。今なら君達のせいに出来る訳だし、それにこのままでたどり着けるとも思えないだろう。
僅かばかりの牽制は必要だ」
なんてこった。この艦長さん、人質って立場を利用しだしたぞ。結構図太いじゃないか。しかもバトルシップに一矢報いるとか一体何を?
そんな風に思ってると、艦長さんからご命令が。
「さあ、君の握りしめてるその舵の中央部分を押し込みたまえ! 握るんじゃなく手の堅いとこでぐぐっとね」
「こうですか?」
ぼくは手のひらの比較的堅い部分――手首に近い部分で握りしめてた黒い玉を押してみる。するとなんだか奥でカチッと言ったような?
「うお、なんだ?」
突然に軋むような音と共に、壊れてた船首部分が持ち上がってる? そしてそこから仰々しい砲芯が姿を現した。
「これってまさか……」
「ああ、このタイプの飛空挺に唯一搭載されてる武器だ。バトルシップの砲には及ばないが、それでも十分な威力はある。
よし、黒い球体が開いてるだろ。その中の赤い鉱石をおもいっきり引っ張って再び押し込むんだ! 奴らに一泡吹かせてやりたまえ!!」
ノリノリ過ぎだろこの艦長。この会話が漏れ出したら、絶対に売国奴とかにされるぞ。だけど確かに言われた場所を見てみると、黒い球体が渦を巻く様に穴を開けてて、そこには赤い鉱石と言うか宝石みたいな物がある。これを引っ張って押し込めば発射できるのか。
実際向かい合った時点でヤバいんだし、これはやるしかないだろ! 確かにもしも当たればラッキーだしな! 僕は球体に手を突っ込み、その鉱石をつかみ取る。すると腕の周りに何十もの魔法陣が現れた。
自分の腕を発射装置にしてるとかなのかな? わかんないけど、取り合えず気合い入れてこの一発に賭けてみる。
「いっくぞおおおおおおおおおおおおおお!!」
おもいっきり腕を引いて鉱石を引っ張り出す。それと同時にエネルギー供給が開始されたのか前方に集まる青い光。その光の紙吹雪が破損した所とかからも一杯出てて、この飛空挺を包み込む勢い。
「くっ、エネルギーの圧縮が上手くいかないか。仕方がない! 押し込むんだ!!」
そんな声を受ける前から僕は実際押し込もうと思ってたよ。だってエネルギーの圧縮率とか聞いてないし、引いて押し込むだったろ。
だけど想像以上に押し込むのには力が行った訳。これは実際モブリの力でどうにか出来るのか? って位。だけどモブリの気遣いをしてる場合じゃないか。さっさと打ち込まないと目の前から逃げられかもしれないからな――って、なんだか向こうも再び赤紫した光が収束してるような。ヤバくないかアレ?
「大丈夫だ。向こうは撃ったばかりでエネルギーのチャージはまだ間に合わない筈だ! それにもし打てたとしても、完全じゃないのなら、威力で負けはしないさ!」
「その言葉ぁ信じるからなあああああああああ!! いっけぇえええええええええ!!」
右回りで回ってた腕に現れた魔法陣が、一斉に左周りに変わったかと思った瞬間、引っかかりが外れた様に腕が進む。そして形が戻ってた黒い球体にめり込ませた鉱石。それに腕に現れてた魔法陣が集まって行き、そこからも青い光の紙吹雪が。
そして次の瞬間、船首部分から弾き出される大きな青い光。その勢いが強力過ぎたのか、前に進んでた筈の飛空挺が後ろに下がった。
だけどそんな事は僅かな問題。僕は必死に光の行く先を見つめてた。この光がたどり着く場所であってほしいバトルシップを。
向こうはプライドか何か知らないけど、どうやら避ける気は無いらしい。まあそれは向こうも直ぐに光を収束しだした時から分かってた事。
向かう青い光に対して、奴らはさっきのよりも明らかに細い赤紫の収束砲をぶつけてくる。二つの攻撃は間でぶつかりそして拮抗する。
