命改変プログラム

ファーストなサイコロ

ようやくからこれからへ

「星羅へ?」


 ノエインの口から出た行く先に、僕はもう一度それを繰り返した。星羅……だってそれは確か、このノーヴィスのもう一つの勢力。まあ確かにこことは違う勢力に満たされた場所なら、元老院の力もサン・ジェルク程には蔓延してないのかも知れないけど……でもそれは信用出来るのか?


「酷いな君は。大丈夫だよ。私が直接書状を書こうじゃないか。それを見せればきっと保護してくれる。少なくとも、元老院の総本山よりは安全だと思うけど?」
「それは……そうだろうけど……みんなはどう思う?」


 僕は行った事ないし、星羅がどういう感じなのかも知らない。だからみんなの意見を聞くしかない。僕はまだまだこのLROって言う世界に対して無知だからな。


「僕は賛成に一票を投じるよ。ここでこれ以上追い回されるのもそろそろ限界だ。それにクリューエル様の願いを叶える為にも、星羅に行くのは良いことだと思う」
「願いの為にもですか? どういう事?」


 テッケンさんの言葉に僕はハテナを浮かべる。囲炉裏を囲んだ中で、そんな僕のハテナにシルクちゃんがこういってくれた。


「星羅にはその言葉通り、星に関する言い伝えが多い組織です。そして土地なんですよ。なんてたって世界はあの地から生まれたと伝えられてる位ですからね。
 星羅の星継ぎの地『リア・レーゼ』ならきっと新たな発見がありますよ。クリエちゃんの願いが遠い空の向こうに行きたいって事なら、星羅は通るべきです。
 それにあそこ綺麗だし。サン・ジェルクは水だけど、向こうは木。その雄大さとか、触れてみて損は無いと思います」


 なるほどね。シルクちゃんとテッケンさんがそういうのなら、まず間違いないかなって思えるね。確かにここじゃ、気が休まらないしな。離れてみるのもいいのかも……逃げるんじゃなく、前を見据えて目的の為に新たなる地へ。


「まあ今更この子を投げ出す訳にも行かないし、こうなったらこの子とアンタの呪いが関連してると信じるしかないわよね。
 今更別の道を見つける訳にも行かないし。それに神もようやく関わってきた事だしね。『サン・ジェルク』を離れて『リア・レーゼ』へ。良いじゃない。迷ってる時間なんて無いわ。
 早速ルートを検討しましょう」


 案外あっさりセラも承認してくれた。てかもうみんな、ここでやることはやったって感じなのかな? まあ今の状況でサン・ジェルクに留まるのは得策じゃないってのはわかる。いつまでも、元老院側に見つかるのを怯えてる訳にはいかないもんな。
 それなら、もう一つの地に行くのは手だよね。向こうだってノーヴィスだし、なかなかに重要そうな場所だもん。


「よし、じゃあ全員賛成って事で良いんだよね?」
「ちょ! 自分には聞いてくれないんっすか?」


 僕がまとめかけた所でそんなヤジを飛ばすのが一人。それは鮮やかな緑色……というか黄緑っぽい色した髪のエルフ。まあ目が点なエルフと言った方が分かりやすいノウイだ。てか別にノウイだけじゃないじゃん。もう一人鍛冶屋が居るだろ。まあアイツは興味無さそうに自分の武器の手入れしてるけどね。
 それにお前の場合は別に聞かなくたってみんなわかってるから別に良いんだよ。


「どうせセラに従うんだろ?」
「まあそうっすけど。だけど自分だけ無視されるのは嫌っすよ!」


 同じなら別に良いじゃん……という思いを喉に押しとどめて、僕は「はいはい」と言っといた。そんな事より、セラが言ったようにどうやってそこまで行くのかだろ。


「それは抜かりないっすよ。だってちゃんとサン・ジェルクとリア・レーゼを結ぶ飛空挺は出てるっすから。問題はここから飛空挺の発着上に行くルートっすね。僧兵に見つかると厄介っすから」


