命改変プログラム

ファーストなサイコロ

脱出

 空に再び太陽が昇る時間。漆黒に染まってた空を青色へ徐々に変えるこの時に僕達は動き出した。まあ実際、この時まで動けなかったってのが大きい訳だけどね。
 僕達が色々と暴れたせいで、街は一応厳戒態勢だったから、街の外へ通じる道は塞がれてたし、当然それは飛空挺もって事だった。運行ストップしてたんじゃどうにも出来ないし、元老院側が諦めるのを待ってたわけだ。
 そして規制解除される朝方を狙って僕たちは行動を起こす。まあ実際、規制解除と同時に動くのもどうかと思ったけど、セラ達が考えたルートだと、人が多くなってからも困るらしかったので、ここしかない。


「では、クリューエルとそしてみなさんにシスカ様の導きがあらん事を」


 そんな祝福の言葉をノエインから受け取って、僕たちは社を後にする。社は敵の本拠地の筈なのに、ここを出るまでは安全が保障されてるんだからおかしいよね。
 教皇の癖にフラフラと良く外出する奴のおかげで、ノエインの開発した抜け穴はまさに完璧だったから。てな、訳で問題はここからだな。


「さてと、ここからが本場よ。まだ街中には結構見回りの兵とか居るだろうし、鉢あわない事を願いましょう」
「てか、おもったけどさ。そもそも僕らって目立ってるよな。ここはモブリ国なんだし。身長で直ぐわかる感じ」


 モブリなんて膝丈か大きくてもそのちょっと上位しかない小さな種族だ。人とかエルフとかモロバレだよ。


「それはこの国に私たち以外の人やエルフが居なかった場合でしょ。大丈夫よ。プレイヤーは私達以外にも居るわ。それに今は魂送りの期間。
 溢れる位に他の種族だって居るわよ」
「まあ、それはそうだろうけど……」


 僕は視線の先を見据える。確かにチラホラは見えるんだけどさ、溢れる程とはほとほと行かないだろこれは。やっぱりまだサービス再会直後だからそんなに多くないのだろうか? 確かに夜は、沢山人が居たように思えたんだけどね。


「うじうじウルサいわねスオウ。男なら腹を決めなさいよ」
「別にうじうじしてる訳じゃなく、リスクを考えてるだけだ」
「リスクって、アンタもそんなの考えるのね」


 なんだそのバカにした様な言葉は。セラの奴はやっぱセラだ。僕だってリスク位考える。いろんな事を自分の中の天秤に掛けて人は選択する物だろ。


「それで天秤がどちらに傾き過ぎたとして、アンタはそこで危ないからって諦めるの質じゃないでしょ?」
「譲れなかったらな。それ以外はちゃんとリスクの少ない方を選ぶっての」


 するとセラは「へぇ~」とか言う安っぽい相槌を打つ。こいつ信じてないな。背中に背負ったクリエがいなかったら、もっと色々と言ってやるところだけど、今は見逃してやるよ。
 気持ちよさそうに眠ってるクリエを起こしたくはないからな。ちなみにミセスアンダーソンは鍛冶屋が背負ってます。ノウイでも良かったんだけど、アイツはいざって時に使える力を持ってるからね。
 それをいつでも使える様に両手は自由にしといたんだ。
 社と街を隔てる垣根に居る僕ら。実際ここにいつまでも居るわけに行かないしそろそろ行った方がいいんだけど、社へ続く道ってどれも屋根がなく、なんか見晴らしが良い様になってる感じなんだよね。
 夜は別に気にしなかったけど、明るく成ってくるとそれがなんか気になった。もしかして攻め入られた時の為用とかなのかな?
 屋根ついてたら、守る側からしたら攻撃しづらいしね。それに社に続く道は次第に広さを増して、なのに直前にある橋は数を多くしてなんだか細い。この橋を通らないと社には入れない訳で……大群はここで立ち往生する羽目になりそうだ。


「まあどの国にも魔物の驚異はあるからね。こういう大きな建物はいわば街の最終防衛拠点なんだよ。いざと成れば、街の人々を受け入れて、籠城出来る様に成ってるのは当然だよ」
「へぇ~そうなんですか」