「くっそ、向こうはエネルギー不足してる筈なのに、拮抗出来るのかよ!?」
「向こうのはこの船の改良版だからな。こちらのよりも性能がいいのは仕方ない。寧ろこの状態で拮抗出来るてるだけ上出来だろう」
まあ確かにそうなんだけど……こっちは損傷が激しいからエネルギーの減りが早い。向こうも満タンの収束砲じゃないから、さっきのよりも長く放出出来るとは思えないけど、これはどっちが長く出し続けられるかの勝負に成りそうだ。
「くっ……」
さっきから妙に舵がガタツく。拮抗してるから船自体が不安定に成ってるみたい。それにエネルギーのぶつかり合いだから、単純に同じ位置で攻めぎ合いってふうにも行かない。
すこしずつだけど位置がズレて収束砲同士がズレていく。だけどこの重なり合いが外れたら、再び船のどこかを持って行かれる訳だから、そんな事させられない。
僕は舵を握る腕に力を込めて、向こうの動きにあわせる様に舵を回す。きっと向こうもそうしてる。
だから僕達は拮抗したまま空を回る。空と同じ青の紙吹雪とまがまがしい赤紫の光。どっちがこの勝負を征するのか……僕達はただ祈るしか出来ない。
だけどその時、向こうが反則行為をしてきた。
「なっ! ミサイルって……」
『くはははは、我らの船はそちらとは違うんだよ。攻撃手段の数がな!!』
得意気にそんな声が通信装置から聞こえてくる。別に正々堂々を願ってた訳じゃないけど、雰囲気を察しろよな。まあそれはただのこっちの願望だろうけど……当たり前か、出来る限りの攻撃手段を使って潰しに来るのは。
僕達はルールに則った勝負をしてるわけじゃない。卑怯なんて言葉は存在しないんだよな。そもそも実力が拮抗してたり、有利な状況で戦闘に入れる方が希なんだよ。僕の場合は……かも知れないけど、でもだからって諦めれる訳もないからここまできちゃってるんだよな。
迫り来るミサイル。既に鉱石を使いきった鍛冶屋を頼る事は出来ないだろう。ならシルクちゃんやピク、セラを信じるしかない。収束砲の拮抗で動けないしな。
既に聖典は動いてる。そしてピクもシルクちゃんもまだまだ頑張ってくれてる。大丈夫……まだ行ける! 直前でのミサイルの爆発で機体が揺れる。だけどバトルシップの方はここぞとばかりにミサイルを撃ちまくり。これってまさか……
「誘われたんじゃないか?」
そんな疑問が沸いてくるな。まあそんな事しなくても打ち落とせるだろうけど、目の前に常にいてくれた方が楽なのは確かだろ。
(くっそ……どうする? 収束砲をズラして、この状態を解いた方がいいのか? だけどこれを逃したら、きっともう二度と向かい合う事は出来なくなる。こっちのエネルギーも微妙だけど、向こうもそろそろ限界の筈。
少しだけ長くこちらが持てば、バトルシップに攻撃を当てられる……それは大きい)
心の中でそんな考えに悩む。だって逃げ続けるのはとても大変だ。でも向こうにもダメージを追わせられれば、少しは状況が変わるかも知れない。
そしてそのチャンスは今しかないんだ。この次があるとは絶対に思えない。ここでやらないと、ただ必死に逃げるしか道はなくなる。まあ結局それをやるしかないとは思うんだけど、少しでも良いんだ。バトルシップの機動性を落としたい。
欲を言えばそれが望みなんだ。だけどこのままじゃその前に落ちそうな雰囲気なのも否め無い。今はまだシルクちゃんの強力な障壁とセラの聖典でどうにか成ってるけど……なりふり構わず撃ってきてるバトルシップのミサイルの量は半端ない。
殆ど止まってる様な状況だからって奮発しすぎだろ。流石に空にミサイルの軌道の後が板みたいに成るほどの数じゃ、シルクちゃんの障壁もいつか破られるだろう。セラの聖典だって全然追いついてない。