 そう言ってノウイは地図を表示させて、セラやテッケンさんを交えてのルートの選定に入った。僕も入ろうと思ったけど、よくよく考えたら、サン・ジェルクの町並みを僕はまだ完全に把握してない。
 素人の余計な口出しは邪魔以外にはならないよね。それにノウイって普段はあんまり頼りなさげなんだけど、こういう地味なことは得意っぽい。流石諜報部員だよ。まあここは任せといて問題無いだろ。
 僕は立ち上がってクリエが眠ってる方へ歩く。そして仕切の襖を静かにスライドさせる。こちら側の光が暗い部屋に細長い四角い形に二人に届く。
 クリエと、そしてミセス・アンダーソンだ。二人とも変わらず眠ってる。それは安心して良いことなのか、それともやっぱり不安になるべき事なのか……ちょっと難しい。
 とりあえずちゃんとこの場に居てくれた事は安心できる。けど、これからを思うと不安になる。そんな感じだ。


「どうしたんですかスオウ君?」


 そう言って僕の横から襖の向こうをのぞき込んでくるシルクちゃん。そして寝そべってる二人を確認してこう言った。


「良かったですね。落ちたときはどうなるのかと心配しましたけど、ちゃんと二人とも変わらないままで」
「そうだね。うん、そうなんだけど……」


 僕は歯切れ悪くそう答える。するとシルクちゃんは肩に乗ったピクを撫で撫でしながらこう言ってくれる。


「大丈夫ですよ。きっと全部上手く行く。スオウ君はクリエちゃんを救って、私達はその呪いからスオウ君を解放して見せます。
 きっと大丈夫。みんながいれば――ね」
 そんなシルクちゃんの言葉にあわせて、ピクが同意するように鳴いた。まあ実際なんの根拠もないけど、でもシルクちゃんが言うとなんか信じたくなる。
 てか、信じてないと……そう言いたいんだろうな。僕達がそれを信じないでどうするんだって事だろ。強い意志を持ち続ける事が大事。
 ブレちゃいけない。これが本当に正しい道かどうかなんてきっと最後までわからない。だけど、信じてないと僕達はいけない。そうでないと中途半端に終わりそう。
 そうなったらきっと一番最悪な結果とかになるんだろう。そんなのは絶対に嫌だよな。
 クリエが本当に月へ行きたいのかはまだ良くわかんないけど、だけどどうにかしてやりたいって気持ちはちゃんとここにある。
 それを忘れずに自分を信じて、そして一緒に考えて戦ってくれる仲間を信じて僕は進めばいいんだよな。なんかちょっと安心したかも。


「星羅は、ここよりはあの子にあってるかも知れません」


 そんな事を言ったのはノエイン。てか、教皇がそんな事いっていいのかよ。


「いいのですよ。私は今一人の大人としての言葉を語ってるに過ぎません。これは教皇としての言葉じゃない。今ここに居る貴方達には教皇としての言葉じゃなくても良いはずでしょう?」
「まあそれはそうですけど。で、なんで向こうの方がクリエにとっては良いんですか?」
「それは向こうはもっと緩い感じだからですよ。いや、それじゃあちょっと言葉が悪いですかね。自由と言った方がいいのかも知れません。
 そういう雰囲気をこの子は望みそうじゃないですか」


 まあそれは言えてるな。クリエは自由奔放な所あるし、それを無理矢理窮屈な箱庭に閉じこめてたんだもんなここでは。もっと気軽に居れるのなら、そりゃあ気に入るだろうよ。


「自由か。良いんですよね教皇様?」
「何がだい?」


 僕の言葉に不思議そうにそう返すノエイン。僕は考えてた事を口に出す。


「クリエを自由にしてもって事ですよ」


 そんな言葉を受け取ったノエインは、少しだけクリエを見つめて、そしてこう言ってくれる。優しさを染み込ませた様な声でね。


「良いんですよ。私は私の間違いに気づきました。それにここまで頑張ってくれた君達になら、あの子を託せるさ。
 私はね、勿論あの子の幸せだって当然祈ってるのだから」


 やわらかな全てを包み込むような笑顔。それでこそ教皇様だよ。その祈りが間違った方向に向いてた時もあったけど、今はちゃんとクリエの事ってのを考えてくれてる。
 権力に胡座をかいてる元老院共とは違うなやっぱり。今のこの人がちゃんと全権を持てれば……そうなればこそこそする必要なんか全くないはずだけど、そうも行かないのが現状だ。
 間違った所によく権力って流れるよな。LROでもリアルでもさ。それとも元老院だって僕の知らないずっと昔は、もっとまともな集団だったんだろうか?
 人々の幸せを願ってたんだろうか? だけどいつからか、権力を持ったら勘違いをしてしまう。きっとそれが人なんだろう。そんな話は腐るほどあるよな。
 まあ昔の元老院なんて今の僕達には関係ないか。幾ら昔に思いを馳せたって、今僕達の前に立ち塞がるのは奴らなんだし。