 テッケンさんの言葉に僕は納得したよ。魔物って言う驚異の存在がLROの世界の防衛意識を高めてるのね。なるほどなるほど。


「お喋りはそこら辺にしてそろそろ行くわよ。いつまでも様子を伺っててもしょうがないわ」
「おいおい、一応見張ってる奴とか居るんじゃないか? 流石にこのままじゃ不味いだろ」


 僕たち指名手配されてるし。普通に出ていったら今の閑古鳥が鳴くようなこの道では目立つ。するとセラは「そんなのわかってるわよ」と言い、シルクちゃんに視線を移した。


「シルク様お願いします」
「はい。じゃあみんな集まってください」


 そう言って、シルクちゃんは詠唱を始めた。そして詠唱の終わりとともに僕たち全員の体を魔法陣が上ってくる。そして――


「プッ、まさかお前セラか?」
「そう言うアンタこそ酷い姿してるわよ」


 笑われて少しイラッときたのか、セラが鋭い視線で僕を射抜く。だけど全然今のセラは怖くないな。なんてたって、随分太く成ってるから。


「どうですか? これなら私達だってバレる事はあり得ません!」


 そう言うシルクちゃんも横に膨張してる。どうやら、僕たちは魔法でデブになった……みたいだな。でも別に体が重く成ったとか感じないのは、魔法でそう見せてるだけ、なのかもね。
 声だって全然変わってないし。ある意味不自然だよ。


「でも何故に太る感じの変装なんすか? 別にもっとビジュアルを変えるとか出来ますよねシルク様なら?」


 確かに、ノウイの言葉ももっともだね。何故に太らせたのか疑問だよ。


「簡単ですよ。単にそこまでやらなくても良いかなーって事です。それに背中の二人はちゃんと別の物に変えてます」
「「え?」」


 僕と鍛冶屋はそう言われて背中へ首を回す。実際、見せてるだけだから、どんなに邪魔くさく見える脂肪も案外そうじゃない。
「うお! 何故かクリエが大きなオニギリに――ってこれはおかしいよね!?」
「こっちはアンダーソンがリュックに成ってるな」
 なにこの微妙すぎるチョイス。なんでリュックとオニギリ? いや、あくまでリュックは持ち物だし、背中に背負う物だし良いよ。けどオニギリを背中に背負うデブなんて聞いたことないよ!! 
 いくら何でもこれはないよシルクちゃん。


「別にあんまり違和感ないですよ?」
「別に何背負ってたって良いじゃない。そこら辺は特に重視してないのよ。私達が全くの別人に見えればいいんだからね。オニギリを背中に背負ってるオカシナ奴って印象なら、私達の顔が出てくるはずないわよ。万が一にも」
「当然だろ」


 オニギリを背負ってて僕を連想されたら僕って一体どういうイメージなのか、頭を抱えずには居られなくなる。


「よし、じゃあ行くわよ」


 そう言ってセラが最初に足を踏み出した。それに僕たちも続く。怪しまれない様に、怪しまれない様に……すると運悪く目の前から僧兵が!! きっと僕たちの鼓動は一気に高まった筈だ。


(大丈夫、大丈夫、大丈夫)


 僕はそう心で唱えながら、背中のオニギリ……もといクリエを意識する。そして僧兵達と交差する。だけどそれは余りに自然な素通り(ちょっとプッってな笑い声が聞こえた気がするけど気にしない)……一気に肩の力が抜けたよ。


「ふう」
「大丈夫ですよ。特殊なイベントか、それこそ魔法かアイテムを使わないとばれません」
「そう言う割にはシルクちゃんも胸押さえてるじゃん」
「これは安心を確かめてるのです」


 指を立ててそう言う彼女は、いつもなら可愛さ百二十パーセントは叩き出してくれるはず。だけど今は邪魔な脂肪が七十パーセント代で押しとどめてるよ。何という残念さ。
 僕達は心無しか早足で道を曲がり、取りあえず社の監視の目からは逃れただろう。怪しまれなかったかどうかはわかんないけど。
 僕達は取りあえずここで変装解除。あれは緊急処置。さてこれから始発の飛空挺が飛ぶ前に発着上につかなくては成らない。残り十五分って所だな。