目が痛くなる閃光と、耳をおかしくする爆発音の連続だ。やっぱり欲を出しすぎるのはよくないかな……とか思い出してきた。だってここで一矢報いるのに賭けるよりも、エンジンが復活して元に戻った機動力に賭けた方が……ってそれがアテに出来ないからこんな無茶をしてるんだった。くっそ……だけどこのままじゃ……
「ガガ……ガガ――ちょっ――と、後少し……このままで居なさい!」
「セラ……か?」
多分この声はそうだろう。だけど随分ノイズが混じってるな。でもお札から通信が来てるって事は、ノウイがそれを届けたって事か。でも後少しこのままってどうする気だよ。
それにそんな事を言われなくても、この状態は後少ししか持ちそうにない。そろそろお互いの収束砲が限界っぽいからな。
だんだんと細くなって行ってる互いの光。この様子だと殆ど同じタイミングで消えると思う。だけどそれじゃあ困る。僕はセラと繋がってるお札へと声を出す。
「どうするんだ? もうこっちの攻撃は持ちそうに無いぞ」
「いい――から、ガガガ、アンタはそのまま! ノウイ!」
そんな声と共に、一方的に通信切られた。そのままって、この撃ち合いが終わったら全力で逃げるしかないんだけど……せめて何をやるのかだけでも言えよな。
そんな風に思ってると、甲板に三つの陰が現れた。それはセラとノウイとテッケンさん。どうやらミラージュコロイドで側面を一気に上がって来たみたいだな。
遠目だけどセラの奴は、案外大丈夫そうにしてる。みんなの姿も見えるから、少しだけ安心感が増すな。そんな中次々と障壁に衝突しては爆発していくミサイル群。マジでシルクちゃんがいなかったら、今頃この船は木っ端微塵に成ってる事だよ。
そんな中、なにやらシルクちゃんに言ってるセラ。そしてこちらを見てる? だけどセラは何も言わずに前を向く。一体何をやる気なんだ? 聖典はミサイル迎撃に回ってない様にも見えるし、何かを狙ってるのは分かる。
まっ、もう既にこの船の攻撃でバトルシップに傷を付けるのが絶望的な今、頼りに成るのはセラの聖典だけ。仲間を信じることは基本だし、やってくれる事を願うさ。
セラが期待を裏切った事ないしな。
次々と空で弾けて青い色を黒へと塗り変えて行くミサイルの攻撃。それらを一切引き受けてるのがシルクちゃんで、ここの突破の鍵を握ってるのがセラ。男性陣は女の子を後ろから応援する立場になってる。
ちょっと情けないかも知れないけど、こればっかりは仕方ない。たまたまその役割を担う事が出来たのが女の子達だけだったって事だ。
空に立ち込める黒煙のせいで、バトルシップの見える範囲が奇しくも攻撃で繋がってる部分だけになった。ゆっくりと回る互いの船。黒煙から出てはまた入る。そんな事を交互に繰り返す羽目に成ってるよ。
だけどその時、空の高い位置に何か光るものが見える様な。輝く黄金色の光……あれは聖典か? ミサイルを打ち落としてないと思ったら、この隙に乗じての収束砲を準備してたのか。
そういえば、別にセラの手元から撃つ必要は無かったんだっけ? こちらに気を取られてる間に、全く別方向からの収束砲での攻撃。これは効く筈だ。
一機ずつじゃダメでも、力を合わせれば貫けない物はきっとない。そう思える程のエネルギーの増幅量だからな。唯一の不安点は、最初にバトルシップを落とした時よりも、聖典の数が減ってる点だ。
収束砲は確か、四の倍数の聖典が必要で、四・八・十二・十六・二十で威力も比較的に変わるとか聞いた様な気がする。
確か六機位は落とされてた筈だから、十二機での収束砲しか撃てない今の状況で、バトルシップの障壁を抜けるのか?