「彼らは自分達の権力の維持が、シスカ教事態の繁栄に繋がると思ってますからね。そして自分達の地位を盤石にするために、あの子の力を使いたがってる。
 神の力をその手にすれば、それこそシスカ教は盤石であれるでしょうからね」
「だけど確か、クリエの力は二人の神の力でしたよね? それって良いんですか?」


 ちょっと調べた程度だけど、シスカ教ってテトラを目の敵にしてるはずだろ。そして神がその二神なら、クリエにもその力があるわけだから……それで実際今まで不都合だから箱庭に隔離してたんだろ? 公表出来ないじゃん。


「別にあの子をそのまま表に出さなくても良いんです。その力だけを見せた方が神聖化されやすくもありますしね。そんな存在が居るんじゃないかと思わせるだけでも、それに縋る人は出てくる。
 元老院はどうにかしてあの子の中に眠ってる筈の力の利用方を見つけたんでしょう。だから今、行動に移ってる」


 ノエインの言うことは最もだなって思った。だけどそう言う事わかっててやってるのかよとも思う。信仰って一体何なんだろうか。
 そんなの物が必要なのか、僕にはわからなくなってくるよ。


「信仰は必要ですよ。人々は救いを求めてる。それは事実なんですから。誰だって救われたい。言ったでしょう。君の様に誰もが強くあれる訳じゃないと」


 強く……ね。ノエインの言葉が僕の心のどっかに引っかかる。なんかこう、納得出来ない物がある。それが何かと言われたら困るんだけどさ。
 確かに人は救われたいと思うんだろう。世界は理不尽だから願わずにはいられない事もわかるよ。それにここはLRO。リアルとは違う奇跡の形が宗教って物を、信仰って心を強くしてるのかも知れない。


「魔法があるから、神を信じやすいってのはありますよね。そしてモンスターが居て悲しみや怖さと隣合わせだから、すがりつきたくなる対象が必要でもある。
 リアルじゃどれも漠然としてるから、普通に生きてる分には信仰なんてそんなに必要ないですけど、LROではきっと違うんじゃないのかな?」
「そうだね。シルクちゃんの言うとおりかも」


 驚異が身近にある分、救いを求める心は大きくなる。だからこそ信仰が根深く広がってるんんだろうな。


「あの、ちょっと良いですか教皇様」


 そんな言葉でノエインを呼ぶのはセラ。ノエインは小さな体をトテトテ揺らしてそちらに向かう。


「なんだい?」
「ルートはほぼ決まったんですけど、問題が一つあるんです。これは普通に避けられない事かも知れないけど、でも教皇様なら何とか出来るんじゃないかと」


 そう言って、セラは何やらノエインに耳打ちしてる。何が問題なのか、会話に参加してない僕にはわからないな。取り合えず、そんな相談を受けたノエインは「なるほど」とか言ってる。あんまり難しそうな顔もしてないしどうにか出来る感じだな。
 僕はゆっくりと音を立てない様に襖を閉める。するとそこで話が纏まったのか、セラがこちらに向かってこう言った。


「シルク様にスオウ。これからサン・ジェルク脱出の手順を説明するからこっちに来て。後そこの武器マニアもそろそろ関心を見せなさい!」


 強く言われてようやく顔をあげる鍛冶屋。


「本当に五月蠅い奴だ。ちゃんと聞いてる。俺の役目があるなら問題なくこなすさ」


 そう言って頭をポリポリ掻いてる鍛冶屋。セラは明らかにイラッと来てるけど、そんな様子を見てた僕とシルクちゃんは、互いに笑って席に戻る。便利な事に再び囲炉裏が光って、大きな地図を出してくれたよ。
 そして僕とシルクちゃんはセラ達が考えた脱出ルートの説明を受けた。てかこの地図、超便利。3Dにも対応してる。ルートを線で表して、地図上だけじゃなく、その町並みを表示してルートを教えてくれるんだから分かりやすい。
 地図上だけじゃさ、いざ行ってみるとどっちだっけ? ってなることも多々あるけど、元の風景を見てればそう言うことも起こりにくくなるだろう。