「変装解いても良かったのか? これからだって僧兵に会わないとは限らないぞ」


 ここに来て鍛冶屋がそんなまともなことを言った。まあ確かにそれはそうだな。あのままで良かった気はする。女子が残念に成るのはイヤだけど、目的には変えられない。


「会ったときは会った時ですよ。実はあんまり魔法を継続して使いたくない理由があるんです。ただの噂なら良いんですけど、警戒するに越したことはないんで」
「ふ~ん、それじゃあ仕方ないね」
 噂ってなんだろう。そう思いながらもシルクちゃんがそう言うなら受け入れるよ僕は。その噂がなんなのか気になるけど、残り十五分だし急がないとだ。
 僧兵とかを警戒しながら行ってたらギリギリかもしれない。なんたって広いからねLROの街は。それにサン・ジェルクは、湖の上に複雑に道が張り巡らされてるからね。
 迷わない様に最短……じゃなく考慮した最善のルートを進まないと。僕達は取り合えずある場所へと向かう。




「そっちはどうだ?」


 僕のそんなジェスチャーにテッケンさんがOKのサインをくれる。僕達は周りを警戒しつつ、実は発着上とは違う方向へ足を向けてた。
 まあ警戒って行っても、テッケンさんのスキル『千里眼』で周りを警戒してもらってるから、実際ははちあう前に僕達はその存在に気づけるよ。
 今はまだそれほど人も多くないし、テッケンさんが僧兵をその目で見落とすことはないだろう。なんか建物とかを透過して先を見据えることが出来るらしいからね。
 一体どういう風に見えてるのか気になる。


「はは、実際結構危ないんだよコレ。立ち止まって使うの前提だからね。動きながら使うと、まず間違いなく町中じゃ建物か人にぶつかる。先を見据える為に目の前を犠牲にしてるような物だから」
「へぇ~なるほど。ただ単に便利って訳でもないんですね」


 僕はテッケンさんの説明に納得しながらそう言った。なるほどね、実は常時発動中ではなかったのか。鉢合う可能性が無い訳じゃないなそれじゃあ。
 だけどちょくちょく立ち止まってキョロキョロしてるのはその為って訳ね。それだけでも随分きっとマシに成ってるんだろう。
 敵の存在を先にわかってれば対応のしようは色々とあるものだよね。最初の社付近とは違って、ここ等辺は横道とかいっぱいだし。


「そうだね、いざと成ればシルクの魔法か、ノウイ君のミラージュコロイドがあるからね。大抵はどうにか成るよ。これは些細な保険だよ」


 そう言って小さな体で先行するテッケンさん。些細なんて謙遜だよ。僕達はテッケンさんのこと信頼してるから、些細以上の保険になってる。
 安心感って奴が違うんだ。朝日に照らされる水面がキラキラと光ってる。てか、このサン・ジェルクの朝の空気は凄く清々しい感じがする。
 周りが水で、しかも四方を滝で囲まれてるんだから、爽やか度マックスって感じ。提灯の光は今は無く、上からの太陽光と水面の反射の光で光源は十分。
 まあ十分過ぎるほどでもある、四方を囲む滝は結構遠い筈何だけど、水しぶきが光を反射してるのか、遠くが光の帯みたいに見えてるもん。幻想的だよ。
 そうこうしてる間に目的の場所へ近づいてきた。順調順調だ。


「船貸し場?」


 ポツリとそんな風に呟いたのは鍛冶屋。こいつ武器ばっかに関心してたせいでやっぱり聞いて無かっただろ。ちなみに船貸し場ってのは、そのまんまの意味だよ。
 船を貸してくれる所。だけど別にコレが街と外を繋ぐ手段じゃない。この魔法の国は、特定の場所を転送魔法で結んでる。
 だからこの街から外に出るときだってそれを使うんだ。じゃあ何で船貸し場なんて存在してるかと言うと、それはいわゆる一種の娯楽『釣り』の為らしい。
 サン・ジェルクは湖に浮いてるだけあって釣りの名所なんだって。だから釣り好きの人のために、沖合に出れる船が用意されてる訳だ。
 で、今回はそれを利用しようと言うわけ。まあ利用と言っちゃ聞こえ悪いな。お世話に成ろうとしてるわけ。