きっと二十機で撃ってた最初の不意打ちとは多分相当威力が変わるんじゃないかと思う。だって二十機全部を使っての収束砲なんて、僕も間近で見たことない。
それだけ使う場面を選ぶ程――って事なんだろう。だけど十二機だって相当なのは知ってるし、願うしかないよな。セラを……聖典を!!
目映い光を弾けさせて真っ直ぐに降り注ぐ黄金色の光。次の瞬間、収束砲がバトルシップを大きく揺らした。そして片翼から上がる炎と煙。セラが全身全霊を込めて放った収束砲は、バトルシップの体を貫いてる。
『なっ……に!? そんなバカな!!』
そんな声が通信機から漏れ聞こえてくる。流石に予想外だったんだろう。常に自分たちが有利だとか高をくくってるからそうなるんだ。機体性能だけで勝負は決まる訳じゃないんだよ。
片翼がもげて大きく左側に蛇行しだすバトルシップ。そのせいで重なりあってた二つの攻撃もズレて、それぞれの機体に僅かに傷を刻んだ。
けどそれは微々たる物、すぐさま頭が切り替わってこう思った。
(今しかない!)
ってね。僕は大きく舵を切って、もう一度反転させて、リア・レーゼの方向を向いた。そして球体に圧力をかけてスピードアップ! ……アップ……アップ? しようとしてる筈何だけど、あんまりスピードが変わらない様な。
「あの一撃は大量のエネルギーを使うからな。撃った後はしばらく加速が制限されるんだ。再びエネルギーを生成する僅かな間だがな」
そんな説明を椅子に座ってる艦長がしてくれる。だけどその僅かな間が貴重なんだよ。いやまあ、あれだけの攻撃だ。リスクがないなんて思っては無かったけど……すぐさま加速できないのは痛い。
後ろをチラリと見ると、高度がどんどん下がってるバトルシップが見える。どっからあの強力な攻撃を出してるのかと思ったら、どうやらこの船と同じ構造の砲が内部に収納されてたみたいだ。
そこら辺は後継機って事何だろう。この飛空挺の唯一の武器は受け継がれてた訳だ。砲芯は二本とも壊したとか思ってたけど、その内にもう一本とっておきを隠し持ってた訳だ。
僕は横目でバトルシップを見ながら、ずっと手に力を込めてる。直ぐに加速出来るようだ。だってあれで終わったなんてなんだか思えなくて。だから(早く早く)と念じてる。
すると通信用のお札からこんな声が聞こえてきた。
「ちょっと、もっと急ぎなさい――っつ……」
セラのそんな激。だけどやっぱり頭痛を併発してるのか、ちょっと辛そうなご様子。なんだか雑音が混じってないな。双方のエネルギー砲の影響だったのか? てか、急ぎたいのはこっちもだってそうなんだよ。ただ急げない理由があるだけだ。
「そんな言い訳いらないわよ。死ぬ気で急ぎなさい。こっちは流石に……限界なんだから……後は任せるわよ」
そんな声に操舵室の外を見てみるとセラはペタンと床に腰を下ろしてる。世に言い女の子座りと言う奴だ。気が抜けた様なご様子なのかどうか……ちょっと心配気に見てると、横にフラッとセラは倒れた。
「なっ!?」
僕は割れた窓の部分から身を乗り出しそうに成ったよ。だけど僕がそんな事をしなくても、周りのみんながセラに駆け寄ってる。
流石に二十機の聖典の操作に、二回の収束砲は負担が大きかった様だ。周りを飛んでた聖典は、セラが倒れたと同時に、その姿を元の鏃に戻して、セラの元へと消えていった。
これで僕達にはバトルシップへの攻撃手段が実質消えた事になる。本当にもう、逃げる事しか出来ないな。セラの姿はノウイやテッケンさん、鍛冶屋やシルクちゃんの陰で見えない。
だけどか弱い声が通信用のお札から漏れ聞こえてきた。
「ここまで……したのよ……着けなかったら……バッキンバッキンガムだからね」
バッキンバッキンガムって――ちょっと吹きかけたじゃないか。でもなんだかか弱いってか、寝言みたいな感じ。気を失ってるのか? 結構激しく頭部をぶつけてたし、意識が飛んでるのかも知れないな。
どうせ聞いてないだろうけど、僕はセラにむかってこういってやる。
「分かったよ。後は任せとけ。目を覚ましたときには、リア・レーゼだ!!」
僕は手に力を込める。するとようやく青い光の紙吹雪が溢れて来て加速出来た。スピード感ある風が肌を撫でる。このまま一気にリア・レーゼへ!