「とまあ、こんな感じ。どうですかシルク様?」
「う~ん、どうって言われても、みんなが頭を絞って出したルートに文句の付けようはないかな。きっとこれが最善だと信じてます」
「ありがとうございます。で、アンタはどうなの? 一応聞いてあげるわよ」
「お前な……」


 なんか僕とシルクちゃんで対応に差があるだろ。なんでいつもちょっと高圧的なんだよ。まあこれでも無闇やたらな暴言は減ったんだけど、後は普段の会話での刺々しい部分を無くしてくれればいいと思う。
 まあ直ぐにとは言わないけどさ。僕は色々と言いたいことを飲み込んで、素直にこの聞いたルートの感想だけ述べることに。


「まあいいんじゃないの。最後の方は確かにこれしかない感じだし、そもそもまだサン・ジェルクを把握し切れてない僕が口を出しても仕方ない。
 信じるよ。セラ達のルートをさ」
「う……なんか今日はやけに素直ね」


 なんか失礼なことを口にされた。僕は本心を言っただけなのに酷い奴だな。僕は基本、いつだって仲間を信じてるっての。セラの事だってちゃんと頼りにしてる。


「そ、そうなんだ。わ……私だってアンタの事、ちゃんと仲間だって……思って」
「ん? おい、声が小さくて何言ってるのか聞こえないぞ」


 何故か妙にモゴモゴしてるから、何言ってるか全然わかんない。囲炉裏挟んだ向こう側で、セラがメイド服の裾を握りしめてるのはわかるけど……てか、そこまで言い難い事を言ってるのか?


「ああ~~! もう! 取り合えず全員賛成って事で良いわね!? ノウイと武器マニアは聞かないわよもう。後は頼みますテッケンさん」
 いきなり立ち上がりそう言って、セラは部屋の外へ。何なんだあいつは? てか無闇に外に出るなよな。誰かに見られたらどうするんだよ。僕達は今犯罪者なんだぞ。もしも見つかったら、ノエインにだって迷惑掛かる。それにノウイ落ち込んでんぞ。鍛冶屋は全然気にしてないな。


「はは、まあそれはどうにか出来ますよ。私は教皇ですしね。それよりもお二人は特別な関係で?」
「は? 何言ってるんだアンタ?」


 頭大丈夫か? と付けそうになったけど、流石に教皇にそれを言うのは不味いと思ったから口には出さない。てか、一体僕とセラの何を見てたら特別だと思えるんだ? シルクちゃんやテッケンさん、ノウイや鍛冶屋と変わらない位置の筈だけど。


「そうでしょうか? 二人は互いに何やら意識しあってる様に見えますよ」


 ニコニコしながらそんな事を平然と言うノエイン。意識しあってるってそれは――


「多分それは僕達の間にはまだこう……越えられない垣根って奴があるからですよ。このメンバーの中では、一番関係が曖昧と言うか難しい奴だから、きっとそのせいです。
 だから別に貴方が思ってるような甘酸っぱい関係じゃ無いですよ」
「そうなんですか?」


 そう言ってノエインは他のみんなに視線を送る。すると何故かみんなちょっと曖昧に笑うだけ。なんだか僕の言葉は的外れ的な空気が。そんなバカなだよ。僕は当人なんですけど!


「う~んセラちゃんもスオウ君との距離を測りかねてるのは事実なんだけど、その動機が二人してズレてるって言うかですね……」


 そう言いつつシルクちゃんがお茶をすする。動機がズレてる? 二人ともお互いを苦手としてたけど、ようやく二人して歩み寄る様にしようと思える様になったんじゃないの?


「この肝はそもそもなんでセラちゃんは、あんな態度を取ってたか何だけどね」
「僕の事がそんなに嫌いじゃないからだろ?」


 そう言われたぞ。けどそう言うとやっぱりテッケンさんもちょっと微妙に笑うんだ。うぬぬ、何故にそう言う反応になる。


「これだからスオウ君は~セラ様の『そんなに嫌いじゃない』の上位にいけないんすよ」
「なっ!? なんかノウイにだけは言われたくない気がする。この目が点野郎」


 僕は得意げにそんな事を言ってきたノウイに食いつく。ゴマみたいな目で何が見えるんだ!