「武器マニアのアンタにだって、飛空挺に乗るための一番のネックが何か位わかるでしょ? その為よ」
「ああ、出入国の建物か。あそこ通らないと発着場にはいけないからな」
「そういうことよ。あそこには必ず僧兵が居るでしょうし、指名手配までされたそこの奴が素直に通されると思えないでしょ。なら通らない道しかないじゃない」


 そこの奴扱い……別に好きで指名手配されたわけじゃないっての。てか、なんで僕だけだよ。やっぱり元老院の一人をフルボッコにしたのがまずかったのかな? まっ後悔なんてしてないけど。
 あんなクズには当然の仕打ちだ。


「そういう事か。だがあそこ通らずに乗れる物なのか? 俺達は永久パスを持ってるが、スオウは無いわけだろ。いやあったとしてもそんな事が許されるか? システム的に」


 そう言って難しい顔をする鍛冶屋。まあ鍛冶屋の言いたい事もわかる。横から入れるとか、そんなの密航じゃん。犯罪だ。LROは大抵の事が出来る様に成ってるけどさ、ズルとかには厳しかったような……


「前に密航者がバレて牢に入れられた――なんて噂が飛び交いましたよね。その際には装備も資金も初期に戻るとか。出来るけど、リスクが大きいから、誰もやらないだけじゃないかな?」


 シルクちゃんが冷静にそう言ったけど、実際洒落になってないよね。装備も資金も初期に戻るとか、あり得ない。セラ・シルフィング無くなったら、僕なんて雑魚だよ。大丈夫何だろうな?


「大丈夫よ。今回は止む終えない密航だもん。だからこそ、私達は教皇に一筆したためて貰ったんじゃない。てか、その提案をしたときにあの人が飲んだ時点でこういうルートなんだって私は思ったわよ」


 ああ、あの時耳打ちしてたのはそのための協力を持ちかけてた訳なんだね。てか、だからこそこの作戦で行こうとしてるわけだよな、テッケンさんもセラもノウイも。
 抜かりなんてあるわけ無いか。


「よし、それならさっさと舟借りようぜ」


 ちゃっちい笹舟をさ。そう思って僕はそこに居るモブリに話しかけようとした。


「ちょっと待て!」
「なんだよ?」


 制止の声を受けて、僕はいぶかしむ目を鍛冶屋へ向ける。


「来る……この音、僧兵だ! 隠れろ!」


 そんな事を言って鍛冶屋は速効で建物の陰へと身を隠す。僕達はなんだか呆気に取られたよ。だってテッケンさんは何も――


「確かに来てる! みんな隠れて!」


 マジか!? 僕達は慌てて鍛冶屋が隠れた方へ走る。そして何とか飛び込んだと同時に、足音が聞こえてきた。しかも結構複数の足音。それに駆け足気味だ。
 そして直ぐそこで足をゆるめてキョロキョロとしてる。


「なんだあいつ等? まるで僕達がここに居たのがわかってたみたいな……」


 僕は小声でそんな事を呟いた。だってまさにそんな感じ。どういう事だ? しばらくするとそいつ等はどっかに行ったけど、冷や冷やもんだったよ。


「まだ僕達を追ってたんですかね?」
「う~ん、追っては居るだろうが、あの行動はちょっとおかしい気がするね。時間も経ったし、一端引き上げたと思ってたけど、どこかから目撃情報でも入ったのかな?」
「そんな……町中のNPCがそんな事するなら逃げ場なんて無いじゃないですか」


 どれだけこのLROの街にはそいつ等が居ると? 逃れられない目の数だよそれは。そんな事を思ってると、シルクちゃんがポツリと独り言の様にこう言った。


「もしかしたらやっぱりあの噂は……」
「噂? どう言うことシルクちゃん?」
「えっとですね。まことしやか何ですけど、サン・ジェルクには魔法を感知するシステムがあるとか。そう言う噂です。だから魔法は控えてたんですよ。
 でもあの時使っちゃったから、それを感知されたのかも」