グングンと進み、前方に見えてくるのは大きな傘を差したかのような強大な影。その周りにも山みたいな傘が幾つも見える。
レーダーでは大体あそこ等へんっぽいけど、どうなんだ? 僕は艦長に視線を投げかける。
「あそこがそうだ。あの一番大きな傘こそ、世界樹とも神樹とも呼ばれてる木。そしてその木の麓から、リア・レーゼが広がってる。
まあだが、影が見えてもまだ遠いがな。木が大きすぎるから、既に見えてるだけだ」
マジかよ……確かに大体世界樹とか言う木はドデカく言われてるけど、やっぱりLROでもそうなんだな。一番デカいのは上の方が雲を突き抜けてる様に見えるぞ。
どこまで行ってるんだ? 案外この木を登れば月まで行けそう……とか思えるかも知れない。僕が上を仰ぎ見てると、後方で爆発が起きた。
「何だ!?」
声を出して振り返ると、そこには猛スピードで追いかけて来るバトルシップの姿はあった。あれで終わったとは思ってなかったけど、追いついてくるの早いよ!
モゲた筈の翼も戻ってるじゃないか。一体どういう事だ?
「くっそ! みんな捕まっててくれ!」
僕は通信用のお札に向かってそう言って、おもいっきり右に舵を切る。その瞬間飛空挺を追い越してバトルシップが前方に。だけど直ぐに上昇して僕達の飛空挺に影を作る様に飛び始めた。
今度は何をやる気だ?
『勝ったと思ったか? 甘いわ! バトルシップはそこいらの材料で出来てはいない。私もよくわからんが、この船の外装を覆うのは全く新しい材料だ。
そしてそれは我らモブリに宿りし魔力で復元可能。自己再生機能を有した材質なのだ! 下手に外装の羽を狙わずに、最初の時と同様に動力炉を狙っていれば止められたものを。これが貴様等の敗因だ!』
自己再生だと? 今そう言ったかこいつ? なんて反則的な材質だ。魔力が居るらしいけど、実際MPが無いLROなら、直し放題じゃないか!
いやでも外装だけなのか……だからエンジンを打ち抜かれたもう一機のバトルシップは復帰してこないし、外付けの砲芯二つは、元に戻せてない。あくまでもバトルシップを形作ってる外装だけが修復可能って事なんだろう。
でもそれでも大概だな。障壁だって張ってあるのに、その上自己再生って……本当に一撃で動力炉を破壊しないと止められないじゃないか。
そんな事を思ってると、上から何か投下されてくる。小さな黒光りする物体。それが強烈な音を出して飛空挺の外装を凹まして行く。超音波爆撃か何かか? するとその音のせいでプロペラがもげてしまったり、なんだか動力の様子がおかしくなったりで推進力が落ちてきた。
くっそ……もう見えてるのに!
「頼む頑張ってくれ飛空挺!」
シルクちゃんもさすがに音までは防げないみたいだし、ここは僕の操縦技術にかかってる。舵を切り、上昇下降と様々やってみる。だけど無理だった。それどころか動力炉部分から火の手が! マジで不味い……そう思ったとき、クリスタルに封印されてる奴が突然こう言った。
「高き世界樹の姿が見える。まさかここまで持つとはな……願ってはいたが期待はしてなかった。これはお前たちの絆の証か……神の意志か……だが既に黙っては居られないな。
我らが神子の御前、神の地での暴挙は許せん」
何を言ってるんだ? そう思ってると、奴のローブの模様が輝きだした。そしてローブだけを残して中身が消えた!?
次の瞬間、奴は甲板に立ってた。
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