「目が点なのは関係ないっすよ!! それとちゃんと見えてるっす! 視界良好っす!」
「ふん、てか前々から聞きたかったんだけど、何で目が点なんだよ? こだわり? それとも願掛け? いや、もしかして呪いでも掛けられてるのか?」


 色々とノウイの目が点説をあげてみる僕。だってワザワザそんな目にするなんて……ギャグじゃなかったら何なんだよって感じ。
 てか大抵格好良く作る物だろ? 自分の分身であるキャラってさ。だってどうせ容姿が自由に選べるのなら当然だよね。
 男は一度は夢見た、ヒーローや主人公にふさわしい容姿を、女はやっぱりお姫様とかヒロインにふさわしい姿を作る。だからこそLROには美男美女がいっぱいなわけだろ。
 まあそれか、突き抜けた容姿の人たちも中には居るんだけど……でもノウイってそこまで突き抜けてもないんだよね。目以外はまともだし、だからこそキャラとしてイマイチって言うか――


「イマイチ言うなっす! 別に自分で好き好んでこんな目をしてる訳じゃ……」
「ええ? じゃあそれってやっぱり呪いとか何ですか?」


 食いついてきたシルクちゃんが可哀想な目でノウイを見つめてる。それはまさに慈悲の目だね。シルクちゃんは自分の杖を出して更にこう言うよ。


「呪いなら任せてください。スオウ君の様な神の掛けた物は無理でも、大抵の呪いや呪縛は私、解ける自信があります!」
「おお、良かったじゃんノウイ」


 かわいらしいシルクちゃんがやる気満々にそう言う姿は微笑ましい。こんな良い子の善意を断るなんて言わないよな?


「いや、良かったとかじゃないっすよ。自分はまだこの目で無いといけないんす! だからそれはお断りするっすよ」
「そうなんですか?」


 明らかに肩が落ちるシルクちゃん。この目が点野郎、変な意地張ってシルクちゃんを落ち込ませるとか許せないな。
 LROのシルクちゃんを守る会の連中が黙ってないぞ。ちなみに僕が今勝手に作った会だけどね。既にあったらごめんなさいだ。


「絶対にその目に得なんて無いと思うんだけど」


 僕は不満タラタラにそう言ってやる。するとノウイは、ゴマ粒みたい目を糸みたいに細めてこういう。


「はは、そうっすね。得なんて無いっす。だけど、自分にはこれで十分なんすよ」
「十分ね……」


 良くわからないな。僕みたいに強制でリアル顔しか無いとか、自分の趣味趣向全快でとっても濃い顔で満足してるとかなら何も言わないけど、どう考えたってノウイは受け入れてるけど、それに自信を持ってるわけじゃないじゃん。
 どういう事なの?


「はは、スオウ君はほんと、人の事が心配で堪らないんすね。少しでも関わったら誰にでも優しい」
「な……なんだそれ!?」


 僕はそんなお節介な性格じゃない! 断じてな! 何勘違いしてるんだ? 実はノウイの顔を見る度に心で笑ってるからな僕は。


「そんな無理しなくてもいいすっよ。別に褒めてないっすから」
「うんうん、スオウ君はそんなキャラじゃないよね」
「スオウ君はそんな男じゃないが正解だよシルク」


 なんでみんなしてウンウン頷いてるの? なんか無性にいたたまれないよ。しかもノウイの奴、聞き捨てならないこと言ったような? するとその時、入口のドアの閉まる音と同時にこんな声が聞こえた。


「何やってるのよアンタは?」


 帰ってきてたセラの呆れる様な声。僕は縋るようにこう言ったよ。


「なぁなぁ! 僕ってそんな良い奴じゃないよな?」
「良い奴だけど、私は死ねばいいのにって思ってるわよ」


 流石セラだ。そのブレなさもここまで来ると清々しいよ。逆に安心した! 僕達は切れてない絆を確認しつつ「リア・レーゼ」を目指す行動に移る。

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