 あの時ってのは社から街へ抜ける時のアレか……でもアレはしょうがなかった。それに噂は気にし過ぎるのも良くないしね。実際まだそのせいとはわかんない。


「だけど他に思い当たらないですよ?」
「僕達が気づいてないだけかも知れない。とにかく今の内に舟に乗ろう」


 戻って来るかも知れないし、それに他の僧兵が来るかも知れない。僕は今度こそ舟の側に居るNPCに話しかけて舟を二隻借りた。元々釣りようの舟だからね。この人数で一隻は無理すぎた。
 僕達は急いで乗り込みオールを漕ぎ出す。NPCには悪いけど僕達は戻ってこない。だから心の中でごめんなさいを言っといた。


 水を切りながら船が進む。ある程度街から離れて、それから発着場を目指すよ。万一にでも見つかったら不味いからね。こんな舟じゃ、魔法一発で沈みそうだし。
 そう言えばちょっと落ち着いたし、さっき気になった事を鍛冶屋に聞いてみよう。


「所でどうやって敵を感知したんだお前?」


 テッケンさんより早くって相当だぞ。音がどうのとか言ってたけど、実際直前まで足音なんかしなかった。


「俺には聞こえた、僧兵の標準装備であるあの槍がカチカチとする音がな」
「んなバカな……」


 そんな音、足音よりも聞こえないだろ。確かに僧兵はちっちゃいモブリだから、背中に背負ってて槍を差してる部分がカチャカチャなってる感じはあったけど……それが聞こえるなんて……増してやそれで僧兵とか分かる訳ない。


「それはお前の武器に対する愛が足りないからだ」


 さも当然の様にそう言った鍛冶屋。ダメだ、ついていけないよ。まあその異常なまでの武器への愛のおかげで助かったんだけど。


「流石は武器マニアって事でしょ。面目躍如じゃない。まああり得ないキモさだけど」
「ふっいつかお前の聖典もじっくり見せて貰おうか」


 キモい言われたのに全然気にしてないよこいつ。それどころか恩を売ったのを良いことに自分の欲望を満たそうとは天晴れだ。


「アンタの指紋が付いたらどうするのよ」


 手にも取らせない気だよセラの奴。てか見せる気もこいつの場合あんまり無いよな。


「それじゃあ『ナナウリ』でも良いぞ」
「ナナウリ?」


 どんな瓜? 食べ物? 


「バカか貴様は。ナナウリはセラが持ってる金色の武器だ。形が変わる奴があっただろ」


 ああ、なるほどね。確かにあったあった。アレも貴重な物なのか?


「貴重だ。アレは普通の武器の大きさにまで成れる暗器だからな。しかも普段は暗器の枠一つですむと言うハイ効率な一品だ。一つで様々な局面で利用できるしな。
 まあそれには伴った技術が必要だが」


 確かアレってパズルの様にその場で組み替えなきゃいけないんだよな。確かに技術が必要そう。てかセラは超高速で組み替えてるから簡単そうに見えてたけど、やっぱり扱える奴は少ないのか。


「少ないと言うよりは、あれもまたあの女以外では見たこと無いな。そもそも戦闘中に武器を組み替えるなんて芸当をしないといけない時点で、普通は毛嫌いするしな」


 むむ、なるほど。確かに言われてみればそうだね。セラ並に組み替えが早くないと役になんてたたないよな。


「ちなみにナナウリという名前は、七つの形態に変わるかららしい。まあ全ての形態変化を見た奴は、LRO広しといえども聞いたこと無いがな。
 だが、セラならもしかして……どうなんだそこら辺は?」


 そう言って隣の舟に話を振る鍛冶屋。セラはメンドクサそうにこう答えたよ。


「お生憎様。私も七つ全部見たこと無いわ。そもそも組み替えの図式は基本の三つ以外、教えてくれないし、後は自分で試行錯誤するしかないのよ」


 そんな言葉に肩を落とす鍛冶屋。てか、なんて不親切な設計だよ。そんな事を思ってると、いきなり大きく水面が揺れた。これってまさか!? 視線を向けると、動き出した飛空挺が見えたよ。

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